下駄、持っていますか?「どうしても鼻緒が痛くて」「草履や雪駄に比べて固いのが苦手で」という方も多いはず。
しかし!浴衣に下駄はやっぱり定番。かっこよく履きこなしたいもの。
そこで、創業慶応元年。品川宿が栄えた時代から150年以上続く老舗下駄屋「丸屋」さんの5代目店主 榎本準一さんにお話しを伺いました。
オマツリジャパンらしく、「花火大会や盆踊りに行くための下駄のあれこれ」と「祭り好き的下駄の粋な履き方」を聞いてみましたよ!
目次
1.下駄とは
下駄(げた)は、鼻緒があり、底部に歯を有する日本の伝統的な履物。足を乗せる木板に「歯」と呼ばれる接地用の突起部を付け(歯がないものもある)、「眼」と呼ぶ孔を3つ穿って鼻緒を通す。足の親指と人差し指の間に鼻緒を挟んで履く
下駄の歴史は古く、その原型とみられる木版が弥生時代の登呂遺跡からも出土しています。2本の歯により凸凹の抵抗を和らげ、水田や湿地でも沈み込まないため、庶民に多く使われました。
下駄の名前が定着したのは戦国時代と見られています。上履き下履きを問わず「足駄(あしだ)」と呼ばれていたものが、下履きに限って「下駄」と呼ばれるようになったと言います。
2.下駄の形 ―男性用・女性用―
下駄と言っても、様々な形があり、どんなものを選んでいいのか迷うところ。基本的な形を見てみましょう。ポイントをざっくりいえば、
①二枚歯か、のめりか、右近か
②幅広か、細いか
③角が丸いか、角ばっているか
ということ。それに注目して見てみましょう。
男性用◆駒下駄:2枚歯のいわゆる「下駄」のイメージ
・大角:最もスタンダードな形。幅広で安定感がある
・大下方:大角より細身でスマートな印象
・真角:角が丸くなく、シャープでスタイリッシュな印象。細身の鼻緒が似合います。
◆のめり
・大千両下駄:前歯を斜めにカットしたもの。歩きやすいがやや重い。
◆右近:草履のような形で、スポンジが付いている。安定感が高く、飲食店などでも使われる。
女性用◆駒下駄:2枚歯のいわゆる「下駄」のイメージ
・芳町下駄:最もスタンダードな形。癖がなく、広く愛される。
・相三味下駄:角が少しシャープな粋好み。三味線の胴の形に似ているため、この名前がついている。
◆のめり
・相千両下駄:前歯を斜めにカットしたもの。歩きやすいがやや重い。
・相小町下駄:前歯を斜めにカット、後ろ歯は台に沿って丸く仕上げ。昔は若い女性に好まれ、「小町」の名がついた。
◆右近:草履のような形で、スポンジが付いている。安定感が高く、飲食店などでも使われる。
◆舟形:草履をそのまま下駄にしたような形(歯がない)。気軽にお洒落履きとして使える。
◆三味舟形:舟形の角がシャープなもの。さらにスタイリッシュなお洒落履きに。
幅広=安定感、細身=スタイリッシュ。そう思えば、靴選びと同じ。思い描くイメージで選べますね。
3.基本は二倍歯。和服と下駄を履いた歩き方の関係
履きなれない人にとって、安定感がるのは右近のようにしっかりした形のもの。でも、榎本さんによると「着物を着た状態だと、基本の二枚歯が一番楽」と言われます。
洋服を着たときに比べ、着物を着た状態では、大股で歩くことができません。小股で、つま先からおろすように歩きましょう。
また、下駄は鼻緒を指で挟んで、踵が出るように履きます。ですから踵から下ろすと踵がいたくなってしまいます。スリ足もかっこ悪い。後ろ歯がすり減っていたら歩き方がおかしい証拠です。
少し前のめりで軽快に歩くには、軽い2枚歯が一番。カランコロン、と言い音を鳴らして歩きましょう。
4.ファッション?踊る?目的別に選びたい「素材と仕上げ」
もっとも一般的な下駄の素材は桐。軽く、硬く、木目が美しいという特徴があります。
表面の仕上げは、左から
①白木 ②焼き ③黒塗り(捌き)④表付き(茶竹)⑤表付き(烏)⑥胡麻竹
中でも一般的なのは
①白木:木の風合いが感じられる。汗を吸い取るのでグリップ力が強く、盆踊りなど動きたい人にピッタリ。
②焼き:木目がよりはっきり見られる。カジュアルで、シミも目立たないので、初めての一足にオススメ。
③黒塗り:シックな印象。塗により耐水性もアップ。浴衣だけでなく通年履くことができる。
鼻緒は縞、木綿、紐、紬、皮などあり、模様も様々。「細い方が粋」と言われます。細い鼻緒は細身の下駄のほうが合うので、それなりに足には厳しく、履きなれた上級者向き。慣れるまでは幅広の足当たりの良いものがよいようです。
5.花火大会や盆踊りにオススメ!下駄ズレ防止には?
