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全文字言える?京都好きなら絶対知っておきたい「京都五山送り火」2023年もお盆最終日に点火

全文字言える?京都好きなら絶対知っておきたい「京都五山送り火」2023年もお盆最終日に点火

2023年も8月16日に京都4大行事の一つ、「京都五山送り火」が催されます。

「京都五山送り火」は、京都のまちを取り囲む5つの山に、5種類の文字をかたどった送り火を焚くお盆の風物詩です。お盆行事の最終日の8月16日、送り火のためにビルの照明は落とされ、おごそかで幻想的な雰囲気の中で行事は行われます。

京都を代表する行事の一つである五山送り火ですが、皆さんはどの山にどんな文字が灯されているか全部言えますか?この記事では、「京都五山送り火」について、その由来や見どころなどを紹介します。

京の晩夏を飾る、厳かな行事の概要

例年8月16日の夜、「京都五山送り火」は行われます。行事のタイムスケジュールは以下の通りです。

午後8時、まず東山で「」の字が点火されます。

続いて8時5分に松ヶ崎の万灯籠山に「」の字、同じく松ヶ崎の大黒天山に「」の字が同時に浮かびます。厳密には二つの山に分かれていますが、両文字は一つの山の行事として数えます。

そして8時10分、西賀茂の船山には「船形」の火が灯ります。

8時15分、北山に「」の文字(東山に対して、左大文字と呼ぶ)が燃え上がり、

8時20分、最後に嵯峨鳥居本の曼荼羅山に「鳥居形」が浮かび上がります。

各文字は、およそ30分間燃え続けます。京都の人々は、その火に向かって静かに手を合わせ、先祖を送り出します。現在では10万人もの人出があり、京都の一大観光行事ともなっていますが、元々は、静穏な風情の中、お盆の最後を家族で厳かに送るための行事だったのです。

全ての文字を市中で一度に見るのはなかなか難しいですが、京都タワー展望室やホテルの展望台など特別な場所では、五山の5種6文字の送り火が鑑賞できます。

それぞれの文字はたいへん巨大で、例えば東山の「大」文字の大きさは、第1画(横棒)が80メートル、第2画(左へ払う)が160メートル、第3画(右に払う)が120メートル。火床の数は75ヵ所、総数約600束の割り木(護摩木)が配されています。護摩木は事前、もしくは当日までに護摩木志納で受け付けられ、先祖供養や無病息災などの祈願文が書かれています。

人体を形どった?諸説ある由来と歴史

お盆=盂蘭盆(うらぼん)は旧暦7月15日を中心に行われる仏教儀式ですが、死者の苦しみを取り除くために仏事を行うという本来の目的が、民間の祖先崇拝と結びついて現在に至ると言われています。現在では、一般的に一年に一度、ご先祖様が霊界から帰ってくるので、その魂をもてなして再び返してあげる一連の行事として認識されています。

先祖の霊は、お盆の初めに家々に灯される火を目印に帰ってくると言われています。この火が「迎え火」です。そして、送り火は、盆行事の最終日の夕方、迎えた先祖の霊を再び霊界に送り出すために灯されるもの。これらは全国各地で行われる行事ですが、京都五山送り火はこの規模が大きくなったものです。五山の火が灯った後、人々が山に向かって手を合わせる慣習は、先祖供養の気持ちを表しています。

それぞれの送り火は、元々それぞれの山の独立した行事でした。そのため、後述するように、各文字についてそれぞれの創始にさまざまな興味深い説があります。東山の大文字を管理する浄土院周辺地域では、弘法大師・空海が人体をかたどって「大」の字に護摩段を作って、精霊供養や国家安泰を祈願したことが五山送り火の起源とする説が伝わっていますが諸説あります。

「平安京都名所図会」より「大文字山」。(国際日本文化研究センター蔵)

「万灯籠(まんとうろう)」と称された時期もあることから、火で死者を供養したり、火で悪疫を払うという発想が根底にあると考えられています。17世紀の文書の記述から、少なくとも室町末期から江戸初期には五山送り火の形態は成立していたとみられています。

かつては、「い」「一」「竹の先に鈴」「蛇」「長刀」など約10ヵ所で大文字が点火されていたと文献に残っていますが、明治初期までに現在の6文字になったそうです。なくなってしまった理由は、大文字を守る人がいくなったこと。6文字が現存するのは、地元の人々やボランティアによって大切に守られてきたからなのですね。

かつては点火時間なども統一されていませんでしたが、1960年に「五山送り火連合会」ができたことで、今のように順番に点火する形式になりました。この頃から京都三大祭りに五山送り火を加えた「京都四大行事」というフレーズも生まれたそうです。

