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3年ぶりに夜空を焦がす巨大松明!キリコも乱舞する「能登島向田の火祭」を現地レポート

3年ぶりに夜空を焦がす巨大松明!キリコも乱舞する「能登島向田の火祭」を現地レポート

一気に燃え上がる巨大な柱松明(はしらたいまつ)の倒れる方向で、その年の豊作や豊漁を占う—。2022年7月30日、能登島の伊夜比咩(いやひめ)神社の夏祭「向田の火祭(こうだのひまつり)」が行われました。

石川県無形重要文化財「向田の火祭」は、一説には“日本三大火祭り”の一つとも言われ、その豪壮で神秘的な様が最大の見所となっています。また、能登の夏祭りには欠かせない巨大な灯籠“キリコ”が登場して練り歩く、キリコ祭りの一つでもあります。

コロナ禍により3年ぶりとなった柱松明の登場に沸いた現地の様子を、火の粉降る中からレポートします!

祭前日、ついに柱松明が立った!子供も若衆も年寄りも。住民総出で“祭支度”

能登島向田の火祭30メートルの松明から火の粉が飛び宙をを舞う姿はド迫力!そして熱い!奥に見える人影で火焔の大きさがわかるはず。

高さ30メートルもの柱松明が一気に燃え上がる様が圧巻の「向田の火祭」。その準備は、地元向田町の壮年団を中心に子供、若衆、年寄り組に分かれ、約1か月前から始まるのだそう。

柱松明の芯となる「御神木=オオギ」や「奉燈=キリコ」の組み立てといった大人がまかなう作業だけでなく、子供組にも学年に応じてしっかりと作業が割り当てられているのが特徴です。キリコの和紙を剥がして束子で洗う“奉燈洗い”や“綱ねり”“手松明作り”の手伝い、また、御旅所のために海から砂を採りたくさんの団子を作って並べる“砂上げ”、お囃子など、その役割の多さ、責務の大きさが印象的。

また、オオギを覆う800束のシバ(柴)は割り当てられた各世帯で作るなど、住民総出で祭を作り上げるスタイルは「祭は昔からそうだった」と地元の人は言います。そして今年、3年ぶりの大松明の登場に「コロナで2年大松明がなくて、寂しかった、やっぱりこれがないとね」と、復活の喜びを語っていました。

能登島向田火祭りセンター火祭会場の横にある「火祭センター」には、本番を待つ手松明など祭道具が置かれている。壁面には火祭の迫力を伝えるペイントが。

能登島向田火祭風景七尾湾に浮かぶ1周約72kmの能登島の風景。能登半島からは2本の大きな橋で結ばれており、車はもちろん徒歩でも橋からの絶景を楽しめます。内浦ならではの穏やかな海には、イルカがしょっちゅう訪れるのだそう。

さて、前日から能登島に入った筆者。すでに伊夜比咩(いやひめ)神社で出番を待つキリコや、神輿の通り道に飾られた灯籠、柱松明めがけ投げ込む100本ほどの手松明(例年の半分)など、祭支度が調う様にソワソワ!

能登島向田の火祭伊夜比咩神社から御旅所への道に立てられた、地元の子供たちお手製の灯籠。

手松明能登島向田の火祭火祭センターにて本番を待つ手松明の一部。今年は例年の半分以下に減らしているそうです。

能登島向田の火祭りキリコ伊夜比咩神社で出番を待つキリコたち。“夕方には立て始めるよ〜”と教えてくれました。

能登島向田の火祭神社からほど近くのそわじ浦から砂を採り、御旅所の神輿台座に並べるお団子を作る“砂上げ”作業。お団子に挿すのは、伊夜比咩神社の榊の葉。

そして支度のクライマックスは、“松明起こし”! 伊夜比咩神社のほど近く、火祭りが行われる「崎山広場」にて、クレーンを使って高さ約30メートル、重さ約10トンの柱松明を立ち上げます(昔は人力でやっていたそう!)。

そして、支えとなる木“サシドラ”を経験と技術を頼りに柱松明が自立するよう刺していく−。怒号にも似た指図が飛びかう張り詰めた空気の中、作業開始から約2時間、ついに柱松明がそびえ立った! 見守る人々から「おぉぉー!」と歓声! これで、祭の支度は整った!

