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年末放談!「お祭り1年間」2024!今年のお祭りニュースを神主、学者、ジャーナリストと語る

yusuke.kojima
2025/1/17
2025/1/16
年末放談!「お祭り1年間」2024!今年のお祭りニュースを神主、学者、ジャーナリストと語る

(画像:Canvaで生成)

全国各地で開催された2024年のお祭りに関する話題を振り返りながら、お祭りが直面している課題や展望について議論する座談会を実施しました。自由な意見交換が行えるよう、参加者は覆面、ハイボール片手の議論です。異なる立場の参加者による意見交換を通じて、お祭りの持続可能な未来像を探ります。ドーンと2万5000文字!果たしてどんな議論が展開されたのでしょうかーー。(座談会は2024年12月11日に都内で行われました。)

参加者:

トラ
関東地方の現役神職・トラさん

ヒツジ
⺠俗行事・芸能に精通した研究者・ヒツジさん

ニワトリ
お祭り取材経験豊富な新聞記者・ニワトリさん

ヘビ
オマツリジャパン編集長のヘビさん

能登地震に始まった2024年。お祭りは?

ヘビ
今年も〝お祭り界隈〟ではいろいろなことがありました。やっぱり今年一番のニュースは1月1日に起こった能登半島地震ですよね。報道では「能登半島・夏祭りの『キリコ』津波被害 壊れた奉燈、心の支え 『住民もバラバラ、復活できないかも』」(毎日新聞、1月30日東京夕刊)と、石川県珠洲市宝立のキリコ流失・損壊の惨状を伝えています。

トラ
驚きました。私は年始の神事を斎行していましたから、ちょうど終わって境内に出たところ、初詣に来られた方が騒然としていましたね。

ヒツジ
珠洲市は2023年の地震被害でも痛手を負っていて、私の知人がそこからの復興をテーマに映画撮影をしていたのです。その最中に起きた元日の地震。作ったものが再び壊れてしまったという話を聞いて、言葉が出ませんでした。

ヘビ
地域の方のショックはいかほどかと辛くなります。7月には珠洲市能登町宇出津で、「あばれ祭」が開催された、と報道がありました(北國新聞、7月6日)。一度は町内を離れた人も町外在住の出身者も集まり、地震からの復興を願った、と。とはいえ、例年なら7〜8月に行われていた能登の祭礼は中止や縮小、神事のみというものも多い、とあり、地域の受けた被害の大きさを考えさせられます。

ニワトリ
報道関係者として思うのは、やはり継続的に取材をしていかなきゃ、ということ。定点観測的にきちっと取材しないと、祭りがだんだん衰退してしまいますから。もちろん、祭りを続けることが良いのか悪いのかは地域が決めることですが、ただ、國學院大学の小林稔先生が「祭りは地域の回復力の源」だとおっしゃっているのは、まさにその通りだなと思います。実は私も東北出身で、東日本大震災での経験も踏まえて、祭りが地域にあることの意味は大きいですよね。

黒石寺蘇民祭の中止 祭りの存続と終焉について

ヘビ
おっしゃる通りですね・・・。さて、2月には祭りをやめる、ということで大きな話題がありました。「黒石寺蘇民祭」。黒石寺は「高齢化や担い手不足」を理由に祭りを最後にすると決めたが、参加者からは「今年で終わりにしたくない」と継続を望む声もある(朝日新聞、2月19日)とのことです。

ヒツジ
これ、参加者や運営を手伝う人はそれなりにいるけれども、檀家さんたちが担ってきた準備や伝承儀式がもう続けられない、ということですね。住職は祈祷などの行事は来年もやるといっておられますし。いわゆる「付祭(つけまつり)」(※お祭りの余興として楽しまれている部分)の行事をやめます、ということですね。

ヘビ
蘇民祭が終わるわけじゃないんですか?

ヒツジ
言い回しが難しいですけれども、コロナ禍でも各地の「祭りが中止になった」と報道されましたが、神社の中で神事はちゃんとやっていたんですよ。

トラ
うん。そう。でもこれご住職が自分のところの寺でやっている行事をやめると決めてそうした、ということでね。決断できる人がいた、ということなんです。神社ではなかなか難しいですよね。神社関係者の声を聞くと、体力もない、人もいないけどやめられないと。誰かにやめろと言って欲しいと。

ヒツジ
メールでそういうご相談いただいたことありますよ。やめてもいいと外部から言われた証拠が欲しいって。

ヘビ
なるほど。研究者の権威で周囲の理解を求めたいと(笑)

ニワトリ
地域のお祭りの場合は、やるやらないは地域の方が決めればいいし、事情があって辞める場合、もう辞めたと言えばいいだけです。でも、取材していて感じるのは、これまで続いてきたものを、自分の代で辞めるというのが難しいという気持ちは強くあるのでしょうね。取材でもうなくなった祭りを調査していたところ、個人名や祭りの名前は出さないで欲しい、という方が結構ありました。自分たちの代で終わらせてしまったという後ろめたさもあるのでしょう。

ヘビ
そうですね。

ニワトリ
でもそれでは一体どうやって続ければいいのか、続けるための課題にぶつかってしまいます。そうすると地域が苦しくなってしまう。これは難しい問題です。

ヒツジ
やっぱり辞めた歴史の中で自分の名前が出てくるのは怖いですよね。その後も、その家は残るわけですし、もしかしたら子孫にまで影響があるかもしれないと考えればとても勇気が必要なことです。

ニワトリ
決断できる〝偉い人〟の一声があれば良いし、それに従えば心の負担は軽くなりますが、多分、現在の地域社会の中ではなかなか難しいのでしょうね。

ヘビ
黒石寺蘇民祭については、市長が、経済効果があるので非常に残念というコメントも。行政にとっても衝撃があったようです。

ヒツジ
・・・行政はよく大事な文化だからとか観光にも大事だからとか言うけど、神社や寺から困っているから手伝って、と言われると、いや、政教分離だから〜と言うでしょ。どっちつかずじゃないですか。文化財に登録しているのだから文化財でしょう?その行政の二枚舌というと怒られますけども、ダブルスタンダードな言い回しもどうにかならんものか、常々気になってはいるんですけど!

ヘビ
おお・・・。

ヒツジ
これだけインバウンドだ、観光だ、京都だ、寺だ!神社だ!とか言っているんですからね。政教分離がいいか悪いかの話じゃなくて、そういう理由で行政が支援を断る、という現場をよく目にするものですから。

ヘビ
お金出さない方便になっていないか、と。

ヒツジ
大きな神社も小さな神社も困っている状況があって、文化の目線でできることってもっとあるじゃないですかと思うわけです。有形文化財は支援できるけど無形文化財はダメとか、大学人としてはモヤっとする。これまた、行政の担当の方の理解度によっても対応が変わってくるところもありまして・・・。

トラ
あぁ〜。

ニワトリ
あぁ〜。

ヘビ
みなさん心当たりが(笑)。祭りをやめる、ということに関しては、専門家にお聞きしたかったことがあります。この人口減少の中では、「祭りの終活」も視野に入れる時期にあるとは思うんですけど、祭りをやめちゃったら、祀られなくなった神様ってどうなるんでしょう?

祀られなくなった神様、どこに行く?

トラ
ん?

ヘビ
例えば、今も雨乞いに関連したお祭りがあったり、お蚕さんのお祭りがあったりしますよね。もちろん続いているならそれはそれでいいんですけども、時代によって産業構造が変わって、今、雨降ってくれと祈る人もいないだろうし、養蚕がうまくいって欲しいと願う人もいなくなっているわけじゃないですか。そうなった時、神様はどうなさるのかと。

ヒツジ
昔、柳田國男先生が、祀られなくなった神が妖怪になる、という文章を書かれていたことはあります。

ヘビ
妖怪になっちゃうんですか。

ヒツジ
ただ、神様って祀る人がいるから神様なのであって。お墓もそうですよね、子孫が祀ってくれるからホトケ様なのであって、誰もいないと無縁仏になる。ですから、多分彷徨うんでしょうね。

ヘビ
彷徨っちゃうんですか。

ヒツジ
・・・って柳田國男先生は書いています。

ヘビ
祟るとか・・・?

