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下鴨神社「蹴鞠はじめ」うるわしく蹴る勝ち負けなき平和な球技

更新日:2023/1/16 佐々木 美佳
下鴨神社「蹴鞠はじめ」うるわしく蹴る勝ち負けなき平和な球技

京阪出町柳駅を出ると目の前には大きな川「鴨川」が優雅に流れています。
その鴨川の向こうには3万6千坪もの敷地に巨樹が茂り、長い長い参道が続く「糺(ただす)の森」。そんな縄文時代から続く穏やかな景色が目の前に広がります。

糺の森での葵祭の様子。見どころのひとつ「斎王代」

この鴨川の下流にあるため「下鴨神社」と呼ばれている、正式名称「賀茂御祖神社」(かもみおやじんじゃ)は、京都三大祭りのひとつで源氏物語にも描かれた「葵祭」でも有名な神社です。

今回はこの下鴨神社で行われる「蹴鞠はじめ」を京都在住のカメラマン佐々木がレポートいたします。

初詣にも併せて行けて大人気!下鴨神社の蹴鞠はじめ

下鴨神社では毎年1月4日に「蹴鞠(けまり)はじめ」が行われます。

京都では年間を通して、何度か蹴鞠奉納の行事が行われますが、その中でも特に人気があるのが、この下鴨神社の蹴鞠です。

人気の理由は新年に雅な蹴鞠を見たい!ということをはじめ、糺の森に屋台が立ち並び、舞殿に飾られる干支の絵を見たり、初詣にも併せて行けるという魅力満載の日だからです。そして他の場所での蹴鞠奉納よりも対戦回数が多く、3座も行われるのも特徴です。

今回は正午から販売される有料席へ行ってみることにしました。この有料席には蹴鞠のパンフレットもついています。(私はこのパンフレットがついていることを知らず、先に買ってしまいました…。)

席は楼門側の椅子席と、普段は入ることができない舞殿があります。これは舞殿にあがるしかない…!と上から蹴鞠を拝見することにしました。

季節の枝に鞠を挟む「解鞠(ときまり)」から始まる

勝敗のない平和な球技「鞠道」

蹴鞠は2300年ほど前の中国の春秋戦国時代から行われたという記録が残っています。そのころは今とはルールが違い、サッカーのようなものだったそうです。

その後、1400年ほど前に仏教と一緒に日本に伝来し、蹴鞠は独自の発展をしていきます。

蹴鞠は「鞠道(きくどう)」という茶道や武道のような精神のスポーツで、ただ難しい技術で蹴りあうのではなく、次の人が受け取りやすいように蹴ります。地面に落とさずにどれだけ長く続けられるかを皆で一緒に楽しむ球技のため、勝敗はありません。

見えないように袖で隠して枝から鞠を解く所作

サッカーと大きく違うのは、右足の親指の辺りのみで蹴ること。他のところでは蹴らず、後ろ向きに蹴ることは無作法。
そして、なるべく地面に近い低い位置で、膝を曲げずに伸ばしたまま「うるわしく」鞠を蹴るのが良いとされています。

鞠庭に鞠人が順番に入り、輪になる姿は壮観。舞殿より撮影。

鞠は鹿と馬の皮で柔らかく作られており、卵二個分ほどの軽さ。蹴り上げると4.5mほどまで空高く舞い上がります。

ひとつひとつ職人が作ったもののため、癖を確かめる試し蹴りの「小鞠」をしてから、いよいよ蹴鞠が始まります。

蹴鞠が始まると「アリ」「ヤア」「オウ」と掛け声が鞠庭に響きます。

この掛け声、実は妖精の名前です。蹴鞠の妖精の名前は「アリ(夏安林・げあんりん)」「ヤア(春楊花・しゅんようか)」「オウ(秋園・しゅうおん)」といいます。

鞠庭には式木という竹が約7m四方の間隔で植えられており、ここから鞠の精が鞠に伝っていき、蹴鞠が続くのを手助けすると考えられています。

妖精と一緒に蹴鞠とは、なんだか微笑ましい光景に見えてきます。

楼門をバックに蹴鞠が見える場所は大人気。早い時間から場所取りする人も。

装束を見ると経験がわかる!

時代により神職や公家が着る束帯、平安時代の普段着である狩衣(かりぎぬ)、武士が着る直垂(ひたたれ)と鞠装束は変わっていきます。

座る半畳の畳の縁も鞠足(蹴鞠をする人のこと)の階級によって変わる

現在、烏帽子をかぶるのは男性のみ。鞠水干という夏に着る絽で作られた装束を季節を問わず着て、蹴鞠を行います。
また、級や段によっても身につけるものや、装束の色、文様が変わります。

現在でいうと柔道の帯の色の違いのような感じでしょうか。鞠足たちが、その昔は階級があがるようにと奮闘したのかもしれませんね。

思いやりの心があふれる蹴鞠道の中で、スポーツらしさが見えました。

鴨のくちばしのような形の鴨沓(かもぐつ)

世界遺産 賀茂御祖神社 下鴨神社
住所:京都市左京区下鴨泉川町59
TEL:075-781-0010
拝観時間:6:30~17:00
交通:京都市バス「下鴨神社前/糺の森前/出町柳駅」下車 徒歩5分

蹴鞠はじめ
開催日:毎年1月4日
有料席:2000円(パンフレット付き)※12:00から楼門そばにて販売
開催時間:13:30 神事終了後、蹴鞠開始

蹴鞠保存会による蹴鞠奉納

上賀茂神社での蹴鞠

下鴨神社の蹴鞠はじめ以外にも、京都を中心に蹴鞠を見られるチャンスはあります。
明治天皇の「蹴鞠を保存せよ」という勅命により誕生した「蹴鞠(しゅうきく)保存会」が行っている蹴鞠奉納の年間行事を紹介します(予定のため実際の開催日は異なる場合があります)。

1月4日 下鴨神社 蹴鞠はじめ
2月11日 上賀茂神社 紀元節(中祭)
4月14日 白峯神宮 春季例大祭 淳仁天皇祭 蹴鞠奉納
6月中旬 藤森神社 紫陽花祭 蹴鞠奉納
7月7日 白峯神宮 精大明神(蹴鞠の神様) 例祭 蹴鞠奉納
8月9日 平野神社(滋賀) 精大明神例祭
11月3日 談山神社(奈良) けまり祭
※上記のほか、例年春と秋の年2回、京都御所で雅楽の演奏や蹴鞠の奉納が行われます。

また毎月二回、日曜日に白峯神宮でお稽古があります。相手を思いやり鞠を蹴る、雅な世界を覗いてみる最初の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

京都御所での蹴鞠は広くて観覧しやすい。小雨の時は屋根の下で蹴鞠を行う。

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この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
毎日「京都散歩の旅」なカメラマン。
奈良・吉野アンバサダー。観光経済新聞、楽天トラベル等を執筆。聖地と舞が好き。民俗芸能や瀬織津姫研究中。
instagram @kyoto.photographer
https://earth-traveler.com/

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