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天下随一希代の太夫を偲ぶ、常照寺「吉野太夫花供養」が4年ぶりに復活 

2023/4/6
2023/4/6
天下随一希代の太夫を偲ぶ、常照寺「吉野太夫花供養」が4年ぶりに復活 

京に春を告げる風物詩「吉野太夫花供養」が、2023年4月9日(日)に、4年ぶりに復活します。
吉野太夫花供養は、洛北「常照寺」で行われる「二代目吉野太夫」(1606~1643)を偲ぶ催し。吉野太夫は諸芸能、とりわけ「茶の湯」に優れ、「天下に並ぶ者のない太夫」として、その名声は遠く中国まで届いたといわれています。
コロナ禍の3年間は法要のみの開催となりましたが、今年はお茶会や太夫道中のほか、奉納演奏も行われます。

ここからは、2021年に行われた際の現地からのレポートをお届け。文末で、今年2023年の吉野太夫花供養の開催情報も紹介しますので、お出かけの参考になさってください。

常照寺「吉野太夫花供養」

京都駅から市営バスに乗り北へ北へと小一時間。日本で一番「島原太夫」※と縁の深い常照寺がある。
寛永三名妓・天下随一希代の太夫と謳われた名妓・吉野太夫が帰依し、眠る場所常照寺では、毎年4月第二日曜「吉野太夫花供養」が行われます。この日は普段、見ることのできない島原太夫が何人も見られる非常に貴重な一日となります。

※編集部注:島原は豊臣秀吉が公許した花街で、吉野太夫をはじめ教養・品格・芸に優れた太夫を多く生んだ場所です。現在も島原で数人の太夫が活躍しています。

「太夫道中」内八文字を描く足さばき

吉野太夫花供養の朝はいつもは静かな鷹峯(たかがみね)の地域がもっとも華やぐ。
早い時間から舞妓さんよりも稀少な存在である島原太夫の姿を一目見ようと大勢の人が集まります。

いよいよ道中の始まる10:20。時代劇が始まるような曲が流れ、源光庵から常照寺までの100mを約30分程かけて、ゆっくりゆっくりと太夫道中が行われる。

写真:足元は「位があっても一歩控えるということから冬でも裸足

太夫道中といえばぜひ見たいのは「内八文字」という足さばき。
しかしこれは境内の中でのみ披露されます。
最初のスタートから一時間ほどあと、大勢の人に見守られながら境内に待望の太夫たちが姿を現わすと一気に熱狂的な雰囲気がただよう。

同時に「太夫道中」がはじまると「花魁道中」という方がいますが、全く違います。
「太夫」は十万石の大名と同じ位「正五位(しょうごい)」の官位を持ち、茶道、詩歌、琴や笙などの管弦、香道、華道や舞と諸芸に秀でる女性の最高位を意味します。そしてお客様は公家や大名。太夫は宮中文化、芸舞妓は町衆文化、花魁は娼妓(婦)の文化。「島原太夫」のファッションを真似て、江戸で大流行しました。花魁はみんなが思い浮かべる姿の人を「花魁」と呼ぶのではなく、娼妓の中でも下っ端の女郎でも花魁と言います。
花魁…と言う言葉は江戸からきましたが、全国の遊郭にいる遊女達も花魁と呼ばれてました。

奉納舞や演奏の披露

太夫道中では名妓・吉野太夫の掛け軸に一礼。
11時からは本堂にて吉野太夫追善法要での献茶、13時から吉野太夫の墓参り、13時半過ぎになると本堂で太夫による奉納が始まります。

太夫道中の次のメインイベントである太夫の奉納演奏や舞。

井原西鶴「亡き後まで名を残せし太夫 前代未聞の遊女なり」と謡い、吉野太夫の命日8月25日は「吉野忌」「吉野太夫忌」と呼ばれています。また「吉野忌」は俳句の季語で秋を意味するほど。吉野太夫は寝起きの姿から息をのむほど美しく、和歌や連歌(れんが)、俳諧(はいかい)、琵琶や琴、笙(しょう)とその芸は諸外国にも鳴り響くほどの達人。それがたった14歳で太夫になったというのだから驚きです。

