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全国のエモすぎる太鼓踊り7選 鹿踊から仮面神まで

2020/4/25
2023/4/26
全国のエモすぎる太鼓踊り7選 鹿踊から仮面神まで

どうも。奇祭ハンターのまっくです。今回は疫病退散を願って、インパクト抜群の全国のエモすぎる太鼓踊りを7つ紹介します。日本の「太鼓踊り」カルチャーの振り幅のヤバさ、地方で超進化を遂げた圧倒的なダイバシティに全俺を震撼させてください。日本のソウル・ダンスはいいぞぉ!

ド派手は正義?!

太鼓踊り」(たいこおどり)とは、舞い手が太鼓を演奏しながら踊る風流踊(ふりゅうおどり)の一種で、雨乞踊・かんこ踊・ざんざか踊とも呼ばれます。元来、太鼓は神を降ろすための呪具で、災厄を祓うとされてきました。そのため、太鼓踊りには疫病退散や供養のための念仏踊や、太鼓の音が雷鳴を思わせることから雨乞踊の要素も入り、また古くからある田楽踊がド派手に感化されて風流(ふりゅう)化したものも多いそうです。なお、風流踊は2020年に国の文化審議会がユネスコ無形文化遺産登録を目指す国内候補に選び、大きな話題となりましたよね。

〇ユネスコ申請対象の風流踊、全37リストはコチラ
風流踊りがユネスコ無形文化遺産登録申請へ。対象の民俗芸能を紹介!

そもそも風流踊(ふうりゅうおどり)とは、ド派手な仮装や異装束で着飾り、笛や太鼓で囃し、歌い、主に集団で踊る踊りです。疫神祭(京都のやすらい祭りなど)や田楽などを起源として戦国期に盛んとなり、後に念仏踊や盆踊り、雨乞踊、太鼓踊、鹿踊、剣舞(けんばい)、浮立(ふりゅう)など日本の多くの民族芸能の源流となりました。

この戦国乱世に盛んになった風流踊の美的センスを支えたのが「風流」(ふりゅう)という価値観。これは現代のまったりエモい風流(ふうりゅう)とはむしろ真逆で、ショッキング&華美な趣向を凝らした「祭りは目立ったもん勝ちやぁぁぁ!」な熱く激しい戦国バサラなスピリッツを指しました。
#ド派手は正義

これはストイックな侘び&寂びとは対極にある美的センスで、このギラギラした野生味あふれる戦国バサラなフリュウの体現者(インフルエンサー)たちは風流者(ふりゅうざ)と呼ばれ、後の「ひょうげ者」や「かぶき者」にも影響し、少しずつ形を変えて多くのフォロワーを生み出しました。もっとも華美でド派手な贅沢が禁止された江戸時代になるとこの戦国バサラな熱いフリュウ魂は失われ、次第に薄まっていったようです。
#風流者(ふりゅうざ)→バサラ→ひょうげ者・数奇者→傾奇者(かぶきもの)・伊達者という系譜

「俺たち風流者(ふりゅうざ)。ワビ&サビやキレイ数寄なんぞ知るか、ボケぇ! 祭りは人の度肝を抜いてナンボ、目立ったもん勝ちやろがい!」(※イメージです。画像は俵屋宗達「風神雷神図」より。そう言えば雷神様も太鼓を背負っているし、彼らって雨乞いの神だよネ)

前置きが長くなりました。今回は完全なる独断と偏見で、この戦国バサラなフリュウ魂の原液が未だ色濃いか(原液濃縮かよ!)、あるいは戦国フリュウが地方文化と独自に悪魔合体したか?と想像をかき立てる、個性が強すぎる「太鼓踊り」を7つ、独自に濃縮セレクトします。

①怪獣感がヤバい! 鹿踊(太鼓踊系)【岩手】

鹿踊

鹿踊(ししおどり、しかおどり)は、江戸時代の南部氏領(盛岡藩陸奥国領)と、ミスターかぶき者こと伊達政宗が率いた伊達氏領(仙台藩や宇和島藩伊予国領など)を中心に伝わる伝統舞踊です。

大別して2系統あり、南部氏領の鹿踊が舞い手が演奏を行わない「幕踊系」にカテゴリーされるのに対し、伊達氏領の鹿踊は舞い手が太鼓の演奏を行う「太鼓踊系」に分類され、太鼓踊りの流れを組みます。頭に被る太鼓踊系のしし頭の圧倒的な怪獣感が激ヤバ!(ちなみに幕踊系のしし頭はリアルな獣性から遠ざかった抽象化と記号化が進み、こっちはこっちで謎の異星人感がヤバいです)。

東京鹿踊による鹿踊奉納(@西向天神社)

毎年9月中旬に3日間にわたって開催され、100基を超える神輿などの豪華絢爛なド派手パレードが展開される「花巻祭り」では、この太鼓踊系の鹿踊を数多く見ることができます。なお、東日本の太鼓踊りは一人立の獅子舞という形式を取りますが、一般的な太鼓踊りは西日本に広く分布しています。順に見ていきましょう。

②忍者感がヤバい! 猟師かんこ踊り【三重】

かんこ踊りは三重県に伝わる太鼓踊で、胸にかんこ(羯鼓)と呼ばれる締め太鼓を下げ、両手のバチで打ち鳴らしながら輪になって踊ります。被り物や背に担ぐものが華やかでド派手なまごうことなき風流(ふりゅう)芸能です。かんこ踊りは北陸など全国に分布していますが、三重県で最も濃密な風流進化を遂げ、現在はお盆に精霊送りとして踊られる念仏踊系と、4月・10月の春と秋に踊られる疫病退散の雨乞踊系の2系統に分かれます。

