観光経済新聞のコラム記事連載が、2019年9月14号からスタートしました!「お祭り」をフックに旅情あふれる記事を、オマツリジャパンライターの皆さんに書いていただき、毎週掲載して行きます。普段のマツログ記事とは一味違う表現で書いていただいていますので、ぜひお楽しみください。(オマツリジャパン編集部)
「梯子(はしご)祭り」をおススメしたい。といっても、“はしご祭り”という名前のお祭りがあるわけではない。複数のお祭りを連続で訪れる、お祭りの“はしご”のことである。
5月の長期連休、まず私が訪れたのは富山県高岡市。ユネスコ無形文化遺産にも登録された「高岡御車山祭」。車輪に施された金工、漆工の美しさが目を見張る。古くから工芸技術で栄えた風情ある街並みには、今では古民家カフェも増えてきているようだ。
次に向かうのは富山県南砺市の「福野夜高祭」。夜に朱く浮かび上がる行燈(あんどん)山車が曳(ひ)きまわされる。船などをかたどりオリエンタル風の装飾が施されたきらびやかな行燈を“壊し合う”のが見どころだ。
「おわら風の盆」で有名な富山市八尾の「越中八尾曳山祭」をはしごした後、石川県は七尾市に向かう。高さ12メートル、重さ20トンにもなる日本一大きな山車が、狭い街中に曳きまわされる「青柏祭」を訪れた。街のサイズと明らかに異なる「でか山」は目の錯覚かと思うほど。観客も山車を曳くことができ、はるばる訪ねたかいがあったというものだ。
その後は金沢市まで足をのばし「浅野川 鯉(こい)流し」。空を悠然と泳ぐのが「鯉のぼり」であるが、ここでは川に流される。友禅流しをほうふつとさせる全国でも珍しい端午の節句であった。
再び富山県に戻り南砺市へ。小京都“城端”で催される「城端曳山祭」へと向かったのであった。
ああ、北陸の街並みはどこも奥ゆかしい。いずれの祭りも土地土地の美しい街並みが背景となり、旅情をかきたててくれる。5月の風に吹かれながら祭りを通じて街を知り、歴史を知り、心が豊かになった気分だ。
そろそろ東京に帰る時分だ。道すがら立ち寄ったチューリップ、芝桜、藤、ツツジといった花の祭りも合わせると1週間足らずで巡った祭りは10を超えていた。行程の都合上、回りきれなかったが、5月初旬の富山、石川にはまだまだ祭りがあった。日本にはいくつ祭りがあるのだろう。果てしない。