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「吉田の火祭り」の歴史を神職に聞いてきた!ディープな見どころをご紹介!

2019/8/14
2024/3/5
「吉田の火祭り」の歴史を神職に聞いてきた!ディープな見どころをご紹介!

富士山の麓に位置し、富士登山の玄関口ともいわれる北口本宮冨士浅間神社。富士山信仰に基づく神社で、毎年8月には「吉田の火祭り」という神事としてのお祭りを行う神社でもあります。
今回は、神職を務める田邉さんにインタビューをさせていただき、神社の歴史や吉田の火祭りについてお話を伺ってきました。

神事を取り仕切る田邉さん

北口本宮冨士浅間神社:田邉さんプロフィール

お神輿の前にて

今回、インタビューに応じて下さったのは、北口本宮冨士浅間神社で神職を務める田邉將之さん。実は田邉さんは、「吉田の火祭り」の祭典世話人OBのお一人でもあります。

祭典世話人とは?

松明結初式にて、神事に参列する祭典世話人。揃いの紫色の法被を着用

-神職をされながら、祭典世話人をされるというのは、異例のことだったのではないでしょうか?

田邉さん)
祭典世話人とは、「吉田の火祭り」を行うにあたり、運営の中心となって実務を行う人たちのことですが、私が世話人になった当時は異例の若さと、異例の立場で祭典世話人になりました。当時は27歳でしたから、他の世話人の皆さんは全員年上でしたね。しかも神職を務めながら世話人になるというのは、これまでに例のないことでした。

-祭典世話人に選ばれる条件というのは、厳しいものなのでしょうか?

田邉さん)
そうですね、世話人に選ばれるためには、
* 氏子地域に住んでいること
* 既婚の男性であること
* 持ち家があること
* ~42歳(厄年)までの年齢であること
これらの条件を満たさないといけません。しかも任期が1年なので…なかなか毎年14名集めるのが大変なんですよね。年齢的に一番働き盛りで、一番忙しい時期ですからね。

・・・

祭典世話人制度については、別の記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください!

祭典世話人制度について紹介した記事はコチラ

いつ頃建てられた?北口本宮冨士浅間神社の歴史

朱塗りが美しい、鳥居の前にて

-北口本宮冨士浅間神社はいつ頃からあるのでしょうか?

田邉さん)
北口本宮冨士浅間神社は、全国に数多ある浅間神社の一つで、富士山に対する信仰の神社です。
その歴史は古く、なんと西暦110年にまでさかのぼります。ヤマトタケルが富士吉田を通った際に、「北方に美しく広がる裾野をもつ富士は、この地より拝すべし」との言葉を残したことから、北口本宮冨士浅間神社が建立されたと言われています。富士登山の際にこちら側から登る正当性は、このことに基づいていると言われています。

-先ほど、御朱印をいただいたのですが、北口本宮冨士浅間神社と、諏訪神社の2ついただきました。これは同じ境内に神社が2つあるということでしょうか。

諏訪神社。浅間神社と同じ境内にある。

諏訪神社の御朱印。「火祭り」の文字が書かれている。

田邉さん)
そうです。
もともとこの地域一帯は「諏訪の森」と呼ばれていて、諏訪神社が氏神様。神社が創建された年数も分からない位古いとされています。
明治時代になって、諏訪神社が浅間神社の摂社となったんですね。以来、吉田の火祭りは諏訪神社・浅間神社 両社のお祭りとなっていますが、もともとは諏訪神社のお祭りだったんです。

いつから始まったの?吉田の火祭りの歴史

2基の神輿渡御開始 ※Wikipediaより引用

-「火祭り」はいつ頃からあるのでしょうか?

田邉さん)
火祭りには400年の歴史があると言われています。
浅間神社と富士山信仰は切っても切れない関係にありますが、中でも関りが深いのが「御師」と呼ばれる方達です。富士登山に来られる方の宿のお世話をしたのがこの「御師」という方達なのですが、1572年に富士山の雪代の被害にあったことで、村ごと引っ越しをされたんですね。
それ以来、御師が住む地域が上吉田地区となり、神社の氏子であるわけなんですが、当時の記録に「此内一間玉やへ御幸路」と書かれているんです。

文献に記されている吉田の火祭りの歴史の根拠

「玉や」という屋号は、諏訪神社を守っていた佐藤家の屋号のこと。御幸路とは、お神輿が通る道のことですから、この当時から火祭りは行われていたということになりますね。
ただ、引っ越してきた直後からお祭りが行われていたことを考えると、実際には引っ越して来る前から火祭りはあったのではないかと思いますが、正確なことは記録に残っていないので分からないんですよね。

富士山型と明神型。神輿が2種類あるのはなぜ?

-吉田の火祭りでは富士山型のお神輿と、明神型のお神輿の2種類の渡御を行うと聞いたのですが…これは諏訪神社から1基、浅間神社から1基お神輿が出るということでしょうか??

