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長田神社「古式追儺(ついな)式」、鬼に豆をまかない平和な節分行事とは?

更新日:2020/6/7 狼と踊る男
長田神社「古式追儺(ついな)式」、鬼に豆をまかない平和な節分行事とは?

ご存知、節分といえば「鬼は外!福は内!」と豆をまきます。ところが神戸の長田神社では、鬼が7匹登場するも一粒の豆もまかず、逆に参拝者たちが頭を撫でてもらい厄払いするという極めて平和的にことが進む「古式追儺式」という神事がとり行われています。

「古式追儺式」のあらまし

そもそも「追儺」とは飛鳥時代から宮中においてに行われてきた疫鬼や疫神など不吉なものや種々の不幸・災をもたらす「鬼」を払う儀式のことで、その後、民間に広まり豆をまく節分行事の原形になったとされています。

一方、神戸三大神社として知られる長田神社の「古式追儺式」は、七匹の鬼が神々のお使いとして

1.松明の炎で種々の災いを焼き尽くし

2.太刀の刃で凶事を切り捨て、天地を祓い、国土を清め

3.一年間の人々の無病息災、家内安全を願い

4.一陽来復の立春が再び巡り来ることを喜び祝い願う

というありがたい行事。だから鬼には豆をまきません。参拝者は、松明の灰をかぶることにより祓を受け、松明の燃え残りを家の入口に吊して除災招福を願い、また餅花(切り餅を木に刺して飾るもの)を食べて無病息災、家内安全を願って、この年の平穏を祈るのが古来より伝わる風習だそうです。

室町時代(約650年程前)には現在と同じ形で行なわれていたことが伺われ、古い形態を今日に伝える貴重な神事として、鬼面並び行事一式が昭和45年兵庫県の重要無形民俗文化財に指定されました。

参考:長田神社ウエブサイトhttp://nagatajinja.jp/html/

7匹の鬼が勇壮に松明を振り、古式ゆかしく舞う!

それでは6時間以上に及ぶ神事の演目を順に紹介します。

■午後12時すぎ「ねりこみ」

法螺貝が一定のリズムで吹かれ「練りこみ」が始まります。これは神職、奉賛会長、法螺貝の囃手、肝煎と呼ばれる世話人、太刀役と呼ばれる5人の凛々しい少年たち、異様な出で立ちの鬼役からなる行列で、左右に足を繰り出す大名行列のような独特の歩き方で進みます。中でも鬼役は鬼になった時、褌にする白木綿を頰かむりのようにして頭の上で結んでいます。主人公だけに存在感は抜群。思わず目を惹かれます。

■午後1時「節分祭」

節分祭に参列するため「練りこみ」の一行が境内に入り特設の舞台から拝殿に参進します。すでに多くの人が舞台を取り囲んでいます。

■午後2時「追儺式神事」

太鼓の音と法螺貝を皮切りに、鬼たちが順々に降臨します。

舞台を激しく踏み鳴らしながら松明をふり廻し、ある時は頭上高くあげピタリと静止し、ある時は蹲踞(そんきょ)の姿勢でしゃがみこむ。まるで神楽や能・狂言などの古典芸能を思わせる7匹の鬼たち。どこかユーモラスな所作を楽しむことができます。

「一番太郎鬼」序列は3番目で露払いとして登場。ひとしきり演舞した後、ゆっくり退場します。

「 赤 鬼 」全身赤装束で登場。5匹が揃うまで頭をゆっくり回しながら待つ仕草が可笑しい。

「 姥 鬼 」老婆のような表情の面で登場。趣のある所作が独特です。

「 呆助鬼 」得体の知れない面で登場。顔つきが恐ろしい。

「 青 鬼 」全身緑装束で登場。頭を撫でてもらうとすごく目が良くなるという。

(神社では年一回、眼鏡を供養しています。境内には眼鏡碑が建立されています)

