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熊手職人インタビュー!「熊手選びのコツ」を聞いて、来年の福を呼び寄せよう!

更新日:2020/11/6 リエコ
熊手職人インタビュー!「熊手選びのコツ」を聞いて、来年の福を呼び寄せよう!

すっかり秋めいてきた今日このごろ。気付けば11月、酉の市の季節です。

酉の市と言えば、熊手。大きな神社ではたくさんのお店が並び、法被姿の威勢の良い売り手と、買い慣れたお客さんの粋なやり取りが見られますが・・・。

「いっぱいありすぎて、どれを買ったらいいか分からない」

これがたくさんの方の悩みではないでしょうか。かく言う私も、昨年の酉の市ではあまりの熊手の数に圧倒され、小さな熊手を小さな声で買ってきた一人。そんな熊手ビギナーの私が、埼玉県さいたま市の熊手職人「西藤」さんの工房にお邪魔してきました。

1.年末の風物詩。熊手とは?

そもそも熊手とは、落ち葉をかき集める掃除道具。「運をかき込む」「金銀をかき集める」として、次第に縁起物へと変わっていきました。ベースとなる熊手に、七福神や大判小判、松竹梅など華やかな装飾がなされています。

日本全国で年の瀬に開かれる酉の市では、翌年の商売繁盛を願ってたくさんの熊手が販売されます。

 

2.創業明治四年!埼玉県さいたま市の老舗熊手職人「西藤」さん

お話しを伺ったのは、さいたま市の熊手職人「西藤」さん、三代目当主である西野豊さん。

西藤 三代目の西野豊さん とっても優しく丁寧に教えてくださいました。

さいたま市内に熊手屋さんは4件あり、その苗字はみな西野さん。西藤さんの「藤」は、創業者「藤三郎」さんの名前を取ったものです。

藤三郎さんはもともとは農家。農閑期に神社の依頼でお守りの「かっこめ熊手」を作り始めました。それが次第に縁起熊手も作るようになり、現在は熊手のみを製作しています。

製造と販売を別々の業者さんが行うことが多い熊手業界。そんな中、西藤さんの特徴は、製造~卸~販売までを一貫して手掛けていることです。酉の市でアルバイトの売り子さんを雇う以外は、豊さんを中心に一家で運営しています。

ご家族で運営される工房

3.色とバランスが命。進化を続ける熊手

様々なパーツが華やかに飾られた熊手。実は、お店ごとに工夫を凝らし、個性の溢れるものなのです。

所狭しと積み上げられたパーツの数々。

西藤さんのこだわりは、「色とバランス」。明るい色を効果的に入れ、元気いっぱいに福を呼び寄せるようなにぎやかさがあります。

デザインのアイデアは着物のカタログから得ることが多いそう。熊手は伝統的なものですが、景気を反映し、常に変化を続けています。パーツも人形職人から買ったり、見本市で探したり、街を歩いていても、どんな素材やデザインが使えるか、常にアンテナを張ってるそうです。

刺し色に使われるパーツを見てみると、絵具や胡粉、和紙や布で華やかに仕上げます。

珊瑚(繁栄を意味します)

 

カブ(株が上がることを願って。お金が刺さっていますが、お財布じゃないみたいです)

龍と、後ろに見えるのは巻物(宝物の目録のような意味)。

ラグビーワールドカップで話題になった赤い刀!流行も忘れません。

招き猫。

矢と的。狙え、一攫千金!

めでたい!

赤い球にキラキラのラメを塗って華やかさを演出!これは西藤さんオリジナルです。

パーツもよく見ると小さなイノベーションの結晶。小判のオーナメントにしても、棒が刺さっている角度が微妙に違ったり、何枚も連なっていたり、針金で向きが変えられたり。こんな工夫で、美しい熊手が出来上がっているのですね!

