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日本三大旗祭りの一つ、木幡の幡祭りで2万歩以上歩いてわかった3つの見所とは?

日本三大旗祭りの一つ、木幡の幡祭りで2万歩以上歩いてわかった3つの見所とは?

どうも。奇祭ハンターのまっくです。今回はカラフルな旗が並ぶ光景に「何かのアートフェスかな?」と見間違う、福島県・二本松市が誇るフォトジェニックな奇祭「木幡の幡祭り」(重要無形文化財)を紹介します。早速見ていきましょう!

(※今回の内容は2019年に取材したものとなります。残念ながら2020年は関係者のみで無観客で実施することとなりました)

幡祭りの由来となった劇的ビフォーアフターとは?

木幡の幡祭りとは、百数十本の五反幡を掲げて法螺貝を響かせ、山間の道をぬって木幡山をめざす登拝行事。「ニッポンの奇祭(小林紀晴:2017)」などでも紹介されている有名な奇祭で、日本三大旗祭りのひとつでもあります。ちなみに三大旗祭りの後のふたつは「岩木山の神賑祭」(青森県)と「別所温泉の岳の幟」(長野県)です。

二本松駅からバスで約40分。そこからさらにタクシーを乗り継いで出立式会場に到着。現地にはイメージキャラクターの「幡郎」も来ていました。

実は「木幡の幡祭り」には興味深い由来があり、天喜3年(1055年)の前九年の役に由来するものと言い伝えられています。

この時、戦いに敗れた源氏の軍勢がわずか数騎で木幡山に立て籠もり、絶体絶命の大ピンチ。そんな折、一夜にして雪が降り積もります。すると何ということでしょう。山上の木はすべて雪に覆われ、白旗のようになったではありませんか。しかも敵軍はそれを源氏の軍勢が多数いるかのように錯覚し、戦わずして引き返してしまったそうです(何たる劇的ビフォーアフター!)。以来、神仏の力を深く信じた地元の人々がこの縁起を「幡祭り」とし、950年にわたって継承されているのです。

「歴戦の戦士が雪を旗と見間違えるなんて、そんなバカな!」と思ったそこのアナタ。まぁ、とにかくそういう伝承なのです。

出立式会場は「全員氏子」状態。氏子だらけの大運動会が今、始まる!

見所➀ オープニングの幡競争は一般参加も可能!

法被の色使いも鮮やかな「木幡の盆踊り」。

……からの餅つき。この後、いよいよ午前中のハイライトとなる「幡競争」です。

午前の部の旗競走です。幡競走は一般参加も可能でした。

木幡の幡祭り

今回初参加となる18歳前後の少年「権立」(ごんだて)。ひときわカラフルな装束と男性のシンボルを模した木立ちを首からさげた姿が特徴。彼らにとって幡祭りとは、成人への通過儀礼なのです。

この後、彼らは別動隊について裏参道を通って大岩(胎内くぐり岩)に到着。大岩の割れ目を抜ける「胎内くぐり」の行事を行います(※残念ながら今回の取材では撮影できませんでした)。この儀式を経て初めて彼らは共同体の中で一人前となるのです。山全体をひとつの母体と見なすような発想が興味深いですよね。

見所② 幡行列の舞台裏では熾烈な場所取り争いが?!

いよいよ旗が移動し、今回の祭りのメインと言える「幡行列」が始まりました。フォトジェニックな「幡祭り」をどう写真に納めるかが腕の見せ所。

里山風景に映える五色の幡。一瞬のシャッター・チャンスをねらって、大勢のカメラマンたちが縦横無尽に蠢きます。

今回、私が撮った渾身の一枚がコチラ。旗がいい感じの形でたなびくのと、隊列の遠近感が出るように坂の上からやや俯瞰で撮るように腐心しました。

これが撮影の舞台裏。本当に「ピクミンか!」ってぐらいワラワラと湧いて出てくるカメラマンの大群たち。写真コンクールの賞金をねらってか、優雅な旗祭りの裏では、カメラマンたち(含む私)による熾烈な場所取り争いがくり広げられていたのでした。

第一の関所的な鳥居をくぐって、山の麓に到着。お昼休みの休憩を取った後、祭りの午後の部が再開されるようです。

さて、山の麓に隠津島神社の第二社務所があります。山の上まで上がっていくのは大変ですから、お守りや御朱印はこちらで買えるようです。祀っているのは隠津島姫(おきつしまひめ)、田心姫(たごりひめ)、湍津姫(たきつひめ)の宗像三女神(※イラストは英語学習アプリ『英語物語』に出てくるキャラクター「宗像スリーピース」)。

