Now Loading...

桟敷窓から楽しむ「日野祭」!豪華絢爛な曳山を贅沢に味わう「三方よし」のまち

更新日:2023/5/26 佐々木 美佳
桟敷窓から楽しむ「日野祭」!豪華絢爛な曳山を贅沢に味わう「三方よし」のまち

戦国武将・蒲生氏郷と近江日野商人が築いた町

滋賀県と三重県の県境を南北に走る鈴鹿山脈の西側に広がる湖東平野にある日野町。戦国武将・蒲生氏郷の中野城(日野城)の城下町です。江戸時代には「買い手よし、売り手よし、世間よし」の「三方よし」の精神で活動した近江日野商人が活躍し、持ち運びやすく、利益が高い漢方薬や漆器の産地でした。その発端は、1714(正徳4)年に日野で造られた漢方医薬「萬病感応丸」です。この薬が世の中で珍重されるようになったことで日野はその後、200軒を超える薬屋が並ぶ製薬の町となったそうです。町内にある日野観光協会の入る「日野まちかど感応館」は、感応丸を作った「旧正野玄三薬店」の建物を引き継いでおり、往時の雰囲気を感じることができます。

今回はそんな日野町で行われる最大の祭り「日野祭」をレポートいたします。

850年の歴史「日野祭」日野最大の祭り

「日野祭」は馬見岡綿向(うまみおかわたむき)神社の春の例祭で、850年以上の歴史があります。毎年5月2日は曳山に飾られた提灯の灯りが美しい「宵祭」、5月3日に「本祭」が行われます。

本祭の日のスケジュールを見ると早朝から神事が行われています。そこで8時半から行われる、祭を取り仕切る「神調社(シンチョウシャ)」や「神子(カミコ)」の渡御から見ようと予定を立ててみました。

近江八幡駅から小一時間ほどバスに乗ってくると、お祭りの日は普段の停車場の場所と違い、馬見岡綿向神社の裏に停まりました。

太鼓の音に導かれて神社に近づくと、裃を着た人たちが先が割れた竹刀「バンバラ竹」を地面に打ち付け、音を鳴らしたり、神輿駕丁たちが「ヤレヤレ!」「ドントヤレ!」と手を叩きながら宮入りしていました。おぉ〜、いつもの静かな境内と全然違う!とワクワクします。

太鼓の音はどこから聞こえてくるのかと境内を歩いてみると「使者受け所」に、裃を着た「神調社(通称・芝田楽)」たちがずらりと並んでいました。神調社とは、祭を取り仕切る運営者のことです。

その隣の小屋には祭の主役とも言える「神子(通称・お稚児さん)」たちがおり、特徴的な白い笠が天井からぶら下がっています。

こうして広い境内を見て歩いている間も、大勢の人たちが次々にやってきて、本殿にお参りしていきます。

今度は各字の神幣の宮入です。

9:30〜11:00は曳山の宮入の時間。いよいよ曳山の姿が見られます。

四大路の曳山

屋台の並ぶ参道の中、お囃子を奏でながら大きな曳山がやってきました。わぁ〜、美しい!さすが世に聞こえた近江商人発祥の地。この豪華な曳山はこうした近江日野商人たちの栄華の歴史が今に生きているのだろうと感じます。

曳山の豪華な飾りは細部にまで及びます。

後の見送り幕まで美しい……!

もっとゆっくり見たい。でも次もやってくる〜!と見どころがありすぎて、右往左往しながら撮影。

10:00になると綿向神社本殿前で本祭祭典がはじまります。
その間も曳山はどんどん境内にやってきます。あぁ、どこを見たらいいの!?(笑)

新町 八景閣

巨大な曳山を人力で回す「ギンギリ回し」

町中の辻や、境内の所定の位置に曳山を動かす際には「ギンギリ回し」と呼ばれる方向転換の動作が行われます。

ギンギリ回しでは曳山に長い棒を差し込み、「てこの原理」を使います。曳山の下に人が入り芯棒の下にぶ厚い板をセット。車輪を浮かせ、力技で曳山を方向転換をします。

大きな曳山が原始的な方法で動くところがとても興味深く面白い。ついつい近づいてよく見てみたくなりますが、曳山は急には止まれません。安全な位置から見てください。あ、後ろから次の曳山が来てますよ!気をつけて!!(←体験談)

曳山を飾る多彩なダシ

お昼頃になると各町内から十数基の曳山が神社境内に揃います。うーん壮観!!

曳山の上には町内の人たちが作った「ダシ」という飾りが組み立てられます。

馬見岡綿向神社の神様がダシになっている曳山がありました。この地の豪族だった蒲生稲置三麿(かもうのいなぎみまろ)という人物が、猪に導かれて「天穂日命(あめのほひのみこと)」という神様に出会った場面を表しています。

続いて地元ゆかりの戦国武将・蒲生氏郷。

世界で大活躍している大谷翔平選手の人形もありました。

他には浦島太郎や花咲か爺さん、鬼滅の刃と物語の主人公たちが飾られていました。このあと御神輿3基も町内に繰り出します。

桟敷窓から見る日野祭

日野の町中でよく見る光景、この赤い毛氈(もうせん)で飾りつけた「桟敷窓」は日野祭の曳山をみるために作られたものです。

日野に親戚がいれば桟敷窓から日野祭が見られるのになと思っていたのですが、なんとも運良く桟敷窓を見つけ、願いを叶えることができました。

限定メニュー 海鮮ごま醤油漬け丼と蕎麦

桟敷窓のある場所とは地元人イチオシの蕎麦屋「守貞」。
メインストリートの日野商人街道沿いにあり、大きな駐車場も併設しているお蕎麦屋さんです。

偶然にも数少ない桟敷窓のある席に予約せずに座れました。ラッキー!神様ありがとうございます!!

