埼玉・毛呂山の秋祭り
埼玉県の南西部で入間郡に属する毛呂山(もろやま)町。関東平野のヘリにあたる場所で、町内には鎌倉街道上道が通るなど、交通の要所として歴史を重ねてきた地域です。この毛呂山で毎年11月3日に開催されているお祭りがあります。「出雲伊波比(いずもいわい)神社の流鏑馬」です!
出雲伊波比神社の流鏑馬は今年で960年目を迎える歴史あるお祭りで、1063年(康平6年)に源義家が奥州征伐の戦勝御礼参りで奉納した流鏑馬がはじまりと伝わっています。
その舞台となる出雲伊波比神社の本殿は戦前まで国宝に指定されていたもので、室町時代後期の1528年(亨祿元年)の建築と言われこちらも歴史があります。また鎌倉時代には源頼朝の命を受けた畠山重忠による造営があったり、江戸時代には徳川家光による社殿修理があったりと、時代時代の有力者の庇護も厚かった神社です。
歴史ある神社のお祭りということで、流鏑馬も古式を今に伝える出雲伊波比神社特有のものとなっています。それでは今年のお祭りの様子を見ていきましょう!
若武者による野陣
出雲伊波比神社の流鏑馬の見どころは大きく分けて3つあります。朝から行われる流鏑馬の「朝的(あさまとう)」、昼前に行われる馬の乗り子が冷酒と柿の接待を受ける「野陣(のじん)」、出陣からクライマックスの流鏑馬まで行われる「夕的(ゆうまとう)」です。
11月3日、お祭り当日の神社境内へとやって来ました。境内には馬場が設置され、左側には的が三箇所に用意されています。流鏑馬を見ようと早い時間から見物の方が来場していましたよ。
一の的、二の的、三の的と、たくさんの的が掲げられています。
野陣がはじまる11時を迎え、社殿での神事を終えた乗り子の若武者達が登場しました。
露店が立ち並ぶ参道を進み、野陣の会場へと向かいます。
合戦の陣に見立てられ白布で囲まれたこちらが、野陣の会場です。乗り子の3名が、こちらで冷酒と柿の接待を受けていきますよ。
各者に注がれていく冷酒。
注がれた冷酒を皆でグイッといただきます。また目の前には柿が置かれていますね。冷酒を飲み干したら、これにて野陣は終了です。乗り子は午後の夕的の出陣地である毛呂本郷へと戻っていきます。
的宿からいざ出陣
神社から西へ700m程進んだ場所にある毛呂本郷集会所。こちらが夕的への出陣の拠点となる「的宿(本陣)」となっています。出陣前の13時半頃にやってくると、早速流鏑馬の馬が出迎えてくれました!着飾っていてかわいらしいですね。
そして出陣直前に的宿で行われるのが、「追出の酒盛」。流鏑馬に参加する3頭の馬が一の馬、二の馬、三の馬の3組に分かれているのですが、この3組でリレー形式でお酒を注ぎ合い、次々に男衆が飲み干していました。
「ホイホイ!」という声が響く中、どんどんと飲み進められていくお酒!
一升瓶で注いでいくというのも味がありますね。注いでいる時には「なみなみっ!」なんて声も飛んでいました。
グイッと一気に飲み干します。青空の下、気持ちが良いですね!
的宿の本陣からの出陣を前に、追出の酒盛が行われます!一の的、二の的、三の的とリレー形式でお酒が渡されていき、これは盛り上がりますね!#出雲伊波比神社の流鏑馬 #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/uG6kMqIxY9
— 高橋佑馬|お祭りライター (@yuma_walking) November 4, 2023
大人による追出の酒盛が終わると、いよいよ馬に乗り子が乗り込みます。
乗り込んだら記念撮影も。こちらは一の馬の皆様です!
さあ、出陣の時が近づいてきましたよ。
時間となり出陣です!ゆっくりと騎馬が歩みを進めます。
いざ、出陣!本陣から騎馬武者が3騎出発し、出雲伊波比神社を目指し進みます。#出雲伊波比神社の流鏑馬 #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/MZ2IxHDEyZ
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村落を進んでいく3騎の騎馬。乗り子の若武者は、頭には花笠、背には母衣(ほろ)を付けているのがポイントです。
母衣の色にもご注目ください。一騎目は白で源氏、二騎目は紫で藤原氏、三騎目は赤で平氏を表しています。また丸く膨らんだ母衣には、元々矢避けの役割もあるそうです。
集落を練り歩く3騎の騎馬武者。1騎目の白は源氏を、2騎目の紫は藤原氏を、3騎目の赤は平氏を表しているそうです。
この後、後方の民家からはもち投げも行われました!#出雲伊波比神社の流鏑馬 #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/n7WoXYOUqV— 高橋佑馬|お祭りライター (@yuma_walking) November 4, 2023
騎馬の通り過ぎた的宿近くの民家の二階からは、出陣の餅撒きが行われる場面も。これを楽しみにしている地元の方々も多いそうですよ。
豪勢に餅が撒かれ、これは盛り上がりますね!