ちなみに隠津島神社は元は「木幡の弁天様」として親しまれる弁天宮だったのが、神仏習合を経て隠津島神社と改称されたようです(宗像三女神は弁天様と同一視される神様)。

見所③ 後半は山道をひたすら歩く修行レクリエーション

お昼休憩を挟んで、さぁ午後の部です。ところが、どうも数日前に崖崩れがあったらしく、道中は封鎖されている箇所も見受けられました。この先の取材は自己責任で(ケガしても労災なんて降りないよ。汗)。

それにしても午後になってから、午前中あれほどいたライバルカメラマンたちの姿がまばらにしか見当たらないのだが……。
ま、いいか。これで思う存分、写真がバッチリ撮れるってもんだぜ(ラッキー!)。

……と喜んだのも束の間。何と山中の移動につき、旗は畳まれてしまいました。こ、これでは絵にならない。なるほど。カメラマンが激減したのはこのためか! ま、いいや。どうせこんな儀式なんて形だけでしょ。山登りなんてすぐ終わるよね(舐めプ)。

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この時点ですでに2時間近くが経過。が、ガチの修行やないかい! 木幡山の山頂にある本堂をめざしてとにかくテクテク、黙々と歩き続けます。

山の中腹でいったん休憩。安らぎのひととき。背中で語る哀愁感がたまりません。

「御神酒」と書かれた一升瓶を縄で縛ってワイルドに運ぶスタイルが「かっこよ!」と思って写真を撮っていると「兄ちゃんも飲むかい?」と薦められました。地元の酒造、大七酒造大七。「ぷっは~」。慣れない運動で疲弊した体に酒が染み込んでいきます。

山道には途中、「もののけ姫」のモロの君が座っていそうな花岡岩の巨石も出てきます。こ、これは紛うことなき霊山の証。実際、木幡山はその昔、女人禁制の山だったそうです。

実際のところ、巨石に対面して参拝も行います。山中には国指定の天然記念物「木幡の大杉」や花崗岩に線刻された三十三観音、山上には経塚群などもあって悠久の時を感じさせます。

本堂の近くに位置する五十塔。ここまで来たら後は階段を登ればさぁ、本堂までもうすぐです。

最後は旗を持って階段を一気に駆け上がります! 実はベテランカメラマンたちにとって、ここが最後の「定番撮影スポット」。ゴール地点にはルートをショートカットして先に本堂に着いていた大勢のカメラマンたちが「待ってました!」とばかりに待ち構えていました。

本堂へ白装束の戦士たちが集結し、万歳三唱で幕が閉じられました。この日、歩数計アプリは2万8671歩という奇祭旅史上の最高記録でした。

今回のオアソビジャパン

今回のオマケ。帰路に就く前に、郡山駅内にあるスタイリッシュなダイニングバー「もりっしゅ」で、「大七」のプレミアム酒をセレクト。何せ山の中腹で飲ませてもらった想い出の酒です。「生酛(きもと)造り」一筋で作っている大七酒造さん入魂のどっしりとした濃厚辛口が、ボロボロになった体に染み込んでいきます(2回目)。

いかがでしたか? 今回の「木幡の幡祭り」。900年前、「雪を被った木々を敵軍が白旗の軍勢と見間違えた」という例の劇的ビフォーアフター。あれも真偽のほどはともかく、霊山を神格化するためのエピソードだったのでしょうね、きっと。2万歩以上、山の中を歩き周った今だからこそしみじみと実感できます。山の祭りは深淵です。

そんじゃまた。次の奇祭旅でお会いしましょう!

木幡の幡祭り
■日程:毎年12月第一日曜
■場所:木幡山、隠津島神社(福島県二本松市)
交通:東北自動車道二本松ICから、木幡住民センターまで約20km(所要時間約30分)
https://okitushima.com/

この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
奇祭ハンター、美酒ナビゲーター。「毎月奇祭」を目標に奇祭旅を行い、お祭りやお酒の情報を挙げています。今までに50以上の奇祭を巡り、600種類以上の日本酒を飲酒。祭りがないときは大体、酒飲んでます。

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