2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2022年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
春日部で保存される念仏踊り
全国各地には地域の風土や生活の中から、多種多様の民俗芸能がうまれた。埼玉県東部の春日部市では約380年にわたって、「やったり踊り」というユニークな踊りが受け継がれている。
江戸時代に大畑村は近隣の備後村と、収穫量の少ない不毛な土地を巡って争うようになり、相撲によって決着をつけることとなった。闘技では大畑村が勝利し、不毛な土地は備後村の所有となったのだ。重い年貢を免れることができた大畑村の農民が、「ヤッタリナー、ヤッタリナー」と囃(はや)し立てながら踊ったことが「やったり踊り」の起源と伝わっている。
地域の人々が長年にわたって守り続けてきた県内でも珍しい念仏踊りは、埼玉県の指定無形民俗文化財に登録されている。伝統の踊りが年に1度舞われるのは、毎年7月15日に近い土曜日だ。午後8時ごろに大畑地区に建立されている浄土宗の寺院、西光寺から笛や太鼓のお囃子(はやし)に合わせて踊りを舞う「練り込み」の行列が大畑香取神社に向かう。約300メートルの道中には、そろいの浴衣に赤の上げ鉢巻、白足袋に赤い鼻緒の草履を身につけた踊り手の長い行列がつながる。
踊り手たちが神社に到着すると、まず「扇子踊り」の奉納が行われる。小学校1~3年生、小学校4年生~中学生、若衆の三つのグループに分かれ、順に扇子を手にして数分間の踊りを披露する。「ヤッタリナー」の囃子詞とともに、体を前後に大きく屈伸しながら手に持った扇子を前に突き出す動きがとても特徴的だ。続いて「手踊り」が奉納される。お囃子の調子には少し哀愁が漂うが、踊りがもつ躍動感を失うことはない。「手踊り」も、小学校1~3年生、小学校4年生~中学生、若衆の三つのグループに分かれ順番に舞われる。
「やったり踊り」の規模は大きくはないが、地元の人々が小学生から大人まで世代を超えて、伝統を守り続けている姿に共感を覚え、エールを送りたくなることだろう。