では、実際にお祭りに行こう!でもやっぱり気になる、下駄の鼻緒ズレ。防止するポイントは3つ。
①足に合った下駄を選ぶ。
丸屋さんのような下駄専門店で買えば、足当たりがよい鼻緒を選んでもらえるばかりか、足に合わせて調節もしてくださいます。古い下駄、お下がりの下駄も鼻緒をすげ替えれば快適に掃くことができます。
②斜めに履く。
足の人差し指が当たっていたい場合は、鼻緒の付け根(前坪と言います)が当たっている可能性があります。これは下駄を靴と同じようなバランスで履くと起きる現象。
下駄の中心線は足の中心線とは違います。親指と人差し指の間を下駄の真ん中に来るように(すると小指は下駄からはみ出る)履くのが正しい履き方。これをすると人差し指が救済されます。
③鼻緒をもむ
次に鼻緒が足の甲に当たっていたい場合。これは鼻緒を横からつぶすように揉んでみましょう。すると鼻緒が柔らかくなり、傷みが和らぎます。
これで準備はOK!自分の足に合った下駄を選んで、お祭りに行ってみましょう!
鼻緒が痛いときの対策については丸屋さんのホームページに詳しく出ていますので、ご覧になってくださいね。
6.祭り好きの意地とプライド!粋な履き方とは?
さあ、だんだんわかってきましたが、お祭り好きとしては、祭りで「かっこいい」と思われる下駄の履き方を知りたい。そこで下駄のプロ、榎本さんに聞いてみました。
お祭りでは祭り足袋を履くので、下駄は神輿の後の直来に行くのに使われます。そこで、仲間内で一目置かれるような履き方をするか、というのがポイント。
「下駄は履いているときより、脱いだ時に判断される、と言います。人と違うかっこいい下駄を、といって細身の大下方や、シャープな真角など履いてお洒落度を競います。」
なるほど!脱いだ下駄が並ぶ中に、自分の個性を光らせたいわけですね!
さらに、履き方にも美学があります。下駄は足全体を台に乗せず、指の先だけでチョンとつっかけるのがかっこいい。すると、踵が後ろにずれます。鼻緒も指の第一関節あたりに当たります。これが痛い。しかし、これを我慢できるところに「カッコよさ」が表れると言います。
そこで生まれたのが「坪下がり」。これは本来雪駄に見られる履き方ですが、普通の下駄より、鼻緒がずいぶん後ろの方に付いています。これを履くと踵がかなり下がります。めちゃくちゃ痛い。それを履きこなせるのが、粋でいなせな男なのです。
神輿でできたこぶの大きさを自慢したり、大きさ、高さ、重さの限界に挑んだり。これこそ、日本の祭りの美学なのかもしれませんね。
いかがでしたか?初めての下駄選びから、粋な履き方まで、お祭り好き的目線で伺った下駄の世界。まだまだ奥が深い!
今回お話しを伺った丸屋さんでは、公式ウェブサイトで、下駄の基本知識だけでなく、下駄や品川宿の歴史を紹介。さらに「今日の一足」と題し、毎日新しい履物の情報を発信していらっしゃいます。もう面白くて、読むのが止まりません。
そんな下駄愛詰まった丸屋さんウェブサイトはこちら!これを読んで、お気に入りの一足に出会ってください。