2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2021年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
沖縄とアイヌ 歌と祈り
東京は日本中から人が集まるだけあって、地方の文化を伝える祭りが多い。観光振興のためのものが多いが、在京県人コミュニティから自然発生したものもある。
その一つが、中野区で北海道アイヌ民族と沖縄人の融合を祝って行われる「チャランケ祭」である。チャランケとはアイヌ語で「とことん話し合うこと」。偶然にも、沖縄で「チャーランケー」というと「消してはいけない」を意味する。
発足は1994年。都内の小学校でアイヌの踊りを教えていた広尾正氏と、沖縄エイサーを教えていた金城吉春氏の出会いに起因する。中野区北口の広場でエイサーを練習していた金城氏ら沖縄グループに、広尾氏らアイヌグループが参加。交流を深めるうち、この共通の言葉を発見し、それを冠した祭りが誕生した。
儀式や踊りは、民族のアイデンティティである。両民族がそれぞれの伝統を東京で示すことには深い意味がある。日本社会に組み込まれていく中で、厳しい差別を受け、言葉や伝統を隠さざるを得なかった歴史があるからである。
祭りの朝はそれぞれの民族に伝えられる儀式で始まる。初日はアイヌ民族のカムイノミ。カムイは動植物や自然現象など、人の手に及ばない物のこと。柳の木でできた祭具や、酒や食べ物を捧げ、カムイの恵みに感謝を示す。2日目は沖縄の旗揚げ、旗おろし、シタク。旗頭を中心とし、鉦鼓(しょうこ)、銅鑼(どら)、ほら貝、太鼓に、合唱が加わる。そして東西の大将を乗せた台を担ぎ、皆の士気を高める。チャランケ祭りでは、東西の大将を沖縄とアイヌの代表が務める。
儀式の後は、両文化の歌や踊り、交流ブースや郷土料理で文化を体験することもできる。古典的な特色が強く、音や人の歌声が体に響き、食すれば民族の味と香りが染み渡る。祈りの深さを心底感じさせる祭りである。
毎年11月初頭の土日2日間。近年は中野区役所前広場で開催。2021年度の開催は未定。