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熊本県八代市の世界遺産がスゴい!2023年「八代妙見祭」で荒ぶる馬、絢爛な笠鉾など見どころ徹底解説!

2023/11/20
2024/3/5
熊本県八代市の世界遺産がスゴい!2023年「八代妙見祭」で荒ぶる馬、絢爛な笠鉾など見どころ徹底解説!

熊本県八代市で11月に行われる「八代妙見祭」は、全国的にも有名な八代神社(妙見宮)の秋の大祭で、九州三大祭りの一つにも数えられています。

2023年も11月22日(水)、23日(木)に盛大に開催される予定です。

祭礼は1カ月間にわたりますが、最大の見どころは11月23日に行われる「神幸(しんこう)行列」。40種ものめくるめく出し物が登場し、観客を魅了します。この記事では祭りの由来や、見どころの出し物について詳しくご紹介します。

(2023年11月16日編集部更新)

八代妙見祭の始まりと「妙見さん」

八代妙見祭は古くから地元の人々に愛され、大切に受け継がれてきたお祭りです。祭りの起源は定かではありませんが、今から500年前にはすでに神輿の神幸や流鏑馬(やぶさめ)などの祭礼行事が行われていたようです。

現在の神幸行列の原形は、1632年に八代城に入城した細川忠興(三斎)によって作られました。忠興は妙見宮に参拝した際、神器(しんき)に刻まれた文様と細川家の家紋が同じだったことに不思議な因縁を感じ、神輿や神馬(しんめ)、飾馬(かざりうま)などを奉納したそうです。

八代神社は、明治時代に改称されるまで妙見宮という名前で、地元では今でも「妙見さん」と呼ばれ親しまれています。

神社の起源は今から1300年以上前の飛鳥時代、中国大陸から妙見神がやってきて、八代神社から約2km離れた「竹原の津」に上陸し、後に妙見宮に祀られたことと伝わっています。

妙見神は、北極星と北斗七星を神格化した神仏習合の神様で、竹原の津へは亀と蛇が合体した想像上の動物「亀蛇(きだ)」の背に乗って海を渡ってきたという伝説があり、今でも亀蛇は祭りで一番人気の出し物です。

明治政府から神道と仏教の分離令が出て八代神社となってからは、日本神話において妙見神と対になる根源神の「天御中主神(あめのみなかぬしのみこと)」と「国常立尊(くにとこたちのみこと)」が祀られています。

実は1カ月続く!八代妙見祭の催し

八代妙見祭の見どころは何といっても11月23日の神幸行列ですが、関連行事の斎行は1カ月にわたります。10月31日の祭りの開始を知らせる「注連縄立て(しめなわたて)」から始まって、11月前半は祭りに参加する神馬や獅子のお祓いなど、大祭の無事を祈念する神事が続きます。

11月21日にはご祭神を神輿に移す「宮遷し(みやうつし)」が行われ、翌22日に御旅所(おたびしょ)が設えられた塩屋八幡宮に向け「お下り(おくだり)」の神幸行列が出発します。

お神輿が無事に到着した後、夕方からは市中心部の本町アーケード一帯で御夜(ごや)と呼ばれる前夜祭を開催。出し物の展示のほか、神楽や棒踊りなどの伝統芸能が披露され、多くの人出で賑わいます。

そしていよいよ11月23日は、お神輿が塩屋八幡宮から八代神社へ還御する「お上り(おのぼり)」の神幸行列の日。約1700人による豪華絢爛な多彩な出し物をともなって、約6㎞の道のりを練り歩きます。

例年は、途中のやつしろハーモニーホール横の出町公園とJR八代駅前に観覧席が設けられ、行列の紹介や演舞を見ることができます。また、八代神社に到着した後、午後からは近くの砥崎河原(とさきのかわら)に舞台を移し、有料桟敷席や無料の観覧席に大勢の人々が押し掛けるなか、次々と出し物の演舞が披露されます。

そして最後の行事が12月1日の「注連納め(しめおさめ)」。獅子を神前に納め翌年の神馬奉納者が決定され、祭りは幕を閉じます。

最大の見どころ「神幸行列」の出し物は個性豊か

2016年にユネスコ無形文化遺産にも登録されている八代妙見祭の「神幸行列」。11月22日の「お下り」と翌23日の「お上り」で、40種もの出し物が披露される催しです。ここでは代表的なものをご紹介しましょう。

◎獅子

中国風の鮮やかな赤い毛で覆われた衣装や楽器を用いるのが特徴。元禄4年(1691年)頃、城下の豪商・井櫻屋勘七(いざくらやかんしち)が「長崎くんち」の獅子を習い伝えたのが始まりだそうです。
雄獅子と雌獅子の二匹が一対となって舞い、一匹の獅子の中には二人が入り、息ぴったりに操ります。獅子に子供の頭を噛んでもらうと「元気に育つ」と言われ、縁起ものとしても人気です。

◎花奴

奴(やっこ)とは殿様の道具を運ぶ人たちのこと。八代城主の江戸参府にお供した家臣が、江戸花奴の作法を習い伝えたのが始まりといわれます。「せいとこせ とこせい…」という独特の掛け声に合わせ、奴たちが城主の衣装を入れる「挟箱(はさみばこ)」や立傘を渡し合いながら進んでいきます。