明神型神輿 ※画像出典Wikipedia

田邉さん)
その様に言う方多いんですが…実は2基のお祭りは両方とも諏訪神社のお神輿であり、浅間神社のお神輿なんです。なので、それぞれから1基ずつ出すということではないんですね。
では、どうして2基あるのかというと、神様には優しい一面と、「罰を当てる」という厳しい一面とがあって、それぞれ和魂(にぎみたま)、荒魂(あらみたま)と呼んでいます。

* 和魂(にぎみたま) ⇒ 明神型神輿
* 荒魂(あらみたま) ⇒ 富士山型(御山)神輿

ということですね。
担ぎ方も、富士山型の御山神輿は荒々しく担ぐんですよ。明神型神輿は割と年配の方が担いで、富士山型は元気のある若手が担ぐ。毎年富士山のお神輿を担ぐことを生きがいにしている人がいるので、当日は「早く担がせろ!」ってイライラする人もいるくらいです。

御山と呼ばれる富士山型神輿 ※画像出典Wikipedia

-富士山型の神輿は、渡御の途中で「3回地面に落として打ち付ける」と聞いたのですが…それはどうしてなのでしょうか?

田邉さん)
普通に考えれば神様の乗り物である神輿を落とすなんて、「なんて罰当たりな」と思われるでしょうね(笑)これは吉田の火祭りが富士山の鎮火を祈るお祭りであることから、富士山の代わりに噴火してもらうという意味を込めているんです。

-そういう意味が込められていたんですね!

田邉さん)
担ぐときも、落とすときのことを想定して肩がすぐ抜けるように、通常の担ぎ方と逆にして担ぐんですよ。肩を抜くタイミングを逃すと、ケガをしてしまいますからね。

「御山」と呼ばれる富士山型神輿を担ぐ様子※画像出典Wikipedia

もともと、荒々しく担ぐお神輿ではあるんですが、肩が抜きやすい分、不安定にもなりますから常に蛇行して担ぐことになるんですね。結果、荒々しい渡御になります。

3mもの巨大松明!作っているのは誰?

点火された松明の様子 ※Wikipediaより引用

-吉田の火祭りで「松明」は欠かせないものだと思いますが、松明造りの職人さんは松山地区にお住まいの方だと聞きました。松山地区は氏子地域外だと思うのですが、これはどうしてなのでしょうか?

田邉さん)
そうですね。松山という地区は、氏子地域である上吉田地区ではないのですが、昔から“強力と松明は松山の人”と言われていまして。そういう決まりがあったわけではないのですが、松明は昔から松山地区の方が作っていました。

氏子地域である上吉田地区は、先ほどもお話した通り「御師」の方の住む地域です。御師は富士登山に来られる方に宿を提供するわけですが、その最盛期がちょうどお祭りの準備期間と重なるんですよね。
上吉田の人がちょうど忙しい時期だったので、氏子地域外の方にお願いしたということです。

-松明の本数は昔と変わらないんでしょうか?

田邉さん)
昔より増えていますね。今はだいたい80本くらいなんですが、もっと増えるかもしれません。ありがたいことに、松明を奉納するために協賛金を出して下さる方が増えていまして…。地元企業はもちろんですが、地元以外の地域の企業や個人名で松明を奉納する方もいらっしゃいます。

-それは、松明造りの職人さんも大変ですね!

・・・

松明造りの現場にも潜入取材をしてきました!松明職人さんにもお話を伺ってきましたので、こちらの記事も合わせてご覧ください♪

松明職人:和光信雄さんのインタビュー記事はコチラ

日付固定!雨でも台風でもやるって本当?

金鳥井と燃える松明の様子。※Wikipediaより引用

-吉田の火祭りは、多少の雨では延期しないとお聞きしたのですが…

田邉さん)
そうですね。雨でも台風でもやるというのがこのお祭りの特徴でもあります。昔荒天時に延期をしたら、良くないことが起こったということがあって…
それ以来、予定通り行っています。神事ですからね。

-雨が降ってしまうと、松明が燃えないということもあるのではないでしょうか?

田邉さん)
ベストは前日までに雨が降ってくれることですね。あまり晴れ過ぎてしまうと、当日燃えすぎて崩れてしまうことがあるので。松明はお祭りの一週間前から設置するのですが、あまり晴れの日が続くと水を掛けてわざと湿らせたりするんですよ。松明にとっては適度な湿り気がある方が良いんです。

 

・・・

 

今回は、北口本宮冨士浅間神社の神職、田邉さんにお話をお伺いし、神社の歴史や、吉田の火祭りの見どころを教えていただきました!「吉田の火祭り」は富士山信仰に基づいた、歴史ある神事としてのお祭り。その由来や歴史を知ることで、よりお祭りを楽しむことが出来るのではないでしょうか。

別記事でも吉田の火祭りの見どころをご紹介していますので、是非合わせてご覧ください♪

元:富士吉田市民が「吉田の火祭り」の見どころを紹介?した記事はコチラ

「吉田の火祭り」と合わせて楽しみたい!「吉田のうどん」の紹介記事はコチラ

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