どうも。奇祭ハンターのMacです。
今回は山形・かみのやま温泉で毎年2月11日に行われる奇習「加勢鳥」(カセ鳥)をご紹介。
早速、行ってみましょう!
※この記事は2019年に公開されたものを、中の人の声(2020年に再訪し、今度は加勢鳥の中に入ったMac)のコメンタリーを加えて再編集しています。 2020年01月28日 編集部更新
新宿バスタを深夜に出発してバスで6時間、朝の6時頃に山形駅に着きました。ちなみに早朝に着いた方は駅で駅弁も買えますが、駅前のリッチモンドホテルの朝食ビュッフェがおすすめです。芋煮に玉こんにゃく、つや姫米など、山形グルメが存分に堪能できますよ。
山形駅からたった3駅。アッと言う間に祭りが行われる会場に
程近い「かみのやま温泉駅」に着きました。
(ちなみに「かみのやま温泉駅」は東北新幹線も停車します)
かみのやま温泉は、郷土資料館として再建された上山城の城下にある昔ながらの温泉街です。
ここでひとつ、問題発生!
現在時刻は朝の7時半ですが、祭り開始となる祈願式は朝10時から(その間、やることがねぇ!)。
せっかく温泉街に来たので、ここはお祭り前の温泉巡りをするとしましょう。
まずはここ。昭和のレトロ感がたまらない下大湯公衆浴場。
何と朝の6時ぐらいから空いています。
中は温泉というか、昔ながらの銭湯でした(入場料は大人150円)
続いて、これまた昭和の古き良き大旅館といった佇まいの「月岡ホテル」の日帰り温泉(タオル付きで1000円)をハシゴ。湯船に浸かり過ぎて私の指先はもうフニャフニャです。
上山城前に人が集まり、いよいよこの地に伝わる奇習・加勢鳥が始まります。
さて、そもそも加勢鳥とは、若者が藁蓑をまとって「加勢鳥」に扮し、火伏せ(火の用心)に五穀豊穣、そして商売繁盛を祈願する上山市に江戸時代から伝わる奇習です。一時中断されていましたが1959年に新たに踊りなどを取り入れて復活し、2019年に60周年を迎えました。
ちなみに加勢鳥(カセ鳥)の名前は「稼ぎ鳥」または「火勢鳥」に由来し、加勢鳥は神様そのものではなく、神の使いという位置づけ。かつては上山市だけでなく、小正月に藁を被って民家を訪ね、「カッカッカ」と鳴いて祝儀をもらう風習はそれこそ日本全国にあったんだとか(現存する祭りでは宮城県の裸カセドリや米川の水かぶりとも共通性があります)
朝10時。今年の加勢鳥となるみなさんが勢ぞろいしました。
総勢30羽強ぐらいでしょうか。男性だけでなく、女子や海外勢も数名参戦。地元の参加者だけでなく、東京から20回以上も毎年参加しているという猛者もいました。
そうです。何と、加勢鳥は若干名ですが一般参加も可能なんですね(10月末までに要事前申し込み)。
「酒の誘惑にも負けず、美女だけヒイキせず、堂々と加勢鳥を務めることを誓います!」(笑)という和気あいあいとした選手宣誓(?)も終わり、いよいよ着替えへ。
「ケンダイ」と呼ばれる藁蓑を頭からスッポリ被ります。正面は目の周りが空いていて、両腕が出せる仕様になっています。
中の人「この藁蓑を着脱するときはね、藁が皮膚をこすって痛いんだ。事前にたっぷりとボディクリームをぬって、なるべく古めの藁蓑を選んだほうがいいよ。新しい藁は皮膚を刺すからね」
まずは上山城前の広場で、「加勢鳥様のお出ましだ~!」と高らかにジャイアニズム宣言した後、「カッカッカーのカッカッカー、五穀豊穣・火の用心、カッカッカーのカッカッカー」といった歌詞を歌いながらピョンピョン跳ね廻りました。
中の人「こんなにカッカッカーと言うのはアシュラマン以来ですよ。ゆでたまご先生は加勢鳥を見に来たんだろうね。間違いない!」
この後、移動しながら町の至るところで同様の演武を行います。
このように両腕は水平にピーンと伸ばします。鳥ですから
中の人「参加する前、気温が肌寒くないか、水をかけられて心配したんだけれど、一番キツかったのは雪が解けて冷水が流れるアスファルトの上を歩き続けたことだね。履いてた草鞋も途中で破けちゃうし、マジで足の指が壊死するんじゃないかと思ったよ」
ところで、彼らに対抗しうる鳥の舞と言えば?
