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獅子舞が大集結!ながの獅子舞フェスティバルが目指す伝統芸能継承の形とは

2022/5/12
2022/5/13
獅子舞が大集結!ながの獅子舞フェスティバルが目指す伝統芸能継承の形とは

一年に一度、ゴールデンウィークに獅子舞が一堂に会する「ながの獅子舞フェスティバル」が開催!長野市を中心とした30団体以上が長野駅周辺に集い、演舞が行われた。伝統芸能の継承と地域や世代を超えた交流の促進を目的にいままで実施されてきたようだが、なかなかこれほど大規模な獅子舞イベントも珍しい。実際に現地を訪れ、このイベントが地域において果たす役割について考えた。

ながの獅子舞フェスティバルとは?

このお祭りでは主に長野県長野市内の獅子舞団体が集い、長野駅善光寺口から善光寺へと続く道中各所で演舞が行われる。長野市文化スポーツ振興部文化芸術課が主催しており、今回は第6回目の開催だ。コロナ禍により出演できなかった団体もあったが、祭り自体は無事に2022年5月3日に開催され、34団体が出演して賑わいを見せた。長野市の獅子舞は伊勢系統の獅子神楽に分類されるものが多く、神楽囃子が練り歩く姿も見られた。

長野市周辺の獅子舞の特徴

長野県教育委員会『長野県の民俗芸能』(1995年)によれば、長野県の獅子舞は550件もの分布が確認されているようだ。また、小林幹男『信濃の獅子舞と神楽』(2006年8月10日, 信濃毎日新聞社)によれば、長野市を含む北信地方にはおよそ260件の獅子舞が伝わっており、獅子舞、獅子神楽、神楽獅子、神楽、大神楽、太神楽、大々神楽、五分一太神楽、イタコ獅子など呼び方は様々とのこと。

「神楽」と付く名称が多いのは、この地方が伊勢大神楽を起源とする2人立ちの獅子神楽が多いからだ。江戸時代以降に伝わったものが多いと言われている。実際にながの獅子舞フェスティバルで見られる獅子にも、獅子頭の形やカヤを絞る等の所作に、伊勢大神楽の特徴が多く見られる。

この日見られた2人立ちの獅子神楽

ながの獅子舞フェスティバルに訪問!

それでは実際に現地に訪れた時の様子を写真とともに振り返りたい。長野市周辺の獅子舞を見るのは初めてで、どのような獅子舞が見られるのだろうという高揚感とともに、長野駅に降り立った。

お囃子の屋台に遭遇

すぐさま善光寺口前でお囃子の屋台を発見!記念写真の撮影も行われていた。この地域の獅子舞には以下の写真のような屋台が登場する。まずはここから善光寺に向かう道のりで様々なお囃子の屋台に出会ったのでいくつか紹介させていきたい。

犀川神社太々神楽保存会

湯谷神楽囃子保存会

上高田太々神楽保存会

屋台には太鼓を叩く人、笛を吹く人、鉦を鳴らす人など様々な人が付いて歩いていることがわかる。また、それぞれの屋台や法被のデザインの違いも見られて面白い。日本全国の獅子舞を見渡せば、屋台が付かず太鼓が独立して運ばれるということも多い。屋台が登場することがこの地域の獅子舞の大きな特色になっているように思えた。

獅子舞がメインストリートで一斉演舞!

