2023年10月1日、富山県射水市で「新湊曳山まつり」が開催されます!
豪華絢爛の曳山が町中を巡理、夜には山車に提灯が灯されて幻想的な風景となるこの祭。この記事では2021年の現地レポートとともに、2023年の開催情報をお届けします。
豪華絢爛な曳山は町の誇り
富山県射水市の新湊曳山まつりは、毎年10月1日に行われる放生津八幡宮の秋季例大祭だ。例年であれば、朝から晩まで13基の曳山が町中を巡り、「イヤサー!イヤサー!」の掛け声とともに巨大な曳山が移動する。狭い街角を曲がったり、緩やかな傾斜の道を下ったりする場面では、人々の歓声もより一層大きくなり、担い手の勇ましさも感じられる。
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、2021年の新湊曳山まつりは規模を縮小する形で開催された。今回の開催内容や、今まで受け継がれてきた曳山の由来と特色について、射水市新湊博物館で行われた特別展「放生津の祭り」の内容を含めご紹介したい。
コロナ禍でも開催!新湊曳山まつり
今年の新湊曳山まつりは、曳山をひいて練り歩く13町のうち2町は格納庫での展示のみとなった。残りの11町は毎年全町合同で行う曳山行列を開催せず、各町を回り、お昼頃には終了した。練り歩きの時間や祭り内容が変更になったとはいえ、なぜ、開催することができたのだろうか?
まずは、各町内の担い手の熱意があったことはもちろん、2021年3月に「放生津八幡宮祭の曳山・築山行事」が、国の重要無形民俗文化財に指定されたことは大きい。祭り道具だけでなく曳山を動かすという行為を含めた無形の文化を、どのように次の世代に伝えていくのかを考えた結果とも言えるだろう。また、射水市は新型コロナウイルスのワクチン接種率が高く、それも祭り開催の後押しとなったようだ。
立町の曳山に対する誇り
各町の担い手は曳山に対してどう感じているのだろうか?例えば、曳山が登場する13町のうち、立町に注目してみよう。この町の曳山には、金色に輝く「壽」の文字が掲げられているのが印象的だ。
立町の曳山の担い手の1人にお話を伺ってみたところ、「立町の曳山の歴史は江戸時代に曳山が始まって以来、今年で300年になる。上山という曳山の上段に当たる部分は300年取り替えなしで、鏡板は1803年制作と古い。上から下まで全部変えれば漆が一番高くて2~3億円はかかる。車輪はとりわけ大きいため、一木で材料を確保できるところはなかなかない」とのこと。
立町の方々は曳山に対して誇りを持っており、それをお披露目できる新湊曳山まつりに対する想いの強さを感じることができた。また、その担い手が動かす曳山は今ではなかなか作ることができない高価なもので、全てを新調することは難しく、歴史の重みを非常に実感した。
放生津八幡宮の曳山の特徴とは?
それでは、放生津八幡宮の曳山の特徴とは何なのか?他の地域にはない特色にも注目していきたい。歴史的な由来や背景について、射水市新湊博物館・学芸員の松山充宏さんにお話を伺うことができた。
––曳山が始まったのはいつでしょうか?
松山さん:放生津八幡宮の曳山は江戸時代に始まりました。富山県では1609年の高岡御車山の曳山が最も古く、次に古いのが放生津八幡宮の曳山です。元々、室町時代から神輿渡御の行列があり、それに曳山が加わるという形で約350年前に始まりました。
––曳山が始まった背景について教えてください。
松山さん:江戸時代、現在の富山県射水市新湊地区は大阪に加賀藩の年貢米を運送する積み出し港として栄え、大商人が数多く住んでいました。この大商人の経済力もあり、曳山を作り始めたのです。また「寄り回り波」という高波で流出した、放生津八幡宮の社殿の再建に合わせて各町の共有財産として曳山が作られ始めたとも言われています。
––この地域の曳山の特徴は何でしょう?
松山さん:放生津八幡宮の曳山は現在、京都の祇園祭と同様に、くじ引きで各町の曳山の行列の順番を決めます。約300年前には、くじ引きで行列の順番を決めるというやり方が始まっていました。ただ今回はコロナ禍で密を回避するため行列を作らず、曳山は神社でのお祓いの後にすぐ各町を巡るという流れでした。また、今回は曳山の巡行は午前中のみでしたが、通常であれば朝から夜まで曳山が町内を巡ります。県内で多くの曳山がこれほど長い時間をかけて町内を巡る祭りは珍しいです。
お話を伺う中で、放生津八幡宮のお祭りの由来や特色がより鮮明に見えてきた。港の貿易と大商人の経済力を背景に、新湊曳山まつりは地域が繋がるきっかけとして大きな役割を果たしているようだ。
博物館で特別展開催!より深く祭りを知る
さて、今回は規模が縮小して祭りが行われていた一方で、射水市新湊博物館では特別展が開催されていた。2021年3月に「放生津八幡宮祭の曳山・築山行事」が国の重要無形民俗文化財に指定されたことを記念して、特別展「放生津の祭」が 2021年8月6日(金)~2021年10月10日(日)の期間で開催されていたのだ。この展示では、放生津八幡宮において行われる曳山行事と築山行事についての歴史の紹介や人形や用具等の紹介が行われていた。
例えば、新湊曳山まつりには「海にまつわるデザイン」が散りばめられているという紹介があった。法被には海の波のモチーフが使われているし、曳山に取り付けられた鏡板にも海が描かれている。海と暮らしが密接に結びついた地域であり、そこに祭りと信仰が息づいていることが窺える。
また、曳山に取り付けられる前人形の展示もあった。前人形は神社や地蔵堂で演奏される曳山囃子のお神楽や、ご祝儀が出された家の前で演奏される囃子「チンチコ」に合わせて、太鼓を叩くなどの所作を演じる。普段は曳山に登る担い手でないと近くから眺めることもないため、じっくりと拝見することができて良かった。
2021年10月10日で特別展「放生津の祭」は終了してしまったが、その他にも常設展の方で、新湊曳山まつりで登場する曳山の様子がわかる展示や、お神輿とそれを先導する行道獅子に関する展示などもある。今回、新湊曳山まつりを見に行けなかった方や、この祭りに興味を持っていただいた方は、ぜひ博物館の常設展もご覧いただくことで、祭りに対する理解がぐっと深まるだろう。また、『放生津の祭』展の図録は引き続き館内で販売されているので、ぜひ手に取っていただきたい。
<射水市新湊博物館>
住所:富山県射水市鏡宮299番地
開館時間:午前9時から午後5時まで(入館は午後4時30まで)
休館日:火曜日及び祝日の翌日(ただし、祝日の翌日が土・日曜日の場合は開館)、年末年始(12月28日から1月4日)
※臨時休業日もあるため、営業日の詳細はホームページでご確認ください。
観覧料:一般 310円、65歳以上 150円、中学生以下 無料(団体料金あり)
2023年の開催情報!
日時:2023年10月1日(日)9:00~23:00頃
場所:放生津八幡宮(富山県射水市八幡町2-2-27)、射水市新湊地区(放生津、新湊の各曳山の町内一円)
アクセス:
車/北陸自動車道小杉ICから約20分
※駐車場:海王丸パーク駐車場が一般見学者の指定駐車場(無料)。※海王丸パーク駐車場から曳山巡行エリアまで無料シャトルバス有り。
鉄道/高岡駅から「万葉線」に乗車し、「西新湊・新町口・中新湊」で下車。
バス/小杉駅から「観覧(臨時)バス」または「コミュニティバス」に乗車し、「クロスベイ新湊」で下車。