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「水口曳山まつり」ジャズやマンボ調と多彩なお囃子が魅力の水口囃子 

更新日:2023/5/1 佐々木 美佳
「水口曳山まつり」ジャズやマンボ調と多彩なお囃子が魅力の水口囃子 

水口(みなくち)を開拓した祖神「大水口宿禰命(おおみなくちのすくねのみこと)」が祀られている水口神社は、忍者や水口城跡などで有名な滋賀県甲賀市にあります。東海道五十三次の50番目の宿場町であり、水口藩の城下町としても発展した歴史ある町です。

今でも硬券が発券されているローカル線の近江鉄道本線に乗ると、国宝・彦根城や、映画のロケ地としてしばしば使われる近江八幡などにも行けます。
そんな魅力いっぱいの水口で行われる水口曳山まつりをご紹介いたします。

滋賀県最大数の曳山16基で奏でられる水口囃子が魅力「水口曳山まつり」

水口曳山まつりは毎年4月19日・20日に行われます。19日の「宵宮祭」では町内を巡る「曳山スタンプラリー」が目玉です。各町内の蔵で提灯の明かりが灯った曳山と宵宮囃子を見て、聞いて楽しめます。
翌日の4月20日は「例大祭」。各町内から曳山が弟殿(おとんど=御旅所)に集まり、水口神社への巡行が行われます。午後からはお稚児さんの行列や「御輿」の渡御、日が落ちる頃になると曳山には各町内へ帰っていく「帰り山」の姿を見ることができます。両日通しての魅力はやっぱり町自慢の豪華な曳山と水口囃子。各町内での違いを見ていただきたいです。

曳山は組み上がった状態で各町内の山倉(蔵)に収納されている

「宵宮祭」スタンプラリーで町内ごとに違う水口囃子を満喫

水口城南駅に到着すると目の前は「曳山公園」。

駅の向こうからピーヒャラピーヒャラと笛の音やテンテコと太鼓の音が聴こえてきます。

音のする方に進んでいくと水口神社に到着。

曳山に提灯が飾られ、水口囃子が奏でられていました。

平町の見送り幕は舞楽「胡蝶」。曳山の後ろ姿も美しい。

この水口囃子は緩急の変化が激しく野生的で庶民的、かつ近代的な音曲として親しまれています。各町内で少し曲が異なりますが、300年もの間、口伝されてきたその曲を残そうと楽譜を作る活動や、湯屋町のような「テケテンキッズ」と呼ばれる子供たちに教える活動も盛んで、これから先もずっと続いていくという力強さを感じる演奏を聞くことができます。

21時半まで境内では宵宮囃子が奏でられる

拝殿には御神輿が3基、飾られています。

地酒やお囃子の一節が名前になっている水口銘菓どらやき「どんどひぶ」など、お土産の屋台もありました。
参道には露店が100店ほど出ていて賑やかな雰囲気です。

境内では地図も配っており、「18時からはスタンプラリーもありますよ!」と「宵宮スタンプラリー曳山&みどころ」の地図をいただきました。

現在、16基が曳山保有町で維持管理されており、その内の1基が毎年交替で、甲賀市歴史民俗資料館に展示されています。
曳山が展示されている市内16カ所のうち、半分の8カ所を回るとスタンプラリーの記念品として曳山の絵が入った手ぬぐいがもらえました。(毎年景品が変わります)

今回、はじめて水口へ来て、地図をもらって必死に行ってみたところ、なんとか14カ所を回ったところでタイムアップ。

演奏を楽しみながら写真や動画を撮っていると制限時間はあっという間。同じくスタンプラリーに挑戦している子供たちも、町内の人に場所を聞きながら走り回っていました。コンプリートを目指す場合は時間との戦いになります。

19日は中部コミュニティセンター、20日は水口神社で、景品引き換えができます。21時を過ぎると曳山は蔵に入り、全く姿が見えなくなります。

私が巡って感じたのはやはりそれぞれの町内のお囃子をじっくり楽しんで欲しいということ。

私が聴いた中では、平町と東町の演奏力に惹かれました。動画では平町2:35、4:20、東町5:40の「八妙ばやし」という曲で掛け声が入るところが「お祭りに来た!」と血が騒ぐ感じがして好きです。スタンプラリーのコンプリートも楽しいですが、同じ町内でも曲によっても印象が変わるため、ゆっくり演奏を聞きながら無理せず何年かに分けて全ての曳山を巡りたいなと感じます。

「例大祭」曳山の「ダシ」に注目!

20日は、午前8時30分に水口歴史民俗資料館で曳山の出庫式が始まります。2023年の出庫は湯屋町です。(2023年4月20日夕方から1年間、歴史民俗資料館に展示されるのは、入れ替わりで入庫となる天王町の曳山です。)祭りの当日だけ、曳山の上に「ダシ」と呼ばれる作り物を乗せて巡行します。今回は「野洲のおっさん」という地元テレビ局・びわ湖放送の人気ゆるキャラです。琵琶湖を巡っているという地元ならではのゆるキャラ、いいなぁ!野洲のおっさんに会ってみたいと感じました。この曳山の上の飾り物も毎年、各町内で趣向を変えて作られます。

