「八十八夜」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「八十八夜」と書いて「はちじゅうはちや」と読みます。小学校の音楽の授業で「茶摘み」の歌を習った方は「夏も近づく八十八夜」というフレーズに聞き覚えがあるのではないでしょうか。
そんな「八十八夜」ですが、意味やお茶との関係をご存知でしょうか?この記事では意外と知られていないその言葉の意味や由来、お茶との関係性を紹介します。この記事を読んだ後は、新茶を飲みたくなるかもしれませんよ。
雑節の1つ「八十八夜」とはいつ?
「八十八夜」は日本で作られた暦「雑節」の1つで、その年によって日にちが変わります。この「八十八夜」はどのように決められ、なぜそのように呼ばれるのでしょうか。
そもそも雑節とは何のこと?
「立春」「立夏」「立秋」「立冬」などの「二十四節気」は、農作業の目安にするために中国で作られた暦です。「雑節」とは、「二十四節気」を補完し、さらに季節の変化をつかむための目安として日本で独自に作られた暦のことです。「八十八夜」のほか、「彼岸」「入梅」「節分」「土用」などがあり、その年ごとに国立天文台が「二十四節気」とともに毎年2月初めに翌年の暦を発表します。
2021年の二十四節気と雑節の日付などを鉄道を彷彿とさせるデザインで一覧にしてみました。どうぞご自由にお使いください。
これで日付をしっかり確認して季節の流れに乗り遅れないようにしましょう。#二十四節気環状線#鉄オタと天文オタの結節点https://t.co/YTBaQPwY3x pic.twitter.com/ClhGjPxYEY— ピコファラド (@picoFarad2020) May 20, 2021
何故「夜」がつくの?
「八十八夜」という呼び名は、立春から数えて88日目であることから名付けられています。
現在使用されている「太陽暦(新暦)」の前には、月の満ち欠けを基準にした「太陰暦(旧暦)」が使われていました。この頃は「夜」を基準に考えられていたため、日数の数え方も「88日目=八十八夜」になったといわれています。
八十八夜は現代ではユニークな記念日に!?
「八十八夜の別れ霜」「九十九夜の泣き霜」という言葉があります。長い冬が終わり暖かい春が訪れ、八十八夜を迎える頃になると天候も安定してきますが、その年に降りる最後の霜は「八十八夜の別れ霜」と呼ばれ、これ以降は霜が下りるほどの冷え込みはないと考えられていたため、この日以降に人々は農作業を開始していました。
また、「九十九夜の泣き霜」とは、八十八夜を過ぎても急に気温が下がって思わぬ遅霜が降り、農作物に泣きたくなるほどの被害を与えることがあるからと注意を促す言葉でもあります。
晩霜害で大被害の奈良県大和高原です。
こんにちは。
今朝の気温は氷点下1℃。収穫直前の茶芽が茶色になりました。防霜扇でも一部、霜を防ぎきれなかった様です。九十四夜の泣き霜」ですよ。泣いてもしょうがないので、後処理をしますー。(ノД`) #nhkrw pic.twitter.com/D2Ohdv01s8— 茶農家jyatto(ジャット) (@jyattojr) May 8, 2019
この言葉から生まれた「メイストームデー」という日本発祥の記念日をご存じでしょうか。「メイストーム」は和製英語ですが、直訳すると「5月の嵐」となり、5月頃に温帯低気圧が急速に発生し、大雨や大風をもたらす気象現象のことを指します。
これらの言葉から生まれたメイストームデーは毎年5月13日となっていて、バレンタインデーの88日後に定められた記念日です。この日は「カップルが別れ話を切り出すのに最適な日」「カップルが別れ話を切り出してもいい日」とされています。
メイストームデーの成り立ちには、この時期、新生活など環境の変化をきっかけに別れてしまうカップルが多いことも関係しているといわれています。
5月13日は【メイストームデー】
「May Storm Day」は直訳すれば「五月の嵐の日」という意味だが、この日は恋人に別れ話を切り出すのに最適な日であるとされている。今日はバレンタインデーから88日目にあたり、「八十八夜の別れ霜」という言葉に由来して定められたという。#今日は何の日 pic.twitter.com/6K8kmc9IP2— 地球くん (@chikyukun) May 12, 2018
八十八夜とお茶の関係は?お茶を飲まずに食べる!?
「夏も近づく八十八夜」という歌詞で始まる「茶摘み」という有名な歌があるように、八十八夜は新茶を摘む季節です。八十八夜とお茶にはどんな関係があるのでしょうか。
新茶は縁起がいい!
八十八夜に摘まれたお茶を飲むと「1年間健康に過ごせる」とか「新茶は縁起がいい」とよく言われます。
その理由は主に2つあり、1つ目はお茶に含まれる成分です。八十八夜頃に摘まれる新茶(一番茶)の芽には栄養価やうまみが一番豊富に含まれているため、その後に摘まれる二番茶や三番茶に比べて爽やかで甘味が強いといわれています。
2つ目は、「お米」との関係です。八十八夜は田に籾を撒く時期ですが、「八」という字は末広がりの形をしていることから「縁起がいい字」とされていることや、「八十八」で「米」という字ができることから「八十八夜」という日は農業に携わる人々に大切にされてきました。
茶摘みのサイクルと栄養の違い
茶摘みの時期は九州地方から北上していき、八十八夜の時期に関西地方の茶摘みが最盛期を迎えます。産地により1年に2~4回摘採され、4月下旬から摘む茶葉を新茶または一番茶と呼びます。その後の間隔はおおむね45日間で、二番茶、三番茶と続きます。
お茶は茶葉を摘む時期によって味や香り、栄養価が異なります。一番茶にはうまみ成分が最も多く含まれ、二番茶、三番茶の順に減少していくのだそうです。
お茶を丸ごと食べる新茶の天ぷら
「初物を食べると長生きする」と昔から言われていますが、お茶の産地では新鮮なお茶の葉を天ぷらにして食べています。
春に芽吹いた新芽を天ぷらにした「新茶の天ぷら」は、自然のエネルギーの詰まったお茶の成分を丸ごと採れる茶処の旬の味覚でもあります。
摘みたての新芽に薄く衣をつけてさっと揚げた「新茶の天ぷら」は、柔らかくてほろ苦い味がします。
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まとめ
「八十八夜」は日本の農業やお茶と関わりの深い日です。今年の八十八夜はその意味を思い出しながら、おいしい新茶を飲んで1年を健康に過ごしたいですね。