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【こきりこ祭り】日本の原風景「五箇山」で最古の民謡を堪能しよう!

更新日:2024/3/8 Yuji Niimi
【こきりこ祭り】日本の原風景「五箇山」で最古の民謡を堪能しよう!

富山県南部の山間部に位置する五箇山地方。白川郷と同じく世界遺産である合掌造り集落がある所といえば、ピンとくる方も多いのではないでしょうか。

しかし、五箇山は「民謡の宝庫」としてもその名を知られています!時代の波に呑まれながらも、じつに80以上の曲が数百年の時を経て歌い継がれています。

その中でも「麦屋節」とともに全国的な知名度を誇るのが、日本最古の民謡と称される「こきりこ節」。今回は9月25・26日に開催される五箇山最大の民謡イベント「こきりこ祭り」をご紹介します!

※2020年のこきりこ祭りはウェブ配信(五箇山宿泊者のみ直接参加可)を予定しています。最新情報は五箇山の観光情報サイトを確認してください。

写真提供:南砺市観光協会

日本最古の民謡「こきりこ節」とは?

日本の民俗芸能に少しでも興味があるお方なら、その名を一度は聞いたことがあるかもしれません。こきりこ節とは田楽をその礎とし、1000年以上の歳月を経て今日まで歌い継がれたと考えられている民謡のことです。その起源について確たる文献証拠はないものの、現存する民謡の中でも群を抜いて歴史的価値があることには変わりはありません。1969年に中学校の音楽の教科書に取り上げられて以来、義務教育の過程で触れることが非常に多い民謡の一つでもあります。

名前の由来となったこきりこは、細い2本の竹でできた楽器のことを指します。囲炉裏の天井で燻し、23cm程の長さに切ることで作成され、打ち鳴らすと素朴ながら澄みきった打音が響き渡ります。こきりこ節では他にもささらや鍬金などまさに古代民謡にふさわしい楽器が、笛の旋律と太鼓の鼓動と共に鳴り響きます。

また、こきりこ節といえば踊りも目が離せません。有名なのが「びんざさら」と呼ばれる、108枚の木板を結びつけた楽器を打ち鳴らしながらおどる「びんざさら舞」。心地よい山と風を背景に、こきりこ節のゆったりとした音色に合わせて踊る姿は、まさに「日本の原風景」という五箇山の名にふさわしい情景です。

それでは、筆者の2019年の体験を元にこきりこ祭りを見ていきましょう!

祭りの始まりは昼から!「奉納こきりこ」と「獅子舞」

なぜこきりこ祭りは9月25・26日なのか?それは五箇山中心部の上梨地区に存在する「白山宮」の祭礼が行われる日だからです。白山宮は1200年以上の歴史があると言い伝えられていて、茅葺き屋根が特徴の鞘堂の中には県内最古の木造建築物である本殿が納められています。こきりこ節はこの地区で歌い継がれたものであり、祭りの際は住民が総出で盛り上げます。

こきりこ祭りの幕上げは両日ともに正午から始まる「奉納こきりこ踊り」。白山宮本殿の目の前に拝殿があり、本殿に向けて踊りが披露されます。ベストスポットはずばり、本殿と拝殿をつなぐ石段!御神体の視点から踊りを堪能することができます。

写真提供:南砺市観光協会

しかし、こきりこ祭りで披露されるのはこきりこ節だけではありません!実は富山県では獅子舞が非常に盛んで、五箇山でも「むかで獅子」に分類される、5~6人が獅子の胴幕に入って勇壮に舞う獅子舞が伝承されています。26日の午後5時から軽快なお囃子に合わせて集落を練り歩いたあと、白山宮の境内でお披露目。囃子方や獅子を誘導する若衆が笑みを浮かべる姿を見ると、いかに地元で獅子舞が愛されているかが伝わり、見ている側も思わずほっこりしてしまいます。

写真提供:南砺市観光協会

日が落ちてから本番!「舞台競演会」

太陽もいつしか暮れて、五箇山のおいしい山の幸で腹を満たしたあとはいよいよ祭りの目玉である舞台競演会。五箇山は「民謡の宝庫」と呼ばれるだけあって、なんと各地区ごとに独自の民謡レパートリーが存在します!午後7時から白山宮の隣の特設ステージで行われる競演会では、五箇山の各地から馳せ参じた演奏者が歌と踊りの腕前を競い合います。長年の鍛錬と誇りに裏付けされた自然な節回しと踊りは、まさに一見の価値あり!

写真提供:南砺市観光協会

さらに、26日には白川郷と「おわら風の盆」で有名な越中八尾からも参戦。たった2日間で、冨山県を代表する民謡をあまねく楽しむことができます!

日帰りの方々や、日が上がっているうちに見たいよ、という人もご安心を!いずれの日も午後2時から民謡競演会が開催されますので、五箇山民謡の魅力を十分堪能することができます。

写真提供:南砺市観光協会

見るだけじゃなくて、実際に踊ってみよう!「こきりこ輪踊り」と「総踊り」

「ただ見るだけでは足りないよ」と思っている方がいらっしゃれば、ご安心あれ。奉納こきりこ踊り後の「こきりこ輪踊り」と、舞台競演会後の「総踊り」では、実際に踊りの輪に加わることができます!手踊りもよし、同時にびんざさらも配られるので「ささら踊り」を楽しむのもよし。

午後3時には踊り指導も行われるので、夜の総踊りの前に完全にマスターしちゃいましょう!

こきりこ祭り、いかがでしたか?決して大規模ではないですが、獅子舞・競演会は非常に見応えがあり、また人々の祭りに対する熱情も感じることができる、まさに理想的な田舎のお祭りです。もし五箇山の合掌造り集落を訪問しようと考えていましたら、こきりこ祭りを日程に加えてみてはいかがでしょうか?

宿泊・アクセス情報

ここからは祭り時期のお役立ち情報。

五箇山は有名な観光地なだけあって旅館や民宿、ゲストハウスが多く存在します。相倉集落ではなんと合掌造りの宿で泊まることもできますが、できるだけ早めの予約が必須です。

新幹線・公共交通機関をご利用の場合は、高岡駅・新高岡駅から世界遺産バス(白川郷行)に乗車。こきりこ祭り開催地である上梨へはおよそ1時間半かかりますが、祭り後にバスはないので要注意。あらかじめ宿泊先を確保する必要があります。

マイカーの場合は、白山宮と会場から少し離れたところに駐車場があります。特に25日は午後の3時間にわたって余裕があるので、その間に合掌造り集落に立ち寄ることをおすすめします。

上記の情報は変わることがありますので、訪問の際は必ず五箇山の観光情報サイトをご確認ください。

この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
イギリスの大学で音楽学を専攻しています。研究分野は民謡を中心とした民俗音楽と、盆踊り。中部地方のお祭りをメインに、民俗芸能・祭りの歴史などについてご紹介します!

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