能登島向田の火祭

能登島向田の火祭柱松明柱松明のてっぺんにつけられた「御弊(ごへい)」。取った者には幸運がもたらされるとされ、松明が倒れると争奪戦になるそう。

能登島向田の火祭柱松明

能登島向田の火祭柱松明

火祭に何を願う?—伊夜比咩神社に伝わる由来—

現在、7月最終土曜日に行われる向田の火祭ですが、旧暦では6月の晦日に行われていました。伊夜比咩神社の宮司によると、その頃は稲作や麦作に影響する虫害や天候被害など、農業や漁業を生業とする人にとって警戒する時期で、そういった災いを避けたいと願い始まったのが起源。そこから、柱松明の倒れた方向により、豊作や豊漁を占う習俗へと変わっていったのだそう。

能登島向田の伊夜比咩神社

また、祭りの由来については下記のような記述もあります。

明治二十年代の伊夜比咩神社の「社務日誌」では七月三十一日の条に「夏越祭」と記され、「納涼祭」とも称して今日と同じく神輿の渡御と奉燈の随従、大柱松明炎上の義を行っていました。大柱松明炎上の義そのものが罪穢をはらう目的で行われた夏越の神事と考えることができます。

出典:向田の火祭公式サイト「伝承と歴史」のページ

夏の大祓として無病息災を願う「夏越の祓(なごしのはらえ)」の神事として行われている祭りであったこともわかります。

※夏越の祓(夏越の禊)については別の記事で簡単に紹介していますのでご参照ください。

とはいえ、向田の火祭りの起源については記録が少なく、断言しきれないのも事実のよう。稲作が盛んな米所であり、豊富な漁場を有する島であること、繁茂する樹木、はたまた島の古墳に関係が?など、独自の目線で起源に思いをめぐらせるのも面白いかもしれませんね。

なお、今年の伊夜比咩神社では火祭りの前日、書道家による書や舞踏家のダンスパフォーマンスを奉納。さらに境内はデジタルアーティストによるプロジェクションマッピングで彩られ、3年ぶりに復活する火祭りを盛り上げていました。

伝統を踏襲しつつも、より火祭りの魅力を発信すべく新たな試みに挑戦する心意気に感動。能登のキリコが大きく派手になったこれまでの歴史に共通する理念を感じざるをえません! 神様もきっと喜んでいらっしゃるでしょう!

能登島向田の火祭伊夜比咩神社

能登島向田の火祭キリコ

ちなみにキリコは「切籠灯籠(きりことうろう)」を縮めた略称。古くは箱形の質素な小型行灯で、照明または神への献燈としての役割でしたが、江戸時代後期頃から華美で大型なものへと変化していったのだそうです。

能登の祭といえば「キリコ」で乱舞!宵に6基のキリコを従え神輿渡御

能登島向田の火祭りキリコ奉燈

祭当日。あたりが薄暗くなると、いよいよ伊夜比咩神社がザワついてきました。今年のキリコはコロナ禍により、例年より1基少ない6基がお出まし。キリコに明かりが灯り甲高くお囃子が鳴り始めたら、祭の始まり!

大松明がそびえ立つ御旅所・崎山広場に向けて、派手に舞うように担がれる神輿が大小のキリコを従えて渡御。日本の原風景のような素朴な風景の中、色彩もサイズもド派手なキリコが派手に練り歩くその様に、自然と魂が沸き立ちます! 神輿の先には伊夜比咩神社の御神火を灯した提灯があり、この火を消さないように運んで行きます。

能登島向田の火祭キリコ奉燈

能登島向田の火祭奉燈キリコ

普通に歩けば10分程度の道のりを30〜40分程かけて御旅所に到着。そのまま、火をつける前の柱松明の周りを神輿とキリコが練り歩く。真ん中で、天高くただ無骨にそびえ立つ柱松明は、とても神秘的で威厳を感じる佇まいです。

能登島向田の火祭り神輿

能登島向田の火祭

一気に巨大な火柱が!熱波、火の粉がすぐそこに!柱松明が倒れた方向は?

神事が終わると、地域住民や若衆が持つ手松明に御神火を点火し、火が消えないよう振り回しながら大松明の周りを駆け回ります。そして合図とともに、一斉に大松明めがけて手松明を投げ込み点火、祭りはクライマックスへ!

