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寒さ厳しい火伏せ祭り!その裏側にある、地域の助け合いとは?担い手の想いに迫る

2023/3/30
2024/2/29
寒さ厳しい火伏せ祭り!その裏側にある、地域の助け合いとは?担い手の想いに迫る

「火伏せ祭り」の特徴といえば、とにかく寒い中で家々に水をかけて回ること。参加者にとっては難しい所作がなく、一体感を持って盛り上がれるのが特徴とも感じました。

祭りを後世に繋いでいくために何が必要なのでしょうか?2023年1月14日~15日に福島県南相馬市鹿島区に滞在し火伏せ祭りを追いかけながら、継承にかける想いを担い手の方々に伺うことができました。

家々に水をかけて回る、火伏せ祭りを開催

担い手のインタビューの前に、火伏せ祭りの開催概要について触れておきましょう。

1月14日、無火災と無病息災を願い、法被に白足袋を履いた若者たちが柄杓(ひしゃく)で民家に水をかけて回る「火伏せ」が行われました。また翌15日は豊作や一年の安全を願い、御神燈を持った行列や大蛇神楽などが披露される「天燈籠(てんとうろう)」も実施されました。

家に水をかけて回る若い担い手たち

さて、担い手から見た火伏せ祭りの魅力について迫っていきましょう。祭りの休憩中、焚き火を囲みながら談笑されている何人かの担い手に、お話を伺うことができました。

担い手から見た火伏せ祭りの魅力

まずは豚汁を食べながら休憩中の消防団の男性(48)に、お話を伺うことができました。火伏せ祭りを通じて、地域の人々の間でどのような交流が生まれているのかを伺うことができ、祭りが持つ力を改めて感じさせられました。

——今回、担い手の人数は何人いますか?

60人くらいですかね。年齢制限は42歳までともいわれていますが、実際は若い人から年配までいて、特に関係ありません。

――このお祭りの魅力は何ですか?

いつも雪が降っているくらいの寒さでわーっとやるから楽しいんですが、今回はまだまだ寒くないですね。私なんか水でずぶ濡れなんで焚き火にあたりたいですけど、そうでなければあたらなくても大丈夫な気温です。この祭りでは、過酷なことをみんなでやると、変な団結力が生まれるんです。

――みんなで一斉に水を家にかけるという場面もありましたよね?

はい、写真を撮ってくれている人もいますから、ああいう場面は盛り上がりますね。以前は家に水をかけると「お酒飲んでけ!」とよく言われましたが、コロナ禍からは難しくなりました。

――個人的には「(自分の体に)水をかけてください」と頼む家の方がいたのが印象的でした。

そういう場面もありましたね。あとは2階にいる子どもがベランダまで出て来て、水を浴びるということも過去にはありました。この祭りが地域のコミュニケーションに繋がっているんです。担い手も地域に根ざした消防団の人が中心になってやっていることに、意味があるなと思います。

――和気あいあいとしていて良いなと思いました。

コロナ禍前は漬物屋さんの社長の家の前を通ると漬物と日本酒を出してくれたり、たこ焼き屋さんの前を通るとたこ焼きや唐揚げを出してくれたり、寿司屋の前を通るとお寿司を出してくれたりということがありました。60人が3グループくらいに分かれているので、だいたい20人分くらいは用意してくれています。それが余っちゃうとさびしいと言われちゃうこともありますね。(新型コロナウイルスが収束して)マスクが取れたときに、みんなの行動がどこまで戻るかわからないですが、今回はみんなで焚き火にあたれるだけでも良かったと思います。

家数の減少と担い手確保の課題

また、このような内容のことをおっしゃる担い手の方もいました。

――最近のお祭りの現状はいかがでしょうか?

課題が2つあって、参加者の確保が難しいのと、家の数が減っていることです。どちらも地域の高齢化と関係しています。参加者が増えて水をかける家も増えれば、祭りには活気が出てくるのですが。

――家数も担い手も多かった昔は、今よりも時間をかけて祭りを行っていたのですか?

そうですね、しかも家はシャッターを閉じずに開けていました。振る舞いをしてくれる人も多かったです。日本酒とか、ビールとか、するめとか…。あとは今よりも寒すぎて、焚き火の位置からなかなか移動できなかったです。

――なるほど、時代とともに変化しているんですね。

そうそう、あと、街中(鹿島駅近く)は土地に拡張性がないから、自分の家の隣に息子の新築の家が建つとかそういうことがないんですね。街中は土地がないから、新しい世代の人が来にくくて、高齢化したままで、更地とか空き家になっちゃうんです。シャッター街になっている他の町と同じ話ですね。今は車社会だから、駅の近くに住む必要もないんです。郊外に行くと、空いている土地とか蔵を潰して、息子の家を建てることもできます。

私有地を焚き火の場として提供

休憩場所いるのは担い手だけではありません。休憩場所の中心にある焚き火は、なぜ焚けるのでしょうか?都心部などの建物が密集している場所では火災の危険性が高まるので、焚き火をすることはなかなか難しいです。それでも焚き火が実現できる背景には、地域の助け合いがありました。焚き火の薪をくべている地域の方にお話を伺いました。

――この焚き火に使う材料はどこから持ってくるのですか?

製材所から買った木材を使います。今年は暖かいからどのくらい焚べて良いのかわからないですね。コロナ禍よりは今年の方が担い手が増えましたが、その分焚き火の量も考える必要があります。終わったら焚き火は消防車に消してもらいます。

――焚き火をする広場はどのように決まるのでしょうか?

基本的に私有地で、公共の土地ではありません。昔からこの場所を焚き火として使っていたので、使い続けています。下が砂利なので、コンクリートよりは焚き火の跡が残らなくて良いんです。空き地が徐々に増えているので、今後は場所が変わる可能性がありますね。

地域に存在するさまざまな助け合い

火伏せ祭りが終わった後、飲食をする直会(なおらい)の場で、実行委員長の高野敬真さんに、祭りの継承の秘訣についてお話を伺うことができました。祭りが継承される背景には、焚き火場所のみならず、さまざまな地域の助け合いがあるようです。

お話を伺った高野さん(写真左)

――この辺りに公民館はあるのでしょうか?火伏せ祭りでは使っていないようですが。

公民館はありますよ。ただ、火伏せ祭りの担い手たちはこの「すずき食堂」を使っているんです。ボランティアで場所を貸してくださって、祭り出発前の着替えをさせていただいたり、祭りが終わった後の直会の食事会もさせていただいているんです。すごい安い金額(1人1000円)で食事を出していただいてるんですよ。祭りが運営できているのは、こういうお店があるからなんです。
商工会の中に婦人部もありまして、一生懸命ボランティアとして協力してくれています。市の商工会議所が1つの神社に対して支援するのは難しいと県の商工会議所に言われてしまってから、有志が集まって焚き火のところで豚汁を作るようにもなりました。

すずき食堂で火伏せ祭りの準備をする様子

今回、担い手の方々にお話を伺ってみて、さまざまな地域の方々の協力のもとで、この火伏せ祭りが成り立っていることを実感しました。冬に水をかけるという、一見過酷なお祭りではありますが、このような祭りだからこそ、より一層地域の絆は深まります。祭りにとって非常に重要な助け合いの姿を知ることができました。

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