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「獅子舞講座」ではどんなことをする?富山県射水市の三ヶ獅子舞講座の狙いと継承を促す仕組みとは?

更新日:2024/3/7 稲村 行真
「獅子舞講座」ではどんなことをする?富山県射水市の三ヶ獅子舞講座の狙いと継承を促す仕組みとは?

コロナ禍で祭りができていない地域は多い。そのような中で「本番はないが、練習だけでもやろう!」と熱意を持って練習に取り組む地域もある。

今回はコロナ禍の獅子舞伝承を考える上で、興味深い取り組みをご紹介したい。富山県射水市の三ヶ獅子舞(さんがししまい)が2021年6月に始めた「獅子舞講座」は、獅子舞保存会が練習に取り組むだけでなく、地域内外の人々が気軽に獅子舞に触れ合える機会を作ろうという流れで始まった。

この講座では1年かけて座学から獅子舞の実演までを体験できる、とても充実した内容となっている。担い手育成とともにファンづくりまでも行う、この取り組みの新しさと狙い、獅子舞の継承を促す仕組みについて知るべく現地を訪問した。

9回目の三ヶ獅子舞講座に密着!

2022年3月13日、富山県射水市の小杉駅に降り立った。獅子舞講座の会場は駅から徒歩7分ほどの場所にある射水市の「三ヶコミュニティセンター」だ。ここは三ヶという20以上の町内会がある地区の公民館である。

玄関を入るといきなりドーン!とお神輿が置いてあった。さすがお祭り好きな地域だ。お神輿も倉庫にしまっているわけではなく、目立つ場所に置いてあるのだ。

伺ったときの講座は全10回のうちの9回目。10回目は最終発表会となるため今回が最後の練習日となる。受講生たちが目指して練習してきた三ヶ獅子舞とはどんなものか、まずは下記の「受講生募集」の時の動画をご覧いただきたい。

9回目の講座はコロナの状況もあり、子供達の参加がなかなか難しく、参加者は少なかったようだ。それでも10名以上の方々が練習に来ていた。午前10時ごろに参加者の全員が揃うと、まずは3つのパートに分かれて練習が始まった。太鼓、笛、獅子という3つのパートごとの練習である。

こちらは太鼓パートの練習風景。経験者の方が率先してドンドンドン!とリズムを取り、それに合わせるように他の人たちが練習していくような感じだった。ひたすら実践あるのみである。

こちらは笛パートの練習風景。唾が飛ぶことを避けるため、皆向かい合わせにならずにそれぞれが離れた場所で笛を吹いていた。それに加えてマスクをしていても笛を口に当てる際に隙間ができてしまうため、そのマスクの上から布を垂らし口の前面を覆うことで唾が飛ぶことを防ぐという工夫もあった。

笛の参加者は「10種類以上のメロディがあり似ているものもあるので、覚えるのが大変。見よう見まねで一人でも吹けるように練習をしている」とのこと。

こちらは獅子パートの練習風景。胴幕や衣装はつけずに獅子頭だけ持って、動作の確認を行っていた。太刀や花笠も登場するので、獅子の人と動きを確認しあっている姿も見られた。こちらのパートでは子供から大学生、社会人まで幅広い年齢層の方々が一緒に練習していたのが印象的だった。

そして、手作りで作られた練習用の獅子頭がこちら!
本番用の獅子頭はここぞという時に使っていて、練習では基本的に古いものや手作りのものを使っていた。手持ちの部分や口はしっかり作られているものの、目や鼻、耳など上部の構造は省略して作られているのが興味深い。練習では簡素なものでも成立するわけだ。

こちらは昔、昭和の時代に使っていた子供用の獅子頭だ。三ヶ獅子舞は昭和40年ごろに一度途絶えたものの、昭和50年代半ばの小杉駅竣工に合わせて復活した。

以前は大人獅子と子供獅子をやっていたが、この時に復活したのは大人獅子だけだ。将来的には子供獅子も復活させたいという想いがあり、「まずは実際に子供達に獅子舞を見てもらえるような場を作りたい」とおっしゃる方もいた。

10時から11時までのパート別の練習が終わると、そこから12時までの1時間は3つのパートが集まり、合同の練習が行われた。10以上の演目があるので、1つずつ丁寧に動作を確認していく。終始賑やかなムードで行われていた。

