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山形県でながい黒獅子まつりを開催!大きく躍動感あふれる舞いの様子・その始まりとは?

2021/6/3
2021/6/4
山形県でながい黒獅子まつりを開催!大きく躍動感あふれる舞いの様子・その始まりとは?

白い髪に黒い顔、大きな幕が印象的な獅子舞が行われているという。SNSなどで見たことはあったが、現地で見たことはなかった。どのような舞いが行われるのだろう?という疑問と好奇心から、各地の獅子舞を取材している私は山形県長井市に向かった。

「ながい黒獅子まつり」は、2021年5月22日(土)に市内の白つつじ公園で行われた。天気は曇り空で途中から雨が降り出したが、それも水神様の獅子ならではのこと。空の黒雲に劣らぬその迫力は圧巻であった。その時の様子をレポートさせて頂く。

ながい黒獅子まつりとは

黒獅子の起源は今から約1000年前、長井市各所に伝わった神事が元になっているという。現在は市内40箇所の神社を起点に黒獅子が実施されているそうだ。これらの獅子が集まり、演目を披露するのがこのながい黒獅子まつりである。ながいの黒獅子は、獅子と警護(力士)が力比べをするのが特徴。両者が接触するシーンは迫力があり見所である。第31回の今回は5つの神社に伝わる獅子舞が、以下のような流れで行われた。

17:00~ 開会セレモニー
17:30~18:25 第1部(五所神社, 八雲神社 交代制演舞)
18:45~19:10 第2部(白山神社, 皇大神社 同時演舞)
19:30~19:55 第3部(總宮神社 演舞)

開会セレモニー、祭りの始まり

会場である白つつじ公園多目的広場は、フラワー長井線・長井駅より徒歩15分の場所にある。毎年5月は白つつじの開花時期ということもあり、茶会やマラソン大会など、様々なイベントが開催されているようだ(2021年は開催なし)。その一つとして、ながい黒獅子まつりが開催されている。

今回は、新型コロナウイルス対策のため、事前申し込みを受け付け、第1部から第3部まで入れ替え制で入場者数を制限して実施された。祭りは17:00より開始。あたりが薄暗くなる中で、お祓いや玉串奉奠(たまぐしほうてん)、市長さんの挨拶などが行われた。

黒獅子本番の流れ

では、実際に黒獅子の演目にはどのような演舞があるのかを確認しておく。ほとんどの神社は入場してから八の字を描くようにゆらゆらと舞い、「御信心(ごしんじん)」ということで客席からお神酒やご祝儀をもらう。それから警護と獅子との力くらべである「警護がかり」が行われ、最初は獅子が勝つ場合があるものの、最終的には警護が勝ち、神社に獅子頭と幕が収められるというのが大まかな流れである。

まずは鳥居をくぐって会場に入場。

八の字を描くようにゆらゆらと舞う。

獅子は警護の先導で客席に向かう。御信心といって、お神酒やご祝儀を受け取る時もある。

これは警護がかりというシーン。獅子が背後から迫るが、警護は動じない。獅子が正面にまわって睨み合いをすることもある。

警護は幕を引っ張り、顎下から獅子をとらえる。ここは獅子にとって急所の部分で、抑えられると動けなくなってしまう。警護は声を荒げ、神社へと導こうとする。ここで獅子が逃げたら獅子の勝ち、神社にうまくおさまれば警護の勝ちである。

警護は声を荒げ、獅子を神社へと導こうとする。その声が秩序や規律を象徴するかのように思えるほど迫力がある。

警護が勝つと、このように獅子は台の上にあげられ、最後八の字を描くように神社に向かう。最後の歯打ちはまるで獅子の魂が抜けていくかのようである。

獅子頭と幕が祭壇に収められ、演者が頭を下げて演目は終了である。

各神社の黒獅子を紹介

各神社の黒獅子の特徴と感じたことについても、ここでまとめておきたい。

一番最初に登場したのが、五所神社の獅子。五所とは「朝日岳、岩上岳、小朝日、月ヶ峰、三淵」のことで、これらを寛治4(1090)年、源義家の命により合祀したのが由来とのこと。例祭日は毎年8月14・15日という日程で行われる。

この神社の警護は靴を履かずに裸足であり、気迫を感じる。「警護がかり」のシーンで、最初は獅子が神社に入りたくないこということで逃げてしまう。2回目の警護がかりで獅子は神社に入り、首が祭壇に供えられる。

次に登場したのが八雲神社の獅子。神社は大治3(1128)年、京都の八坂神社から分霊により建立された。ご神体は牛頭天王で健康や安全の神様として崇敬されている。例祭日は9月4日である。

とても幕がながく、菊の紋が入っている。獅子頭は五所神社と異なり、目力が強く緊張感がある。また、警護は裸足ではなく、白足袋を履いている。警護棒を獅子に咥えさせるという珍しいシーンもあった。

次に第二部では、白山神社と皇大神社の獅子が同時に演舞を実施。白山神社は名前の通り加賀白山より分霊、皇大神社は伊勢神宮式年遷宮により神殿一宇(一棟の建物)を拝受したとのこと。例祭日は白山神社が9月11日、皇大神社は5月15日・9月12日である。

雨が降ってきたので、途中で合羽が配布されながらも雨天決行。水神様の性格通り、地域では黒獅子が来ると雨が降ると言われているようだ。この2つの獅子は終わり方が独特で、ゆっくりと幕を引きずるように、そして後ろを振り返りながら遊び足りないという様子で神社にはいっていった。

最後の演舞は總宮神社。總宮神社の獅子舞は、長井町最古の獅子舞を今に伝えるようだ。始まりは今から約1000年前の前九年の役。源頼義が社殿を再建して、兵士に獅子を舞わせたのが始まりだそうだ。

また、長井の人々は「卯の花姫伝説」と黒獅子を関連づけて考えている。源頼義の子・義家は、長井の地を治める安倍貞任の娘・卯の花姫に兵を引くことを持ちかけた。この謀略にはまって敗退をしてしまった卯の花姫は三淵渓谷に身を投げたと言われている。その時に竜神となり川を流れる姿が、長井の黒獅子の起源とも言われている。

何れにしても、總宮神社の獅子舞は長井の黒獅子の起源を今に伝えているのだ。例祭日は9月15日~16日とのこと。実際に一連の演舞、最後の最後に黒獅子が警護に導かれ首が神前に供えられる様を見ていて、非常に厳かな空気を感じた。

長井市に根付く黒獅子

今回、ながい黒獅子まつりを取材させていただき、黒獅子が地域の方々にとってとても重要な文化であることを実感した。このお祭りとは別に、長井駅には黒獅子が飾られ、町歩きのマップに黒獅子のイラストが登場していることにも感動した。

今回はコロナ禍で縮小開催となってしまったが、本来であれば何時間も市内で獅子が舞い、街中で活気があったことだろう。今回はあっという間だったが、コロナ禍でも工夫をして開催しておられるとも感じた。来年、再来年につながるお祭りだったに違いない。まだ見たことがないという方はぜひ、来年以降に「ながい黒獅子まつり」を訪れていただきたい。

ながい黒獅子まつりの詳細はこちら

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