では、獅子舞の演舞の様子も見てみよう。 こちらはショッピングプラザ「again」前で行われた善光寺平神楽囃子保存会の演舞の様子だ。1頭だけでなく7頭が一斉に演舞を行なっており、道路を目一杯使って舞っていたので迫力があった。オープニングの時はさらに多い10頭でも演舞していたようだ。笛や太鼓、鉦の音色に合わせて、2人立ちの獅子がゆっくりと舞っていた。

獅子頭の形は犬型と言うべきか、伊勢大神楽にもよく見られる権九郎型の獅子頭だ。耳がピンっと立っているのが印象的である。また紺色の胴幕にはしめ飾りのような形の模様や、唐獅子の身体の巻き毛を図案化した「毛卍文(けもんまん)」などの模様が描かれている。

獅子頭の中に入る担い手は着物を着ているようだ。花柄の美しい衣装を覗かせている獅子もいる。この獅子に向けて何やら御幣を向ける人が現れる。

獅子は御幣をパクッと噛んだ。御幣や神楽鈴などを手にして獅子が舞うような場面もあった。また、獅子は最初2人立ちから始まるが、途中から後ろの人が蚊帳から抜けて1人立ちになって舞う様子も見られた。

演舞終了後は、獅子頭が沿道の観客たちを噛んで歩く姿も多く見られた。喜んで獅子に噛んでもらい、無病息災や厄払いなどを願っているようだった。

このような流れで獅子舞の演舞が行われた。この他にも34団体の出演があったため、様々な形態の演舞が見られ、賑わいをみせていた。

子供の個性溢れる獅子頭づくり

また、演舞だけでなく、子供達が獅子舞を楽しめる工夫も見られた。こちらは道端にあった「お獅子工房」のテントである。ここでは子供向けの獅子頭工作が行われており、作り方は行政の職員の方々が教えているらしい。

作り方はとてもシンプルで、ティッシュケースを切ったものにお気に入りの色の画用紙を貼る、歯を付ける、目や鼻を描く、耳を貼る、持ち手をつける、胴幕(幌)をつけるという手順だった。自分の家でも揃えられそうなものばかりで、丈夫さはともかく手軽に作れるのが良いと感じた。

この様子を見学していて1番面白いと思ったのが、獅子頭の色が赤色だけでなく、黄色やピンク色など様々であったことだ。普通は獅子頭というと赤色を思い浮かべる方も多いと思うが、子供たちの自由な発想で獅子頭が制作されていた。このように作った獅子頭で本物の獅子頭を噛んで遊ぶ様子も見られた。

地域を越えてまとまる力

ながの獅子舞フェスティバルを訪れてみて、地域を越えて獅子舞を盛り上げていく力を強く感じた。全国的に見ると、これほど出演団体が多い大規模な獅子舞の祭りは稀である。長野県飯田市や岐阜県飛騨市などで類似の獅子舞フェスティバルがあるものの、規模や出演する獅子舞の形態等の趣が異なる。

また、ながの獅子舞フェスティバルでは、長野市内だけではなく他の周辺市町村からも出演団体を募っているのが面白い。ウチだけでなくソトの獅子舞文化にも注目することで得られる気付きも多く、楽しみも増えるだろう。

伝統芸能継承における行政の役割

長野市周辺では獅子舞団体が地域の祭りのみならず、ながの獅子舞フェスティバルをはじめ様々なイベントに出演する機会がある。実際に善光寺で演舞する機会もあるらしい(イベント日程はこちら)。この獅子舞文化振興の影には、行政側の熱量があるようだ。長野市の文化芸術課の担当者、五明隆一(ごみょうりゅういち)さんにお話を伺うことができた。

「長野市では平成30年に伝統芸能推進室という部署ができました。僕らは少なくとも長野市を始めとした260の獅子舞団体と繋がっており、イベントをする時には声をかけて回ります。ながの獅子舞フェスティバルは、伝統芸能の継承と地域の宝を次の世代に残すという目的があります。後継者不足で活動ができない団体が出てきており、これをなんとか食い止めたいです。子供にも伝統芸能の魅力を伝える機会を作りたいですね」とのこと。

今や各町内の祭りだけでなく、行政が取りまとめ役となり、各団体の横の繋がりづくりに注力することが伝統芸能の継承には不可欠な時代になっているようにも思える。長野市の獅子舞文化を継承していく取り組みに、これからも注目していきたい。

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