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大日堂舞楽。秋田県鹿角市に伝わる1300年の歴史を超える舞。

大日堂舞楽。秋田県鹿角市に伝わる1300年の歴史を超える舞。

大日堂舞楽とは

秋田県鹿角市。青森、岩手、秋田、3県の県境に位置するこの地には、1300年の歴史を持つ舞、大日堂舞楽がある。
毎年正月2日に奉納される。地元では祭堂(ザイドウ)と呼ばれ、舞楽の中では日本最古の形として伝えられている。皇居や神社で奉納される舞楽とは姿形が異なり、舞楽の特徴とされる雅楽の演奏も伴わない。舞人は能衆と呼ばれ、4つの集落が分担して舞を伝承している。
2009年にはユネスコ無形文化遺産に登録された。

 

舞の種類と能衆

大日堂舞楽は7つの舞があり、当日は4つの集落が大日霊貴神社(大日堂)に集まり奉納する。
大日堂から一番近い集落、小豆沢では権現舞と田楽舞。約1.5km離れた大里では駒舞、鳥舞、工匠舞。約2km離れた長嶺では鳥編舞。5km以上離れた谷内では五大尊舞を担当している。
当日は各集落で身を清め、それぞれ行列を組み大日堂へと向かう。

能衆達は年の瀬から精進潔斎をするそうだ。

大里の地区長さんが「正月に美味しいものを家族と食べれないのは、可哀想に思うことがある。子供の能衆もいるから、本当は正月に美味しいものを食べさせてやりたいと思っているよ」と厳しい鍛錬を積む舞手を思いやるように話す。「昔は、年の瀬から住み込みだったけれど、今は練習を終えたら家に帰れるから」と言って笑顔に戻った。

舞手の家系に不幸があったり、出産や結婚があったり、良否関わらず何かあると、その家系の舞手はその年踊ることができないと聞いた。子供や住民が少なくなり、伝承はとても難しいことになっているようであった。変わらずにいる、単調なことのように感じるが、とても難しい課題であることを痛切に感じる。

 

当日の様子

当日、4つの集落が大日堂へ集まる前、天照皇御祖神社で五大尊舞の能衆が身を清める姿を目にした。

静かな闇が広がる未明、慣れない時刻と雪のせいか、現地へ到着しても景色の輪郭がつかめない。目の前に広がる暗黒と純白の世界に強張り、進んで足を踏み入れることができない自分がいた。明かりを頼りに拝殿へ向かうと、神主さんが「どうぞ寒いのでこちらへ」と中へ招き入れ、ストーブの近くへ案内してくれる。人の気配にほっとした。
しばらくストーブに寄りながら、窓の外を眺めていると、藍色の装束に身を包んだ舞手が提灯を手に、歩いて来る姿が見えた。時刻は午前4時を迎えようとしている。

舞手が全員集まり、準備が整うと身を清める儀式をする。祝詞があげられることから始まった。舞手に限らず、その地区に関わる人、五大尊舞を影で支える人々も集まり、静かに座って頭をそっと傾げ、神様を迎え入れている。自分も一緒になって目を閉じ、祝詞に耳を傾けた。
祝詞が終わると五大尊舞に携わる人は全て外へ出て、拝殿の前の短い参道を中心に大きく3周する。鳴り響く笛の音に雪を踏む音だけが重なって聞こえる。まだまだ日の出の気配はなく、暗闇は深い。
周り終えると舞手だけが拝殿の前に残る。手を隠すように袖をつまみ、腕を軽く曲げ円を作るようにして両手を前に差し出して祈る姿は印象的で、美しいとも感じた。

中へ戻ると面つけの儀式が始まる。舞台の両端に舞手が立ち、一人ずつ面を受け取りに行く。丁寧に箱から取り出された面を顔に取り付け戻り、また一人と続く。一帯が徐々に真空になっていくように静寂な時間が続いた。全員に面がつけられると、五大尊舞が始まる。
太鼓と板を叩く音が極限に静まった空気を切り、祭文が歌のように重なっていく。能衆の一人が持つ鈴がリズムをつくりだし、音、声、舞が一つにまとまった。さほど広くない拝殿に何重にも重なり深みを増した音色が響き、立体的になっていく。無駄な反響がなく隅々まで純度の高い音色が響き渡っている気がした。

5分以上続く舞は後半に行くにつれて熱気を増していく。別次元の空間にいるような不思議な感覚と気が入り込み芯から熱が湧く。舞終わり静寂が戻ると、屋根上の雪がなだれ落ちた。ゴゴゴという鈍い音を聞き、我に返る。
薄青い雪国の早朝は神聖だった。

大日堂舞楽はここからが本番である。
4つの集落が集まり、秋田県最大級とされる壮大な社殿建築の中で見る舞楽は格別に素晴らしかった。
たった一台しかないストーブに大勢でにじり寄っているように、観客は肩を並べて見入っている。自分も余程興奮していたのか、外は零度を下回るというのに、帰る頃には大汗をかいていた。

大日堂舞楽と迎えた1月2日。清々しい迎春だった。

 

インフォメーション

名称 大日堂舞楽
開催場所 秋田県角鹿市八幡平堂の上16
開催日 2020年1月2日(木)
毎年1月2日
アクセス JR花輪線八幡平駅からすぐ
関連サイト http://dainichido.p1.bindsite.jp/bugaku/
https://www.mapple.net/spot/5000347/
written by
鹿ちゃん

鹿ちゃん

写真家として、日本中のお祭を撮りながら旅をしています。
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