Now Loading...
インタビュー

茨城県の伝統文化紹介シリーズ 最小ユニットで挑む!茨城県ひたちなか市 和太鼓デュオ「来舞(ライブ)」インタビュー

茨城県の伝統文化紹介シリーズ 最小ユニットで挑む!茨城県ひたちなか市 和太鼓デュオ「来舞(ライブ)」インタビュー

1.実力派!たった二人のユニット 和太鼓デュオ「来舞」とは?

今回ご紹介する和太鼓デュオ「来舞」は茨城県ひたちなか市を拠点に活動する和太鼓ユニットです。メンバーは過足 雅之(よぎあし まさゆき)さんと照沼 啓子(てるぬま けいこ)さん。

国内の数々の大会で入賞し、日本一の太鼓祭「成田太鼓祭」には22年連続出場という実力派です。

まずはこちら、さいたまスーパーアリーナでのパフォーマンスをご覧ください。

激しさの中に緊張感と静寂を感じる、独特の世界観が広がります。

2.和太鼓界のイノベーション。「デュオ」という形態を選んだ理由

過足さんは和太鼓暦43年、照沼さんは28年の超ベテランです。実は照沼さんは元々過足さんの和太鼓教室の生徒さんでした。

たった二人の「デュオ」という形で演奏するのには強いポリシーがあります。

過足さんは、

「デュオとしての結成は2000年。その頃、和太鼓は大人数で演奏するのがほとんどでしたが、そのひずみが2000年の前くらいにやってきていました。というのも、大勢でやる和太鼓は、小さな団体には太鼓が買えなかったり、メンバーが集まらなかったり、始めるにも続けるにも障害が多かったのです。

でも、チームって二人からできるもの、その最少人数でできることを体現するために始めました。」

と語ります。

過足さんは大勢の太鼓にはその良さがあるが、大きな音や雄叫びの迫力で迫るパフォーマンスに、「本当に音楽なのか?」という疑問を持つようになったと言います。

「来舞」が2人という最少人数で表現する太鼓は、静けささえ表現します。癒される、うっとり、眠ってしまうような、ゆったりとした気持ちを持つこともできる演奏は、和太鼓の概念を覆すものです。

その手ごたえを感じるのに、長い時間はかかりませんでした。30人、40人のチームがほとんどという全国大会にたった二人で挑み、様々な賞を受賞。さらに、4~5人という少人数編成のチームも増えてきたのです。

大人数の演奏にはその良さもあるので、チームの人数を変えて行うこともありますが、今でもデュオとしては「二人でもできる」という意地をもって、音楽性を追求しています。

3.和太鼓は人間形成。年間180回にも上る学校での和太鼓教室

イベントや式典での出演やひたちなか市での和太鼓教室のほか、「来舞」は学校で和太鼓の授業を重視しています。「来舞」の和太鼓授業はなんと年間150回から180回にも上り、予約は1年待ちと言います。

この授業は最初は芸術鑑賞会のような「見る」形から始まり、学校のカリキュラムに和楽器と触れることが盛り込まれる中で、現在の体験型の授業になってきました。

その理由は、学校では和太鼓のような高額な楽器が買えない、変えたとしても先生たちは教えられないという事情があります。

「来舞」の授業がここまでの人気となった秘密は、演奏はもちろん「来舞」のお二人の熱い想いと人柄、そして日々の研究です。

「僕達の授業では、今日会った子どもたちは二度と教えることがない、失敗のできない授業です。子供全員が音楽を得意ではないです。初めて会う子どもたちに、一時間という限られた時間の中で、楽しかったという思いを持ってもらうことに全力を尽くします。出来る・出来ない、ということを感じさせないようにその子どもの言動、行動を通し、その子のコンディションを感じ取って指導します」と過足さんは語ります。

数ヶ年で経験できるプログラムでは、最終的には自分たちで曲を作って発表します。喧嘩したり泣いたり、小さな社会の中で生きていく体験をします。

「これまでの授業の中で特に印象に残ったシーンは?」との質問に対して、過足さんは「音楽が苦手だったり、友達とうまくいかなかったりした子どもが、かんしゃくを起こして物を壊したりしたことがありました。その子が最後には『さっきはごめんなさい』と自分から謝りに来たときはグッときました」と語ります。「和太鼓の授業は短い時間の中で、気持ちを変えてあげなくてはいけないです。全員で息が合わないと太鼓はできない。単に太鼓ができてよかったです、というのではなく、生きていくための何かを学ぶ場である」と言います。

