春の京都では、花鎮め(はなしずめ)、鎮花祭とも呼ばれる、疫病を鎮め無病息災を祈る「やすらい祭(別名・やすらい花)」が行われます。
平安時代から行われているという「やすらい祭」。「鞍馬の火祭」「太秦(うずまさ)の牛祭」とともに京都三大奇祭にも数えられ、国の重要無形民俗文化財に指定され、2022年には全国41件の「風流踊」の一つとしてユネスコ無形文化遺産にも登録されました。
この記事では、一体どのようなお祭りなのか詳しくご紹介しましょう。
やすらい祭とは?
やすらい祭は京都の4か所で行われるお祭りで、毎年4月の第2日曜日に京都市北区の今宮神社、玄武神社、川上大神宮社で、上賀茂神社では京都三大祭りの一つである「葵祭」と同じ毎年5月15日に開催されています。
祭りが始まったのは平安時代の頃。桜が舞い散る季節の変わり目は疫病が流行りやすく、春の精にあおられて飛散するといわれる疫神をお囃子や歌舞によって花傘に宿らせ、神様に鎮めていただくために始まりました。「やすらい」とは「花鎮めの祭」のことで、古い記述には「安良居」や「夜須礼」という漢字が記されています。
疫神を誘い出し宿らせる花傘は「風流傘(ふりゅうがさ)」と言い、直径約180㎝の大きな緋色の傘に若松・桜・柳・山吹・椿を挿して飾ります。
そもそも「風流(ふりゅう)」とは、平安末期から広がっていった、華やかで賑やかで人目をひくことを良しとする精神のこと。神仏への強い願いが届くよう目立つ派手な衣装を身に着けたり、より巨大で賑やかな太鼓で囃したりして踊ったものが「風流踊(ふりゅうおどり)」と呼ばれるものに発展していきましたが、やすらい祭も一時、その行装が華美に過ぎたのか勅命によって禁止されていた時期があったそうです。
今では、やすらい祭は疫病を鎮め平安を願う、洛北の春の風物詩として親しまれています。
今宮神社のやすらい祭
やすらい祭の最大の見どころは今宮神社の境内で行われる「やすらい踊り」ですが、神社に向けて行列が地域を練り歩き、巡行してくるところからお祭りは始まります。
行列は裃(はかま)を着用し、手に杖を持った長老を先頭に、幸鉾(さいのほこ)、御幣持ち(ごへいもち)などが続きます。鞨鼓(かっこ)は胸につけた小鼓を打ち、子鬼に続いて赤毛・黒毛の大鬼が、太鼓や鉦を打ちながら踊ります。
祭の中心となる「風流傘」ですが、この傘の下に入ると厄をのがれて1年間を健康に過ごせるといわれています。そのため、参加者はこぞって入ろうとし、一体となって祭りを楽しみます。
風流傘の後には音頭とり、囃子方が続きます。
今宮神社に到着すると、いよいよ「やすらい踊り」が始まります。
やすらい踊りの奉納
今宮神社の境内では、赤毛と黒毛の2組8人の大鬼が、大きな輪になって広がり「やすらい踊り」を奉納します。
鉦や太鼓を打ち鳴らしながら、時には激しく飛び跳ねるような動きも。
そして、時には緩やかに「やすらい花や」の声に合わせて、世が安寧であることを願って踊ります。
旧上野村の「上野やすらい」と前後して旧川上村の「川上やすらい」が境内へ到着して踊りを奉納するので、二つのやすらい踊の特徴を見比べてみるのも見どころの一つです。
トップ画像撮影:佐々木美佳(オマツリジャパンオフィシャルライター)