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G.Wに行こう!世界が認めた風流踊「近江のケンケト祭り長刀振り」!「ケンケト」の意味も解説!

G.Wに行こう!世界が認めた風流踊「近江のケンケト祭り長刀振り」!「ケンケト」の意味も解説!

2022年11月に、ユネスコ世界無形文化遺産に「風流踊」が登録されました。これらは、華やかな芸能を伴う日本の祭事41件が登録されています。中でも、滋賀県に伝承されている「近江のケンケト祭り長刀振り」は、5月初頭の大型連休の時期に行われます。ぜひ新緑の気持ちの良いこの時期に、世界が認めた日本の無形文化遺産を見にいきましょう!

ユネスコ無形文化遺産!でも「風流踊」って何?

風流踊に登録されている京都の「やすらい花」(上賀茂神社)。疫病を鎮める祭。©︎Mika sasaki

まず、そもそも「風流踊」とは何でしょうか?それは、平安末期に広がった、「華やかでにぎやか」「人目をひく」さまを表す「風流(ふりゅう)」の精神を体現した踊りのことです。華美な衣装をまとい、にぎやかな囃子に合わせて歌い踊るなど、風流の精神に則る民俗芸能が総じて風流の芸能と呼ばれ、特に「踊り」が「風流」になったものが「風流踊」なのです。

なぜ民俗芸能は「風流」化したのか?

それでは、なぜこれらの民俗芸能は、華美で人目を引くようになった(=風流化)されてきたのでしょう。それは、「風流の精神」が生まれた平安時代当時の「御霊(ごりょう)信仰」という考え方が関係しています。

当時は、不幸な死に方をした霊が、生きている者たちに天災や病といった災いをもたらすと広く信じられていたのです。そこで、この荒ぶる霊を鎮めるためにおもてなしをする心が生まれました。このおもてなしが年々華やかになって(=風流化して)きたのだと、1180年ごろに編まれた『梁塵秘抄口伝集』が伝えています。

人々は、神仏に自分たちが生きていくための願いを届けるため、派手に着飾り、鉦や太鼓を大きく打ち鳴らしながら、歌い、踊るようになったわけです。

京都に始まった風流の流行は、室町時代以降、日本各地へと伝播していきました。

「近江のケンケト祭り長刀振り」とは?

写真提供:(公社)びわこビジターズビューロー

風流踊の一つとしてユネスコ無形遺産登録されている「近江ケンケト祭り長刀振り」は、滋賀県南東部での守山市、甲賀市、東近江市、蒲生郡竜王町で行われる祭礼の総称です。

各神社で例年5月3、4、5日にかけて催される各地の「ケンケト祭り」と呼ばれる春祭りでは音楽に合わせてさまざまな芸能や神幸行列などが行われます。同じ「ケンケト祭り」という名称で呼ばれることもありますが、各祭の内容は画一ではなくバラエティに富んだものです。共通しているのは、華やかに着飾った人々によって、棒や長刀を用いた芸能が奉納されている点です。これら棒踊りや長刀踊りを「長刀振り」と総称しています。

「ケンケト」って何?

ところで、不思議な響きの「ケンケト」という名前。『近江国甲賀郡岩室郷瀧樹神社御祭礼記録』には、「ケンケトケンケン」という囃し言葉の記述があるほか、各地にさまざまな説がありますが、子供たちが打つ鉦の音を、口で言い表したものではないかとも言われています。

湖南には風流踊「サンヤレ踊り」も伝承

 

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一方、同じくユネスコ無形遺産の風流踊に登録された「サンヤレ踊り」も、5月の同じ頃に行われ、独特の囃し言葉を持った踊りの行列を行う点で似ています。こちらは、滋賀県南部、草津市と栗東市に伝わる踊りで、花笠などで綺麗に着飾った子供たちが、太鼓や鉦などの楽器を叩いて踊り、そのまわりを、扇子や榊を持った人々が「サンヤレ、サンヤレ」と囃しながら練り歩きます。

近江各地の「ケンケト祭り」を紹介!

ここでは、各地のケンケト祭りの詳細をご紹介します。

下新川神社(守山市幸津川町)

写真提供:(公社)びわこビジターズビューロー

5月4日〜5日に行われる下新川神社例祭。5日の本祭に行われる「すし切り神事」は、氏子代表の若者2名が、古式ゆかしく、神様に供える「鮒鮨」を作るというもの。長い鉄箸と包丁を使って、二人で息を合わせて調理していく様子を、観客が見守ります。

これは、神社の祭神・豊城入彦命が琵琶湖を渡った際、村人が琵琶湖でとれたフナの塩漬けを献上したところ、大変喜ばれたという言い伝えが元になっています。

この神事が終わると、子孫繁栄と五穀豊穣を願って、雌雄の獅子の求愛を表現した「歓鼓(かんこ)の舞い」とともに、「長刀踊り」が奉納されます。

小津神社(守山市杉江町)

写真提供:(公社)びわこビジターズビューロー

毎年5月5日の小津神社例祭でも「ケンケト」が行われます。この神社では、かつて琵琶湖の氾濫で社殿が流された際、湖の中から神様を迎えて祀った村人たちの喜びが踊りになったとされています。こちらの長刀踊りは、一列になって行進しながら手に持った長刀を振るというもの。行列には、ササラや太鼓などの囃子に合わせて踊る「田楽踊り」が続きます。

瀧樹神社(甲賀市土山町)

 

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毎年5月3日に瀧樹(たぎ)神社例祭で行われるケンケト祭りでは、孔雀や山鳥などの羽根を付けた子供たちが、囃子に合わせて踊ります。こちらのケンケト祭りは、1489年に土地の豪族が田楽として奉納したのが始まりと伝えられています。

また、神幸行列で地域をめぐった後、その列に加わるハナガサを観客が倒して、飾りの赤い造花を奪い合う「ハナバイ」という行事でも有名です。取った花は災難よけになると喜ばれています。

2023年は神事のみを行うことになっています。

八坂神社(東近江市宮川町)、杉之木神社(竜王町山之上)

八坂神社と杉之木神社では、5月3日の祭礼に両区合同でケンケト祭りを開催。各氏子の男子が、派手な友禅模様の着物を着て長刀踊りを奉納します。この姿は、戦国時代、地元の人々が織田信長に従った際、鎧を脱いだ姿を再現したものだとされています。

祭礼の行列では、長刀踊りに続いて「イナブロ」と呼ばれる鷺を模した飾りをつけた5メートルほどの大御幣が続きます。イナブロに付いている五色の色紙は、「虫除け」「火除け」のご利益があるとされ、イナブロを倒してそれを取ろうとする観客とのやりとりも見せ場になっています。

まとめ

ユネスコ世界無形文化遺産登録の風流踊「近江のケンケト祭り長刀振り」は、5月3日〜5日に滋賀県各地で行われるお祭りです。同時期には同じく風流踊「近江湖南のサンヤレ踊り」も見られます。

大型連休のこの時期、中世以来の風流踊の伝統に触れてみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
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