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上七軒「北野をどり」芸舞妓の舞や茶席で春の訪れを満喫

更新日:2023/3/24 佐々木 美佳
上七軒「北野をどり」芸舞妓の舞や茶席で春の訪れを満喫

京都最古の花街「上七軒」

室町時代に北野天満宮の社殿が一部焼失した際、その再建に使われた木材の残りを使って7軒の茶店を建てたことが上七軒(かみしちけん)のはじまりです。

後に豊臣秀吉が北野天満宮で10日間の大茶会を催した時には、七軒茶屋が名物のみたらし団子を献上しました。

きなこたっぷりの名物みたらし「七軒だんご」。焼きたてはトロトロ。

秀吉はこの団子をとても気に入り、褒美として七軒茶屋にみたらし団子販売の特権と合わせ、京都一円の法会茶屋権を与えたそうです。これが日本のお茶屋の始まりとなったといわれています。

この縁で、上七軒の紋章は串に団子を通した「つなぎ団子」になっています。

春の定期公演「北野をどり」

春になると五花街(京都花街連合会加盟の5つの花街)の中で一番先に行われる上七軒の「北野をどり」。今回、初めて上七軒歌舞練場に行ってみました。

入口を入ると目の前には赤絨毯!鯉が泳ぐ池の上に橋がかかっています。フロントで周りを見渡すと、着物を着たお客様や外国人に芸妓さんと、きらびやかな雰囲気がただよっています。
ただ、特にドレスコードがあるわけではないため、平服でゆったりと楽しんでいる方もいらっしゃいました。

手入れされたお庭を眺めたあとにお茶席へ行ってみました。

舞妓さんのお手前

上七軒歌舞練場では「立礼(りゅうれい)」という椅子に腰かけて行う茶道点前でお茶が点てられます。

茶席に慣れていないとどうすれば良いか迷ってしまいますが、初めてでも大丈夫。お菓子を先にいただいて、口を甘くしてからお抹茶をいただきます。そして、このお茶席では菓子皿は持ち帰れるお土産になっていました。来た記念に小皿を貰えるのは嬉しい!そっと紙に包んで持ち帰りました。ちなみにギリギリの来場でお茶を楽しめなかった場合でも、お持ち帰り用のお饅頭をいただけます。

舞台を彩る巨大な和紙緞帳

お茶席の次はいよいよ舞台へ。和紙で作られた緞帳(どんちょう)が目を引きます。13メートル×4メートルの継ぎ目のない一枚漉き!職人さんが十人がかりで漉いたという大作です。前述したつなぎ団子と吉祥文様「七宝」の柄をイメージしたデザインになっています。

舞台中は、和紙と、透過する照明の光が作り出す神秘的な美しさを楽しめました。でも、どうやって巻き上げているんだろう?シワにならないのかな?と無粋ながらちょっと気になってしまいました。

舞踊劇「夢のうつし絵 絵姿女房より」

舞台の最初は舞踊劇から始まります。2023年の北野をどりの演目「夢のうつし絵」は、昔話の絵姿女房をモチーフにした新作舞踊劇です。

物語はこんな内容です。
「昔々あるところに愛し合う夫婦がいました。夫の良吉は畑仕事の間も女房の梅のことが忘れられず、ついには似顔絵を持ち歩くほどでした。」

「ある時、その絵が風に飛ばされてしまい、たまたまお城の殿様の目に留まりました。美しい梅に一目惚れした殿様は、自分の妻にしてしまいます。」

写真一番右はお姫様の姿になっている梅。

「梅が不在になり三ヶ月がたった頃、良吉は大道芸人に扮して城に忍び込みます。そこで切腹を覚悟で殿様に『自分は梅の夫です。梅を返して欲しい』と懇願します。」

「城に来てから一言も話さず、笑顔が消えた梅。それほどの梅の愛情や良吉の熱意に、ついに殿様は『自分が悪かった』と二人に謝ります。」

華やかで美しい梅の髪型も見てほしい

大円団で第一部の舞踊劇は終了し、休憩に入ります。

舞踊劇では梅を笑わせようとして殿様が二つのお面を次々に変えて舞う「チャリ舞」も面白くて素晴らしかったです。

セリフもわかりやすい舞台でした。より理解したい場合はパンフレットを見ると、全てのセリフや歌詞が載っています。

純舞踊「東西粋曲抄」

第二部は「東西粋曲抄」と題し、聞き馴染みのある民謡で踊ります。

まずは舞妓さんによる「ちゃっきり節」からスタート。歌詞には上七軒や北野をどりについての内容も入っており、最初にふさわしい1曲です。華やかに4名の舞妓さんが舞います。

舞妓さんによる「会津磐梯山」の舞では、かつて会津の東山温泉で見た芸妓さんの切れ味鋭い舞姿を思い出しました。同じ曲でも上七軒の舞はふわりとした優雅な舞。それぞれの良さがあっていいなと感じました。

今度は芸妓さんによる舞。三味線などの地方(じかた)さんたちの前にある花道で「おてもやん」を披露。

続いて「鹿児島三下り」や「新山中節」。
この雪見傘という透けた踊り傘を使った舞が女性の美しさを引き出しており、とても印象的でした。

明るく楽しい「伊勢音頭」は祝い歌。神社の奉納などで土地の人たちが歌う素朴で賑やかな感じとは違い、芸妓さんの舞はなんとも華やかです。

団扇をあおぎながら舞う「長崎ぶらぶら節」。

「宮津節」では、天橋立など絶景が目に浮かびます。

土佐の名所が次々に出てくる「よさこい節」と、美しい舞が次々に披露されました。

フィナーレ「上七軒夜曲」

北野をどりの最後を飾るのは「上七軒夜曲」。芸舞妓さんがずらりと並ぶ、圧巻の光景が広がります。最後に座って右に左にとご挨拶する姿まで、全てが美しかったです。

余韻にひたる中、頭をよぎるのは北野天満宮の節分祭。そのときも「上七軒夜曲」が踊られたのですが、舞妓さんの姿を一目見ようと境内は大賑わい。

北野天満宮 節分祭 芸舞妓による奉納舞

あの時、舞殿の柱に阻まれて全容が見られなかった待望の舞を「北野をどり」で見ることが出来て、本当に嬉しかったです。あぁ、素晴らしい舞台だった…。

北野天満宮の節分祭 豆まき

上七軒の年中行事

上七軒では他にも魅力的な行事がたくさんあります。
中でも夏の納涼「ビアガーデン」、秋には舞踊会「寿会」は、この上七軒歌舞練場で行われます。芸舞妓さんを見てみたい方は年中行事にぜひ足をお運びください。

北野天満宮 梅花祭

1月9日 始業式
2月3日 節分祭、お化け
2月25日 梅花祭
3月下旬 北野をどり (上七軒歌舞練場での公演)
6月 五花街合同公演
7月〜9月頭まで ビアガーデン
8月1日 八朔
お盆前 盆踊り
9月 ゆかた会
11月 寿会 (上七軒歌舞練場での公演)
12月1日 献茶祭
12月初旬 南座 顔見世総見
上七軒歌舞会 公式サイト

この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
毎日「京都散歩の旅」なカメラマン。
奈良・吉野アンバサダー。観光経済新聞、楽天トラベル等を執筆。聖地と舞が好き。民俗芸能や瀬織津姫研究中。
instagram @kyoto.photographer
https://earth-traveler.com/

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