首都圏最大級の花火大会の一角でありながら、まだまだ歴史の浅い「みなとみらいスマートフェスティバル」。雑踏警備や打ち上げ場所の制約が多い都市型の花火大会を楽しむにはどんなところに気を付ければよいのだろうか?現場からのレポートをお送りしよう。
MMSFって何?
みなとみらいスマートフェスティバル(MMSF)とは2018年に始まったイベントで公式サイトによれば『新たな価値・賑わいを創出し、「SDGs未来都市・横浜」を広く発信するイベント』である。
一般には横浜みなとみらい地区ででっかい花火大会をやるという認識の人がほとんどだろう。花火大会の他にも「横浜都築太鼓」や「大道芸パフォーマンス」があるが、会場の大きさゆえに楽しめる人は限られる。
さて、過去に別の花火大会をレポートしたときに、大きなプログラムを呼ぶのにスポンサー名が通称として定着することがあるという話をしたが、MMSFでも同じ事が起こっている。その名は「コロワイド」。ちなみにであるがMMSFの花火はコロワイド関係者席に正面を向けている。
公称25分間で20,000発。数えて検証することはできないが、神奈川県では文句なしナンバーワン、関東地方でも有数であることは確かだ。
驚きの火力、これが都会の花火!?
ここからは花火の話をしよう。コロワイド花火はとにかくドカドカ派手に打ちまくり、観客はバカになって楽しむ、そんなスタイルだ。冒頭の写真のようにフィナーレでは銀色の花火が大量に放たれてあたり一面真っ白になってしまう。
都会では場所の関係で打てないことも多い尺玉が、海上に浮かぶ台船からこれでもかと打ち上げられる。
花火好きが1発1発見ると「おっ!あれは・・・」と思う有名な玉も混ざっているのだが、そんなことはお構いなしに次々と消費しまくる。
これは贅沢というよりやっぱり(いい意味で)バカになれる花火である。会場に浮かべた台船から、さらにクレーンで花火筒がつるされていて、ズダダダダと全方位に打たれる花火を見ているとなんだかおかしくて笑ってしまう。
それにしてもこの観客。改めて都市部でこれだけのイベントをするのは困難であろうが、今後の開催を切に願う。
大都市花火大会の枷
長らく横浜に住んでいる人なら、MMSFの前身ともいえる花火大会があったことを知っているだろう。神奈川新聞社が主催していた神奈川新聞花火大会だ。打ち上げ場所もMMSFと全く同じ。しかし、時代の変化とともに多すぎる群衆をさばききることが困難になり2016年を最後に休止されてしまった。
主催者が変わったところで、群衆に変わりはないと思われるかもしれないが、大きな対策として時間短縮、無料席の廃止かつ有料席の値上げが行われている。個人的には特に時間短縮がポイントだと考えていて、それまで1時間15分とか1時間30分とかやっていた神奈川新聞花火大会が、一気に25分にまで圧縮された。
完全な推測だが、関係各所との調整においてもこの時間が限界だったのではないだろうか。
交通、場所取り、実際のところは?
お待たせしました。では行ってみようじゃないか!実は私、MMSFはお初である。実際のところどうなのだろう?例えば小さな子供を連れて行っても大丈夫だろうか?
ここからは時系列で追いかけてみたいと思う。
①チケット購入
チケットはコンビニのマルチコピー機で買うことができた。同じ買うなら早く買った方が一般的には良い席になるので、行くかどうかは早く決めたほうが良い。とはいえ今回ゲットしたのは「臨港パーク芝生エリア内自由席3,500円也」である。エリア入場の権利だけ買って中に入ったら早い者勝ちというタイプのチケットである。購入は6/23であったが、指定席のチケットは6/5発売ですでに売り切れ、自由席となる臨港パーク・カップヌードルパークの自由席は6/21発売で(たった2日後なのに)すでにカップヌードルパーク分は売り切れ。争奪戦だ。
②みなとみらい到着~待機列
暑いので本当はギリギリに行こうと思ったのだが、現地の状況をレポートするために(笑)入場開始の1時間ほど前に到着するようにみなとみらいへ。
さて、最寄駅から待機列までは目と鼻の先。ギリギリまで涼しいショッピングモールを歩いて外にでたらすぐに列の最後尾だ。
つづら折りで並んでいたのだが、そのつづらが10分で1往復半のペースで伸びていく。驚くことに行列はここだけではなく、このエリアの反対側の端にも同じようにゲートがあるから、そちらにも人が並んでいるはずだ。
結局、行列が長すぎたので、ゲートオープンが15分早まった。が、しかし全然前に進まない。東京マラソンのスタートと同じ現象が起こっている。
③入場して場所取り
ようやっと自分の番が来て中に入る。今回は、家族連れを想定しているので列に合わせてゆっくり歩いていく。一等地と思われる前の方から順に埋まっていくが、逆に通路や柵を背負って陣取る人たちも割と多い。今はまだ広々しているように見えるが打ち上げ開始が近づくにつれて隙間にもどんどん人が来ることを考えれば、人によりけりでプレッシャーを受けない場所を押さえるのも良い判断。
マニア向け解説:入場列のコントロール
エリアが広いので、人の流れにムラが出る。こういう時に人を効率よく収容する方法は、端から順にキツキツに詰めていくことだろう。それは極端だができるだけそれに近いことを実現するために、本来通れる場所のフェンスを閉じておいて、観客の入りに応じて開けていくオペレーションが見られた。
④場所取り、そして開演まで
結局、早く来た意味をかなぐり捨てて、本日の観覧場所は臨港パーク芝生エリアでは最後方にあたる通路と植え込みのすき間に決定。そこから撮影したのが③や④の写真だ。目の前が通路なので歩く人が邪魔になりがちだが、密集地帯に比べると平和なものだ。また、臨港パーク芝生エリアには立木が多くよく考えないと花火が木に隠れて見えない。そこは花火観覧に行きまくっているこのわたくし、グーグルマップで予習もしたし、まあまあよい場所を見定められたと思う。何人かの初見さんと思われる方に「花火はどこですか?」「ここから見えますか?」と聞かれたが、私を信じなさいとペテン師のようにバッチリ回答しておいた。(でも見えたでしょ?あの時のあなた。)
ひとつ驚いたのはMMSF、有料エリアに観客をめちゃめちゃ入れている。時間がたつにつれて予想以上にぎゅうぎゅうになり、家族連れが前の方に陣取るにはけっこうな気合が必要だ。しかし、さすがお金を払って来ている皆さん、人口密度のわりに治安がよい。
ここから冒頭のあの花火大会が始まるのである。
警備員も嘘をつく?その理由
花火終了後に落とし穴にはまってしまった。おそらく最寄りのみなとみらい駅がすごく混むだろうと考えて私は離れた横浜駅まで歩くことにした。そうするとメインの出入口と違うところから帰ることになる。で、開場アナウンスもそちらからの分散退場を勧めていたのでその通りにしたのだが、これが大失敗。人間の大渋滞にはまってしまって1時間以上足止めを食らってしまったのだ。別の観覧客に後から聞いたところ、今回については最寄りのみなとみらい駅を目指すのが正解だったようだ。
これで分かるのは群衆の動きは運営本部でも完全には把握できないということだ。ましてや現地に立っている警備員・誘導員では全体を俯瞰することなど不可能なので事前に示し合わせた案内を行うしかない。(勝手に違うことを始めると逆にリスクがある。)
結果的に警備員が間違った案内をしてしまうこともあるが、文句を言っても状況が改善するわけではないので、観客も「雑踏警備とはそういうもん」という知識を身に着けることが大切だ。