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3年ぶりに有観客で行われた2023年「西大寺会陽」に密着!2千人のはだかが境内を練り歩く

2023/3/31
2023/3/31
3年ぶりに有観客で行われた2023年「西大寺会陽」に密着!2千人のはだかが境内を練り歩く

「はだか祭り」として知られ、今回で514回目となる岡山県岡山市の「西大寺会陽(さいだいじえよう)」。2023年の今年は3年ぶりに有観客にて開催され、「はだか」による「地押し(じおし)巡行」が行われました。

例年盛り上がりを見せる宝木の争奪戦は今回も見送られましたが、それでも3年ぶりの有観客開催とあって2万人の観客と2千人の裸衆が集まり、ようやく祭りの活気が戻ってきました。地域ぐるみで大いに盛り上がった2023年西大寺会陽の様子を密着レポートします。

裸衆の「ワッショイ!」が帰ってきた!地域の人々が心待ちにしていた西大寺会陽

岡山市東区にある西大寺観音院は、高野山真言宗別格本山の寺院です。その歴史は古く、伝承によると751年、藤原皆足(ふじわらのみなたる)姫が千手観音を安置したのが始まりとされています。

歴史の重みを感じる仁王門をくぐると、会陽期間中に建てられている四本柱(しほんばしら)でちょうどご住職による祈祷が行われていました。

この四本柱には、備前、備中、備後、美作の疫病神が封じ込められています。この結界が張られた地面をまわし姿の「はだか」たちが踏み固めることを「地押し」と言い、それにより備前国一帯の邪気が供養され「一陽来福(いちようらいふく)」の功徳が得られると言われています。この四本柱の結界は相撲の土俵上にもみられ、力士はそこで国中の邪気を降ろし、厄災を払い豊作を願う四股踏みの儀式を行うそうです。

そんな予備知識を頭に入れつつ、まだ夜の地押し巡行まで時間があるので周辺の街を散策してみることにしました。

古い商家が並び、「ALWAYS 三丁目の夕日」などの映画のロケ地にも使われたという五福通り。

人で賑わう時間はこれからなので街並みはまだひっそりとしていましたが、通りを歩いているとどことなく祭り前独特のソワソワとした空気を感じます。
ふと見ると、店先でオシャレに楽器をジャラジャラ鳴らすおじさんが…。

手招きされるので同行した取材スタッフのひとりが横に座ると、ありがたいご指導をいただきました。楽しそうに鳴らさないといけないそうですが、やりすぎると「ふざけちゃいけん」と叱られるのでその塩梅がなかなか難しいようです(笑)

その後、ご近所のマダムからは嬉々としてあれこれ街の説明を受け、

言われるまま通りのお店に何軒かお邪魔すると皆さん本当に楽しそうで、我々にいろんなお話をしてくれました。
「3年ぶりに人が戻って来るお祭りについていかがですか?」と聞くと、「西大寺からワッショイ!の声が聞こえてこなくて寂しい思いでしたが、ようやく今夜はワッショイ!が帰ってきそうです。子どもの頃から毎年楽しみにしているので、やっぱり嬉しいですね」と、満面の笑顔で答えてくれました。

五福通りの皆さんは温かくて、とても親しみやすさを感じました。ほんと、いいところだなぁ~。

そしてさらに周辺の街を歩いていると、突然、道端から炭火の香ばしい香りが。
お接待処なのか「まぁ、ひとつ食べてみて」と誘われるがままに遠慮なくいただくと、この焼き牡蠣がめっちゃおいしい!
これだけおいしいと変なスイッチが入って逆にお腹が減ってしまいます。いや、でも地域ぐるみで観光客をもてなし、西大寺会陽を盛り上げようとする空気はなかなか他では感じられない貴重なものでした。

西大寺商店会連合会副会長の森家孝明さんに少しお話をお聞きしました。

――商店会としてどのようにお祭りに関わられているのでしょうか?

はだか祭りに直接関わられるお寺さんや関係者の皆さんはもちろんですが、我々も主催者の一部だという思いで皆さん関わられていると思います。(例年だと)8千人~1万人といわれる裸衆が西大寺のいろんなところから着替えて出てくるわけです。コロナ禍もあって今年は控えておりますが、例年であれば着替え場所として提供、そして簡単な食事なども準備してお迎えしております。そうやって送り出した裸衆のひとりが宝木を取ってくれるといいですし、そうでなくともお接待することで「御福頂戴(ごふくちょうだい)」となればありがたいですね。

とある企業が開設していたお接待処。着替え場所のほか、うどんの提供などで賑わっていました。

――ようやく3年ぶりに有観客開催となりましたが、今のお気持ちはいかがでしょうか?

森家さん「もう裸衆のワッショイ、ワッショイが聞けるだけで嬉しいですね。あとは(宝木の)争奪戦あってのお祭りですから、それを含めて来年こそはという思いはありますね。」

森家さんもおっしゃったように宝木の争奪戦が行われない少し寂しい西大寺会陽ではありますが、それでも3年ぶりに盛り上がりそうなお祭りです。
地域の皆さんも心待ちにし、ワクワクしている西大寺会陽、はだか祭りがこのあといよいよ始まります!

裸衆の熱気に2万人が沸いた!天下の奇祭、西大寺会陽はだか祭り

地元の人たちとふれあっているうちに日もとっぷりと暮れ、いよいよ西大寺会陽(はだか祭り)本番です。まずは、会陽甚句の演舞からスタート!