そんな名妓・吉野太夫に捧げる奉納が本堂で披露されます。

島原太夫による茶席「野点席」

普段は葉桜の時期が多いのですが、約100本の桜が咲き誇る時期に来れたらラッキー。
野点、吉野太夫の愛した吉野窓もある遺芳庵でのお抹茶、書院での煎茶席、お蕎麦もついて
5千円の当日券でたっぷりと楽しめます。

写真:お茶菓子が回ってくるので懐紙にひとつ取って、隣に回す。

注意点としてはできれば懐紙や黒文字(楊枝)を持ってくるとなおよし。ない場合は茶席のスタッフに声かけすれば大丈夫。お茶席の作法がわからなくても両手で丁寧に茶器を扱えば問題ありません。

また茶器やお菓子の詳細は詳しく書いてある用紙が掲げられています。
何もわからなくても、お茶を楽しめます。

注意としては茶席が多いこと。トイレも混み合うため、スケジュールをしっかりと頭にいれた上でお茶をいただくかどうか決めるとよいでしょう。

中でも野点席は太夫さんのお点前が見られるため、お茶をいただくまでに時間がかかります。
太夫の見習いの赤い着物を着た禿(かむろ)ちゃんたちがお運びしてくれる姿も愛らしく、必ず楽しみたいお席です。

写真:時間によって、太夫が変わる。茶道具も近くで見せていただけます。

鷹峯には周りにお店が全くありませんが、この行事の日はお寺の境内の中で十分にお茶を楽しみ、一日中、ゆっくりと過ごせます。

嬉しいのは点心席。聖護院の老舗「河道屋養老」のお蕎麦が出張しています。温かいお蕎麦は癒しの空間。お昼はここで満たしてから次に出発です。

境内に掲載されている予定表と混み具合を見ながら「次は」と予定を立てるのがよいでしょう。

写真:書院での煎茶席

吉野太夫追善 奉茶供養

令和三年は華やかな行事は中止されましたが、厳かな雰囲気で奉茶供養が行われました。

「末廣屋」特別バージョン「吉野太夫花供養」

写真:吉野太夫が23歳の時に寄贈した朱塗りの山門「吉野門」の前で撮影

2021年は新型コロナウイルスの影響で法要のみとなり行事は中止。
太夫さんの姿が見られないのは残念。。。ということで、静かな境内で末廣屋・葵太夫の撮影をさせていただきました。

まずは太夫道中。
悟りの窓で有名な源光庵から約一時間かけてゆっくりゆっくりと吉野門を抜け、本堂までの道中です。通常でしたら境内には人があふれ、前に前にとせり出して、美しく正面からの撮影は非常に難しい。貴重な一枚です。

本来の道中は本堂までですが、特別バージョンで住職おすすめの灯籠にて撮影。有名な写真家さんたちも鬼子母神堂に向かって、よく撮影するそうです。そこで本物の島原太夫をモデルに撮影というのは、なかなかない贅沢な経験でした。

この日は午前中は雨。葵太夫は晴れ女なので、撮影のころは晴れるだろうなと思っていましたが、浄化の雨がやむだけでなく、桜の咲く時期に撮影できました。

次は書院にて「かしの式」。
太夫がお客様と対面するときに必ず最初に行う「顔見せ」の儀式です。

他の舞ではなかなか見ることのない打掛を美しく魅せる所作がみどころのひとつです。

次は太夫だけが舞う「いにしえ」。

禿による舞「絵日傘」も披露。

最後は筑前琵琶の演奏。
オンラインお座敷配信もはじまったので、おうちで島原太夫の世界を満喫してみてください。
次回の吉野太夫花供養をもっと楽しめることまちがいなしです。

日蓮宗 寂光山 常照寺 吉野太夫菩提所
京都市北区鷹峯北鷹峯町一番地
拝観時間:8:30~15:00
詳しくは、常照寺のホームページもご確認ください。

令和5年度 吉野太夫花供養

■日時
令和5年4月9日(日)  開庭9:00~閉庭15:00
※参加には、お茶券(4,500円)が必要です。枚数に限りがありますので、お早めにお申し込み下さい。
※当日券はありません
※お問い合わせは常照寺まで。TEL:075-492-6775(10時~16時)

■内容
・太夫道中(山門―本堂まで)
・吉野太夫供茶法要
・吉野太夫墓前供養
・島原太夫奉納演奏
・島原太夫トークショウー

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