ヒツジ
日本の神様はいい神様、悪い神様と単純に分けられないんですけどね。もういなくなった神様としては、疱瘡神というのがありますね。天然痘が根絶されたわけですから。・・・そうだ、なくなった行事といえば虫送りがありますね。かつては多くの地域で稲につく虫を追い払うために行われた行事ですが、その虫を発生させているのが「サネモリさん」という平家の武士の怨霊だと考えられていました。イナゴがいなくなったからなのか、怨霊がいなくなったのかはわかりませんが、これもいなくなった神様かもしれませんね。

ヘビ
そうですよね、祈らなくて良くなったこともある。そうすると、だんだん祭りとか行事の意味を持たなくなってしまって、やめた、となりやすくなるのかなと。

ヒツジ
祭りっていうか行事なんでしょうね。私はうどん県出身なので、今でも雨乞いは大事だと思いますけれど。

ヘビ
水不足だとうどんが茹でられないですもんね(笑)。

ヒツジ
天気だけはなんともならないじゃないですか。だから、雨乞いはなんだかんだ残るんじゃないですか。虫はなんとかなったけど。

ヘビ
担い手としては、なくなる、なくしてしまうことを神様に申し訳ないと思う方もいらっしゃるかな。

ヒツジ
有名なお祭りでいうと、琉球王国で最高の聖域とされた、沖縄・久高島のイザイホーというものがあります。こちらは12年に1度行われる島の女性の通過儀礼なのですが、島外への人口の流出などを理由に準備が困難となったために、1978年以来行われていません。それでも今でも12年ごとに今年は中止することについて神様にお伺いを立てています。でも今復活しようとしても、祭祀を行うノロという最高位の神女がいないなど条件が揃っていないんです。

ヘビ
そうなんですか。

トラ
長い目で見れば、なくなる祭りはあるでしょう。技術の発展とかいろいろなことがあるでしょうから。私の神社で12月にやっている大きな祭りは、今は酉の日に合わせて市が立ちまして、熊手を売っているので、世の中には商売繁盛のお祭りだと思われていますが、元々は農耕に関わる祭りで、五穀豊穣を願うものなんです。

ヒツジ
各地のお祭りは、農とか漁とか、今でいう第一次産業に由来していて、共同体の生産活動において必要なものだったわけですよね。でも現代人はサラリーで暮らしていて、何で虫送りなのか、なんで稲なのかわからなくなっちゃって。日本全体が都市文化化したことで、共感できなくなったということですよね。

ヘビ
確かに。

ヒツジ
祭りの説明をしてもピンとこないのは、そこなんでしょうね。学生たちに冬は命が「増える」から冬なんだよとか、春は命が「張り」出すから春だと、そういう種の話をすると、みんなへえと感動してくれる。ただ、感動するってことは、それだけ種から離れた暮らしになっているってことですよね。ちょっと話がずれちゃいましたけど。

ヘビ
いえいえ。そういう環境だと、ますますお祭りっていうものの意味、誰も知らないことに。

ヒツジ
今年の実りへの感謝と、来年の実りのため祈りの部分があって、新嘗祭ってわりと知られていますけれど、祈年祭のことはあまり知られていません。今は割と実ったところがカーニバル的に残っているような気もします。

暑すぎる!開催日変更の是非

ヘビ
今年のお祭りニュースを見ていると、目に止まったのが、何かを変えたことで話題になったお祭り。中でも、開催日を変えた、という祭りが結構ありまして。たとえば福島県の「相馬野馬追」。「野馬追 猛暑避け観客増」(朝日新聞、6月4日)では、昨年まで7月最終週の開催だったものを、2024年は5月25日〜27日にしたところ、昨年より9100人観覧者数が増えた、とあります。背景には、2023年に日射病で2頭の馬が死んだということもあったとのことです。

トラ
私、神主としてご奉仕させていただいている側から言わせていただきますとね。これ変えなきゃいけないですよ。

ヒツジ
うん、暑すぎる。

ヘビ
(笑)そうですね。

トラ
我々、神主はいつも装束着ていますからね。暑いですよ?でもまあ慣れているといえば慣れている。でも、氏子さんや参拝にこられた方が心配ですよ。神社としても熱中症対策しないといけないけれど、できることは限られていますし。ヒツジ先生には例祭に来ていただいたことありますけど、どうです?

ヒツジ
地獄の暑さでしたよ。

(一同笑)

ヒツジ
露天でやるわけですから。

ニワトリ
S県は暑くて有名ですね(笑)

ヘビ
うーん。祭りの日付を変えるというのは、なかなか難しいことなんでしょうか。

ヒツジ
誰かが決めちゃえばいいんですけどね。「相馬野馬追」は、元々かの地のお殿様の祭礼ですから、意思統一しやすかったのかもしれませんね。

トラ
でもね、実は私たちの神社の例祭は、江戸時代には旧暦の6月に行われていたんですよ。現在の暦でも7月ですから、今よりやや早い。それが明治期に、農事が繁忙な時期だから8月にしようということで上申して、今の日程に変更された経緯があるんです。だからもう一回戻しましょうか、と(笑)。ただ実現するには、意見をまとめて然るべきところに上申して、ということになる。

ヒツジ
日程を変えるというのは難しいですよね。揉めることもあります。

トラ
畏きあたりにもご判断いただかなくてはいけませんからね。

伝統行事と動物愛護の視点

 

ヘビ
変えるといえば、現代的価値観に合わせて変化したということなのかな。話題になったのが多度神社の上げ馬神事ですね。「『迫力ない』『時代の流れ』 新生・上げ馬神事、観衆思いさまざま」(毎日新聞、5月4日)という記事があります。

トラ
うん。

ヘビ
上げ馬神事は、馬に乗って壁を乗り越えて吉凶占うということをやっていたけれども、馬の怪我や無理に飛ばせようとする扱いなどに批判があった。そこで協議のもと、今年は壁を坂道に変えることで実施した、ということです。他にも沖縄の糸満ハーレーではアヒルを捕まえる儀式が動物愛護観点で批判の対象になっていて、今年は「首を掴まない」ルールで実施された、とのことです。先ほど日程変更で話に出た相馬野馬追も馬が日射病でかわいそうだという声もあって変えた。

トラ
はい。

ヘビ
諏訪大社の蛙狩神事というのもありますけれども、伝統的な神事に対して、「動物を苦しめたり殺したりは良くない」という観点から問題提起があって、神社側もそれに応じる流れがあったり。なかったり。

トラ
人間のために生き物を殺生する。私たちはたとえば魚を食べる時に、「いただきます」と言いますよね。

ヘビ
はい。

トラ
祭りでもちゃんとそうやっていて、生き物を粗末に扱うことはありません。人間のために役立てるから、いただいている。そして、今、その神事に対して、動物愛護の視点から文句を言っている人たちがいます、と。

ヘビ
そうですね。神事を変えた例もあります。

トラ
はい。でも私から言わせると、存続させるためにもっと主張しなさいよ、神社が。そう思いますよ。・・・ちょっと話外れますけどね、最近のクマ被害。

ヘビ
はい、各地で人里にクマが。

トラ
それについてもかわいそうだとか殺すなとたくさんの方が言っていました。でもね、私、生まれはマタギがいる東北の山の中なんですけど、被害者が出るっていうのは大変なことなんですよ。報道などでクマに襲われた、命に別状はありません、って言いますけど、一命取り留めたとはいえ、ひどい傷が残ることもあるんですよ。クマってね、顔狙うんですよ。