神事のあと曳山の御簾が降ろされ、中ではお囃子が奏でられます。いよいよ弟殿に向かって出発です。

午前9時00分になると水口神社に雅楽の音が響き渡り、献幣使御参向(けんぺいしごさんこう)という例大祭の神事がはじまります。

弟殿から水口神社へ纏田楽と曳山出発

この町中を巡る曳山の数は毎年変わります。2023年は湯屋町、天王町、松原町の3基の曳山が出番でした。

曳山が集まる弟殿(国造神社)は、纏田楽(まといでんがく)と田楽警護、そして曳山の出発地点になっています。また纒田楽は前半と後半に分かれており、まずは曳山が出発する前に前半の纏の行列が練り歩きます。

この弟殿を出発したあとの見どころはギリ回しという方向転換。

天王町の曳山のダシは桃太郎

宮の前の交差点にいると、大きな曳山の方向転換するための作業が広い場所でじっくり見られます。

注意点は曳山にはブレーキがついていないため、うっかり近づかないこと。

近くで見たいですが、曳山は急には止まれません。適切な距離をとって見ましょう。

前テコ・後テコ・端テコと呼ばれる棒を「てこの原理」のように使い、曳山の下に人が入り芯棒の下に厚い板のようなものをセットします。車輪を浮かせ、力技で曳山を方向転換をするギリ廻しをしていました。

道路にはチョークで描いたような車輪の跡がついています。こうやって昔から操作の仕方を引き継いで来たのだと曳山の軌跡から歴史を感じました。

曳山の最後を飾るのは松原町。ダシは大河ドラマ「どうする家康」にちなみ徳川家康です。

水口神社に到着した曳山が本殿の前に来ると、引き手の人たちは一度離れて、お囃子を奏でます。

両側には纏田楽や田楽警護の人たちが並び、お囃子の奉納を見守ります。

このお囃子の奉納の際になると曳山の御簾があがります。やっと演奏している人たちの姿が見えました。神前で演奏される曲​は​「ガク(額)」「オロチ(大蛇)」​のどちらかと決まっています。青空の下、曳山とピンク色の幡「ホイノボリ」との景色が美しかったです。

境内を一周巡ると、曳山は定位置へ。しばらくの間、お囃子の演奏が続きます。

天狗に獅子舞、可愛いお稚児さんにホイノボリも「神輿渡御」

午後2時になると神輿渡御開始。拝殿から御神輿が登場します。

続いては大勢の氏子さんたちによる渡御です。

獅子頭と天狗さんのあとに隣町の日野町で見た「ホイノボリ」が練り物として行列に入っていました。

錦旗の後は可愛らしいお稚児さんが続きます。

辺りには神聖な雅楽の音が響きます。

曳山の出番がない町内でも蔵の前でお囃子を奏でていました。

水口囃子に用いられる楽器は、大太鼓、小太鼓、鉦、篠笛。その魅力は多彩な曲調にありますが、宵宮からお囃子を聞いて回っていたら町内によって演奏の雰囲気の違いがあるなとわかるようになってきました。

​巡行の​際の曲​​は​「バカ(馬鹿)」「オオマ(大廻・大馬)」「ヤタイ・ヤタエ(屋台・八妙)」「シチョウメ(四丁目)」「桜ばやし」など​が奏でられます。宮入や上り坂など​で​は​力が出るように東地区(12基)では「ヤタエ」、西地区(4基)では「ヤタイ」​という​アップテンポの曲が奏されます。​平坦な道を進むとき​は東では「バカ」、西では「シチョウメ」​という​ゆったりした​曲を奏でます​​。

行列もいよいよ子供神輿の2基が出発。最後に大人神輿が満を持して出発します。

境内ではお囃子の演奏が夕刻まで続きます。

曳山について、面白い話を地元の方に教えてもらいました。なんと隣町の日野と曳山が売買されることがあるというのです。水口で見なくなった曳山が日野で大切に使われていたり、日野にあった懐かしの曳山が水口で見られたりということがあるそうです。諸事情により町内で保存が難しくなったり、使えなくなった曳山が隣町に行くというのはなんともエコ。SDGsを先取りしている取り組みに感服しました。日野祭で見る曳山の姿も楽しみです。

水口曳山まつりスケジュール

4月8日 午後1時30分 くじとり式 (纏田楽と曳山奉納順のくじ番号が決定)
4月12日 午後1時 神輿拝殿に出御(年により台数は変更)
4月19日 午後7時 宵宮祭
4月20日 例大祭
8:20 歴史民俗資料館の曳山が出庫
10:00 各曳山が弟殿(おとんど)へ集合
10:00 纏田楽(まといでんがく)が弟殿へ集合
10:45 纏田楽が水口神社へ向け渡行
11:00 曳山が神社へ向け渡御
13:00 氏子古式祭
13:30 遷霊祭
14:00 神輿渡御開始
15:00 稚児還行
17:30 歴史民俗資料館へ入る曳山が入庫式
17:30 子ども神輿・樽神輿が帰ってくる
18:30 大神輿が帰ってくる
19:00 帰り山

4月21日
午前9時 神輿納庫
午後4時 後宴祭(神湯奉献)

水口神社
〒528-0013滋賀県甲賀市水口町宮の前3-14
電話:0748-62-0231
FAX:0748-62-1297
https://minakuchi-jinja.com/

この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
毎日「京都散歩の旅」なカメラマン。
奈良・吉野アンバサダー。観光経済新聞、楽天トラベル等を執筆。聖地と舞が好き。民俗芸能や瀬織津姫研究中。
instagram @kyoto.photographer
https://earth-traveler.com/

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