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こんなところにも獅子舞!?酒屋・交番・消防署など、山中温泉街にて

更新日:2020/6/5 稲村 行真
こんなところにも獅子舞!?酒屋・交番・消防署など、山中温泉街にて

石川県南部にある山中温泉街の人々は獅子舞が好きです。獅子舞の担い手である地域の青年団も年々増加傾向にあり、とても活気があります。しかし、今年は同地で9月下旬に行われる『こいこい祭り』が新型コロナウイルスの関係で中止になってしまったようで、獅子舞が行われるかもわかりません。祭りが有る無いに関わらず獅子舞は楽しめるという発想で町を歩いてみると、この地域ではいろいろな獅子舞スポットが発見できます。交番や酒屋など、様々な日常の風景に溶け込む獅子について見ていきましょう。

1. 石川県山中温泉は、獅子舞好きな街

▼山中温泉前で踊り狂う獅子 

山中温泉エリアは石川県の最南端に位置し、福井県や岐阜県にも近い場所です。この地域では、9月下旬のこいこい祭りが獅子舞の本番。周辺の地域は1~2体の獅子が舞うことが多いのですが、この地域では5体が町中を練り歩きます。終盤に山中温泉総湯の前で5体が同時に踊り狂う姿は圧巻です。また、大獅子神輿なども町を練り歩き、獅子づくめの祭りとなります。

▼イベント準備中の山中温泉 

一方で、祭りの時以外でも街のあちこちで獅子が楽しめます。今回は、この獅子舞が好きな地域の人々が獅子舞を日常の中にどう取り入れているかをみていきます。

2.交番に巨大な獅子頭が飾ってある 

山中温泉近くの「仮設交番」。山中交番の新築立て替え工事の際に、臨時で建てられた交番があります。その交番を道路側から窓ガラス越しにのぞいてみると、このような巨大な獅子頭が飾ってあるのです。これは、人間の大きさと同じくらいで、とても迫力があります。 

こちらが一体目の湯女みこしの獅子。唇が赤くて、化粧をしているようですね。鼻が小さくて、顔の横幅が広い印象です。 

こちらが二体目の若衆みこしの獅子。こちらは顔が赤くて、歯が金色です。赤と金の色の配置が一体目と逆ですね。

3.山中節の一節には獅子が登場 

山中節は日本三大民謡の1つと言われており、山中温泉にきたお客さんと芸者が昔から歌っていた加賀市指定の無形民俗文化財です。現在、この山中温泉内の山中座で公演が行われており、山中節の公演を楽しむことができます。

この山中節には「薬師山から湯座屋を見れば 獅子が髪ゆうて身をやつす」などの獅子に関する文言が登場します。獅子が髪をやつすというのはどういうことでしょうか。獅子は44という数字を連想するため4×4=16で16歳の湯女を表すとか、湯女がお客さんの浴衣を頭から被って到着を待っていたのが獅子に似ているから湯女を示すなど色々な説があります。何れにしても、湯女を獅子に例えるようです。山中座の公演には、獅子も登場します。

4. 獅子の里というお酒がある 

また、山中温泉の目の前にある酒屋・松浦酒造では、「獅子の里」というお酒が飲めます。このお酒は、先ほどの山中節にちなんで名付けられた地酒です。

山中温泉のエリアは昔、お客さんの浴衣を頭から被っていた湯女がいることから、獅子の里と呼ばれていました。山中節の一節には、「薬師山から清水を見れば 獅子が水汲むほどのよさ」とあります。水も綺麗な土地なので、お酒もとても美味しいです。 

お店の中には、このような展示用の獅子頭もいくつか飾ってあります。こちらの獅子は剣を噛んでおり、角が金ピカで、木の堀り模様がとっても格好良いですね。

5.祭りが近くなると消防署から獅子が顔を出す 

また、9月下旬のこいこい祭り当日近くになると、御輿の獅子が消防署の車庫に運ばれます。町を散歩していて発見したのですが、一見すると普通の車庫です。しかし、よくみると、御輿の取っ手が少し見えています。まるで、かくれんぼをしているようですね。 

近くから見ると、ででーんとこんな感じです。これは先ほど交番で見た獅子と同じですね。台車付きで、その上に獅子の御輿が載っているのでかなり高さもあり、見上げるように大きく迫力があります。暗闇で見る獅子の顔はどこか怖くもあり、一方で色彩鮮やかで美しいです。こう見ると、昔の人が獅子を女の人に例えたというのもなんとなくわかる気がします。

6.獅子が日常に溢れる石川県加賀市山中温泉

このように山中温泉では、獅子舞が祭り当日以外にも様々なところで見られます。基本的には祭りありきで見られる場合が多いですが、地酒など日常の人々の生活の中に獅子が溶け込んでいるものもあるのです。

現在、獅子舞の担い手不足の地域が多いですが、この山中温泉地域の青年団は増加を続けており、獅子舞の祭りの運営に携わりたいという若者は多いです。やはり、小さい頃から獅子舞に親しむという土壌が十分にあるということも理由の1つかもしれません。

山中温泉の伝統ある湯治文化を背景として、人々の日常に溶け込んできた獅子は地域にとっての誇りであり、子供にとっての憧れでもあります。山中温泉に行く際など、この素晴らしい文化をぜひ体感しに来てみてはいかがでしょうか。

<今回ご紹介した獅子舞のエリア>

石川県加賀市山中温泉町

●獅子舞についてより詳しい情報はブログ「旅してみんか」をご覧ください。

●この記事でご紹介できなかった獅子舞の小道具はこちらで紹介中!

祭り開催情報

名称 第61回こいこい祭
開催場所 石川県加賀市山中温泉  山中座周辺ほか
山中座周辺ほか
開催日 2023年9月22日(金)、2023年9月23日(土)
10:00〜21:00
主催者 山中温泉こいこい祭実行委員会
アクセス JR北陸本線「加賀温泉駅」から「山中温泉行」のバス約30分「山中温泉バスターミナル」下車、または北陸自動車道「加賀IC」から車約15分
関連サイト http://www.yamanaka-spa.or.jp/event
https://www.yamanaka-spa.or.jp/event/123
この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
日本全国500件以上の獅子舞を取材してきました。民俗芸能に関する執筆、研究、作品制作等を行っています。

オマツリジャパン オフィシャルSNS

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