ヘビ
ああ・・・。

トラ
その現状を見ていたらね、どっちが大切かっていうのをちゃんと考えなさいと言いたいですよ。むやみやたらに撃ち殺しているわけじゃない。人間に被害が及ぶかどうかなんです。文句を言われるから、猟師の方々も、もう躊躇したってやりたくないって言っている。

ヘビ
北海道の方ではそういうニュースもありましたね。

トラ
それで秋田の佐竹県知事は偉いよね。クマを殺すなという人に、では保護するからお金出してくれ、と。それでね、神社もやっぱりそれはしっかり主張しないとダメです。決してむやみに殺したりはしてないんです。命をいただくということで、それは大切なことだと思います。動物をいじめるためにやっているのではないんだから。

ヘビ
そうですよね。

トラ
さっきね、養蚕業の話が少しありましたけれども。絹って、日本の近代化を支えた産業として重要だった、というのはもちろん、実は養蚕って神話の時代から大切にされていた仕事なんですよ。

ヘビ
そうなんですか。

トラ
『古事記』では高天原から追放された後のスサノオが、オオゲツヒメという女神に食物を求めた話がありまして、オオゲツヒメが自分の鼻と口と尻から様々な美味なものを取り出したのを見て、スサノオは怒ってオオゲツヒメを殺しちゃう。その時、オオゲツヒメの頭から蚕が出てきたとあります。

ヘビ
おお。

トラ
だから、養蚕というのは長い歴史があるものなんです。でも、これも動物愛護団体から色々言われている案件なんですけどね。

ヘビ
蚕、茹でますもんね。

トラ
そう。でもね、蚕って自然界では生きられないんですよ。人の役に立つために進化させているんです。

ニワトリ
羽があっても飛べないって聞きますよね。

ヘビ
・・・まあ、「愛護」っていうのが難しい言葉ですね。人間中心に考えるとやむをえないこともあるなと思うし、それがダメと言われても。愛護っていうのも人間中心な気もしますし。

トラ
もう、ただうるさい人が多くて、声の大きな人が目立つと、話し合いになりませんよね。

ヘビ
冷静に話し合う場がないところで衝突が起こっている感じがします。

祭りと女性参加:現代的価値観の挑戦と伝統の役割

ヘビ
さて、これも現代的価値観と伝統の話ですかね。今年に限ったことではないですが、女性の祭りへの参加についてもニュースが多くありました。「国府宮『はだか祭』初女性団体がササ奉納」(朝日新聞、2月23日)、「高岡御車山保存会、女児の参加巡り対立 一部理事『伝統守れ』、会長らに辞任要求」(北日本新聞、6月29日)、「たてもん引き回し女性も 魚津で来月 担い手減や時代踏まえ」(読売新聞、7月23日)。各行事での対応はさまざまです。

トラ
うん。

ヘビ
背景にはもちろん人手不足ということがあって、女性参加が奨励されている例もあります。また一方で反対もあって見送られる例もありますけど、私の個人的な感覚で言うと、昔から決まっていたからそうしたい、という説明に対する違和感もあるわけです。専門家もいらっしゃるので、そもそもなぜ女性は元々祭りに参加できなかったのでしょう。

ヒツジ
お祭りについて言えば、女性には女性の役割があって、男性には男性の役割があった。男性と一緒に神輿を担いだりすると怪我をすることもあるし、そういう配慮もあったはずです。もちろん女人禁制という、宗教儀礼から女性を遠ざける仏教的思想の浸透の影響もあったと考えられます。女性はダメだと明文化されている例もありますが、慣習として続いている場合もあります。ですが、元々はそれぞれの役割があっただけの話だと思います。

ヘビ
なるほど。役割分担。

トラ
私たち神職は決められた装束付けて神事や雅楽の演奏をやりますけれども、これは女性向きに作られていません。現実問題、女性だとトイレに行くにも苦労する袴です。

ヘビ
今は女性神職もいらっしゃいますが、それも戦後のことなんですね。

(※記事制作時に注釈:明治〜戦前は法律で男性のみだった。戦後、昭和21年に神社庁が男性に限るのは宮司のみと規定したため、女性が神職に就いても構わないという解釈が可能になった。)

ヒツジ
巫女に男性はいないように、男性ができない、と決まっていることもありますよ。

ニワトリ
僕は対話の問題だと思うんですよね。皆さんが言っていることは分かるし、だけどそういう歴史を分からない人に話をして、理解し合うことが大切で。それを進めることによって多分変わっていくし、結局、女性に神輿を担がせるかどうかは、町内会で決めればいいことなんです。自主的に判断しているんですから。

ヘビ
ええ。そうですね。

ニワトリ
ただ、そこに断絶みたいなところがありますよね。僕は、お互い意識して話すことで合意形成ができる気がしていて。無理に女性にやらせる必要もないじゃないですか。それはなぜなのかをお互い向き合って話すことが重要なんですよ。私、髪を切っているのは神田なんですが、そのお店の人は男性ですけども、祭りの時に町会からお金を出して欲しいと言われて出した、と。

ヘビ
はい。

ニワトリ
それで人が足りないんだけれども、女性には担がせられないんだと言われて、その説明を聞いて納得していると言っていました。そんなふうに、変な対立行動ではなく、お互い話して理解することが大事です。なぜできないのか。それは皆さんがおっしゃったように男性の役割があるからです。そこで合意形成を図らないといけない時期なのかなと思います。

ヒツジ
逆にいうと、ちゃんと合意形成、はかれているところは、女性参加もできているんじゃないですかね。今年のニューストピックとしては載っていないけど、例えば広島県の芸北神楽とか、昔は女性が参加できなかったけれど、今増えてきている。女性が参加できていることで祭りが続いているし、それを誰もおかしいと思わない合意ができているわけですから。

トラ
そういや、あれもそうですね。出羽三山の山伏修行。出羽三山は許しましたけれども、今でもいろいろ言う人はいる。修行は過酷なんですよ。なんでそんな危険なことを、とね。これを言うと変に取られる時代ではありますが、やっぱりね、女性がいないと子孫は増えないし、この国がどのようにして栄えてきたのかということを神話の時代からもっと知ってもらいたいんですよねえ。

ヘビ
うーん。合意形成っていうことは、一朝一夕には結論できないですよね。まあ、それによって苦しんでいる人がいるってことは、見直す機運が生まれればいいなと僕は思うんですよね。

ニワトリ
うん。

ヘビ
というのも、ある祭りの担い手さんから、私には男女の子供がいて、今は一緒に祭りの芸能をやっているけれども、時が来たら、娘にはもう練習に来てはいけない、と言わなければいけない。その理由はお前が女だからだよ、とは、自分自身が納得いかなくて説明ができない。それって、普段学校で教わっていることと違うし、僕も姉弟平等に育ててきた。どうしたらいい?と聞かれたことがありまして。周りの人に言っても、おかしなこと言うな、としか思われないという。

トラ
うーん。

ヒツジ
・・・・・祭りでは、何を願うかってあるわけじゃないですか。五穀豊穣とか。それはその地域にとって皆が願う最小公約数的なものです。そして、そこにはほぼ必ず子孫繁栄、というのは含まれていて、女の人にはたくさん産んでほしい、と言う切なる願いがあったわけですよね。それはコミュニティ存続のために切実なことだった。その上で期待される女性の役割があったはずです。それに専念してほしいというのは、あったのだろうと思います。

ヘビ
僕は、そういう伝統的な価値観と、昭和的価値観が重なっちゃうんですけど。それも性差の押し付けって批判されるものなんじゃないかと。

ニワトリ
うん、やっぱりここでも断絶が起きていると思うんです。祭りの話に関心を持たなくなってくる中で、相互理解が深まらない。だから、ジェンダーフリーを訴える人が祭りはダメだと言っているわけではないですよね。対話する機会が抜けているんだと思います。

