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炎のおにぎり争奪戦!佐賀の「取り追う祭り」がエモすぎた!

炎のおにぎり争奪戦!佐賀の「取り追う祭り」がエモすぎた!

奇祭とは、かつて敗れし男の再起を賭けた挑戦(ロマン)?! どうも、奇祭ハンターのまっくです。〈異形〉のマツリを求めて旅する今回の奇祭旅は佐賀編(25県目)。佐賀の祭りと言えば、佐賀インターナショナルバルーンフェスタ? それとも鹿島ガタリンピック? いいえ、今回取り上げるのは焼き物で有名な伊万里で行われる奇祭「取り追う祭り」。何でも「炎のおにぎり争奪戦」が行われるバトル系奇祭なんだとか。早速、伊万里まで行ってきました。


東京から福岡空港を経由し、電車でいざ佐賀は伊万里市へ。オマツリは夜からなのでいったん佐賀駅で途中下車。佐賀駅前には、平安時代の風流踊りを源流とする佐賀の伝統芸能・浮立(ふりゅう)のかぶいた像が!(いずれこの奇妙な踊りも取り上げたい)。

取り追う祭りの由来とは?

取り追う祭り
どーん。今回の祭りの舞台となる神原八幡宮(伊万里市二里町大里)に着きました。結局、最寄駅からタクシーを使って来ましたが周囲に大きな建物もなく、篝火が幻想的なムードを醸し出しています。

そもそも取り追う祭りとは、攻め手と守り手が「御供(ごくう)さん」と呼ばれる握り飯の入ったザルを奪い合い、五穀豊穣と無病息災を祈願する祭りです。

菊池氏第13代当主・菊池武重

その起源は古く、南北朝時代。南朝方の武将・菊池武重が足利氏率いる北朝軍に敗れ、再起をはかるため火中訓練をしたのが祭りの始まりと言われています。荒っぽい祭りとは聞いていましたが、武士の軍事演習が起源だったとは道理で。

取り追う祭は、その激しさゆえに若手の後継者不足が原因で戦後28年間途絶え、またコロナ禍で2年間の中止を余儀なくされました。今回の開催も実に3年ぶり!

攻め手と受け手が一触即発⁉


時刻は夜8時過ぎ。ついに町の青年を中心に編成された攻め手が境内へと侵入してきました。紺で統一された着物、男の背中がくぅ眩しい。色気しかない。


これをベテラン勢を中心とした、白装束をまとった受け手が迎え撃ちます。攻め手を撃退すべく、受け手が持ち出してきた最終決戦武器とは? そう。何と煌々と燃え盛る松明。やはり火力。火力はすべてを解決する


受け手側が手にした松明を激しく地面にバシバシ叩き付け、侵入者である攻め手を威嚇します。「打ーちゃえんかー」と叫ぶ攻め手に、「押ーしゃえんかー」という絶叫で返す受け手。怒号が飛び交い、境内はよもや一触即発という緊張感に包まれます。

ついに松明合戦が始まった!


同時並行して、神社の下には合戦場が着々と特設されていました。時刻は8時半頃。攻め手と受け手に分かれ、いよいよハイライトとなる「松明合戦」が始まります。


会場に組まれた小屋まで攻め入ってきた攻め手を迎え撃つ受け手。肩にひょいと燃え盛る炎を担いで、まさか、この構えは?

取り追う祭り
必殺・松明斬り!


対して攻め手側は、榊(さかき)の枝で火の粉を払うことで対抗します。うん。ドラクエで最初に手に入れる「ひのきのぼう」ではないけれど、燃え盛る炎に枝一本で立ち向かうってちょっと心許ない。事前に水を被っているとは言え、過去には火傷をした者も出たというのも頷ける。若さゆえの無茶かよっ! しかし受け手側の猛攻は松明だけでは終わらなかった。


「食らえ! 800度の火球」。出ました。敵めがけて火の粉を直接ぶつけるという掟破りの大技(もう松明関係なくなってるやん!)。ドラクエで言えばメラではなくギラ。これにより単体攻撃ではなく、波状のグループ攻撃が可能となります。ほぼ戦争やん!クレージーですよこいつはァ。

これはもう、実際に動画で激しい乱戦を確認してもらいましょう。

宝箱を手に入れ、戦いが終結!?


延々と続く終わりのない見えない戦いにも思えましたが、攻め手側がついにおにぎりが入ったザル「てぼ」を発見しました。テレレレッテッテレー♪ 「ゆうしゃはたからばこをてにいれた」。ここで攻防戦は終了。時刻は8時半頃と、あっという間でした。


攻め手が手に入れた縁起物のおにぎり「御供さん」は氏子みんなで分け合い、長寿や健康を祈ります。

今回のお食事ジャパン


筆者も火中から出てきたおにぎり御供さんをゲット御供さんとは、穀物に宿るとされる精霊の象徴。祭り当日に握られる御供さんは833個とキッチリ数が決まっていて、一説には宮座の数とも、南北朝の戦で亡くなった兵士の数とも言われているのだとか。ちょっと黒く煤が被っていましたが、男衆たちによる迫力の松明合戦を見た直後に食べる男飯は何だかエモかったです。精霊を体に取り込み、はるばる佐賀まで来た甲斐があったぜ。

いかがでしたか? 今回紹介した取り追う祭りは、毎年12月最初の卯の日の前夜に行われます。「武士の戦闘訓練が由来!」という祭りは非常に珍しく、他では、平将門が野馬を敵兵に見立てて軍事演習に応用したことに由来する福島県の相馬野馬追くらいではないでしょうか。それでは、次回の奇祭旅でお会いしましょう。

この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
奇祭ハンター、美酒ナビゲーター。「毎月奇祭」を目標に奇祭旅を行い、お祭りやお酒の情報を挙げています。今までに50以上の奇祭を巡り、600種類以上の日本酒を飲酒。祭りがないときは大体、酒飲んでます。

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