今年も節分の時期が近づいて、コンビニやスーパーにも恵方巻きが並び始めた。
意外かもしれないが、「豪華な太巻きを恵方に向かって無言でもぐもぐ食べると願いがかなう」恵方巻きという風習がが全国に定着したのはこの20年ほどとごく最近だ。
もともとは大阪の一部の風習だったが、セブンイレブンが「恵方巻き」という商品名で1998年から全国展開。T.M.Revolutionの名曲「 WHITE BREATH」がヒットして、裸ジャケットで全てを冬のせいにして暖めあおうとしてた頃なので、実はめちゃくちゃ最近できた流行であり、今リアルタイムで広がりつつある最新の伝統文化として民俗学の対象でもある。
あまりにも急に広がりすぎたの概念なので、むしろ親近感もあるほどだけど、
つい最近(といっても数年まえだが)政府の鳴り物入りで始まった「プレミアムフライデー」は既に懐かしき存在。同じくぽっと出(失礼!)な風習の恵方巻きという風習もいつ消えてもおかしくない。
特にこの混迷の時代、いくつもの祭りや儀式が例のアレによって危機を迎えている。風習どころか、今後人類絶滅の危機が来ないとも言い切れない。
大手コンビニやスーパーの供給に頼らない代替品…そう、『ジェネリック恵方巻き』とも呼べる何かを探すことで、この混迷の世の中をサヴァイブしていきたいというのが、この企画の目的である。
ということで、恵方巻きを成す要素(黒くて太い円筒状のもぐもぐ食べられる)を満たしそうなものを買いそろえて近所の公園にやってきた。
これでも精鋭をそろえたつもりだ。
まずは比較用に、いわゆる「恵方巻き」を食べてみよう。
五目恵方巻きというオーソドックスなもの。具はたまごに高野豆腐、キュウリかんぴょう&おぼろ・今年の恵方は南南東らしく、多分こっちだと示す地図アプリを信じて実食。
こういう「太巻き一本まるまる」って商品、もうこの時期しか見ないよなあ…と思いながらもぐもぐ。
やっぱり恵方巻きの味がすると安心するけど、これを超えるものを探さなければならない。
次はエクレアだ。
フランス語で「稲妻」を意味するクリームをシュー生地で包んでチョコでコーティングしたお菓子。
黒くて太くてぎりぎり円筒状だし、5m離れれば見分けはつかないだろう。
極太明朝で書かれがちな「恵方巻き」とは対極にありそうな概念だけど、恵方を向いて食べたらどうだろうか。
うん、普通にスイーツ。
恵方巻きって結局太巻きなので地味にとんでもないボリュームあるけど、これぐらいのエクレアなら無理なく食べられる。暖かいコーヒーが欲しい。
今回唯一のドリンク枠、MONSTERにいこう。
これもおなじみの真っ黒い缶に蛍光色の爪痕が鮮烈な印象を残す大容量エナジードリンクだ。
L-アルギニンとか高麗人参成分で今日もぼくたちはげんきにやっています!!!黙って一気に飲み干す!!
今回選んだなかで一番黒くて太いけど、ケミカルな感じがなんか惜しい。
これそもそも一気に飲むもんじゃないな…(完飲してから思った)
つか鳩多いな。
最後は麩菓子。
棒状の麩を黒糖でコーティングした駄菓子界のレジェンド、無骨でシンプルな造形が素敵。
ちなみに12本入って200円弱!!今回選んだなかでぶっちぎりでお得!!
口の中の水分を急速に奪われながら無言で食べていると、鳩の視線を異様に感じるようになった。
うおっ(バサバサッ)
おいおいおいマジかよ…
奇跡じゃねえか!!!!
旧約聖書におけるノアの箱舟の物語で大洪水の終わりを告げたのは、放った鳩が持ち帰った一本のオリーブだった。もう麩菓子が新時代のジェネリック恵方巻きということで、異論はないだろう。
人類を、どうか頼んだぞ。
これにて新時代の可能性の扉は開かれた。
はるか時代の果て、もし世界から恵方巻が消えたとしても、
たとえ人類が宇宙へ進出し、知らぬ惑星で新たな暦を紡ごうが、
節分の時期は麩菓子を恵方に向けて無言で食べることで、新たな祈りを込めていくことになるだろう。
その時は絶対に鳩たちも連れていこう。