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なぜ「針供養」をする?関西と関東で日程が違う?針供養で有名な場所は?

なぜ「針供養」をする?関西と関東で日程が違う?針供養で有名な場所は?

裁縫に欠かせない「針」。

普段から家で裁縫をする方もいれば、家庭科の授業以来、針なんて触っていないという方、さまざまいらっしゃると思います。

古くは石器時代から動物の骨を使って縫い針が作られ、平安時代には金属製の針が売買されていたそうです。そして現在もさほど変わらない形と使われ方をしている針は、人類にとって、もっとも身近でシンプルかつ完成された道具の一つでしょう。

「花容女職人鑑」より、江戸時代には針を売って歩く仕事があった。(国立国会図書館蔵)

私たち日本人は、そんな大切な「針」を丁重に供養する行事を行ってきました。
その行事とは「針供養」。この記事では、針供養の概要や歴史について詳しく解説します。

針供養ってなに?どんなことをするの?

針供養とは、使えなくなってしまった針を供養する行事です。一年間使って折れたり曲がったりした針を、豆腐やこんにゃくなど柔らかいものに刺し、川に流すなどして供養します。それらを土に埋めたり、寺や神社に納めたりと方法はさまざまです。

また、赤飯を炊いたり、餅をついたりして、折れ針に供えることもあったそうです。

針供養はいつ?関東と関西の違いは?

一般的には毎年2月8日、関東を中心に全国の神社で行われていますが、関西では12月8日を針供養の日としている地域もみられます。

地域によって違いがみられるのは、針供養が「事八日(ことようか)」という行事に関連していることにあります。

「事八日」は、正月を挟んで対となる12月8日と2月8日の総称で、八日節句(ようかぜっく)や八日待(ようかまち)とも呼ばれます。関西では事八日の行事を12月8日に集中して行うことが多く、一方、関東では12月と2月に同じ行事を行う地域があります。この差が、針供養行事の日程の差になっているのです。

いずれにせよ、事八日は、冬至や立春など季節の変わり目を示す二十四節気とは異なる歳時の折り目として意識され、家庭内外でさまざまな神事や祭事が行われてきました。そして事八日は、物忌み(さまざまな日常行為を控える行為)の日と考えられ、この日は妖怪が家にやって来るという言い伝えもあり、皆で仕事を休む風習が各地で行われていました。家庭でも針仕事を休んで、針に感謝する日となったわけです。

一般的に、針供養は基本的に家庭の行事として伝えられていますが、いつの頃からか事八日の物忌を離れ、近隣の婦人が寄り集まったり、あるいは近隣の娘に裁縫を教える師範格の婦人のもとにみんなで集まって行われることもあったようで、裁縫技術の上達を願う行事として広がっていきました。近代に入っても、和裁・洋裁学校において針供養が必ず行われており、現在でも裁縫技術の上達を願う行事として全国で行われています。

「貴女裁縫之図」。近代でも針仕事は女性の嗜みとして奨励される価値観があった。(国立国会図書館蔵)

針供養は、和歌山県の「淡嶋神社」が有名!

針供養で有名な神社に、和歌山県和歌山市の淡嶋神社があります。淡嶋神社は、婦人病や安産祈願に霊験ありとして信仰を集め、全国にも分社が多い神社です。

淡嶋神社は少彦名命(すくなひこなのみこと)を御祭神としており、この神様が日本に針を伝えたとされています。一方で、地域の伝承では淡嶋の神様は、天照大神の娘・頗梨采女(はりさいにょ)であり、婦人病を得て離縁されたことから、女性を守る神となったという話があります。その名前の「はり」という音や、女性の神であることなどから針供養の際に淡嶋神社に針を納める習俗に繋がったと考えられています。

「仏像図彙」より頗梨采女。(国立国会図書館蔵)

淡嶋神社の針供養は、江戸時代中期から続くもので、毎年2月8日に行われます。全国から納められた折れ針は、本殿に集められ、針塚の前で神事をおこなった後、針塚に納められ、塩と共に埋めて供養します。

淡嶋神社は「雛流しの神事」でも有名!

もう一つ、淡嶋神社で行われる伝統的な神事として「雛流し」があります。雛人形や形台を海に流し、お焚き上げをして供養します。紙吹雪が舞う中、たくさんの雛人形を乗せた小舟が流れていくさまは壮観です。

東京・浅草寺の針供養も人気!レコード針も供養した?

東京・浅草の浅草寺の針供養も盛大です。浅草寺境内には、淡島堂という建物があり、ここは前述の淡嶋神社の淡嶋神を勧請して、江戸元禄年間に建てられました。

毎年2月8日にはたくさんの女性が訪れ、針供養が行われます。法要は、例年午前11時から行われています。参拝者は用意された大きな豆腐に、持ち寄った折れ針を刺し、横に立つ「魂針供養之塔」の前で焼香をあげます。

現在は分かりませんが、裁縫の上達を願う人だけでなく、鍼灸師や刺青職人、畳屋、なんとレコード業界関係者まで、針を扱うさまざまな業界人がやってきていたそうです。すでにCD時代をすぎ、ストリーミング再生時代ですが、レコード人気の再燃もあってレコード針を供養したい人が増えているかも知れません。

まとめ

この記事では、年中行事「針供養」を紹介しました。記事中に触れたように、針供養には長い歴史があります。全国各地にある風習のため、お住まいの地域の寺や神社でも、針供養が行われています。ぜひ足を運んでみてください。

この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
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