開催決定。私の好きな言葉です。どうも、シン・奇祭ハンターのまっくです。祭り復活の兆しを見せる一方で、復活か中止か、はたまた規模縮小か?未だ開催情報がわからない祭りも多い昨今ですが、この記事ではすでに開催を堂々と宣言しているアートフェスをご紹介。目当ての祭りといっしょにハシゴ旅する予定に組み入れてみては?
目次
➀道後オンセナート2022【愛媛】
観光人口を拡大し、観光消費を増やすため、4年ぶりの開催となる「道後オンセナート」。
画家の大竹伸朗は、道後に湧き続ける「湯」から地中から天界へと通じる宇宙的イメージを想起し、道後温泉本館を鮮やかに覆う大規模なインスタレーションを設置。
写真家や映画監督としても知られる蜷川実花は、道後温泉別館 飛鳥乃湯泉中庭に、約230点の花の写真を設置し、大規模なインスタレーションを展開。さらに2種類の提灯を使って広場を装飾し、昼夜で異なる雰囲気が楽しめる。
「都市のナマハゲ」や「仮想通貨奉納祭・サーバー神輿」など、伝統奇祭を現代の視点からサイバー・パンクに再解釈した作品で知られるメディア・アーティストの市原えつこは今回、道後の神縁・開運スポットへの道筋を示すど派手な「神縁ポータル」を道後観光案内所に設置。作家が独自に編集したおみくじのような神縁スポット案内がプリントされ、旅人にお告げのように配布される。その他、国内外で活躍する約30組のアーティストやクリエイターが参加する。
■会期:開催中~2023年2月26日
■場所:道後温泉地区
https://dogoonsenart.com/
➁リボーン・アートフェスティバル2021‐2022[後期]【宮城】
宮城県の石巻を主な舞台に、アート✕音楽✕食の総合芸術祭。東日本大震災の被災地で「Reborn-Art=人が生きる術」をキーワードに掲げて2017年から開始され、今回で3回目。後期はワタリウム美術館の和多利恵津子・和多利浩一がキュレーターを務める。
小谷元彦の全長6mの新作彫刻「サーフエンジェル」がメインビジュアルとなり、川俣正、SIDE CORE、加藤泉、風間サチコらが新作を展示。計18組のアーティストが石巻市街地、荻浜、鮎川に作品を展開する。同フェスを象徴する作品となった名和晃平の「White Dear(Oshika)」のある荻浜の「リボーンアート・ダイニング」などではご当地ならではの食を堪能することもできる。音楽イベントも要チェック。
同じく宮城県の鳴子温泉で行われる奇祭「全国こけし祭り」(2022年9月3日・4日開催)に合わせて行くことも検討したい。
■会期:2022年8月20日~10月2日
■場所:宮城県 ⽯巻市街地、牡⿅半島(桃浦・荻浜・鮎川)
https://www.reborn-art-fes.jp/
➂国際芸術祭「あいち2022」
あいちトリエンナーレを前身とする、国際芸術祭「あいち2022」。今回は森美術館館長の片岡真実を芸術監督に迎え、「STILL ALIVE 今、を生き抜くアートのちから」をテーマに国内外の82組の作家の作品を展示する。
愛知県出身のコンセプチュアル・アーティストである河原温を起点に、抽象と具象の狭間で作品を創るバイロン・キム(米国)やミシェック・マサンヴ(ジンバブエ)、カズ・オオシロ(日本/米国)らの仕事を紹介。笹本晃、塩田千春、眞田岳彦、西瓜姉妹(ウォーターメロン・シスターズ)らの作品も展示する。
また会期中は演劇やダンスなどのパフォーミング・アーツも充実している他、
愛知県の奇祭に登場する大人形・猩々に焦点をあてたプロジェクト「猩々大発生」も実施する。
■会期:2022年7月30日(土)〜10月10日(月・祝)[73日間]
■場所:愛知県美術館を含む愛知芸術文化センターや一宮市、常滑市、有松地区(名古屋市)
https://aichitriennale.jp/
➃越後妻有 大地の芸術祭 2022【新潟】
