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よさこい系Twitterアカ世界一「かんしゃら」に聞く、人を巻き込む秘訣とは

2023/4/20
2024/3/7
よさこい系Twitterアカ世界一「かんしゃら」に聞く、人を巻き込む秘訣とは

1954年8月、戦後の不景気を吹き飛ばそうと、高知県ではじまった「よさこい祭り」。県を越え、北海道、東京へと派生し、今では全国約200箇所、海外では34の国地域で楽しまれるお祭りになりました。どこまでも広がり続けるよさこいの輪ですが、SNSという舞台で異彩を放つ『かんしゃら』というよさこいチームをご存知でしょうか。

地域だけに留まらず、SNSの中でもよさこいの世界をつくりあげた『かんしゃら』流の繋がる秘訣を紐解きます。

「かんしゃら」って?大阪・東京・名古屋を拠点に活動する「美しく格好良い鳴子踊り」とは

Twitter公式アカウントのフォロワー数1.2万人。本家高知のよさこいチームの追随を許さず、SNSで圧倒的な存在感を放つ『かんしゃら』。その誕生は2012年2月。

今年70回を迎えるよさこい祭りにおいては、決して長いとは言えない歴史の中で、なぜこれほどまでのフォロワー数を誇っているのでしょうか。

かんしゃらの代表、高津みなとさんにお話を伺いました。

かんしゃら代表 高津みなと氏

ーーーSNSのことをお聞きする前に、チームの立ち上げ部分をお聞きしたいのですが、そもそものよさこいの出会いはいつだったんですか?

2010年、僕が大学3年生のころです。その頃、関西でもすでに多くの大学でよさこいチームやサークルがあったので、結構よさこいという趣味も認知されていたんじゃないかと思います。 多くの方が大学1年生からよさこいをスタートさせる中で、私とよさこいとの出会いは遅い方でしたね。

ーーー何がきっかけで出会ったんですか?

高校時代の友人がよさこいチームに所属していて、練習を見にいったのがきっかけでしたね。

一つの作品を作り上げることに親しみがあったので、運動がてら自分もやってみるか、とそれくらいの気持ちで大阪の社会人チームに参加しました。
ですが、実際に練習し、イベントに出てみると踊ることの爽快感や友人たちとの一体感を感じて一気にどハマりしました。

よさこいに出会ったころの高津氏

ーーーその出会いから2年後にチームの立ち上げをされていて、かなりのスピード感や行動力を感じざるを得ないのですが、かんしゃらさんの「美しく格好良い鳴子踊り」というコンセプトはどこから来ているんでしょうか?

高知で活動されているよさこいチームの影響です。よさこいと出会った1年後に、関西のチームの一員として高知のよさこい祭りに参加しましたが、そこで出会ったのが『十人十彩』というチームでした。華やかだったりエネルギー溢れるチームが多い中で、登場するだけで空気感を変えてしまう存在感に圧倒されてしまって。関西にもいろんなチームがありますが、『十人十彩』のように立ち姿だけでも魅せることができるような格好いいチームを目指したいと、2012年にかんしゃらを立ち上げました。

「美しく格好良い鳴子踊り」をコンセプトに2012年に誕生したかんしゃら

はじまりはこの企画から。よさこい系Twitterアカウント世界1の誕生秘話

今でこそ、よさこい系Twitterフォロワー数世界一のかんしゃらさんですが、SNSをはじめたきっかけは「世界一になる」という意気込みからではなく、チーム運営に対する「危機感」からだったのだとか。その背景には、町とともに成長してきた高知県と他県での認知度の違いがあると話します。

ーーーそもそもSNSはどういう思いではじめられたのでしょうか?

チームのメンバーを増やさないとという危機感からです。70年の歴史があって、町の発展とともに根付いてきた高知県とは違って、他県でよさこいチームを運営するとなると、何らかの発信手段を持っていなければ人を集めることができない。

ーーー危機感ですか!

