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世界遺産・中尊寺での勇ましい踊り!川西大念佛剣舞と継承活動について

更新日:2023/1/22 Yukimasa Inamura
世界遺産・中尊寺での勇ましい踊り!川西大念佛剣舞と継承活動について

紅葉で真っ赤に染まる木々、華やかな花々に囲まれた中で、集まった人々は担い手の勇姿を息を呑んで見つめていました。

川西大念佛剣舞は2022年11月3日、世界遺産の中尊寺で行われた「秋の藤原まつり」に合わせて演舞を実施。観光客が多く訪れ賑わう晴れ舞台です。今年はどのような踊りを見せてくれたのでしょうか?

川西大念佛剣舞は取材時点でユネスコの無形文化遺産に登録される見通しにあり、その後2022年11月30日に正式に登録が決定。今後も出番がどんどん増えていくとのことです。演舞当日の様子を振り返るとともに、担い手がこの芸能をどのように継承していきたいかという展望に迫りました。

秋の藤原まつりで川西大念佛剣舞を堪能する

川西大念佛剣舞は、岩手県奥州市衣川地区に伝わる踊りです。「鬼剣舞」の一種で、鬼や猿のお面をつけて勇壮に踊るのが特徴で、国の重要無形民俗文化財の指定を受けています。約900年前から受け継がれており、前九年・後三年合戦で命を落とした亡霊を成仏させるために始まりました。踊る前には念仏を唱えることが習わしとなっています。

秋の藤原まつりは西磐井郡平泉町の中尊寺や毛越寺(もうつうじ)などにおいて、例年11月1日から3日までの3日間開催され、藤原四代の追善法要、稚児行列、郷土芸能などの各種行事が行われます。今回は、川西大念佛剣舞のほかにも鹿踊や神楽などの芸能が披露されました。

行山流都鳥鹿踊の様子

また今回、秋の藤原まつりは10月20日から11月15日まで開催される「中尊寺菊まつり」と併せて行われました。このように川西大念佛剣舞の演舞がそれ以外の催しとあわせて行われることで、より一層祭りとしての盛り上がりを演出し、多くの人々の目に触れることにつながっています。

中尊寺での子ども剣舞の演舞

それでは、中尊寺での川西大念佛剣舞の演舞を振り返っていきましょう。まずは10時半頃から中尊寺金色堂入口で「子ども同好会」による演舞が行われました。

中尊寺金色堂の様子。木々も紅葉で少しずつ色づいてきました。

午前に行われたのは小学生による演舞です。中学生以上は保存会に所属しますが、小学生はこちらの子ども同好会に属します。

紅葉をバックに懸命に踊る子ども達の姿は勇ましく、大人びているようにも感じられました。

川西大念佛剣舞の活動は、まず小学生で踊りを経験し、その流れで保存会に入る人もいます。スムーズに継承されるよう、小さい頃から踊りに慣れ親しむ場があるのです。

中尊寺本堂で保存会の演舞

午後からは保存会の大人たちによる演舞が行われました。演目は「入剣舞(いりけんばい)」、「矢車(やぐるま)」、「押込(おっこみ)」、「三人怒者(さんにんいかもの)」の4つ。演目の紹介をしながら、演舞の様子を振り返っていきます。

中尊寺本堂にて13時から演舞を開始。太鼓の音を聞きつけた観客がぞろぞろと集まりだしました。演目は入剣舞という演目から開始。亡霊たちの中に猿が登場し、それを鎮めるという流れです。猿の真っ赤な衣装がとても目立っており、その動作は軽快でした。

矢車からはソロでの演舞。馬のたてがみや尻尾の毛からつくられる「毛ザイ」を頭部につけるのが特徴的です。

押込は、亡霊の中でも一番強い亡霊が、刀を納められてもなお、素手で荒れ狂うという勇壮な踊り。扇子を片手に持ちながら、激しい動きが見られました。矢車と同じく「毛ザイ」を頭部につけます。観客の方まで突っ込んできて子どもの頭を撫でるような仕草など、観客との掛け合いがあったのが印象的でした。

最後は三人怒者。一度念仏の功力により鎮まったかに見えた亡霊が、再び舞い戻り荒れ狂う様子を表す踊りです。三人の息がぴったりと合ってこそ、迫真の演舞となります。

これで昼過ぎの演舞は終了。見応えのある演舞に、観客も拍手を送っていました。

紅葉のライトアップとともに再び演舞

当日は、中尊寺境内をライトアップする「紅葉銀河」が開催されており、それに合わせて17時から金色堂前でも演舞が行われました。まずは本堂から金色堂まで行進して入場!ライトアップに照らされた紅葉の中を歩く担い手たちの様子は、とても堂々として見えました。