◎木馬

木馬(きんま)は、1738年に八代城主の70歳の祝賀のため、家臣の井坂十蔵(いさかじゅうぞう)が5騎奉納したのが始まりといわれます。1800年代後半には、八代城下の商人たちが「七五三」を迎えた子供のお祝いに、12騎の木馬を奉納していました。

木馬は非常に高価だったため、明治時代以降、奉納数が1騎まで激減。しかし現在では12騎すべてが奉納され、毎年子どもたちがきらびやかに飾られた木馬にまたがって行進します。

◎白和幣

白い御幣(ごへい)を持った老若男女の一団。白和幣(しらにぎて)の「にぎて」とは神に供える麻の布のことですが、のちに紙に変わりました。かつては、女性が唯一奉納者として参加できる出し物でした。

いつから始まったのか定かではありませんが、およそ250年前の記録には、妙見宮周辺の人々がすでに行列に参加していたと記されているそうです。

◎神馬

神馬(しんめ)は、妙見祭に奉納される他の飾馬とは違い、神様のための特別な馬で神事でも重要な役割を担っています。代々、八代城主の愛馬の中から奉納され、その後、田中町から奉納されるようになり、現在は田中町から出されない場合には希望者の中から奉納することになっています。

神馬の警護の任にあたるのが神馬奉行(しんめぶぎょう)ですが、江戸時代までは八代城警備の鉄砲頭(てっぽうがしら)が神馬奉行を務めていました。

◎笠鉾(かさぼこ)

笠鉾(かさぼこ)は、行列のときに曳き歩く山車(だし)で、大きな笠の上に人形や造花、鉾やなぎなたなどを飾りつけたもののこと。昔の人々は、笠鉾には神聖な力が宿り、神様の乗ったお神輿の前で行く手を清めたり、お神輿にお供することで神様を守ることができると考えていました。

妙見祭の笠鉾は9基あり、八代の繁栄や不老長寿などを願い、それぞれおめでたい飾りがついています。部材の数は200~300個ありますが、毎年祭りのたびに釘を1本も使わずに組み立て、解体。修理や改造を重ねながら大切に受け継ぎ、江戸時代後期の姿を今に残しています。

笠鉾の中で1基だけ神馬の前に登場するのが「菊慈童」です。菊慈童は、謡曲「枕慈童」に出てくる少年で、菊の露のおかげで700年も若々しいままだったといい、笠鉾全体に不老不死を願う菊の絵が描かれており、頂には菊の花と少年の人形が鎮座します。

菊慈童は最も由来が古く、旧八代城下の「宮之町」(みやのまち)から出される笠鉾です。宮之町がかつて妙見宮の門前町の一部であり縁が深いことから、笠鉾の先頭に立ち、天候が悪くても必ず妙見宮までお供する習わしとなっています。

◎亀蛇(愛称・ガメ)

「ガメ」の愛称で親しまれている亀蛇(きだ)は、亀と蛇が合体した想像上の動物です。およそ1300年前、妙見神が中国から海を渡ってきたときに乗っていたのが亀蛇であり、その姿を模したものとされています。

亀蛇は、およそ300年前に出町から奉納されるようになりましたが、大きさは全長3m、高さと幅が2.5mで、重さは何と100㎏以上!亀蛇の中には担ぎ手が5人1組で入り、そのうち1人が首を操ります。首を上下左右に振りながら、ユーモラスな仕草で駆け回るその姿は、祭りの一番の人気者です。

◎飾馬(花馬)

八代では花馬(はなうま)とも呼ばれる飾馬(かざりうま)。かつては八代城内から12頭出されていましたが、近年では地域の団体や高校同窓会などの馬好きの人たちによって奉納されています。

八代神社で11月11日に「馬揃い(うまぞろい)」のお祓いを受け、飾り立てられた馬たちが、市中周りに出かけます。行列の中での出順を決めるのは11月23日のお上り行列当日、朝6時に塩屋八幡宮で行われるくじ引きです。

祭りのクライマックスに、砥崎河原(とさきのかわら)を水しぶきを上げながら勇壮に走る、人馬一体となった迫力ある馬追いは圧巻です。

2023年の神幸行列の開催は?

今年2023年は、神幸行列も例年通り11月22日(水)にお下りと御夜が、11月23日(木・祝)にお上りの行列が行われます。

※内容は変更される場合がありますのでご注意ください。

■神幸行列(お下り)
11月22日(水)八代神社出発14:00 ~ 塩屋八幡宮(御旅所)到着17:00頃

■御夜(前夜祭)
11月22日(水) 本町アーケード一帯 17:30〜20:30

■神幸行列(お上り)
11月23日(木・祝) 塩屋八幡宮出発7:30 〜  八代駅前(演舞)9:00〜  八代神社 神輿到着10:30頃、砥崎河原(演舞)12:30〜17:00

まとめ

 熊本県南部の自然豊かな八代市で、親から子へ、子から孫へと何世代にもわたり継承されてきた八代妙見祭。近年では少子高齢化により後継者が減っていますが、祭りの担い手の育成にも力を入れているそうです。

そんな地元の人たちの思いを感じながら現地を訪れ、一緒にお祭りを盛り上げてみてはいかがでしょうか。

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