太鼓や竹刀を叩く音が聴こえ、ワクワクしながら待っていると神子さんがやってきました!!!

続いて御神輿が登場!土地の美味しいものを食べて飲んでだけでも楽しいのに、お祭りも見られるって最高です。とっても良い思い出が出来ました。

食事が終わり、町中の桟敷窓から家の中を見ると、どこのお家も部屋の中は美しい屏風で飾りつけをしてありました。部屋の中ではお寿司を食べたりお酒を飲みながらお祭りを楽しんでいます。地元ではお客様に「鯛素麺」を出したりするそうです。毎年ゴールデンウィークには日野に帰って来て、家族で曳山を見ているという光景がどこか懐かしく、ほっこりとするひとときでした。

他のお食事場所としては「近江日野商人ふるさと館 旧山中正吉邸」では「日野まつり弁当」が売っています。

神社の前にはもちろん屋台もたくさんあります。曳山や御神輿を見ながら歩くのも楽しそうですね。

また観光案内所「日野まちかど感応館(旧正野玄三薬店)」の前の大きな駐車場はおしゃれな出店が並び、休憩できるようになっています。

お昼のあとはまたお祭り三昧。
11:30に綿向神社を出発した神子さんや神調社さん、御神輿は12:30ごろにひばり野という御旅所に集まります。15時ごろまで、このひばり野で神事が続きます。

16時からは馬見岡綿向神社にて「馬諫めの儀」などの神事が次々に行われ、18時ごろには曳山が各町内に戻っていきます。朝から夜まで日野の町はお祭り一色。何時に来ても日野祭を楽しむことができます。

現地で出会った方には、夕方からは近くの甲賀市の瀧樹神社で行われるケンケト踊りを見に行くというお祭り猛者もいました。

みなさまもぜひゴールデンウィークに滋賀のお祭りを満喫して行ってください。

【日野祭スケジュール】

5月3日 本祭(馬見岡綿向神社~ひばり野)
3:00 起こし太鼓 【上野田・字内】
4:30 神子着付け 【上野田・神子の家】
6:30 神子盃の儀 【五社神社】
7:00 すぎ神子・神調社出発【五社神社】
7:30 神子の御幣奉納の儀 【ひばり野】
8:30 神子・神調社宮入 【綿向神社】
各字神幣・神輿駕丁宮入 【綿向神社】
曳山出発(登り山) 【各町内】
9:30〜11:00 曳山宮入 【綿向神社】
10:00 本祭祭典齋行 【綿向神社本殿前】
11:30 渡御出発 【綿向神社】
12:30 神子・神調社御旅所入 【ひばり野】
馬諫めの儀【ひばり野】
渡御行列御旅所入【ひばり野】
13:30 曳山一部引き取り 【綿向神社】
14:30 御旅所祭典齋行 【ひばり野】
15:00 還御盃の儀 【ひばり野】
還御出発 【ひばり野】
16:00 神子・神調社還御宮入 【綿向神社】
馬諫めの儀 【綿向神社】
渡御行列還御宮入【綿向神社】
17:30 七三の別れ 【綿向神社】
神幣引き取り 【綿向神社】
18:00 神子・神調社引き取り 【綿向神社】
神子の御幣を納める儀【綿向神社参道笠懸社】
曳山引き取り(下り山) 【綿向神社】
18:30すぎ 神子・神調社帰参 【五社神社】
19:30 曳山各町内へ帰参

馬見岡綿向神社 公式HP 

他にも日野で見て欲しいお祭りがあります。

2月の上旬から3月上旬にかけて、150ヶ所以上もの場所に雛飾りが並びます。桟敷窓から家の中を覗くと江戸時代や大正のお雛様や、手作りのお雛様が飾られています。
家の前に飾られる花を傘のようにあしらった幟は「ホイノボリ」と言います。

毎年4月4日に行われる滋賀県選択無形民俗文化財の南山王日枝神社の春祭り「ホイノボリ」。

日野観光協会提供

4月中旬から5月上旬は「鎌掛谷ほんしゃくなげ群落」も見頃です。

日野観光協会提供

8月14日、15日は火ふり祭り。夕刻になると太鼓の合図で100本を超える松明を松の木をめがけて投げ上げるという迫力満点の行事があります。季節の行事を見に一度訪れて見てください。

祭り開催情報

名称 日野祭
開催場所 滋賀県蒲生郡日野町村井705
馬見岡綿向神社
開催日 2023年5月2日(火)、2023年5月3日(水)
毎年5月2日(宵祭)、3日(本祭)
主催者 日野観光協会
アクセス 【バス】JR近江八幡駅または近江鉄道日野駅から北畑口行バス向町(停)下車。徒歩3分。
関連サイト https://www.hino-kanko.jp/festival/hi...
https://www.town.shiga-hino.lg.jp/con...
この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
毎日「京都散歩の旅」なカメラマン。
奈良・吉野アンバサダー。観光経済新聞、楽天トラベル等を執筆。聖地と舞が好き。民俗芸能や瀬織津姫研究中。
instagram @kyoto.photographer
https://earth-traveler.com/

オマツリジャパン オフィシャルSNS

あわせて読みたい記事