過足さんは「スキル、ナレッジマネジメントを毎日繰り返しています。だから自信をもって授業を進められる」と語ります。その実力は先生たちも驚くほどで、今では先生向けの指導力セミナーも行っているそうです。

4.「ドン!」の一つだけで勝負する。和太鼓の魅力

過足さんが和太鼓の魅力にはまったのは、中学生の時。当時はブラスバンドやオーケストラ、バンド活動などを通じ、身の回りに楽器はなんでもやりました。

それらの楽器とは違い、和太鼓には音符もなく、ドンと叩くだけ。この1個でどう勝負するのか。それが気になって仕方がなかったそうです。

ようやく地元のお囃子に参加し、太鼓に触れることになると、その奥深さに魅了されました。ギターはやればやるほどうまくなる。でも太鼓はなかなかうまくならない。最初の5年は楽しくても、必ず超えられない壁が来る。一旦悩むと5年悩み続けることもあり、何度もやめようと思ったそうです。

でも、その壁を超えること、シンプルな奥深さが、何よりの魅力です。

太鼓を始めた時から、どうやってプロになれるかを考えるようになりました。始めた当初はとても食べていける状況ではなかったけれど、5年後10年後何をやっているか計画し、「教室を開こう」、「コンサートをできるようになろう」、という目標に対して少しずつでも頑張っていこうと考えてきたそうです。

そういった苦労と不屈の精神が、唯一無二の演奏スタイルや子どもたちへのアプローチに表れているのでしょう。

5.もう一つのホーム。メキシコとのつながり

「来舞」の活動は、メキシコでも行われています。10年前、大洗町とロスカボス市のカジキ祭りの親善大使として訪れたことがきっかけでした。残念ながら東日本大震災によりカジキ祭りへの大規模誘致はなくなってしまいましたが、「来舞」としての交流は毎年続いているそうです。

初めての演奏会は驚くべき経験だったと言います。演奏中、初めて見る和太鼓にシーンと静まり返る観客。うんともすんとも言わない様子に不安を抱きましたが、終わった瞬間「ブラボー!」の大喝采!一緒に写真を撮ってくれ、テレビ、ラジオ、雑誌の取材に来てくれ、後でうちにご飯を食べに来てくれ、ともう大騒ぎになりました。

今では、友好の証として太鼓をロスカボス市に置いてきているそうです。自分の魂とも言える太鼓を置いてくることで、毎年訪れる約束としているのです。「来舞」が訪れるときは、現地の友人たちが二人を家族のように扱い、空港に迎えに来て、毎日誰かの家に連れて行ってくれる、といった交流が続いています。

6.「太鼓ミュニケーション」を通じて。今後にかける思い

今は学校で子どもたちに教えてあげるのが本当に楽しいという過足さん。太鼓の良さを伝えること、再び演奏することはなくても、また触れたいと思ってもらえること、楽しかった記憶を残すことを続けていきたいと言います。

過足さんは、太鼓による人との関係の作り方を「太鼓ミュニケーション」と呼びます。太鼓を通して出会った人々に、またコンサートやお祭り、イベントでまた会える、会いたいと言ってもらえることが何よりの楽しみになっているそうです。

 

伝統芸能が大きなブームになることはないけれど、お囃子をやってみたいという子どもが出てきたり、足を運んでみようという人が増えれば、という思いを込め、今日も活動を続ける「来舞」。

その魅力に触れられる、「成田太鼓祭」は毎年4月第2土日開催に開催。演奏者だけでも1000人、観客は24-5万人にも上る国内最大の和太鼓イベントです。2019年は「担ぎ桶胴太鼓だけの演目で勝負!」のネットユニット「来舞」で出演しています。

ぜひ、その卓越した演奏と「太鼓ミュニケーション」に掛ける思いを感じとってください。

あわせて読みたい