中でも猟師町で毎年8月13~15日に毎晩行われる「猟師かんこ踊り」は、初盆を迎えた家々を回り、夜通し踊る供養の念仏踊です。頭にシャゴマと呼ばれる派手な花笠を被り、漁師町らしく紺の波文様に染め抜いたハッピ・手甲・脚半を装着。精霊の化身となって力強く踊ります。一説では精霊に敬意を払って目を合わせないようにするためとも言われる、どこか忍者を彷彿とさせる異装束がヤバいです。

ほかにもどこか南国ハワイアン感がある装束の「佐八町かんこ踊り」や、太鼓を口に加えて踊る「加太板屋のかんこ踊り」、竹に火をつけて振り回す火振りを披露する(まさにフリュウ!)「多気町のかんこ踊り(火振り踊り)」など、三重のかんこ踊りカルチャーは地域によって特色のある多様なダイバシティ進化を遂げています。

③鬼面がヤバイ! 黒川の花傘太鼓踊り【滋賀】

黒川の花傘太鼓踊り」は、毎年4月第三日曜、滋賀県の山里集落、黒川の大宮神社で奉納される祭礼です。室町時代の風流踊にハッキリと原型をもち、これもまた雨乞いとその返礼踊りとして踊ります。花傘を被った太鼓打ち法螺貝吹きの衣装も華やかですが、鬼面を被り、軍配と棒を持って踊る棒振りの奇抜な異装束がひと際目を引きます。

④太鼓が鬼デカイ! 表佐太鼓踊り【岐阜】

江戸時代初期、雨乞信仰は太鼓と結びついて西日本中に広がっていきました。「表佐(おさ)太鼓踊り」は、毎年10月の第一日曜に行われる、盆踊り王国・岐阜県が擁する雨乞踊であり、雨が降った後の礼踊りです。娯楽や鍛錬の追求がエスカレートした結果、太鼓がどんどん大きくなり、現在は直径1.0~1.3メートル・重さ50~60キロもの大太鼓を腹につけて踊ります。

⑤カーニバル感がヤバい! 市来の七夕踊り【鹿児島】

鹿児島の太鼓踊りは、江戸で大流行していた疫病を駿河の念仏踊が鎮静化させたという噂を島津義弘が聞きつけ、薩摩に移植。以来、鹿児島では集落ごとに特色のある太鼓踊りカルチャーが花開き、現在でも約200の太鼓踊りが雨乞いや疫病退散を祈願して踊られています。

中でも大里地区の農村エリアで毎年8月7日に近い日曜日に行われる「市来(いちき)の七夕踊り」は、異彩を放つ造形の虎や牛の動物張り子が登場した後、琉球王の行列、大名行列がド派手な祝賀パレードが特徴的で、最後に太鼓踊りが登場するという異色の祭り(念仏踊系)です。田園風景で展開される一大カーニバル感がヤバいです。

⑥仮面神がヤバい! 八朔太鼓踊り【鹿児島】

三島村の硫黄島で毎年8月1日・2日に行われる「八朔太鼓踊り」の起源はハッキリしませんが、1598年の朝鮮出兵の際、地元民が島津義弘を助けて戦功を立てたことによる祝賀祭が起源と言われています。

矢旗を背負い、太鼓を抱えた踊り手と、鉦を持った歌い手が歌い、踊った後、決して逆らうことは許されない天下御免の仮面神メンドンが乱入! 手に持つ神木スッペンで観客をシバき上げて暴れ回り、悪霊を祓います。南国の離島で来訪神ミーツ太鼓踊り。

なお同じく三島村の竹島で同時期に行われる「竹島八朔踊り」(ボゼ踊り、高面)、黒島で12月に行われ、ゴブリンめいた異形の仮面が多数登場する「黒島大里八朔踊り」も仮面の奇祭として要チェックです。

⑦ヒーロー感がヤバい! 市川の天衝舞浮立【佐賀】

浮立(ふりゅう)とは、豊年感謝を示して秋に奉納される佐賀県を代表する神事芸能です。字こそ違えど、浮立(ふりゅう)という名称がもう戦国のフリュウ魂を受け継いでそうですよね。

中でも毎年10月15日に近い休日に奉納される「市川の天衝舞浮立」(てんつきまいふりゅう)では、舞い手が7キロもあるド派手な角状のテンツキを頭に装着。腰にはゴザ、両手にバチを持った「仮面ライダー響鬼」スタイルで大太鼓を打ちます。そのタツノコプロ的なヒーロー感ある装束が激ヤバ! 舞い手が太鼓を担ぐわけではないものの、選ばれた一人が太鼓を打つこの芸能も広義の意味での太鼓踊りと言えるようです。

https://www.youtube.com/watch?v=Z_4gCZ53WE0

番外 勝山左義長【福井】

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太鼓踊りではないのかもしれませんが、ひょうげ系の太鼓祭りとして勝山左義長も挙げておきます。勝山左義長とは、左義長(※地方によってどんと焼き、鬼火などとも言う)の一種で、最終日の夜にどんと焼きを行うのはもちろん、カラフルな色短冊と御神体を飾り、勝山左義長ばやしでドンドコ盛り上がります。勝山左義長ばやしでは、ド派手で華美な長襦袢姿の老若男女が「浮き太鼓」を披露。

浮き太鼓」は、地打ち方、浮き方、座り方(何とその名の通り太鼓に座る役!)の3人が、「浮かれながら」太鼓を叩く(ひょうげ者かよ!)というのが何とも風変わりです。
#ひょうげは正義

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