2023年10月7日(土)、埼玉県鴻巣市で「第20回 こうのす花火大会」が開催されました。2023年は5年ぶりに日本最大級の大玉である四尺玉も上がり、好天順風の絶好のコンディション! 当日の様子や、大玉だけではないその魅力をレポートします!
「こうのす花火大会」とは?
鴻巣市らしい大スケールを誇る花火大会
鴻巣市といえば、日本一広い川幅、栽培面積日本一のポピー畑、日本一高いピラミッドひな壇など、様々なスケールの大きさを誇るところ。そして「こうのす花火大会」も、やっぱり関東きってのスケールの大きさです。四尺玉、三尺玉、尺玉300発(※)が上がる「鳳凰乱舞(おおとりらんぶ)」は必見!
※花火玉の大きさは尺貫法で表し、尺玉=直径約30cmの花火玉のこと。三尺玉は直径約90cm、打ち上げたときの高さと上空で開いたときの直径は約600m、四尺玉は直径約120cmで、打ち上げ高度・上空で開いたときの直径は約700mにもなります。
2019年は台風により中止、そして2020・2021年はコロナ禍により中止。2022年に復活開催を成し遂げたものの、準備期間が間に合わなかったことから、四尺玉は上がりませんでした。なので、四尺玉が上がるのは、2018年以来5年ぶりのこと。
さて、その四尺玉の打ち上げ筒がこちらです。
会場から望遠で撮ったのでちょっとわかりにくいですが、画面中央、茂みの向こうのベージュ色の物体がそれです。一番高さがあるのが打ち上げ用の筒で、周りの積み木のようなものは土嚢。四尺玉打ち上げの衝撃が大きいので、筒の周りをガチガチに土嚢で固めています。
この四尺玉を担当しているのは長野県のアルプス煙火工業。2013年の第12回大会で初めて四尺玉の打ち上げを成功させました。2014年に打ち上げた四尺玉は464kgを超える重さで、当時の「世界で最も重い打上花火」としてギネス世界記録に認定(2023年現在は他国により記録更新済)。また2023年9月には、三重県の「鈴鹿げんき花火大会」で四尺玉海上自爆を成功させています。
特に首都圏は二尺玉以上の大玉が上がることが少ないので、これほどの大玉が見られるのは本当に希少な機会です。
いよいよ打ち上げ開始!
打ち上げ前には、ゲストにタレントのはなわさんが登場!「埼玉県のうた」(映画『翔んで埼玉』の主題歌)などのライブで会場が盛り上がりました。
そしていよいよ18時、開会セレモニーが始まり、打ち上げスタート!
花火大会の華・スターマインが次々に!
花火はスターマインを中心に、数々の花火が打ち上がります。担当煙火店は、地元埼玉の本家神田煙火工業、そして長野県のアルプス煙火工業。
「スターマイン」とは「速射連発花火」、つまりたくさんの花火を一気に打ち上げる方式のこと。華やかで見ごたえがある人気のプログラムです。様々な花火の組み合わせで打ち上げ担当の煙火店の個性が出るし、花火大会自体の特徴も決定づけることが多いです。
音楽に合わせたスターマインは特に人気があり、「こうのす花火大会」でも、音楽コラボのスターマインとして、Ado「私は最強」、バックストリートボーイズ「I Want It That Way」、THE TIMERS「デイ・ドリーム・ビリーバー」、Official髭男dism「Subtitle」など、新旧多彩な音楽で花火が打ち上げられました。やはり、人気曲での打ち上げは盛り上がります!
「同時打ち」は花火写真初心者にもおすすめ
「こうのす花火大会」で特徴的なのが「同時打ち」というプログラム。ほかではあまり見たことがないので、名称から、2つの花火玉を同時に打ち上げる「対打ち」のようなものを想像していたのですが、そうではありませんでした。
上の写真のように、トラの尾などの地上から吹きあがる花火、中段の小さめの花火、そして高く上がっていく大玉が順々に開いていきます。これが写真に撮るととてもいい感じに収まります。
※最低限の花火撮影機材(シャッター開放時間や露出等を設定できるカメラ、三脚、レリーズなど)は必要です。
スターマインはシャッターを切るタイミングが難しくなかなか思うような絵にならないし、白飛びしたりもします。ですが「同時打ち」は、地上から花火が吹き上がった瞬間にシャッターを押し、大玉が消えるまで開きっぱなしでも、ほとんどの場合(カメラの設定を間違えていなければ)大丈夫。
花火の色や形もバランスがとれているので、花火写真を初めて撮るような方でも、見栄えのいい写真が撮れると思います。
「鳳凰乱舞」が三尺玉から始まった!