当時はmixiとTwitterが主流で、ようやくFacebookが出始めたころだったんですが、最初に所属したチームで演舞中に、お客さんが帰ってしまったことがありました。ちょうど僕らの一つ前に有名チームが踊っていたので、見終わったお客さんは僕らに目もくれず帰って行ったんです。それが想像以上に辛くて、そんな想いを自分のチームの子たちにはさせたくないなって思いましたね。

かんしゃら 

ーーーなるほど、SNSは知名度を上げるための手段だったんですね。

知名度があがることで、観客が増える可能性が高まります。その中から新しいメンバーが来てくれるかも知れない。さらに良い演舞環境を用意することでメンバーのイベントへの満足度も上がり、継続的に参加してもらえるのではと思いました。それはチームの存続に大きく関わりますから、とにかく「知ってもらおう」と必死で発信をしていましたね。

また知名度が上がったことでお祭り側にも認知してもらえるようになって、その結果として会場のトリやライトアップの時間帯で踊らせてもらえるようになったのも良かったと思います。

ーーー最初からフォロワー数が多かったわけではなかったですよね?

そうですね。僕がTwitterの話をするときに絶対に欠かせないのが、京都を拠点に活動していた『颯戯|FU-JA』さん。今はもう解散したチームですが、当時はSHARPやTANITAといった大手企業がSNSを使って自社をPRする動きが流行り始めたころで、その流れをよさこい界に取り込んだチームです。

ーーー『颯戯|FU-JA』さんからはどんな影響を受けたんですか?

僕らの認知度を引き上げてくれたのが、颯戯さんと一緒に展開した『よさこい紅白』という企画。

年末の風物詩といえば、NHKの紅白歌合戦という方も多いと思いますが、それを模してTwitter上で開催しました。

約180チームのよさこいチームが集まって、自分たちが「今年一番!」と思う演舞を紅白に分けて紹介していく。最終的にいいね数が多かった方の勝ちという企画だったんですが、本物の紅白歌合戦などの大御所テレビ番組が放送されている中で、Twitterのトレンドに「よさこい」という言葉が入ったりして、改めてSNSの影響力のすごさを感じました。

約180ものチームが集まった

キーワードは共感。かんしゃら流、SNSで「人を巻き込む」秘訣

SNSをはじめて約11年、この期間ずっと継続的に発信するだけでなく、思わず「いいね」や「リツイート」をしたくなる、かんしゃらさん流の「仕掛け」について伺いました。

ーーーSNSを運用する上で心がけていることはありますか?

「共感」ですね。僕らのツイートでいわゆる初めて「バズった」のは、Twitter内で流行っていたものをよさこいバージョンに落とし込んで発信したもの。例えば人気漫画の名台詞をよさこいバージョンに置き換えたり。

ーーー私も見ましたよ!一斉に拡散されて、かんしゃらさんの投稿は人を巻き込んでいく力がありますよね。

僕はよさこいとTwitterは親和性が高いと思っているんですよね。よさこいはお祭りなので非日常のもの、だけど日本全国に踊り子がいるぐらいに夢中にさせるエネルギーがある。だからこそ、よさこいに関して「あるある!」ってつい言いたくなるようなものは拡散されやすいと思うんです。Twitterで流行っているものを敏感にキャッチして、よさこい界で共感できるものに置き換えたり、いろんな工夫をしながら露出を増やしています。

ーーーなるほど、共感をしてもらうことで「かんしゃら」というチームの名を覚えてもらう。それが、結果的に踊り子さんのためになるということなんですね。ちなみにSNSを運用するにあたって気をつけていることってありますか?

炎上させないことはもちろん意識をしています。あとは、チームのメンバーに対して公平であることですね。

ーーー公平ですか?

