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今の時期にぴったり!源氏物語をモチーフに復活させた舞楽「桃李花 若紫」とは?

今の時期にぴったり!源氏物語をモチーフに復活させた舞楽「桃李花 若紫」とは?

みなさん、こんにちは。
美しい舞が大好きなカメラマンの佐々木美佳です。
今回は「女人舞楽 原笙会」にお願いして舞楽を4曲撮影し、神秘のベールに包まれた舞楽の魅力を1曲ずつ、4回にわたってご紹介していきます。

ところで、一年間を約5日ごとの72に区切って季節を表す「七十二候(しちじゅうにこう)」では、ちょうど今日3月10日から14日頃のことを「桃始笑(ももはじめてさく)」と呼びます。昔は花が咲くことを「笑う」と表現したそうです。雅ですね。
そこでまずは、この時期にぴったりで春の訪れを感じる曲「桃李花 若紫」からご紹介します。

舞楽「桃李花 若紫」とは?

舞楽はその昔、唐や朝鮮から入ってきた最先端の文化でした。その珍しい舞を神様に楽しんでもらいたいと奉納していた曲のため、普段はなかなか見る機会がありません。

舞楽は雅楽の中の一種で、器楽伴奏を伴う舞とその曲をさします。「世界最古のオーケストラ」とも呼ばれる雅楽と舞楽の基本知識は、下記の記事で解説していますのでぜひご参照ください。

通常、雅楽は笙・篳篥・笛などの楽器ができるようになったあと最後に舞を習います。そこで、若くて美しいうちに女性が舞えるよう、舞に特化して習うことができるのが原笙会です。

舞楽「桃李花 若紫」とは、もともと「桃李花」という曲についていたが途絶えてしまった舞を復活させたものだといいます。一体どのような舞楽なのか、原笙会の代表・生川純子先生に解説していただきましょう!

カメラマン佐々木:生川先生!!モデルさん、めちゃくちゃ可愛いですね!!(メイクをしている様子が可愛すぎて悶絶)

原笙会・生川先生:今回のモデルさんは親子で撮影会に参加してくれました。

佐々木:そうなんですか。美人親子の撮影、楽しみです!!まずはこの「桃李花 若紫」について教えてください。どんな曲なのでしょうか?

生川先生:この舞楽は桃の花の下で遊ぶ可愛らしい童女を表す舞で、源氏物語の若紫がモデルです。この曲は源氏物語の中には書かれていませんが、雅楽曲の中に「桃李花」という曲目があります。もとは女舞でしたが、舞は絶え、曲のみが現存しています。

平成6年、平安京建都1200年の年に原笙会の創設者・原笙子が源氏物語の「若紫の巻」にある若紫のイメージを重ね、遊ぶ様を表現しました。
光源氏が北山で可愛らしい若紫を見た時の情景の再現として、見ていただくと良いと思います。

佐々木:源氏物語に関連した舞なんですね。当時人気の本が舞になった…。ということは現代でいうと小説を元にYOASOBIが作詞したような感じで、本にイメージのダンスがついたということなのかもしれないですね。

「桃李花 若紫」の舞の特徴は?

生川先生:昔、中国では桃の節句に曲水宴*で舞っていました。
もともと女舞であり、渡来の頃は唐装束(唐綾・唐絹・唐織物などで作った晴れの服装)で舞っていたと推察されます。

*曲水宴:曲水の宴(きょくすいのえん)。昔、宮中や公卿の邸で上巳の節句(3月3日)に行なわれた年中行事。庭園に作った曲がりくねった小川に沿って参会者が座り、流されてきた杯が自分の前を通り過ぎないうちに詩歌をよみ、その杯を取って酒を飲んでから杯を次へ流す遊び。

佐々木:現在では舞うのは基本的に男性というイメージがありますが、もともとは女性も舞っていたのですね。

生川先生:そうですね。この曲は現存しながら舞は絶え、現在は男性が近衛府の制服「蛮絵装束(ばんえしょうぞく)」で、「央宮楽(ようぐうらく)」の舞を充てて舞っています。

男性社会へ移行する時代背景の中で、原笙子は、教訓抄(きょうくんしょう=鎌倉時代の音楽書)の記述に基づき、女人舞楽として復活を思い立ちました。

佐々木:曲水宴といえば、京都の城南宮では毎年4月29日の昭和天皇の誕生日(みどりの日)と、11月3日の文化の日に曲水宴が行われていますね。

生川先生:はい。平安建都1200年の平成6年4月29日に、城南宮の曲水宴で復活の発表をしました。
古典舞の童舞と異なり、童女舞としての可愛らしさが特徴で、3月3日に舞うにふさわしい舞です。

「桃李花 若紫」の装束の特徴

佐々木:蝶々の柄が可愛いですね!この装束について教えていただけますか?

生川先生:この模様は向い蝶の丸文を織り出したふた織(二重織)です。
延喜年間(舞楽の復活、新作が盛んに行われた時期。901~923年)の装束をイメージし、時代考証をしました。

源氏物語の若紫のイメージに重ね、濃色(こき)の切袴を穿いた「細長袿袴装束(ほそながけいこしょうぞく)」を新調しています。わかりやすくいうとパンツ形式なので活動的な振り付けが可能です。

また桃李花のイメージで桃の枝に小鈴と紅の匂いに染め分けた領布(ひれ)は、鳴る鈴の音と共に童女舞の愛らしさを、一層際立たせています。

若紫の大人バージョン「紫上」

佐々木:これまた美しい紫の上…!これは光源氏も北山から連れ帰ってしまいますね。

生川先生:数年前から大人でも舞えるよう「桃李花 紫上」バージョンも作りました。
装束は源氏物語「紫上」の華やかさをイメージして、赤の袿(うちき、うちぎ/公家装束)、緋色の袴をはいています。

さらに詳しく知りたい方は、原笙会の創設者・原笙子 著「女人舞楽 不良少女と呼ばれたけれど」の「<桃李花>創作」に書かれていますので、ぜひ読んでみてくださいね。

また「桃李花」の答舞*は「皇仁庭」「登天楽」です。

*答舞(とうぶ):舞楽で番舞(つがいまい)を上演するとき、初めに舞う左方の舞に対し、あとにそれと組み合わせて舞う右方の舞のこと。

いかがでしたでしょうか。
他の会では見られない、貴重な曲を撮影することができて感激です。

引き続き、舞楽を1曲ずつ紹介していきますので、舞楽を知るきっかけになれば嬉しいです。次回もどうぞお楽しみに。

原笙会では奈良・平安装束を着てみたり、お稽古に参加することも可能です。
芦屋で源氏物語に思いを馳せてみてくださいね。

■女人舞楽 原笙会
〒659-0015
兵庫県芦屋市楠町14-20-115
TEL/FAX:0797-23-1886
ホームページはこちら

この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
毎日「京都散歩の旅」なカメラマン。
奈良・吉野アンバサダー。観光経済新聞、楽天トラベル等を執筆。聖地と舞が好き。民俗芸能や瀬織津姫研究中。
instagram @kyoto.photographer
https://earth-traveler.com/

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