2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2021年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
北越の小京都の六角形神輿
北越の「小京都」と称される、新潟県加茂市。県中央部に位置し、お隣には新潟市がある街だが、平安時代から続く落ち着いた街並みからこのような別称が付いている。市名の加茂も、京都の賀茂神社とのつながりからという。この街が1年で一度、さらに悠久の時代の景色に包まれる日がある。6月15日の長瀬神社春季祭礼、通称上条まつりの日だ。
長治2(1105)年に京都の石清水八幡宮から神様を勧進したことに始まるという長瀬神社。社殿のある小高い山の上へと上がっていくと、たくさんの石祠を見つけることができ、その歴史の長さを感じる。社殿の前へ目を移すと、金色に輝くお祭りの花形、お神輿(みこし)の姿が。その姿が珍しい。破風が六方に広がる六角形のお神輿なのだ。このお神輿は今から約170年前の弘化5(1848)年に造られたのだそうで、屋根の漆塗りや側面の金色の装飾から、当時の技を感じられる。
神事を終えるとお神輿が動き出す。山を下り、鳥居をくぐっての宮出だ。白装束の男達が棒を肩に担ぎ、のどかな風景の中を進んでいく。お神輿の周りを固めるのが、古式行列の御一行。交通をつかさどる赤面の神様、猿田彦が先頭を引っ張るのは、お祭りの風物詩的光景だが、その後ろから天狗の面を掲げたのぼりを持つ子どもたちが続くのが面白い。天狗と密接な土地なのだろうか。他にも大きな軍配や白馬まで登場し、まるで時代絵巻の中に入ったかのようだ。この一行が商店街の中へと進んでいくと、沿道では柏手を打ち、手を合わせる地元の方の姿があった。地域に根差し、愛されるお祭りなのだというのが分かり胸を打つものがある。
この上条まつりは、別名「だんご祭り」とも呼ばれている。なぜだんごなのかというと、お祭りが開かれるこの時期、地域の特産の笹だんごの販売を知らせるのぼりがたくさん上がるからだそうだ。六角形のお神輿が、おいしい地物の到来まで運んできてくれているのかもしれない。