昨年は延期を余儀なくされため、改めて今年開催。結果、従来で最も長い会期となった(11月13日まで)。38の国と地域263組(うち新作:13の国と地域95 組)の作家が参加し、常設210点に新作123点を追加して展示する。
既存の定番作品としては、大きな池の水面に映る鏡像底面に描かれた実像が見る位置によって複雑に変化するレアンドロ・エルリッヒの「Palimpsest: 空の池」や、越後妻有の名所である全長750mの清津峡渓谷トンネルを潜水艦に見立てたマ・ヤンソン/MADアーキテクツの体験型作品「Tunnel of Light」は要チェック。
今回加わった新作としては、無数の小さな時計をムクドリの群れのように配置したインスタレーション作品「movements」(アートユニット「目」による作品)や、白と黒とが織りなすゆらぎにシンプルに圧倒されるエステル・ストッカーの「憧れの眺望」、農夫が永年にわたり使用し、納屋に眠っていた古い農具が黄色一色の空間に吊るされた河口龍夫の「農具の時間」なども気になる。都会の美術館の一室ではなかなか味わえない、里山ならではのスケールを活かした作品群を全身で体感したい。
■会期:2022年4月29日(金祝)~ 11月13日(日)[全145日間]
■場所:越後妻有地域 (新潟県十日町市、津南町) 760k㎡
https://www.echigo-tsumari.jp/
➄瀬戸内国際芸術祭2022【香川・岡山】
香川・岡山の2つの港と12の島々(直島や豊島など)で開催される「海の復権」をテーマに掲げる芸術祭。大地の芸術祭と同じく北川フラムが総合ディレクターを務める。
小豆島では現代アートユニット「目」が、家屋の外壁を室内に延長させ、建物内部にまるで洞窟のように延ばされた体感型の作品「迷路のまち~変幻自在の路地空間~」を制作。
内藤礼の作品と西沢立衛による建築が一体となった豊島美術館やクリスチャン・ボルタンスキーによる「心臓音のアーカイブ」、横尾忠則美術館などがある豊島では、冨安由真による古民家一棟をまるごと使ったインスタレーション「かげたちのみる夢 (Remains of Shadowings)」を夏期から新作展示。
ベネッセハウスや地中美術館、李禹煥美術館、直島銭湯「I♥湯」、家プロジェクトなどがある直島では、「杉本博司ギャラリー 時の回廊」が新オープン。また安藤忠雄設計の「ヴァレーギャラリー」もオープンし、草間彌生の「ナルシスの庭」や屋外には小沢剛の「スラグブッダ88」も展示される。アート✕建築、そして瀬戸内海を望む海景との融合をじっくり堪能したい。
■会期:春会期:04月14日~05月18日、夏会期:08月05日~09月04日、秋会期:09月29日~11月06日
■場所:香川・岡山の2つの港と12の島々
https://setouchi-artfest.jp/
➅岡山芸術交流2022【岡山】
世界で注目を集める最先端のコンセプチュアルアートを岡山に集結させるという尖りまくった国際展の3回目。展覧会タイトルは「Do we dream under the same sky 僕らは同じ空のもと夢をみているのだろうか」。ちなみに疑問符(?)がついていないのは私の誤記・誤植ではなく、「疑問文としてすべての要素を備えていながらも文末に疑問符のないこのセンテンスは、アイディアの入り口にしかすぎません」(公式資料より)とのこと。ね、この辺からもう尖り散らかしているでしょう。
今回はタイのリクリット・ティラヴァーニャをアーティスティック・ディレクターに迎え、韓国のイ・ブルやアメリカのラゼル・アハメドなど12カ国・24組のアーティストが参加(日本からは曽根裕、片山真理、上松祐司、荒川医、笹本晃らが参戦)。またハギャーンとした素朴で荒削りの作風で知られる江戸時代の仏師・円空による円空仏も展示。