4.お客様の商売繁盛を!熊手づくりに込めた思い

熊手づくりは何と1月から始まります。1月から5月はパーツづくり。特に五月人形のパーツを使うことが多いので、5月の節句後、人形屋さんが落ち着いたころ、熊手屋さんはパーツ集めで忙しくなるとのこと。

人形屋さんから仕入れた将棋の駒の飾り。黄金に塗り、裏には棒を付けて、熊手仕様に加工しています。

 

とはいえ、材料になる竹はあまり早く切ってしまうと色が抜けてしまうので、ギリギリまで切ることができません。

熊手用に仕入れられた真っすぐな竹。太い孟宗竹と細い真竹を場所によって使い分けます。

パーツが揃い始めたらデザインの開始。設計図はありませんが、大きさと形で幾つもパターンを考え、パーツを刺す位置を決めます。パターンが決まったら、それをいくつも作るという作業に入ります。

熊手職人の願いは、お客様の商売がうまくいき、幸せになること。手作りなので気持ちのブレが出来上がりを左右します。私もちょっとだけ飾りを刺す作業をさせていただきましたが、これが難しい。全然角度が決まらない。うまく刺せない。

ですから、集中力はとても大切。気持ちがめげているとダメで、体も鍛えているそうです。面白いのは、夏作るとどうも涼し気な間の空いた熊手ができてしまうとのこと。でもお客様が買うのは冬なので、温かみのある熊手をいつでも作れるように、鍛錬を重ねているそうなのです。

そんな西藤さんの楽しみややはり、酉の市。年に1回、お客様と会える機会です。お客様の商売がうまくいっているか、元気でいるか、いつも気にかかっているそうです。何年も通ってくれるお客様は、自分の熊手が役に立っているのかな、と嬉しくなるといいます。こんな暖かい気持ちで作られた熊手、絶対ご利益ありそう!

 

5.必読!熊手選びのポイント ①大きさと形

さて、そんな思いのこもった熊手。せっかくだから、納得したものを買いたいもの。

そこで、熊手選びに使える基本のポイントを伺いました。

まずは、大きさ。爪の長さで、3寸(約9cm)から3尺(90cm)に分かれます。大きさで当然お値段が・・・。と言っても、そもそも30センチを超える大物は普通の家には置けないので、お店や企業の方が買われます。

一番大きな熊手。これは受注生産で、企業の玄関に飾られるそうです。

最近は壁に穴を開けなくてよい置物型も人気。

そして、大まかいって熊手は「青」、「宝船」、「小判山型」の3種類の基本形に分かれると覚えておくと選びやすい(地域などによる違いはあります)。

もっとも一般的な「青」。名前は上についた松の葉の色に由来。西藤さんの「青」は大きな鯛がつくので、とっても色鮮やか。下方付いた1本のしめ縄は、「一本締め」を意味するんですって。

次は「宝船」。帆の色で印象がずいぶん変わります。赤い帆は力強く、

ピンクの帆は優しい印象。ネイルサロンやアパレルのお店に合いそう、なんて勝手な妄想。

そして、「小判山型」は下から3本のしめ縄ががっちり組まれたもの。これは宝船の舳先を意味します。そういわれると、小判も波のように見えてきた。すごい躍動感!

6.必読!熊手選びのポイント ②センターの飾り

大きさと形が決まったら、中心に来るメインのパーツに着目。見た目はもとより、込められた意味があるので、どんな年にしたいのかイメージしながら選ぶといいですね。例えば、

龍。

升(「ますます」繁盛を願って)

金剛力士像も!

そして神輿まで(運を担ぐ)。もう飾りの域を超えてる!

 

今年の目玉!ネズミちゃん!干支は大切なテーマです。

ちょっとクリスマスっぽい飾りで、売り場の目玉になります。

大きなパーツが印象を決めるので、来年の運をかけて、縁を感じるような飾りを選びたいですね!

 

7.酉の市へGO!

熊手は神社の縁起物なので、基本的に神社で買うもの。酉の市での買い物のポイントはこちらを参照。

全国の酉の市で買うことができ、西藤さんに会えるのは浅草酉の市

ご家族で熊手づくりをされる「西藤」の皆様。とっても優しく、にこやかな方々です。

前項のポイントを押さえていくと、かなりスムーズに選ぶことができますが、困ったらぜひお店の人に話しかけてOK!

新しい年の幸せを願って飾る熊手。今年は納得するものを選んで、がっちり福を呼び寄せましょう!

熊手屋西藤さん、公式ホームページはこちら

この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
阿波踊りが大好きです。
古いものが好きすぎて、日舞や歌舞伎を見て、味噌やら醤油やら作って、もう自分が何歳かわかりません。

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