各送り火の由来と点火方法

大文字

東山の大文字の創始については前述したように、空海が関わるという説や、銀閣で有名な足利義政が戦死した子の供養のために始めたという説もあります。

16日当日は午後7時に「大」の字の中心にある弘法大師堂に灯明がともされます。そこで浄土院の住職と保存会員らで般若心経が唱えあげられ、この灯明を移した親火で火床に点火されます。

妙法

松ヶ崎の万灯籠山と大黒天山の「妙」「法」の創始も諸説あります。

松ヶ崎地区は、14世紀初頭に、村ごと天台宗から日蓮宗に改宗した歴史があります。その時、寺の住職が喜びのあまり踊ったという言い伝えがあり、これが松ヶ崎題目踊りという、地域に伝わる日本最古の盆踊りとも呼ばれる行事になったそうです。

松ヶ崎題目踊りは、日蓮宗の題目である「南無妙法蓮華経」を唱えながら踊ります。時期は「妙」の字が室町とか「法」の字が江戸時代という伝承がありますが、題目の中の「妙・法」の字を火送りの文字にした由縁だとされています。両文字は、灯されるようになった時代が異なると伝わりますが、後世、一つの行事として同時に点火されるようになりました。

16日当日は、万灯籠山で涌泉寺住職及び同寺総代、堂講によって読経が行われ、点火が行われます。点火が終了する9時ごろからは、涌泉寺で題目踊・さし踊が踊られます。

船形

西方寺に伝わるところによると、開祖の慈覚大師・円仁が、唐への留学の帰路、船で嵐に見舞われた時、阿弥陀仏に祈りを捧げたところ嵐がおさまったことから、阿弥陀如来を本尊とし、阿弥陀如来の光背になぞらえた船形の火を灯したのが始まりとされています。そのほか、精霊が乗る船や、仏さまが人々を彼岸へ導くことを航海にたとえた「弘誓の船」の意味も込められているともいわれています。

点火は、当日朝から木を山上に運び、鉦の合図で点火します。

送り火が終わった後、西方寺では六斎念仏が行われています。

左大文字

左大文字の起源についての伝承は少なく、江戸時代に書かれた文書に、その存在が初めて登場します。その一つ、鹿苑寺の住職に書かれた日記によると、「如毎年山上大文字火調之」(※1650年7月16日条)などと書かれていて、鹿苑寺の山上で例年大文字が行われていたことが記されています。鹿苑寺の山上とは現在の大北山のことを指すと見る向きが有力です。

送り火の当日は、この地域の人々の菩提寺である法音寺門前の24カ所の家の前で門火の送り火を焚き、先祖の霊を導きます。送り火の親火の点火台は法音寺境内に置かれ、ここで護摩木を焚いて法要が行われます。そしてその火から親火の松明と、手松明(60本)を取り、山上へと運んで点火するのです。

鳥居形

鳥居形の存在が史資料で確認されるのは、洛外を取り扱った絵地図「洛外図」(1660年頃)です。他に18世紀の随筆『翁草』にて記述がありますが、その起源ははっきりしていません。

他の送り火では火床にあらかじめ点火用の資材が準備されているのですが、鳥居形では、点火の合図の後、親火を松明に移し、一斉にその松明をもって走り、担当の火床に突き立るそうです。油分を多く含む松材を使用しているため、他の四つに比べて赤みが強い炎になっていることも特徴です。

消し炭で健康に!?祭りにまつわる風習いろいろ

京都五山送り火はお盆にやってきた先祖の霊を送り返すためのものですが、一方で、生きている人々の無病息災や家内安全も祈願されています。面白い言い伝えでは、盃に入れたお酒や水に、五山送り火を映してから飲むと、1年間病気にならないというものがあります。

他にも、護摩木に病名と名前を書いて奉納すれば病が治る、護摩木の消し炭を拾ってきて、砕いて飲めば病気にならない、あるいは半紙と水引で包んで玄関に吊るせば厄除けになるなど、現世でのご利益も期待されています。

ぜひ先祖供養と大切な人の無病息災を祈って、京都五山送り火に足を運んでみてください。

2023年の開催情報!

日時:2023年8月16日(水)21時点灯開始

各山点火時間

「大文字」20:00
「妙法」20:05
「船形」20:10
「左大文字」20:15
「鳥居形」20:20

参考:各山送り火観覧スポット

「大文字」20:00〜20:30頃 鴨川(賀茂川)付近〔丸太町橋~御薗橋〕、京都御苑
「妙」20:05〜20:35頃 北山通〔京都ノートルダム女子大学附近〕
「法」20:05〜20:35頃 高野川付近[出町柳より上流]、北山通[松ヶ崎駅より東]
「船形」20:10〜20:40頃 賀茂川付近[北山大橋〜西賀茂橋付近]
「左大文字」20:15〜20:45頃 西大路通〔円町~金閣寺〕
「鳥居形」20:20〜20:50頃 渡月橋付近・松尾橋付近・広沢池など
その他−市内各ホテル屋上など

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