ヒツジ
基本的に接する事がないというか。

ニワトリ
ないんですよ。お祭りに行ったことがない人も増えている中でそこに興味を持って対話する機会がない。で、今なんで女性を参加させていいのかとか、そういう話になるかっていうと、根底にお祭りを残したいって思いがあるからなんですよね。私もお祭り主催者への取材の中で、なぜ残したいのか、と突き詰めていくと、地域に笑顔ができる、楽しいんだと言う。

ヒツジ
そうですね。

ニワトリ
だから、私たちは今すごく思想的で、もちろん大事な話をしているんですけど、もっとこう、土着的に楽しいから残したいんですよ。神社を結節点に地域が結束するというか、その地域コミュニティのハブになるはずのものがどんどん欠けていっていることが、私は今の日本の状況を端的に表しているように思うんです。人と人の関係性が薄れているとか、誰に助けを求めたらいいかわからないみたいな社会を表している気がするんですよね。そこは本当に残念だなと。

ヒツジ
ある都内の自治体の方の話ですが、その地域は祭りに関する楽しい体験を持っていないと。と言うのも、マンションが多いので、親御さんにその地域に定住する意識が低くて地域の祭りにあまり参加しないんですね。子供には楽しい記憶を持って欲しいし、子供は遊びたいし、みんなと一緒にわいわいする機会を提供したいけれども、親御さんの意識がないのでうまくいかないんだと。それをなんとかしたいと、親子で祭りに来てくれるような取り組みを頑張ってらっしゃるんですけどね。

お祭りと人の距離 祭りは遠くなりにけり

ニワトリ
神職の方がどう思われるかわかんないですけど、私、子供会とかで神輿とか作って担いでいた記憶がありますね。それに神様が乗っているとか全然思ってないけど、楽しい。

ヘビ僕もそういう経験あります。今、子供会とかあるのかな。

ニワトリ
どうですかね。地域によって違うんでしょうけど、そういうのってやっぱ大事ですよね。

トラ
神社とか祭りに触れる機会も少ないね。

ヘビああ、そうですね。僕40代ですけど、思い返してみても子供の頃、神職の方に接したのって地鎮祭ぐらいです。普段神社に神主さんもいなかったし。お坊さんは、葬式の時とか毎年お盆になったらスクーターに乗って念仏あげにやってきていたので顔覚えていますが。

ニワトリ
私も同年代で、子供の頃はお祭りに行きましたし、神輿を担いだりしましたね。でも、私より10歳、20歳若い世代はお祭りにあまり行かないですね。

ヒツジ
私、20年ほど前から授業をやっていますが、授業の際に、どんなお雑煮を食べていたかとか、共通の話題になりそうなお祭り、行事の記憶を聞いてみるんですよ。当時はみんなあれこれ答えられたのですが、ここ最近、コロナ以降は特に、全く書けない子が目立ってきましたね。記憶が薄れてしまったり、認識が曖昧になったりしています。クリスマスとかバレンタインでもいいんですけど、それはそもそもお祭りという認識がないから。

ニワトリ
へえ。

ヒツジ
花火大会には行くけれど、それもそもそもお祭りだという認識はなく、写真を撮りにいくものだという。こういう祭りや行事の共通体験は、今後どうなるんでしょうか。

ヘビ若い人が祭りを認識しなくなると、やがて祭りはなくなりますよね。

トラ
あのね!昔は祭りの日って学校が休みでしたよ。公立の学校が休みになるんです。私は奈良で育ったんですけども、春日大社に父がいましたから。それで、奈良では12月17日に春日若宮おん祭という大きなお祭りがあるのです。この時は午後から学校が休みでした。私なんかは特に神主の息子ですから、ご奉仕しないといけないんですよ。まあでもあの頃はね、学校現場でXXXが強くて。担任の先生は戦前からの人で、おん祭りのこともよく知ってたんですけども、私も子供心にそんなXXXみたいなこと言わないでいいじゃないかとか思ってたんですけどもね。

ヘビわー!大丈夫でしょうか。

トラ
脱線しました。それでこれも25年くらい前のことなんですけども、当時のニューヨーク市長に招かれて、雅楽の演奏をするためにアメリカに行ったんです。韓国からも民俗芸能団体がやってきていて、パーティーで披露するという。

ヘビはい。

トラ
我々の旅から演奏会から色々手配してくれた日本の旅行会社がありまして、彼らがパーティー会場の装飾をしてくださったわけなんですけれども、それを見て私、その旅行会社の支店長と大ゲンカになりまして。

ヘビ穏やかじゃないですね。

トラ
公演の演出のために鳥居とか狛犬が置いてあるんですけども、狛犬がそっぽむいているんです。

ヒツジ
日本では、一般的に向かい合わせに置かれていることが多いですね。

トラ
そう!それを指摘しても知らないわけです。

ヘビ日本を代表する旅行会社ですから、日本文化への理解が浅いのは残念です。

トラ
形だけの文化というのはそういうものなのです。日本の文化は全て「道」がついてくるものです。その「道」を理解していないとそうなる。これは神様に向けたもので、神様に通じる「道」を立てることが大事なんです。雅楽も神楽もそうですけれども、神様と通じるためにやるのです。今、大河ドラマでもやっていますけど、あそこに出てくる平安貴族たちはみんな音楽や和歌を嗜みますね、それが祭政一致、「政」だったわけですね。

ヘビなるほど。

トラ
で、何が言いたいかといいますと、戦後の教育の中で、一般の方の日本文化についての理解がなくなってきているということなんですよ。形だけで中身がなくなってしまったのです。だから私は過激かもしれませんが、今、お祭りと呼ばれているお祭りも、私から見れば祭りじゃないものもある。例えばXXXとかXXXとか。

ニワトリ
地元なのでおっしゃること分かりますよ(笑)。まあ、歩いているだけのものもありますね。

トラ
そう!それでアメリカとか外国行ってフェスティバルのパレードに混じって、日本の祭りだってやっているけれども、あれは祭りじゃない。

ヒツジ
授業でも話していますが、英語にした時の弊害というのもあって、日本の芸能では本来、舞と踊りって別のものだったんですね。神楽は舞であって踊りじゃない、盆踊りは踊りであって舞ではない。なぜなら目的が違うから、というのが明確だったわけですね。それが「ダンス」という言葉で一緒になってしまっているんです。お祭りでの芸能もみんな英語っぽくなってしまって、言葉の意味が薄れてしまった感じです。盆踊りは本来自己表現の場ではないはずなんですけどね。

ニワトリ
これ、難しいところに来ていますよね。広い視点から見ると、日本の中だけで祭りができればいいんですが、人口減少の中で人手がいなくなって、無形民俗に登録されていないような小さなお祭りはなくなっていく現状があります。そこでまず、それを維持するのか、どうするのかという判断があって、維持しようとするためには、いろんな人を引き込まなければいけないけれども、神様をどう理解してもらうか、日本の文化をどう理解してもらうか、今、岐路に立っていると思います。

ヘビそうですか。

ニワトリ
いや、別に放っておいてもいいんですよ、なくなっていくのも地域がそれを判断すればいいだけですから。でも、そうでない方がいいと思いたいですよ。僕もお祭り好きですし、担い手や神社はもちろん真剣に考えてらっしゃると思いますけれども。若い人にももっと知ってもらいたいと思うし、こういうことがあるから、地域ってあるんだよって。だから・・・すごく難しいですよね。