金色堂の脇で演舞を開始!この場所で披露される剣舞は贅沢さと高揚感を演出し、集った観客はその空間に酔いしれていました。

今回の演舞は入剣舞、押込、三人怒者の3演目。昼過ぎに拝見した時とは場所の雰囲気も変わり、見え方の印象も異なります。

ライトに照らされた鬼の面と勇ましい動きは、どこか恐ろしげな雰囲気さえあります。

押込の演舞の途中から大粒の雨が降ってきました。それでも演舞は続けられ、その力強さが衰えることはありません。それを見守る観客は雨宿りをすることなく、ほとんどの人々がただ息を呑むようにその演舞を見つめていました。

演舞の感想と今後に取り組みたいこと

演舞のあと、なぜか雨は引いていきました。

押込の演舞を担当された三浦健太郎さん(36)は「なんで私が踊り終わったら晴れるんですかね。これで3回目ですよ!」とお話されていたので、「雨乞いであれば恵みの雨ですから」などと会話を交わし、演舞の感想を伺いました。

——今日、実際に演舞されてみていかがでしたか?

三浦さん:紅葉がバッチリだったので、気分が上がりました。自分の時だけ雨が降ってきて衣装も濡れて申し訳なかったんですけど、気持ちの高ぶりが踊りにどんどん反映されていったかなと思います。個人的にとても良い踊りができてよかったです。

——今後の活動の予定を教えてください。

三浦さん:今年は地元含めてあと3回出演の機会がありまして、秋田県などに遠征予定です。また、来春の藤原まつりは毎年の恒例で、そのあたりの予定は決まっています。ユネスコの無形文化遺産に登録される見込みなので、その関係で演舞の誘いも増えるのではないかと期待しています。

演舞後の控え室では、若手の担い手の方に、今日の感想や現在の取り組み、今後やりたいことなどについて伺うことができました。まずは保存会を取りまとめる調整役として力を発揮されている高橋幸宏さん(32)です。

高橋さん:今年の1月から体験会を4~5回開催して、11名ほど加入していただきました。一番嬉しかったのが、子どもたちが成長して一度地域を離れてしまっても、実際に担い手として帰ってきてくれることです。地道な広報活動をしてきて本当に良かったと思います。

今回の祭りを振り返ると、自分が加入した3年前と比べて、多世代交流が増えてきたと実感します。10代から80代まで所属している組織は日本全国見渡しても珍しいでしょう。剣舞を通して縦のつながりができ、前の世代の方にお世話になったから、それを次の人へ繋いでいこうという風にサイクルが回っているんです。

次に今年から担い手に加入された阿部友昭さん(39)にもお話を伺いました。

阿部さん:今回が2回目の演舞でまだまだ慣れていないことは多いです。水沢の出身なので、川西大念佛剣舞に子どもの頃から慣れ親しんでいたわけではなく、今年から担い手になりました。

元々、紅白に出るような歌手の衣装担当の仕事をしてきたので、今度は自分たちの町にそのような方々をお呼びして一緒にコラボなどをしたいですね。剣舞の衣装はお金がかかってしまい、自分たちで衣装を作るにもなかなか難しいので、大事に使っていきたいです。団体のグッズも遊び心で作っていますが、それをきっかけにメディアの方にも取材いただいたこともあります。

どうしたら周りの人が面白がってくれるか考えているんです。ユネスコの無形文化遺産にも登録されるので、すごく良いタイミングですし、精力的に活動していきたいですね。

朝から晩まで、子どもから大人まで、たっぷりと川西大念佛剣舞の魅力に触れた1日でした。世界遺産である中尊寺という大舞台があり、そこで毎年継承される剣舞は勇壮でとても輝いて見えました。まずは子どもが憧れ、小学生から関われる「子ども同好会」があります。そこでの経験が、中学生からは80歳までの多世代が所属する保存会に繋がっていきます。そして、その保存会の中には、人それぞれの役割があるのです。このようなサイクルの中で、生き生きと活動する担い手たちの姿は郷土芸能継承の大きなヒントを与えてくれているように感じました。

演舞の後に撮らせていただいた集合写真。中尊寺の紅葉をバックにした本当に良いロケーションで、踊りもひときわ輝いていて素晴らしかったです。

取材:2022年11月3日

※この記事の写真は中尊寺の許諾を得て掲載しております。

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この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
日本全国300件以上の獅子舞を取材してきました。民俗芸能に関する執筆、研究、作品制作等を行っています。

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