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40年ぶりに復活!山村の獅子舞 | 信州池田町

更新日:2020/12/11 Skima Shinshu
40年ぶりに復活!山村の獅子舞 | 信州池田町

こんにちは、長野県のニッチな観光情報をお届けするWEBメディア「Skima信州」ライターの宮田です!今回は私の地元、長野県池田町で復活した例祭の獅子舞のレポートをお届けします。

過疎化の進む池田町・広津地区が舞台


長野県池田町は、北部・大北エリアに位置し、全国的にも知られる観光地「安曇野」とも接しています。

池田町は美しい田園と北アルプスの景観で有名な町ですが、山際にも集落が点在しています。そのうちのひとつは広津地区と呼ばれ、かつては養蚕などで栄えていました。現在は過疎化が進み、人口は半世紀で9割以上減り、伝承も途絶えつつあります。

広津とその神社や祭りについては別の記事で詳しく書いているので併せて御覧ください。

信州の山村集落に失われつつも受け継がれるお祭りと獅子舞〜池田町広津〜

40年ぶりに復活した獅子舞とは?

2020年10月11日、広津地区に鎮座する楡室(にれむろ)神社で行われた例祭に合わせて獅子舞の復活公演が行われました。

生演奏のお囃子を伴っての奉納は実に40年ぶり、カセットを使っての奉納が断絶してから約20年経っているとのこと。地元の方々をはじめ町外からも観客が集まり、境内にはかつての賑わいが蘇りました。
私は地元の方々の「復活させたい」という声を聞き、カセットや映像を分析し篠笛の楽譜を作成、篠笛班を担当するなど、復活に「中の人」として携わりました。

その経緯や過程は「Skima信州」で紹介することにして、今回は例祭当日の様子をお伝えしたいと思います!

獅子舞に欠かせないお囃子の参加者募集と練習からスタート!


今回は獅子2名、篠笛4名、太鼓1名、鉦1名、全体指導1名の9名で行われました。
内訳は中高生を含む地元の方々、学生団体のメンバー、同じ長野県内で神楽の復活経験がある協力者などさまざま。楽譜が完成した8月終わりから、毎週金曜日に集まって練習を重ねました。篠笛を初めて吹く人から、普段太鼓クラブで精力的に活躍している人まで、経験値に差こそあれ、皆が同じスタートラインから始まりました。約1ヶ月という短い期間でしたが、自主練習も含めて各々が復活を志して力を尽くしました。

例祭当日、まずは準備から

神社への集合は朝8時。眠い目をこすりながら境内に入ります。午後の祭式に向けて参道や境内の掃除と拝殿や神楽(神輿のこと)の飾り付け、サカキの括り付けなどの準備が着々と進んでいきます。

準備に携わったのは、地元の方々、広津地区で活動する学生団体のメンバー(私もここに所属しています)、獅子舞の協力者合わせてなんと約15名。例年は数人で午前中いっぱいかけて行う作業が、10時すぎには完了してしまいました。

時間にゆとりができたため、篠笛のメンバー数人による自主練習が行われました。私も吹いてみましたが、これまで集会所の狭い空間で大きく響いていた笛の音は、開放的な神楽殿の上では風にのって立ち消えてしまうような感がありました。屋内と屋外ではこれほど違うものかと唖然としました。

いよいよ40年ぶりの奉納が始まる

お昼休みを挟んでいよいよ本番です!
地元の方々をはじめ、新聞社3社の記者さん、町長、かつての住民などが続々と集まりました。境内の入り口では学生ボランティアが検温とアルコール消毒を呼びかけ、感染症対策も万全。緊張感が高まっていきます。

宮司(地元では「お神主さん」と呼びます)の祝詞奏上に合わせて演奏が始まります。
慣例にのっとって、演奏は「道中ばやし→幌舞→幣舞→狂い舞」という順番で行われました。道中ばやしは1フレーズが2分弱と短いにもかかわらず非常に難しいパートで、私は結局本番までにマスターすることができませんでしたが、地元の高校生が持ち前のやる気と記憶力で卒なく演奏してくれました。

道中ばやし

道中ばやしを2回繰り返した後、いよいよ獅子が目を覚まします。最初は獅子の幌が広げられた状態で舞われる「幌舞」で、「ヨイキタリー!」の掛け声で始まります。ここ20年、ずっと段ボール箱にしまわれ続けてきたお獅子。これまでは祭りのときにも、神楽殿にぽつんと置かれているだけで、その姿にはどこか捨て猫のような哀愁が漂っていました。そんなお獅子が身体を左へ右へとくねらせながら伸び伸びと舞っている姿は生気に満ちており、さも本物のライオンであるかのように見違えます。

幣舞

次の獅子が御幣を持って舞う「幣舞」は、唄と囃子が交互に繰り返され、観るもよし聴くもよしの装飾的なパート。獅子は幌を畳んで軽やかに舞い、観客を祓い清めてくれました。

狂い舞

最後は「狂い舞」です。獅子が上下左右に激しく動く最も迫力のある場面で、まさにクライマックス。獅子の目に取り付けられた仕掛けの鳴り物が、小春日和の境内に神々しく響き渡りました。

約15分。観客にとっても演者にとっても忘れがたい奉納が、あっという間に終わりました。奉納前と比べ、観客の表情は朗らかになり、私たち演者もほっと一息。神社は和やかな雰囲気に包まれました。

感染症の影響で各地の祭りが中止される中、獅子舞の復活公演が行われたことには、獅子舞のもつ無病息災の意味合いも考えると意義があることのように感じられました。獅子はもちろん、その場を共有していた全員が生気、元気をもらって神社を後にしたのではないかと思います。

当日の奉納の様子はYouTubeに載せているので併せて御覧ください。

おわりに

今年はアマビエや某少年ジャンプの漫画のおかげで、伝承や民俗への関心が高まった一年であったといえるでしょう。
度重なる災害からの復興という文脈も相まって、それら土地のものを眼差す機会が増えているのではないでしょうか。伝承の「復活」が持つ意味合いはさまざまに考えられますが、今回の楡室神社の獅子舞の復活においてはどのようであるのか、引き続き関わりながら注視していきたいです。

祭りの後に行われた直会のようす

ライター紹介


宮田 紀英
長野県池田町で蝶と蛾を中心とした自然写真の撮影を行っています。毎夏蝶の写真展を開催、フリーペーパー「いけだいろ」では自然に関する記事を執筆中。最近は山村集落探索や神社巡りも行う。日本自然科学写真協会(SSP)会員、長野県地理学会、松本むしの会等所属。

※写真提供:依田一希様、柳澤和也様

Skima Shinshu
この記事を書いた人
Skima Shinshu
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