歩みを進めてきた騎馬行列は、流鏑馬が行われる出雲伊波比神社の方向へ。
3騎を中心にカラフルな服に身を包んだ皆様が連なる様子は絵になります。
神社境内へ近づいてきました。行列の皆様には笑顔も見えますね。
境内へと到着!
目的地へとやってきて、馬も一安心の表情でしょうか。
乗り子の3名は、そのまま馬上の人です。
落ち着いたところで、馬場へ向かう前の儀式へと移ります。まず行うのは馬の口のすすぎ。
そして爪切りです。爪切りといっても実際に切る訳ではなく、祭具を用いて爪の近くを叩くことで表現しています。
男衆が声を上げて行っているのも特徴的ですね。
出雲伊波比神社の流鏑馬の「つめきりの儀式」の様子。声を出しながら、このように行うのですね!#祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/KEoX57TSL1
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いよいよ儀式が終わったら、騎馬が馬場へと入場していきます!
馬上から的を射る
14時半頃になり、馬場へと騎馬が上がってきました!流鏑馬を一目見ようと、馬場の周りには多くの見物客が押し寄せています。
2騎目の馬も入場です。
3騎目もやってきました。これで全頭馬場に入りましたよ。
ここで流鏑馬を前に、宮司さんが的と馬場のお祓いをします。
お祓いが終わったら一の馬が的前へと進み、放たれるのは「願的(がんまとう)」の矢。願的は流鏑馬のはじめに一回だけ矢が放たれるもので、「地域の人たちの願いを神に伝える神聖な儀式(出典:毛呂山町ホームページ)」と言われています。
見事矢が的へと命中しました!願いが神様に伝わって欲しいですね。
願的が終わると、騎射を行う「矢的」に続きます。いわゆる流鏑馬のイメージどおりのもので、駆ける馬上から的を目掛けて矢が放たれます。一の馬が放った矢は、鮮やかな命中となりました!
矢的は3騎が3回ずつ行っていきます。2回目の矢も放たれました。
颯爽と馬場に登場し、矢を放っていく姿はかっこいいですよね。
二の馬も颯爽と駆けていきます!
大迫力で迫るのは三の馬!
弓矢片手に馬の手綱をコントロールするのはすごい技です。
3度の騎射が終わると、ここからは馬上での芸を披露する時間へと移ります。まずは扇子を使用した芸です。
扇子を口で挟み、両手にも握って駆けていきます。
お次は「ノロシ」。両手に細長い布を持って手を上げたまま駆けていくんです。
手を上げたまま馬上でバランスを取るのは難しそうですよね。
続いては「ミカン」。なんとミカンを投げながら馬場を進んでいきます。
3騎が駆け終わった後には馬場に落ちたミカンを拾っていいよということで、子どもたちも馬場を駆けてミカンへ一直線に走っていくんです。こちらも見どころかもしれません。
まだまだ芸の披露が続きます。こちらは「ムチ」の様子です。手に持ったムチを左右上下に降って技を見せていきます。
出雲伊波比神社の流鏑馬。3組の騎馬が見事なムチの技を見せながら馬場を駆け抜けていきます!#祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/FbkZOF4JjV
— 高橋佑馬|お祭りライター (@yuma_walking) November 4, 2023
「ムチ」の後は「モチ」が続くんです。馬上から餅撒きが行われ、こちらも盛り上がります!
派手にモチをばら撒いていきますよ。
馬場中に撒かれるモチ。こちらもミカン同様、3騎が通り過ぎたら取りに行くことが可能なんです。
その時を待ちわびていた子どもたちが走ります!モチには運がいいとクジが入っている場合もあるらしく、それは熱心になってしまいますね。
鳥居横には一通りの出番を終えた騎馬が。見事な技の数々でした!
露店も楽しめる
流鏑馬を見た後は、露店も楽しみたいですよね。境内の参道や神社の麓のスペースにはたくさんの露店が立ち並んでいました!
焼きそばやたこ焼きといった定番のお祭りグルメから、りんご飴やベビーカステラといったデザートまで提供されています。これはいろいろと楽しめそうですね。
出雲伊波比神社へのアクセス
■最寄りの駅まで
・池袋駅から東武東上線急行で坂戸駅へ。東武越生線に乗り換え東毛呂駅まで合計で62分
・八王子駅からJR八高線で毛呂駅まで70分
・高崎駅からJR八高線で毛呂駅まで80分
■駅から出雲伊波比神社まで
・東毛呂駅から徒歩で約10分
・毛呂駅から徒歩で約3分
毎年11月3日に開催される「出雲伊波比神社の流鏑馬」。ぜひ騎馬の勇姿を見に毛呂山へ来てみてください!