ヒツジ
そうですね、これがあるから地域があった、ということをちゃんと伝えていなかったなと思いますね。

ニワトリ
その地域の形成自体が、神社や寺があったからこの地域があるんだっていうことをわかってもらわなきゃいけないと思うんですが、その理解が自然じゃなくなっているというか、自分からアクセスしないといけない時代になったということなんでしょうね。

ヒツジ
昔は3世代で住んでいたわけで、両親じゃなくて祖父母から教わって、なんとなく地域を知る、それぞれ役割があるっていうことを知っていたけれども、今はそれが伝わらない世代になっちゃったのかなっていうのは考えています。

ニワトリ
一度止まると戻すのが難しいですよね。私自身はいわゆる保守的な思想を持つわけではありませんが、でも神社もお寺も好きですし、よく行くし、出店も好きだし。単純にそういう場に行ってほしいと思いますけどね。楽しいですし。自分の子供ともよく行っていますけどね。それは別に何らかの思想を植え付ける気も全くないし、単純にああいう場が失われていくことが、個人として嫌だなと思っています。

ヒツジ
私は、なんか、集まる場所がなくなってきているのが一番怖いなと思っていて。よく授業でも言うんですけど、このままだと文化財はあるけれども、人がいないまちがたくさんできてしまう。文化財登録されていました、素晴らしいまちがありました、でも行ってみたら誰もいない、みたいな究極の未来がやってくると。実際その流れになっていて、文化財登録はされています、記録もちゃんとあります、だからいいでしょう?みたいな。

トラ
私ね!皆さんが言われていること聞いていて、気づいたことがいっぱいあって。要するにね、神主って「言挙げず」が美徳です。

ヘビこと・・・?もう一度お願いします。

トラ
「ことあげず」。言葉に出さない、という美徳があるんですよ。先輩からも言われましたけれども、自ら主張してはいけないと。でも、私はもっと主張していかないといけないと思うんです。イスラム教とかキリスト教、他の宗教はみんな結構主張するんです。これに負けちゃうんですよ。知っている人は知っていますけれども、神社で二拝二拍手一拝で参拝すること、昔は学校で伊勢神宮を遥拝してましたし、誰でも知っていることが、今は知られていない。

ヒツジ
知らないですね。

トラ
公共の知識として知っていたことが、今は失われてしまった。これは、神主が反省しないといけない。神主が言挙げずが美徳とか言っていると、一般の方からどんどん遠い存在になってしまったんですよ。

ヘビなるほど。

トラ
それで、私は昔が間違っていたと思うところもあって。そういうことになってしまったきっかけの一つとして、明治時代になって、神社が国家管理になってしまったことがあると思っているんです。内務省の職員が神社に派遣されるんですね。行政人になっちゃった。

ヒツジ
それまでは、神社の神主さんは代々その神社を守るのが当たり前だったのが、以来、転勤当たり前になってしまった訳ですね。

ヘビえっ。転勤もあるんですか!知らなかった。

ニワトリ
普通の公務員みたいですね。

トラ
そう。大きな神社の宮司さんとかもね、4年くらい経ったらあそこの神社行けとか転勤ですよ。

ヒツジ
神主さんの存在が見えにくいですよね。お祭りに行った時でも、神主さんが中で何やっているのか見えない。ぜひ、もうちょっと表に出てきていただいて、お顔を見せていただきたいなと思います。会いに行ける神主さんというか。

ヘビ会いに行ける(笑)。推せる神主、爆誕。

ヒツジ
ぜひ、お願いします。神社行っても、誰もいない建物を写真撮るのではね。そこに知り合いがいるというだけで意味が変わってきますもの。昔は、神主さんって集落のみんなが相談に行く人であって、顔が見えていたんだと思うんです。相談ってことがなくても、姿が見えた方が話しやすいですよね。一般の人にはこの神社を誰が管理しているのかとか、全くわからない。

ヘビ確かに。

ヒツジ
そういえば、今の子供たちは、神社で遊ぶ感覚もないでしょうね。私が子供の頃は神社で鬼ごっこして遊んでいましたが、今の子供たちはそういう場所ではないんです。

ヘビ僕も境内で遊んでいました。

ヒツジ
あれだけ広い空間があるんだからもっと神社で走り回った方がいいんじゃないですか。車も入ってこないし、安全ですよね(笑)

ニワトリ
そうですね。

トラ
まあね、先ほど国家管理と言いましたけど、そんな時代なら神社のどこかが壊れた、とかいう時は、ちゃんと国が建て直してくれて。そういうことがあったから、神社があんまり焦ることもなく・・・。

神社のお金の現実 公金、そして政教分離の狭間で

ヘビあっ。また不勉強かつ不躾で恐縮なんですが、神社のお金のことも伺いたくて。収入源は何になるんでしょうか。やっぱりお祭りとかなんですか。

ヒツジ
それとも御祈祷とか?

トラ
はいはい。そこですよね・・・。それはね、国家管理の時は国から出ていた。今は寄付であったり、奉納金とか、御祈祷とかで、私の神社はなんとかやっておりますよ。しかしですね!神社っていうのは膨大な自然、鎮守の森を抱えておりまして、この維持管理とかも大変なんですよ。で、今一番わかりやすい話ですが、明治神宮のイチョウ。

ヘビはい。揉めているやつですね。

トラ
実はこれね、外苑はですね、渋沢栄一が、明治天皇が崩御された際に明治神宮を作った訳ですけれども、内苑と外苑を作って、外苑の運営で得られた収益で、明治神宮の維持をしていこうと計画されていたんですよ。

ヘビへえーよく考えられていますね!内苑を守るために外苑を作ったという。

トラ
それで、大正時代に全国からの寄付とか、勤労奉仕でみんなでイチョウの木を植えたんですよ。だから樹齢100年以上。

ヘビはい。

トラ
それでね、なんでこんな伐る伐らないで大騒ぎするの。やっぱね、この先維持していくにはどうしたらいいかっていうと、適切に伐ったり手入れしたりしなきゃいけないじゃないですか。穴が空いて弱り始めている木もあるって言いますしね。倒れて怪我する人が出るのも怖いですし。10年くらい前に鶴岡八幡宮で大銀杏が倒れた例もありますよ。それをね、なんですか、あのサカモトリョウマ・・・?

ヘビわー。その人は違いますけど、わかります。

トラ
まあいろんな人がいろいろ言っていますけど、いやいや、そんな話じゃなくて、みんなでもうちょっと考えた方がいいんじゃないですかって。だから健康な木だけ残して、1本切ったら10本植えるみたいにしようという、それでいいと思いますよ。それで森が持続していくと思っています。都や事業者もちゃんと言わないとダメですよ。神社ももうちょっと主張してよかったんでしょうけど。

(※座談会後に注釈:外苑の再開発計画は、老朽化した神宮球場と秩父宮ラグビー場の位置を変えた建て替えと、3棟の高層ビルが建設に伴い、樹木743本を伐採するもの。名所となっているイチョウ並木は保全される内容。この当初案から、伐採本数を減らすなどの再考がなされ、住民説明会などが開かれる予定)

ニワトリ
それやっぱりお金がかかるってことですよね。神社やその周辺環境を維持するのにお金がかかる。

トラ
そりゃそうですよ。明治神宮、内苑はあの規模の森です。そこを保全するためのお金ですから、そりゃお金いっぱいかければ、何とかしてでも保てるんでしょうけれども、でも何百万、何千万かかっちゃうんです。

ニワトリ
僕、今回聞きたかったのは、今年、茨城県でお祭りを守るために県がお金を出したわけですよ。祭りを維持するために公金を出した。

ヘビ「茨城の5祭り、文化財保護へ補助 全国唯一」(朝日新聞、4月20日)ですね。茨城県が、全国で初めて文化財保護を目的に祭りに補助金を出す、という。祭りの「公助」について色々な意見があります。

