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奈良 長谷寺【だだおし】大和の二大火祭と鬼の共演

更新日:2021/2/9 佐々木 美佳
奈良 長谷寺【だだおし】大和の二大火祭と鬼の共演

※2021年は新型コロナウイルス蔓延の影響で例年実施している参列を行いません。ライブ配信を行う予定です。詳細はHPをご確認ください。
(この記事は2020年に公開されたものを再編集しています。2021年2月8日 編集部更新)

◆大和の二大火祭のひとつ「だだおし」

東大寺の「お水取り おたいまつ」と長谷寺の「だだおし」は奈良の二大火祭です。

長谷寺では罪・穢れを懺悔して新年を迎える正月1日から7日まで「修正会(しゅうしょうえ)」、2月8日から14日までが「修二会(しゅうにえ)」と言い、修正会・修二会を通して僧侶が走りながら回る「行道」をして、悔過作法(けかさほう)をしています。

その結願(けちがん/最後の締め)が「だだおし」、千年前から伝わる追儺会(ついなえ)法要です。

この「だだおし」という不思議な名前は行事の中で牛玉宝印(ごおうほういん、えんぶだごん宝印、だんだ印とも言う)だんだ印を参拝者の額に押すことから「だだおし」と言われるようになったとも、またはダッタンを語源とする説もあります。

◆長谷寺の七つの秘宝!閻浮檀金(えんぶだごん)宝印と最強の札「牛玉札(ごおうふだ)」

どこからともなく鈴の音がリンと鳴り、鐘がつかれます。静かに399段の登廊(のぼりろう)を「悔過導師(けかどうし)」と職衆が上ってきて、本堂に進列します。

お経を唱えたあとは悔過という本堂を三度、走る行道が始まります。

なぜ走るのかというと、この修二会は元々、兜率天(とそつてん/天界のひとつ)で行われており、その兜率天の一日は人間世界の400年にあたるのだそうです。
動作を少しでも早くして兜率天での修二会を再現するという意味があり走っています。

そうして走りながら、足を地面に打ちつけドタドタとして、楚(スワエ、牛玉杖「ごおうじょう」とも言う)を持って”キャ字”(十一面観音を表す梵字)を中空に書いています。
法要の中心となる僧侶が「悔過」の 修法を修して、一連の所作を「悔過」作法としています。

これは自らの行いを懺悔、悔い改めて、観音様に国家の安寧と五穀豊穣を祈っている姿で、ドタドタと足踏みをして太鼓と螺貝を吹いて騒ぐ事により”霊威(れいい)”を呼び起こし、キャ字で観音様の”大慈悲”を発揚させる意味合いがあります。

また一説には”楚”とは鞭のことであり、自らを打ちつけ律しているとも言われています。
「悔過」は有名な東大寺に伝わる「お水取り」と同じ意味合いで、地面に体を打ちつけ自らを律しています。

次に7つの宝が入った唐櫃(からびつ)が入堂。
直接、息がかからないようにマスクのようなものをして、ひとつずつ大切に僧侶たちの手で如意宝珠・閻浮檀金(えんぶだごん)宝印などの宝物がご本尊の前に運ばれていきます。

封印を解かれた七つの秘宝は宝前に安置され、宝印は左上段の天照皇大神宮、右上段の春日大明神と天地四方に押し奉ります。

秘宝が出揃ったところで鬼が登場!
本堂内を駆け巡ります。

青、緑、赤鬼の三匹は災厄の象徴。
激しい太鼓と法螺貝が鳴り響く中で棍棒をもった鬼が暴れまわります。

僧侶たちは四手(しで)に挟んだ牛玉札を持って、大行道をして回ると鬼たちは堂外に追い出されていきます。

堂内が安全になったところで最強のお札「牛玉札(ごおうふだ)」を持っている参拝者は、僧侶から「ダンダ印」で牛玉札の外側に認めの印を押印していただけます。

さらに、ひとりずつ額に押印していただきます。
押してもらったあと、真っ赤な印が額に残るわけではないので帰るときも恥ずかしくありません。大丈夫です!!

◆重さ150キロの大松明!三匹の鬼が長谷寺で暴れまわる!!

外に出た鬼は「うぉぉぉお!」と叫び、あちこちの参拝者に襲い掛かります。

この大松明は鬼の持ち物で、本来暗い時間帯に行なっており、夜道を照らすための松明だったのが、次第に儀式化して大きくそして時間帯も明るい時間帯になったそうです。

鬼たちが本堂の周りを回っている様子は、牛玉札の法力で弱った鬼がのたうち回る様子を表しています。鬼がフラフラしており、その時、巨大な松明がぶつかります。

…というのは公式な長谷寺の説明です。

実際に近くで見ると、鬼の叫び声や大松明は太鼓や法螺貝の音と一緒になって大迫力!
フラフラしているどころか、鬼はまるでプロレスラーのように暴れまわっています。

鬼の力に比例して大きくなる松明。担いでいる男性陣たちが何度か松明をぶつけあうと木造の舞台の上に火の粉が舞い、松明の大きさに対しては狭い廊下では、左右にふらつくとあちこちで参拝者の悲鳴があがり、炎が上下に揺れると今度は幕や天井が燃えないかと心配に。

舞台で待機していた消防士さんがここで登場。
大松明の激しいぶつかり合いで落ちた炭を消火してくれます。

青鬼と緑鬼が大暴れしたあと、最後に一番大きな面の赤鬼が登場!
凄い迫力を放っています。

長谷寺Facebookより
「2月3日は節分です。長谷寺も豆まきをしますが、その掛け声は「フクはウチ」のみです。長谷寺では2月14日の「だだおし」で”鬼”を退散させるため、節分では鬼に猶予を与えているのです。」

節分では退治されていない赤鬼さんは長谷寺のラスボスです。
最後は牛玉札の力により長谷寺から追い出されていきました。

火の粉や松明の燃えかすは無病息災のご利益があり、牛玉札の法力の”おこぼれ”です。

ご利益を求めて大きな薪を担いで帰るお父さんたち、小さな炭を持って帰るお母さんや子供さんたち。
来年、またこの炭を持ってお参りをするのだそうです。私も小さなものをひとついただきました。

長谷寺の「だだおし」はまるで舞台を見ているような迫力満点な行事でした!
無病息災!!

◆だだおし スケジュール

※2021年はライブ配信を長谷寺のYouTubeチャンネルで2月14日16時半から行います。詳しくはHPをご確認下さい。

毎年2月14日 奈良 長谷寺 だだおし
15:00 進列
15:30 法要開始
16:20 堂内で鬼出現、僧侶四手に挟んだ「牛玉札」で退散
16:30 参列者の額に「檀拏印(だんだいん)」押印
16:45 堂外で鬼出現、大松明を持ってのたうちまわる
17:00 法要終了

奈良大和路の花の御寺 総本山 長谷寺
〒633-0112 奈良県桜井市初瀬731-1
TEL.0744-47-7001
https://www.hasedera.or.jp/
https://www.instagram.com/hase_dera/
近鉄「長谷寺駅」徒歩20分

長谷寺は春の桜、秋の紅葉も美しいです!映画燃えよ剣のロケ地です。

奈良【長谷寺もみじまつり】観音さまのお御足に触れよう!

この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
毎日「京都散歩の旅」なカメラマン。
奈良・吉野アンバサダー。観光経済新聞、楽天トラベル等を執筆。聖地と舞が好き。民俗芸能や瀬織津姫研究中。
instagram @kyoto.photographer
https://earth-traveler.com/

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