2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2022年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
商店街の個性さく裂
全国から人が集まる東京には、地方の祭りを取り入れ、それが土着化したものも多い。阿佐谷七夕まつりはその一つで、仙台七夕まつりを模して始めたものだが、アレンジのふり幅がすごい。美しい吹き流しや短冊もあるが、この祭りの主役は、アーケード街の宙に浮く巨大な張りぼてたちなのである。
祭りが開催されるのは、8月初頭の5日間。JR中央・総武線阿佐ケ谷駅南口、阿佐谷パールセンター商店街入り口に設置された大きなくす玉飾りをくぐると、並んだ並んだ、趣向を凝らした張りぼて群。そのモチーフは、子どもに人気のアニメキャラに、ディズニーキャラに、チューバッカに、ジャックスパロウに、とにかく個性的でド迫力。上からぶら下がる、窓から飛び出る、テーマも飾り方も実に自由である。張りぼてたちは、商店街のお店や企業の人々が、仕事の合間に作っているほか、地元小学校作品や、近年は一般公募も行われている。
この祭りが始まったのは1954年。戦後、暑い夏にも阿佐ヶ谷の街に人を集める策を考えた商店街の人々。日本全国の夏祭りを視察に行った結果、七夕まつりが一番ふさわしいと考え開催するに至った。今では毎年80万人が訪れる、杉並区の夏の風物詩の一つとなっている。お隣の高円寺が、この祭りに鼓舞されて阿波おどりを始めたのも面白い歴史である。
阿佐ヶ谷はジャズとお酒の街でもある。街には実力派の居酒屋に加え、数件のジャズバーがある。春にははしご酒ができる「阿佐ヶ谷飲み屋さん祭り」、秋の一大イベント「阿佐谷ジャズストリート」も開催される。張りぼてを眺めながらそぞろ歩き、周辺のお店に足を延ばすのも楽しい。
帰り道に聞こえるのは、阿佐ケ谷駅の発車メロディー。「たなばたさま ジャズ風アレンジ」である。ほろ酔いで、阿佐ヶ谷の街に息づく文化を感じながら家路につくことができる。