ありがたいことに、岡山城・後楽園周辺の歴史・文化ゾーンなど、徒歩で移動が可能なコンパクトな範囲に会場を配置する予定。こちらの展示を見た後、岡山・香川の2つの港と12の島々で開催される瀬戸内国際芸術祭2022(秋季)や、愛媛の道後オンセナートにハシゴするのもアリだろう。
■会期:2022年9月30日~11月27日(51日間)
■場所:旧内山下小学校、岡山県天神山文化プラザ、岡山市立オリエント美術館、林原美術館など
https://www.okayamaartsummit.jp/2019/news/726/
その他のアートフェス
浅間国際フォトフェスティバル2022【長野】
2018年から始まった、国内外の写真家たちの作品を屋内や浅間山麓の美しい自然の中に展示する、写真に特化したアートフォトの祭典。今回は7月16日〜9月4日に、御代田町内の文化複合施設MMoP(モップ)を会場とする「PHOTO MIYOTA」とウェブサイト上に作られた「amana virtual museum」で展開する「PHOTO ALT」を開催。
https://asamaphotofes.jp/
みちのおく芸術祭 山形ビエンナーレ2022【山形】
東北芸術工科大学が2年に1度主催する芸術祭。2022年9月3日(土)〜25日(日)[※一部の会場を除き、会期中の金・土・日・祝日のみ開催]に、山形県山形市中心市街地で開催。三瀬夏之介がキュレーター/ディテクターとなり、900万年前のヤマガタダイカイギュウから、廃村に残された風神雷神像、芸工大生の作品までが時空を超えて出会う「現代山形考」を始め、各種プロジェクトを展開する。
https://www.tuad.ac.jp/yb2022_outline/
BIWAKOビエンナーレ【滋賀】
2001年から続く「BIWAKOビエンナーレ」の10回目。2022年10月8日〜11月27日に開催。近江八幡市街や彦根市街に加え、びわ湖に浮かぶ有人の島沖島や中山道の旧宿場町である鳥居本でも作品を展示。
https://energyfield.org/biwakobiennale/
【番外編】土佐赤岡絵金祭り
江戸時代の絵師・金蔵(通称・絵金)が描く鮮血飛び散る残酷な芝居絵屏風18点を、昔ながらの蝋燭のほの白い明かりに浮かび上がらせて年に一回展示する絵金祭りが3年ぶりに開催。
見方によっては絵金の一人芸術祭という捉え方もでき、炎上消失のリスクがあるため屏風作品を蠟燭の炎とともに展示するというのは現代の芸術祭でもなかなかお目にかかれない大胆過ぎる展示方法だ。
期間中は、土佐絵金歌舞伎伝承会の会員自ら手作りで演じる「絵金歌舞伎」(弁天座)も上演。 なお、屏風絵の展示エリア(本町・横町商店街)への入場には事前予約が必要とのこと。
■会期:2022年7月16日(土)・17(日)、午後7~9時に芝居絵屏風を展示(※事前予約制)。
■場所:赤岡本町・横丁商店街
https://ekinmatsuri.com/
土佐赤岡絵金祭り| https://t.co/ZBhicy0l1m
これは一度は見たい。 pic.twitter.com/w3RokJaRwT— 夕月新三朗 (@shinzayuduki) June 22, 2022
今回の芸術祭特集はいかがでしたか? 大別すれば、クラシカルに最新の現代アートを楽しみたいガチ勢のための「都市型」と、アートと建築と食とエモい旅が融合した「地域型」(町おこし型)の芸術祭に分けることができるでしょうか。
それにしても、こんなにアートフェスが重なっては根っからのアートファンでも足と財布がフランシス・ベーコン「ベラスケスによるインノケンティウス10世の肖像画後の習作」ばりに悲鳴を上げるレベル。書いている途中で「こりゃすべて網羅するのは流石に無理ゲーだな」と全俺の心がポッキリ折れました。どうぞ、ご利用は計画的に。