ニワトリ
これも難しいですよね。政教分離で、じゃあお金はどうなるんだ、という視点もあり。そもそも、お祭りというものが寄付、寄進によって成り立ってきたわけですから、お金がかかるものであって、それを続けていくにはどうするのかというと、お金のことをきちっと考えなきゃいけないんですよね。

ヒツジ
そうですよね。

ニワトリ
ええ、でも私が気になるのは政教分離とは別の観点で。知りたいのは、行政が祭りや伝統芸能を維持するためにお金を出すっていうことを、神社や保存会の側ではどう考えているのかっていうことなんですよ。

トラ
もちろん嬉しいと思いますよ。だけど、その受け入れの決定とかには神主は関与してないことが多いんじゃないかと多います。

ヒツジ
多くの場合、祭りの祭礼部分の窓口って保存会などになっていて、そこで決めているのではないでしょうか。

ニワトリ
なるほど。

ヒツジ
自治会の方や保存会の方がジャッジして、神社では事後報告的になっているのだろうと思います。

ニワトリ
気づいたら引き受けている感じになっているわけですね。

トラ
やっぱりね、地元の議員さんとかが、やっぱり信仰心の篤い方がいて、地元のためだからなんとかしようってなるのは自然のことだから、それでうまくいくならそれはもう当たり前のことだと思いますよ。ただ、政教分離って言われたら困っちゃいますけども。

ニワトリ
お金が絶対かかる。だから、とにかく、こうやって行政がやるってことは、多分神社や寺そのものじゃなくて、おそらく保存会が受けることになっていると思うんですけど、僕は否定的には全く思っていなくて、だって色々お金がかかるのに、じゃあ寄付や寄進でお願いしますと言われても、今のように自分たちでやらなきゃいけないみたいな感じはもう厳しいじゃないですか。

ヒツジ
厳しいですよ。本当に残したいんだったら、寄付・寄進じゃ無理ですよ。それを、なんとか企業の協賛金だとか受け入れましょう、とかやっていますけれども、それもやっぱり微々たるものじゃないですか。建物修繕費にすらならない訳ですよ。多分運営の備品ぐらいにしかならない。だから、宗教とか、文化っていうか、地域のために公助をやっていただきたいんですけど。それでなんか問題ありますかって記事読んでいて思いました!

ヘビあ。政教分離というか信教の自由かな、地域コミュニティと祭りの関係ではこんなニュースもありました。「神道の祭りに町内会費 『特定宗教への供与だ』慣習への問題提起」(毎日新聞、11月7日)。

ニワトリ
これ、元々2002年佐賀地裁の判決で、町内会費と神社関係費を一括して徴収するのは信教の自由の侵害だっていう話があったんですよ。京都でも自治会から時代祭に支出するのはどうなんだっていうのがあって。まあ、町内会費として集められているものが、それが例大祭費に回されていたということは、それを不満に思う人は当然いますよね。

ヘビそうですね。

ニワトリ
それはそうなんですけど、そこで信教の自由との絡みが出てくるんですよ。ただ、僕はその徴収される側とは別に、集めている方の話を聞いた時に、それは信教の自由でそう思うんだったらそうすればいいと思うけど、我々はそうじゃないんだってことを言っていて。その自治会自体は、例大祭への支出をやめたんですけれどもね。でも、そういう対応を取っている中で、僕は思ったんです、そういう問題があるんだな。なんか昔、僕は子供の頃そんなこと聞いたことなかった。

ヘビなるほど。町会側としては、これまで何の疑問もなかったことでおどろいているような感じなんですね。当たり前だったことがそうではない。

トラ
原理主義ですよ。

ヒツジ
もともとはもう少し緩かったはずなんですけどね。

ニワトリ
多分これは議論になっちゃうかもしれないですけど、戦後の民主主義、いわゆる戦前の反省から信教の自由が始まって、そこから神道も外されて、という流れにあるわけですよね。だから、それが正しいのかどうか僕は分からないけども、信じる、信じないというのがあって、信じない自由を主張しすぎるのはどうなのかな、と思っていて。

トラ
うん。でも、なんかね、私ね、それはやっぱり日本人ならではの感覚だと思うんです。私は國學院の神道学科出ていますけれども、大学の先生も、これからはみんな仲良くやっていかなきゃいけないんだからと言っていましたけどね、その方、神道学科の教員だったんですけど、実はキリスト教者なの。

一同笑

トラ
いえね、昔はそうとは思ってなかったそうですけど、神道ってすごいなと思って勉強したんだそうですよ。だからキリスト教もちゃんと理解していれば何の問題もない。

ヘビ日本の神道って、やっぱり特別なところはあるなと思います。以前、某新興宗教の偉い人と話す機会があって、「最近お祭りに行くんだよ」と言っておられて。町内会で祭りの運営とかみんなでお手伝いしているんですって。「みなさんは鳥居くぐったらダメなんじゃないんですか?」と言ったら、「いや、そんなことないよ」と。

トラ
そうそう。結構いらっしゃいますよね。何で来たんですかって聞いたら、「いや、上の人に言われたから」って。

ヘビ修行としてやっているんですかね(笑)。真面目な。

ヒツジ
真面目といえば、若い学生さんが、興味を持って、熱心に宗教についてネットで調べているうちに原理主義になっちゃって、こうであらねばならぬみたいな考えになることはありますよね。それもアリだよね、みたいな感覚がずいぶんなくなっているように感じることはあります。

ニワトリ
最近の選挙のSNSじゃないですけど、自分の欲しい情報にアクセスし続けているからなんでしょうね。だからこれが正しいんだって思ってしまうのでは。

ヒツジ
明治時代に政教一致でやってきたことが、戦後になって政教分離になってこれも離さなきゃダメだ、みたいになって、多分、一般の感覚としてはどっちでもいいじゃんだったはずなんですけどね。それもアリだよね〜、だったのがナシだよねって言われちゃう。

トラ
やっぱね、日本人は真面目だから。国がダメだと言ったらそうしなきゃってなっちゃったんですよ。でね、私なんか子どもの頃、やっぱり学校でね、風当たりが強かったんですよ。神社の息子だから。私も、家で教えられたことが、何で学校で否定されちゃうんだろうって思っていましたよ。うちの父なんかはもう学校辞めさせろと怒っていましたから。

ヘビ学校がそれほど神道に否定的だったんですか。

トラ
公立の学校でもどこもそんな環境でしたから。もう教師がXXX。バリバリのXXXだった時代なので。

ヘビわー。それは伏せますね。

地域と神社をつなぐ観光って?誇らしい芸能奉納

トラ
あの・・・。東京都庁でゴジラのなんとかビジュアルってやっているじゃない。

ヘビプロジェクションマッピングですかね。

トラ
これ、10数億円だと話題になりましたけれどね、それ聞いていると、こっちももうちょっとなんとかならないか、と思ったり。

ヒツジ
そこに使う金あるなら、こっちに!(笑)

トラ
日本をアピールするためってことですからね、お祭りとかにもねえ。

ヒツジ
観光とかインバウンドとか、それは悪いとは思いませんよ。うまくいっている部分もあるんですから。でも、呼び込む側の地域が疲弊しているとか、こっちに人が足りてないよね、とか。そういう問題も見て欲しくなりますよね。

ニワトリ
大きな取り組みですよね、やっぱり、支援するんだっていう。

トラ
そうだ、私は最近、三井不動産すごいなと思ってるの。

ヘビなんでしょう。

トラ
外苑も関わっているみたいですけど、いいなと思ったのがコレド室町。あの発想ですよ。あそこには、昔から福徳神社っていう稲荷神社があって、これまでの都市開発でビルの屋上に祀られていたりしたんですけども、ちゃんとそれを地上に下ろして、神社を中心にしたまちづくりをしていると。

ニワトリ
あー、面白いですよね。ビルの裏に神社が突然。あっ、だから、不思議な空間なんですよ。お守りとか持っている方もいて。

トラ
そう。神社が中心になって、地域が盛り上がっているのがわかる。これはすごいなと思います。私もそう思っているんですけど、なかなか賞賛する神主はいないですね。

ヘビえ、みなさん喜んでらっしゃるんですよね?