そして次回の講座は3月27日に、今年度の集大成として発表会が開催される。今までの練習の成果がどのような形で結実するのか、とても楽しみである。

三ヶ獅子舞講座が始まったきっかけと狙い

獅子舞講座の様子を知っていただいたところで、この講座の狙いについてお伝えしていきたい。
本来であれば、毎年5月第3土曜日に三ヶ地区の獅子舞があるため、その練習が4〜5月にかけて行われる。ただし2年前からコロナの流行が始まり、昨年から獅子舞の練習とは別に獅子舞講座というものが必要になった。「祭りができない今だからこそ、何かやらないといけない」という想いから、2021年6月から獅子舞講座が始まったそうだ。

この獅子舞講座は、基本的には毎月1回どこかの日曜日で行われ、2022年3月までの開催である。1回目が座学で、2回目以降は獅子舞の練習となる。今回伺った9回目の講座が最後の練習の日であり、10回目の講座が最終発表会という流れで行われていた。

定期的に獅子舞講座をやることで、三ヶ獅子舞に興味を持ってもらう狙いがあり、三ヶ地区に住んでいない人でも参加できるようになっている。また、担い手育成という目標がありつつ、担い手になるのはハードルが高いけれど獅子舞をやってみたいという方にも参加しやすい講座内容になっているのが最大の特徴だ。

講座参加費を無料にして継承を促す仕組みとは?

ところで、この三ヶ獅子舞講座は無料で参加することができる。1年間も参加できて大充実の内容なのに無料!?と思う方もいるだろうが、実は講座の参加者ではない地域の方々が金銭的にサポートする仕組みが整っている。

このパンフレットの図を見ていただきたい。射水市、三ヶ地域振興会、三ヶ錦町獅子舞保存会の3者が協力して獅子舞講座を運営しながらも、個人・法人会員からなる「三ヶ獅子舞講座サポート隊」の年会費によって支援されているのだ。

これはお祭りそのものが獅子舞保存会に入ってくるご祝儀などの資金で運営されるのに対して、獅子舞講座は地域の人々が別の形で支えていく独立採算形式で行なわれているということだ。このお金の使い道は獅子舞講座の参加者に対する備品の購入、衣装のクリーニング代、資料代、保険料など様々な経費に充てられているようだ。

これによって完全に補助金に頼り切らず、地域からの支援をもらうことで、自立した資金源の確保に成功している。この講座を運営している方の一人は「皆で理解して皆で支え合うことで、補助金に頼り切らず持続可能な仕組みを整えられる」とおっしゃっていた。「三ヶ獅子舞講座サポート隊」に興味がある方は、上記画像内か文末に再掲するお問い合わせ先までご連絡いただきたい。

今後の獅子舞講座と参加する方法は?

運営の方によれば「獅子舞講座は、コロナ禍でも獅子舞に触れられる場を作るために始まった活動ではあるが、お祭りが再開した後も続けていきたい」とのこと。祭りの代わりにやるというよりは、担い手やファンが増えてくれたらという想いで今後も開催していく予定だ。こちらが今年の6月にスタートする令和4年度の講座の詳細となっている。

獅子舞保存会に所属することを最初から求めてしまうとハードルが高くなってしまう。それならばサークル感覚で参加できる獅子舞講座を設けて、これに満足する人がいればそれはそれでいいし、もっと関わりたいという人がいれば保存会に入ってもらえばいい。そういう自由なスタンスで受講者を募集されているとのこと。

なるほど確かに、所属するということを考えず出入りできるサークルのような気分で参加できる場があったら、気軽に行きやすいかもしれない。もし少しでも三ヶ獅子舞に興味を持った方がいたら、6月からの獅子舞講座に参加してみるのも良いだろう。問い合わせや申し込みは上記画像内か文末に再掲する連絡先に気軽にご連絡いただきたい。

三ヶ獅子舞講座の活動の様子は、三ヶ錦町獅子舞保存会のYoutubeチャンネルにも上がっている。こちらもぜひ、今回の記事と合わせてご覧いただきたい。取材させていただいた時の獅子舞講座の動画はこちらから。

■三ヶ獅子舞講座サポート隊 問い合わせ先(三ヶ地域振興会)
TEL:0766-55-1214
E-Mail:[email protected]

■三ヶ獅子舞講座 問い合わせ先(三ヶ地域振興会)
TEL:0766-55-1214

この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
日本全国500件以上の獅子舞を取材してきました。民俗芸能に関する執筆、研究、作品制作等を行っています。

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