「 勢揃い 」再び一番太郎鬼が登場し、5匹の鬼が勢揃いしたのち演舞。

しばらく間をおいて

「 餅割鬼 」鬼の中で最強とされる行事の主役が登場。右手に松明、左手には斧を持つ。 

「尻くじり鬼」腰に槌、右手に松明、左手に大矛を持ち登場。序列は2番目。

再び赤鬼以下5匹が登場し、演舞。

「太刀 渡し」各鬼が太刀役より太刀を受取り、右手に松明、太刀を左肩に演舞。

「太刀 収め」ひとしきり演舞後、各鬼は順次各太刀役に太刀を返す。

次いで

「餅割鬼」「尻くじり鬼」の2匹が再び登場して演舞。

「御礼参り」赤鬼以下5匹が登場して最後の演舞。いよいよクライマックスに。

「餅割行事」餅割鬼と尻くじり鬼が餅を斧で割る。古典芸能を思われる独特の所作が印象に残ります。

18時30分過ぎ。2匹の鬼は世話役に両脇を抱えられながら舞台から突然走り去り、行事は終了。

小さいうちに見せときたいオマツリ

地元住民のために厄を祓い、一年間地域を見守り続ける鬼たちには、どこか憎めない風貌も含めて優しさを感じます。「古式追儺式」もまた地元に対する優しさに包まれています。「古式追儺式」は貴重な伝統行事ですが、決して堅苦しくて退屈な行事ではありません。実はすごく親しみやすく、ついつい応援したくなるオマツリなのです。

行事の合間には、司会の世話役が「鬼の面を被らせるておくにはもったいないイケメン」とか「姥鬼は130キロ以上の巨漢です」とユーモアたっぷりに鬼役を紹介したり、クライマックスである「餅割行事」の前には、参拝者が帰らないよう「これを見ていくと必ずいい事あります」あるいは「間違いなく皆さんの一年が幸せになります」と言葉巧みに煽ったりします。

また「鬼役の彼は今回で10回目の大ベテラン!」と奉仕回数をコメントすると、鬼役が前日に何度も井戸水をかぶり、当日は早朝に須磨海岸で海中に入り、身も心も清めていることをご存じの参拝者たちの「ご苦労様!」「ありがとう!」と声援が飛び交います。神事というよりも雰囲気はまるでオマツリ。

さらに、オマツリの担い手は世話役や鬼役はもちろん、写真係や掃除係などのスタッフに至るまで全員地元の人たち。当日限定の「厄除けうどん」を提供する出店も地元の皆さんによって賑やかに運営されていて、こちらまで元気になりました。

社会見学でしょうか。当日、小学校や保育園の生徒たちが団体で見に来ていました。自分たちと同じ年回りの5人の子供たちが「太刀持ち」という重要な役回りを演じているのを熱心に見入っています。
「太刀持ち」は最初から最後まで紋付き袴で演じ続けるのですが、世話役たちの助けが必要不可欠です。世代を越えた地域の結びつき、受け継がれてきたものを大切にすること、守り続けること。このオマツリにはこれから生きていく上で大切なことがすべてつまっています。長田神社の「古式追儺式」は、オマツリ好きや歴史愛好家はもちろん、子供たちにこそ見て肌で感じてもらいたい神事なのです。

もっと楽しむためのアドバイス

行事は長丁場で寒いので、特設の出店で腹ごしらえしときましょう。鬼がついたという「厄除け餅」と縁起物の五色の具が入った「厄除けうどん」でお腹一杯になります。

行事の間には厄除のため、鬼が自らの面を手で触ってはその手を参拝者の頭や顔に乗せくれます。かなり混み合いますが、そのポイントは舞台向かって右側最前列です。

全部で6時間を超える長丁場なので一回で見るのは少々きついかも。筆者は2年がかりで見学しました。特にお薦めする時間帯は5匹の鬼が勢ぞろいする15時前後と日が暮れて松明や提灯で照らされはじめる17時過ぎから。それまでどこかユーモラスだった雰囲気が一変し、幻想的な雰囲気を味わうことができます。

行事の合間には縁起物を買うのも一興です。鬼のお守りや面、餅花、福豆、厄除け餅、ミニ松明など盛り沢山。

最前列で見学していると大量の火の粉と灰をかぶることになるので帽子は必需品。防寒着もダウンや化繊などのアウターは禁物です。そして混雑を避けるのであれば2月3日が平日になる年を狙いましょう。

狼と踊る男
この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
日本の祭りに山神火神の伝説あるべし。願わくば之を語りて現代人を戦慄せしめよ。

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