トラ
うん、よくわからないです。

(一同笑)

ニワトリ
僕ら一般の人間としては、むしろ雰囲気がすごく伝わりやすいっていうか、いいですけどね。

トラ
観光といえばね、S市は3万人から入るような大きい施設がありましてね。スポーツ大会なんかが開かれて、スター選手がやってくるとなると、近くの神社に女性がね、かなりやってきていたんです。試合は夕方からですからね、その前にお越しになった方が参拝されるんですね。絵馬にも「頑張って!」とか書いてある。私はそれ見ていましたから、その方達を町中でおもてなしすればいいじゃないかと、観光協会に言っていたんです。試合のチケットを見せれば近くのレストランで割引するとか。

ヘビなるほど、いいですね。

トラ
先日はね、やっぱり全国にファンを持つミュージシャンがね、その会場でコンサートするから泊まりがけでファンがやってくるんですよ。その方は、ファンのために周辺の観光情報を教えてあげるんですって。それで神社も紹介してくれた。

ヒツジ
なるほど。もっともっとやって欲しいですね。ちっちゃい神社も紹介してあげて欲しいです。

トラ
で、何が言いたいかというと、私は、自分の神社でね、例えば周辺の森を守るためにチャリティーコンサートをやりたいんです。

ヒツジ
神様をもてなすというのは芸能のルーツですからね。

ヘビ東大寺とかはよくポップス方面の方も奉納コンサートやっていますよね。

ヒツジ
そういうのって、地元の方たちも喜びますよね。自分の住んでいるところの神社で有名歌手が歌ったよ!とか誇らしいですもんね。

トラ
ある歌手の方が、少し前に明治神宮で奉納演奏ってことで歌ってらしたのですが、観客はなくて、「神様とご本人のコンサート」なんですよね。それを、後日、DVDだったかCDだったかで出して、その収益を明治神宮さんに納めたと。

ヘビへー、なるほど。

地域の未来を支える祭りと対話の重要性

ヒツジ
いや、もうほんとに地域へのフィードバックって大事で。お祭りの後継者がいないとかありますけど、お金がない方がもう死活問題ですから。人の問題は、じゃあ外から呼ぶとか対策はあるんですけど。

ニワトリ
先ほどの明治神宮で人気歌手が歌を奉納するとかって、すごくいいと思うんです。価値が繋がっているっていう。それで神社がハブになっているっていうことは、すごく好例だと思います。そういうことがもっとできるとすごくいいのかもしれません。

トラ
地域が活発化してくると、やっぱりお祭りとかきっちりとやりましょうという声がいっぱい出てくるものですよ。

ヒツジ
だから、行政も政教分離とか言っているんじゃなくて、地域のために、という視点でね。なんかしないと間に合わないんですって。

トラ
神道って、私は宗教じゃないと思うんですけど。「惟神道(かんながらのみち)」って言ったりもしますけれど、神様のお気持ちに従って生きる「道」なんですよ。それでね、東京オリンピックの時も「お・も・て・な・し」なんてやっていましたけど、あの女性は本当にわかっているのか知りませんが。

ヘビイヤイヤ・・・まあ話題になりました。

トラ
それで実際お話ししたことあるんですが、安倍元首相はね、この「道」のことやっぱりよくご存知だったんです。トランプさん、再選しましたけれど、安倍さんのおもてなしの気持ちは、ああいう人にも響いた。いや、これ大事なことなんですよ。いろいろな評判もありますけど、安倍さんは習近平とも仲良くできたし、もしかしたら北朝鮮ともお友達になれたかもしれない。

ヘビニワトリさんも政治部でしたよね。

ニワトリ
私、右寄り過ぎるというのは嫌いなんですが、今安倍さんについておっしゃられたことはすごくわかる。安倍さんって基本的にまあ話そうじゃないかっていうスタンスを持った方なんですよね。やっぱり、強引に決定するような印象に誤解されがちなんですけど、そうじゃないんですよね。とてもバランスが取れていて。

トラ
国同士仲良くするって、私はそういうことだと思っていて。トップ同士がうまく会話して、反対なら反対の考えでも会話が続いていればいいんですから。

ニワトリ
僕も思想は違うんですよ。反対なはずなんだけど、でも話せばわかる。だから話合う場が必要だし、地域コミュニティであれば、それが多分お祭りとかなんですよね。考えの違う人とでも、話せばわかるんですよ。

ヒツジ
SNSもそうですけど、一方通行になってしまっているような感じがしますね。会話が大事です。お祭りは基本みんなでやるから、対話がないと成り立たない。定期的にあって、打ち合わせをして、準備して、みんなでやる訳なので。

ニワトリ
祭りの取材などをしていても、氏子さんの若い筆頭の方が、記事にするのはいいんだけれど、うちの上の人に会ってくれとか言われて、手続きが面倒だから多分若い記者はそれだけで面倒になっちゃう。でも、そこで会いに行って、話して、こういう記事を書きたいんですけどどうですかっていうと、それ面白いねって展開にもなる。だからもう一歩踏み出して話合うことが必要だし、それが地域での繋がりや祭りだと思うんですよね。だから外にいる人間から祭りを残してくれとは言えないけど、残してほしいとは思います。

高額観覧席の是非:祭りの未来と地域活性化の新たなアプローチ

ニワトリ
そういえば、お祭りとお金という点では、オマツリジャパンのねぶたプレミアム観覧席、110万円で完売ということでしたが、多分すごく叩かれたこともあるとは思うんですが、意見を聞いてみたい。僕も青森にいたこともあって、ハネトもやりました。本当に大きなお祭りですよね。だけど、人手も減ってくる中で、ああいう観覧席で祭りを維持していくのも一つの方法だと思うんですが、どう思いますか。

ヘビ寄付的な還元はしていますが、ねぶた祭が、私たちの観覧席事業の収益で維持されているということは全くないです。ただ、地域の方に多大なご協力をいただきながら、少しずつ理解いただいて2024年で3年目ですね。

ヒツジ
あれが収入源になって、祭りの保全につながっているということを地域の方がちゃんとわかっていて、やってらっしゃるわけだから、外から言うことはないですね。それが神事性に差し障る、というのであれば問題ですけれども、ねぶたに関してはあれでオッケーだということだから。実際どれくらいの収益になったか私は知らないんですけど。それだけの価値あるものをやっているんだってことが若い世代にも伝わると思います。

ニワトリ
お金だけじゃなくて波及効果がすごく大きいですよね。それが教育にも繋がるし、残すことによって伝統が引き継がれる点もある。それが話題になったことで新しい伝わり方があって。違う付加価値が祭りについたことで興味を持ってくれる人も増えた。

トラ
進化したというかね。

ニワトリ
そうですね。そういう点で、オマツリジャパンのようなアプローチが果たす役割は大きいのかなと思います。

ヘビうーん。そうですね・・・。ドローン花火とかも手掛けているんですけど、祭りってこんなに進化できるよ、すごいよ、楽しいよ、という取り組みをやって、これまで興味なかった人たちにも話題にしてもらえるのはすごくありがたいですね。一方で、まあ個人的には楽しいだけじゃないところ、例えばさっき話していた地域があって祭りがあってという、伝わりにくいけど、社会の大事な部分でお祭りが果たしている価値についても忘れないでね、と光を当てるアプローチも重要だという思いもありまして。楽しい、すごい、だけだとこの世の中でお祭りより楽しいことっていっぱいありますし。