着々とプログラムが進行、48番目の「黄金錦大乱舞」まで終了。
いよいよフィナーレ、「鳳凰乱舞」が始まりました。
その始まりは三尺玉。
流れる音楽はラッツ&スター「め組のひと」でした。ボーカルの入りとほぼ同時に上がった三尺玉は、「めッ!」のフレーズで開くという粋なタイミング。この曲は昭和のヒット曲ですが、一時期SNSの「踊ってみた」などで10~20代にも人気だったと聞きます。懐メロのようでいて、幅広い世代が楽しめる選曲だったかも。
軽快なリズムの中、次々に大玉が上がる、まさに乱舞!
打ち上げ方は、一斉に上げたり、タイミングをずらしたりと変化をつけていますが、ひたすら尺玉の連打。一切の小細工なし!という感じで、とにかく多彩な尺玉で魅せます。
最後は眩しいほどの錦冠菊が会場を照らし、終了。
そしていよいよ、四尺玉の打ち上げです。観客も一緒に「3・2・1」のカウントダウン、そして「点火----!」
曲導が天に上っていき、無音で開いてゆっくりと広がる光跡。数秒遅れて響く「ドーーーン!」という音。遮るものがないので風圧まで届きました。
5年ぶりの四尺玉打ち上げは見事に成功しました。
2023年の「こうのす花火大会」は、5年ぶりの完全開催を祝うように、すべてのプログラムを完遂し、目立ったトラブルも、雲や煙に遮られることもなく、拍手と歓声の中、終了しました。
たくさんの人の力が可視化された花火大会
「こうのす花火大会」は、行政主導の花火大会ではなく、鴻巣市商工会青年部が主催しています。多くの市民の力が集まって開催されていることは、パンフレットからでも見て取れます。
こちらのプログラムには、各花火について、協賛者の名称やコメントのほか、協賛金額も書かれています。ほかの花火大会ではあまり見かけないと思いますが、たくさんの人が協賛し、出資してくださっているからこそ、花火大会が開催できるのだということが可視化されています(プログラムは公式サイトで見ることができます)。
募集しますと言うだけで協賛金が集まるわけもなく、たくさん声をかけ、足を運んでの成果であろうと思います。普段からの関係作りも大切なことと思いますし、協賛者の理解や、主催者の努力と熱意に頭が下がります。
沿道の安全管理にも注力
もうひとつ感心したのが、会場周辺の警備員の配置の多さ。鴻巣駅から会場までは、一直線ではないので何度か角を曲がります。道案内の看板も出ているのですが、数十メートルおきに警備の方が立っているので、道を間違う心配がありません。また、歩道がない道での車の接近や、堤防上の細い道で対向者が来た場合なども早めにしっかり声をかけしてくださっていたので、人は多くてもスムーズに流れていたように思います。
会場の様子・アクセスなど
最後に、当日の観覧会場の様子と、アクセスについてご紹介します。
観覧会場
観覧会場は、糠田第1会場、糠田第2会場、吉見会場、ポピー会場の4か所がありました。このうち、糠田第1会場・第2の会場の様子をご紹介します。吉見会場とポピー会場は少し離れているため足を延ばすことができませんでした。
●糠田第1会場
打ち上げ場所正面の観覧会場。緑色のフェンス内が協賛席や有料観覧席です。
●糠田第2会場
こちらにも有料観覧席が設けられていましたが、糠田橋を挟んでいること、一部プログラムが斜めに見えることなどから、第1会場より安価な価格設定となっていました。
なお、どちらにも出店がたくさん出ていて、とても賑わっていましたよ。
アクセスについて
私は鴻巣駅から徒歩で糠田第1会場へ向かいましたが、行きは約30分で到着しました。糠田第2会場はもう少し距離があるので、40分程度みておいたほうがよさそうです。なお、帰路は混雑もあったので、駅まで45分ほど、鴻巣駅では入場規制がかかっており入場列に並んでホームに入るまで45分ほどかかりました。花火大会自体は20時頃終了、会場を出たのは20:15頃、鴻巣駅から新宿方面の電車に乗れたのは22時前でした。
終了後即撤収すればもう少し早く駅に到着することも可能かもしれませんが、安全面を考えても、これくらいの時間はかかるものとして時間計算をしておくことをお勧めします。
全国屈指の広大な河川敷を活かしたダイナミックな「こうのす花火大会」。花火大会を取り巻く環境は厳しくなりつつありますが、長く継続してほしい花火大会です。近年は秋の開催が恒例となっており、ほかの花火大会と重なることも少ないので、ぜひ一度足を運んでみてください。