会陽を盛り上げるために、市内の高校や大学、有志たちによるチームがそれぞれ若さ溢れる演舞を披露。裸衆が現れる前から境内には大勢の観客が押し寄せ、大いに盛り上がっています。

その盛り上がりは、この演舞だけでひとつのイベントが成り立つんじゃないかと思うほど。どのチームも迫力満点の見事な演舞でした。

「はだか祭り」というと女人禁制と思われがちですが実はそうではありません。裸の男衆に負けじと、いや男衆たちに力を与えるかのように女性による会陽太鼓の勇壮な音色が、境内に響きわたります。

さらに冬の夜空には鮮やかな花火が打ち上げられ、お祭りムードは早くも最高潮に達します。

会陽冬花火のドーンという音に呼応するかのように、仁王門から「ワッショイ!」の掛け声とともに裸衆がなだれ込んできました!

この日の夜の気温は約10℃で、厳しい寒さとはなりませんでしたが、、それでも冬の冷たい雨の降る中まわし姿の裸です。当然ブルブルと震えながらの巡行と思いきや、そこは気勢をあげる男衆の勢いが勝っているのでしょう、学校や企業等の一団ごとに石門をくぐり勢いよく垢離取場(こりとりば)に入っていきます。

その姿はまさに勇猛果敢のひとこと。湯気が上がるほどの熱気を帯びながら、身を清める「水垢離行」が行われていきます。本来は「垢離(こり)とり行」という水行ですが、湯気が上がるほどの熱気です。

そして垢離取場で身を清めたあとは本堂へ向かい清水を浴びるのですが、今回は宝木争奪戦が中止のため、あたかもその密集と熱気を表すようなこのシーンがひとつの見どころとなりました。

こうしている間にも会陽太鼓は鳴り続いています。

本堂を過ぎた裸衆は、その後、境内の牛玉所大権現(ごおうしょだいごんげん)に参拝した後、四本柱へと巡行していきます。

そしてふたたび仁王門を抜けて帰路に着きます。

コロナ禍前より少ないとはいえ、2千人の裸衆が次々と境内を巡行する姿は圧巻というほかありません。冬の吉備路に「ワッショイ、ワッショイ」という地鳴りのような掛け声が響き渡りました。

裸衆に手を振りながら声援を送っていた2人組の20代の女性は「3年ぶりなので本当に嬉しいです!」と話し、今回初めて西大寺会陽に来たという若いカップルは「露店だけ行こうと思ってたのですが、ワッショイという声に誘われて裸衆を見に来ました。寒そうだけどかっこいいです。」と楽しそうに話してくれました。
観客の中には思いのほか若い人たちが多く、次世代も伝統文化に関心を寄せているんだなと感じました。

境内に隣接する公園には多くの露店も営業し、ピーク時は多くの人々で賑わっていました。こういう光景もお祭りならではですよね。

裸衆による地押し巡行が終わり、最後は宝木投下となります。

今回は宝木争奪戦に代えて、祝主を務める2つの企業が代表で御福窓から投げ下ろされた宝木を受け取る形となりました。

最後に今回の西大寺会陽をひとまず終えての感想を、ご住職と事務局長にひと言ずつお聞きしました。

まずは別格本山西大寺住職の坪井綾広さん。

別格本山西大寺住職・坪井綾広さん

坪井さん「今日は雨が降って少し心配もしたのですが、思った以上に多くの参拝者の方々に来ていただきました。感動したのは、ある裸衆の皆さんが10人ぐらいで一生懸命『ワッショイ、ワッショイ』と地押しをされている姿、また、例年300人ぐらいで参加されている地元の高校の皆さんが笑顔で湯けむりが上がるぐらい白熱しながら肩を組んで巡行する姿が見られたことです。
いつも当たり前に見られた光景がこんなに感動するものなのか、当たり前じゃなかったこの3年間を経験して、当たり前と思っていたことが実は奇跡だったのではないかと思った時に、この3年間耐えて本当に良かったなと思いました。
ただ、心身を清めてご本尊から宝木を授かる宝木争奪戦が集大成ですので、来年こそは行えるよう精進していきたいと思います。」

そして、西大寺会陽奉賛会事務局長の内田薫さん

西大寺会陽奉賛会事務局長・内田薫さん

内田さん「境内から聞こえてくる『ワッショイ』という声、凄まじい息づかいが境内の外まで漏れているんです。それを聞く周囲の方々に、コロナ禍の3年間を乗り越えていよいよ新しい次の時代が来るんだなという予感を感じさせる会陽になったんじゃないかと思います。
また今回は争奪戦がなかったのですが、その分、地押しに熱量が注がれ『待ってました!』というものになった。まさに、ハレの日のような会陽になったんじゃないかと思いました。」

と、お二方ともコロナ禍の3年を経てようやく元通りに近い西大寺会陽を終えられたことに、安堵された表情でお話しいただきました。

【あとがき】

今回の取材を終えて特に印象的だったのは、関係者の皆さんをはじめ、参加された裸衆の皆さん、そして観客の皆さんからあふれてくる嬉しさや喜びといった感情です。もちろんこれまで取材させていただいたお祭りからも同様の印象はあったのですが、これほどストレートに分かりやすく感じたのは「はだか祭り」という、着衣を脱ぎ捨て、ある意味で己をさらけ出す独特の祭りだからかもしれません。
また西大寺会陽を陰で支える地域の皆さんの裏表のない、陽気であたたかい雰囲気も印象的でした。

祭りの主旨とは違うかもしれませんが、時には虚飾を取り払って裸の付き合いをする、自分をさらけ出すことの大切さを思い出させてくれたような気がします。
関係者の皆さま、本当にお疲れさまでした!

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