ニワトリ
なるほど。根底には、やっぱり伝統を伝えていく、歴史を伝えるっていう意味がある中で、それを両立していくのってやっぱり難しいですよね。

トラ
祇園祭・・・。

ヘビあ!ありがとうございます。高額観覧席については、京都では今年、話題がありました。「京都・祇園祭のプレミアム観覧席、今年から酒と料理の提供取りやめ」(朝日新聞、6月20日)。八坂神社宮司の「祭りは疫病を鎮めるための神事。ショーではない」との考えを受けて、とのこと。

トラ
あれはねえ、やっぱりどこかXXXXなくなったところが出たからだと思う。だから新聞記者さんが真相を追究した方がいいよ。

一同爆笑

ヘビ真相はわかりませんが(笑)。この朝日新聞の記事では、八坂神社宮司のコメントとして「昔の信仰の姿に少しでも戻したい」ということで結んでいます。

ヒツジ
いろいろ背景を聞くと、やっぱり観光協会との関係があるみたいですね。神社や地域の方が納得いかない何かがあったんでしょうね。

トラ
なるほどね。あの記事に書かれていたのは、要は物を食べながら見るのはどうか、という。でも祇園祭って昔から料亭の2階とかで、スイカ食べたり、ちらし寿司を食べて見学できたんですよ。

ヒツジ
そうですね、あれは風情があってすごくいい。

ヘビあれ?食べちゃダメなんじゃないんですか?

トラ
神事はね、われわれのような神主がね、ちゃんとやっているから。うん、だから一般の方は楽しんでもらえればそれでもいいと私は思う。あんまり過激にいうのはね、不思議な感じもありますね。だから他になんか理由があるんだろうと思ってしまう。

ヘビでも、今回のことは私たちのような事業者には結構ビシッと来るものがありましたね。

ヒツジ
まあそうですね。ただ、有料観覧席自体については、いい席で見たい、というのは皆さんそう思ってらっしゃる。見物のための場所取り、なんていうのは昔からやられていたわけですからね。

ヘビなるほど。

祭りと地域の次世代への架け橋

ヘビさて、そろそろお時間なので、最後に未来に繋ぐ、という点でお祭りと子供のニュースを。「次代に祭り継ぐ初の子供宮神輿 浅草『三社祭』子ども40人が参加」(朝日新聞、5月19日)ですね。

ヒツジ
いいことですよね。祭りとか民俗芸能やっている子に何でやっているのかを聞くと、やっぱりお父さんが教えてくれた、とかお母さんが教えてくれたとか、そういうきっかけなんですよ。

ニワトリ
都市祭礼的なものってどうなのかなと思ったんですが、今住んでいるところは、日枝神社が入ってくるところで、結構神田の方まで練り歩くんですよ。大きい祭りは、小さいお祭りと違って、みんながワイワイやるのかなと思っていたんですが、あれによって文化が残っている。日枝神社も三社祭ももちろんそうですし、やる意味がやっぱりあるんだなと思うんです。ああいうことに関わると、子どもにとって本当にいいですね。

トラ
神田祭とかね、もっと大きな祭りなんか、スポンサーが。いいところがつくじゃないですか。

ヒツジ
ゴホンとした時のお薬ですね。

トラ
あのやり方ってすごいと思っています。本当にいい意味でね。自分たちが関わって、そこをCMの舞台として。画面に神田明神は出てこないんですけど、見たら誰でもわかる。やっぱりいいイメージですよね。

ヒツジ
それも結局、寄進なんですよね。

トラ
そういう人たち、旦那衆が昔からちゃんと神社を支えているんですよ。人口は減っているとはいえ、神田明神はそうして支えてられている。ですから各企業の方々、大リーグにスポンサーするのもいいですけど。もうちょっとね、地域の・・・。

ヒツジ
そうですね。地域貢献という形で。

ニワトリ
小さいお祭りをどう残すかっていうところにも目を向けてほしいなと思いますよね。

トラ
日本国内のことをちゃんと考えないとダメだと思います。

ヒツジ
以前、別の神主さんが話していたことなんですけど、その方、すごく多くの神社を担当していて、1人で16社もやっているとか。

ヘビ16社も!

ヒツジ
いっぱいいっぱいですよね。でも地域の方が望んでいるから、僕はやるんだとおっしゃっていましたけれども、それも限界がありますから。地元の寄進型企業さんの支援が入って欲しいと思います。それで、大きな神社はいいんですけれど、もっとちっちゃなところにもそういう支援があればと思います。

ヘビそうですね。

ヒツジ
もうちっちゃなところで、そこかしこがほこりだらけになっているけれど、ちゃんとお花が綺麗に飾ってあったり。今も誰かの心の拠り所になっているところはあるんです。

ニワトリ
祭り、続けたいんだけど、続けられないよってね。取材していると、氏子のトップの方で、60代くらいの方が、いやもう無理かもな、やめても仕方ないよねと力なく笑うわけですよ。そういう小さい祭りをどうしていけばいいんだろうということが今問われていますよね。

ヒツジ
私の実家は過疎化がひどいんですね。どれくらい人がいないかっていうと、檀家が少なくなってお寺が維持できないのでお葬式するのも困るくらい。そういう日本も現実にあって。それでも祭りだ何だと集会所とかに集まったりしているのは、それがあるから集まれるってことなんです。

ニワトリ
わかります。本当に信じられないくらい過疎が進んでいる土地もあるんですよね。でも、都会でもたとえば墨田区には神社がいっぱいあって、お寺もあって、すごく頑張ってタワーマンションの人たちにもチラシ配っているんだけど、やっぱりうまくいかないと聞きます。あんなタワーマンションのバンバン建っている足元で、やはりこんなことが起きているってショックですよ。

ヘビうーん。ショックですね。

ニワトリ
お金があるところはなんとかなっているけど、小さいところが続けていくのはとても難しい時代になっている。オマツリジャパンさんもね、もっと小さい祭りも支援したいとおっしゃっていますが、そこまで手が伸びれば、僕はすごく素晴らしいことだと思いますし、ぜひそうしてほしいと思います。

ヘビそうですね。そうでありたい。でも現状としては、たとえば地方の過疎地で行われている祭りを支援できているか、というと正直、難しくて。そして、これは全く個人的な考えですが、今年東京からボランティア学生10人連れていけますとか、補助金取れましたとか、それでひとまずは助けられるとしてもその延命治療に留まらないサステナブルな形を描いていけるか悩んでいます。

ニワトリ
もちろん、やる側が別にそれはいらない。もう終わっていいんだっていうんだったら、それはそれでいいです。もう祭りもなしで、もう終わりでいいんだ、というならそれはそのコミュニティの選択なので。

ヒツジ
そうですね。

ニワトリ
ただ、お祭りって人々の結節点としてもやっぱり意義がある中で、やめるかどうかを迷っているんだったら救いたいと思うんです。それは多分、オマツリジャパンでやっていることや、他にいろんなアプローチの仕方があるはずで。多様性社会の中で、相互に理解をしながら進める方法が必要になってきている時代なんだろうなって。

トラ
そう思います。

ヘビ皆様にお話伺って、オマツリジャパンとしてはさらにやらなければいけないことがあるなと思いました。社会の変化に対応するのはとても重要だし、伝統を守ることを両立するには、対話を続けること、そして新しいアプローチを模索することが必要ですね。

ヒツジ
うん。

ヘビオマツリジャパンはそのフロントラインであるという自覚を持って仕事に取り組んでいきたいと思いました。そして、やっぱりこんな風に色々と議論して、その過程も含めてお祭り主催者と共有することが重要だと思いました。当社のような会社が、祭り保存団体同士の交流を促す場とか、設けていけたらいいな、などと考えました。引き続き、頑張りたいと思います。本日はありがとうございました!

<Night is still young…>

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