よさこいチームの公式アカウントって、他のアカウントから自分のチームのことを投稿してもらったらリツイートしたがると思うんですが、僕はそのリツイートを偏らせないようにしています。チームの中には踊りがうまいとか、華があるとかで、アイドル的な人が誕生したりする。結果的に注目が集まってアイドル的な子たちの露出が増えるんですけど、公式アカウントがそればかりを後押しするようなことはしてはいけないなって。公式アカウントの存在意義って、メンバーのためにあると思っているので、そこは公平に考えていますね。

ーーーなるほど、そういったことまで意識しているのですね。

あくまで私の考え方、スタンスでしかないので今まであまり公には言ってこなかったんですが、今年で解散するのでこの機会にお伝えさせていただきました。やっぱり目立つ人ばっかりではなく、メンバー全員を大事にしたいですからね。

SNSのその先。かんしゃらは次のステージへ

新型コロナウィルスの影響で、よさこい祭りを含めた日本全国のよさこい系イベントが中断した3年間。現地での交流がなくなった中で、次なる交流の場として繋がりの輪が広がりだしたのがSNSという土壌でした。少しずつお祭りやイベントが復活している中、SNSの第一線で走ってこられたからこそ感じるリアルでの変化について聞いてみました。

ーーー今少しづつお祭りやイベントが復活している中、かんしゃらさんとして感じることはありますか?

先日、山口県のイベントにかんしゃらとして参加したんですけど、「来場されている方全員が見に来てくれたのでは!?」と思うぐらいの人が集まってくれて。MCが「かんしゃらです」って言うだけで、割れんばかりの拍手が起こったんです。

ーーーコロナ前まではそうではなかったのですか?

活動してきて10年になりますが、こんなに温かく迎えられたことって今までで一度もなかったですね。僕らが賞をとるようなチームだったりすると、こういう光景もありうるかもしれないのですが、僕らはそういうチームでもないし、有名な先生がプロデュースしているチームでもないので。

ーーー山口に行ったのは何か理由があったのですか?

これもSNS効果ですが、踊り子さんで山口から新幹線を使って練習に参加してくれている方がいて。わざわざ山口から来てくれることへの恩返しのつもりで、その方の地元に遠征へ行くことにしたのですが、まさかこんなにも温かく迎えてもらえるとはと驚いています。

ーーー最後に、今年解散されるということですが、今の心境を教えていただけますか?

最初は賞をとるようなチームになりたいと思っていたんです。でも僕たちが得意なことを伸ばすことで、たくさんの関わりをもつことができたと思っています。踊り子さんだけで考えても1,000人ぐらいの関わりがありましたし、SNSを通じて知り合った方はもう数えるのも難しいぐらい(笑)。

ーーーすごい人数ですよね。影響力の凄さを感じます。

ありがとうございます。最近、「やりきった」という言葉が自分の中でよく出てくるようになったんです。やりきったということは、これ以上自分の中でおもしろくすることができないってことなんじゃないかって。よさこいには本当に多くのものを学ばせていただきました。だからこそ、1回充電というか、よさこいをやっていたからこそ体験できなかった他のお祭りも見に行きたい。

ーーー確かに、よさこいは他の祭りと比べて年中イベントがありますもんね。

オマツリジャパンさんでもたくさんのお祭りを紹介されていますが、日本にはまだまだ面白いお祭りがたくさんある。とはいえ解散までの残りの数ヶ月、踊り子さんファーストで駆け抜けたいと思います!

 

お祭りは地域だけのもの。
SNSは若い人だけが楽しむもの。

そんな垣根を取っ払ったとも言えるかんしゃらさんのSNS術、いかがだったでしょうか?

「なかなか踊り子が集まらない」そんな悩みを持っているチームやお祭り運営者は、「共感」をキーワードにSNSへチャレンジしてみることで、SNSの枠を越えた繋がりが生まれるかもしれません。

かんしゃらさんの引退演舞は、2023年6月に開催される『能登よさこい』を予定しているとのこと。熱狂の渦をつくりあげたかんしゃらさんのラスト演舞を見に行ってみませんか?

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