そう、これ!
東京は浅草寺のMr.2(ボン・クレー)的な存在である「白鷺の舞」を思い出しますね。
ここで、あなたがもし街でバッタリと加勢鳥に出くわしてしまった際の対処法についてお教えしましょう。加勢鳥に対する交流方法は主に以下の3つです。
輪になってピョンピョン踊る演武の間は、ひしゃくで水をすくって勢いよく水をかけてあげましょう。商売繁盛を祈願します。
中の人「祝い水もわざわざお湯を用意してくれたり、逆に氷入りの冷水が飛んできたり、ほんと様々。あと、某H旅館の前で演武したときはバケツで大量の水が飛んできてビショビショになったよ。水の勢いが凄過ぎて、仲居さんの着物もビショビショになっていたなぁ(笑)」
演武をしていない移動中は、縁起物の手拭いを頭に巻いてあげましょう。やはり、商売繁盛を祈願します。
中の人「やっぱり手拭いを巻いてもらえると嬉しいね。ちょっとしたグレードアップというか、ピカチュウからライチュウに進化した気分さ」
最後に耳より情報。何と「加勢鳥」から抜け落ちた「藁」で髪を結うと将来、黒髪の豊かな美人になると言われています(これは黒木メイサを超える黒髪美人も夢ではありません!)。積極的に落ちている「藁」を集めましょう。ただし、無理やり藁を引っこ抜くのはNGです。
中の人「無理やり藁をひっこ抜くのはNG……のハズなんだけど、結構、道行く人に抜かれていったなぁ。でも、子どもに『ありがとう!』なんて言われると断れないよね!」
さて、すでに時間は2時間以上が経過。加勢鳥の一行は街中を周り、12時半頃にはかみのやま温泉駅前に到着。駅前広場だけでなく、駅の構内でも演武を披露しました。
駅前広場で手に入る、加勢鳥とのコラボ・グルメ、「加勢鳥フランク」(写真)や「加勢鳥鍋」も要チェックですよ。
時刻はすでに13時前。ここで午前の部はフィナーレ。
私もいったん山形駅に戻って、肉厚ジューシーな米沢牛カルビをしっかり堪能してから山形新幹線で岐路に着きました。
中の人「去年の俺は午前だけ見たんだけれど、今年の俺はもちろん午後の部も最後までしっかりやり遂げたのさ。午後は、雪が解けて足元はだいぶ寒くなくなったんだけど、風が冷たかったのと、藁で傷ついた肌のヒリヒリ感がヤバかったね」
温泉とお城と奇祭が一度に楽しめる「加勢鳥」、いかがでしたか?
ちなみに同時期、山形では「蔵王温泉樹氷祭り」も開催中です。
今回私は弾丸ツアーでしたが、1日目は蔵王スキー場でフォトジェニックな樹氷とスノボをクールにキメた後、2日目はかみのやま温泉の加勢鳥でクレージーに締めるというプランも全然アリでしょう。
中の人「見るだけでも楽しいけれど、やっぱり実際に参加してみると一体感が全然違うね。まさにワンチーム! 初参加の人も海外の人も心良く受け入れてくれるかみのやまの町の人の温かさにメロメロさ。肌はヒリヒリになるけどな!」
それでは、最後に今回の動画もご覧ください。
毎年2月11日に山形県のかみのやま温泉で行われる奇習「加勢鳥」じゃ。若者が藁蓑をまとって神の使い「加勢鳥」に扮して、沿道で水をかけられ、火伏せに五穀豊穣、商売繁盛を祈願するゾ。「カッカカーのカッカカー、五穀豊穣、火の用心!」。#加勢鳥 #好きな祭りの話をしよう pic.twitter.com/WBdql2aLVx
— 奇祭ハンター Mac (@Mac40626899) April 17, 2020