能登島向田の火祭り手松明

能登島向田の火祭り手松明

能登向田の火祭り

「ボワッ!!」と轟音を立て一気に燃え上がり、あっという間に天を焦がすかのような巨大な火焔が! 安全のため柱松明から約30メートルの距離を置いているはずの筆者にも、熱波が凄い! 火の粉が頭から降ってくる! “燃えにくい素材の服装を心がけてください”と何処かのパンフレットにあったその意味を、身をもって理解できました。

「バチバチバチッ!ゴォォ!」「顔アッツ!」「わー、こっちに倒れそう!」「火の粉デカっ!」—。この迫力はこの場にいる人だけが味わえる醍醐味といえるでしょう。ちなみに本来、手松明の投げ込みは観光客も参加できたそう。コロナ対策により今年の手松明は、例年の半分以下(約100本程度)にし、関係者のみに限定。……燃え上がる柱松明に疫病退散を祈願せずにはいられませんでした。

40分ほど燃え続けた今年の柱松明は、「豊作」を示す山側に倒れました。そしてこの倒れた柱松明に若衆たちが一気に駆け寄り、まだ火の粉飛び散るその中かから御神木(オオギ)を引き出す様も見応えがあり。取り出した御神木は2、3年使い回すため、翌日には近くのため池に沈め、1年間、次の出番を待つのだそう。ため池に鎮めた御神木は、次の機会までに朽ちたことはないそうです。

圧巻の「向田の火祭り」。その素朴で荘厳な様は“唯一無二”の魅力を放っていました。火焔の迫力や美しいキリコだけでなく、地域の皆さんの“エネルギー爆発!”のあの熱気! 子供からお年寄りまで住民総出で作り上げることが地域のつながりとなり、生活の節目となり、受け継がれて行く—。3年ぶりの大松明に、そんな日本の祭の原点を感じることができたように思います。次回はぜひ、松明を手に参加させていただきたいです!

能登各地の「キリコ祭」をチェック!—夏から秋まで目白押し!—

キリコ祭能登

お祭り好きならご存じのとおり、能登は1年中どこかで祭が催されているほどの“オマツリパラダイス”。中でも「キリコ祭」は、「灯り舞う半島 能登~熱狂のキリコ祭り~」として文化庁の「日本遺産」に認定されているなど、あまりにも有名です。

7〜10月にかけては大小様々なキリコ祭が約200地区で開催されているそう。ここでは能登半島で開催される代表的なキリコ祭をご紹介します!

<7月>

あばれ祭(能登町)
七尾祇園祭(七尾市)
剱地八幡神社大祭(輪島市)
恋路火祭り(能登町)
飯田町燈籠山祭り(珠洲市)
松波人形キリコ祭り(能登町)
塩津かがり火恋祭り(七尾市)
どいやさ祭(能登町)
能登島向田の火祭(七尾市)
水無月祭り(輪島市)
名舟大祭(輪島市)

<8月>

石崎奉燈祭(七尾市)
宝立七夕キリコまつり(珠洲市)
新宮納涼祭(七尾市)
西海祭り(志賀町)
沖波大漁祭り(穴水町)
明千寺キリコ祭り(穴水町)
曽々木大祭(輪島市)
酒見大祭(志賀町)
輪島大祭(輪島市)
冨木八朔祭礼(志賀町)
にわか祭(能登町)
中居キリコ祭り(穴水町)

<9月・10月>

蛸島キリコ祭り(珠洲市)
寺家キリコ祭り(珠洲市)
大町・川島祭り(穴水町)
正院キリコ祭り(珠洲市)
柳田大祭(能登町)
前波曳山祭り(穴水町)
小木袖ぎりこ祭り(能登町)
岩車秋祭り(キリコ祭り)(穴水町)
馬緤キリコ祭り(珠洲市)

今年のキリコ祭りの多くはすでに開催済みですが、まだこれから開催予定のものも!下記のサイトや各市町村へご確認のうえ、足を運んでみてはいかがでしょうか?

■キリコ祭の参考サイト
能登ふるさと博「キリコ祭り」
能登のキリコ祭り

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この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
東京生まれの東京育ち。卒論テーマは「吉原遊郭」。のち、出版社&WEBメディアの編集者/デジモノライターとして20余年。そして今、日本文化の原点を探るべくキャンピングカーでの“祭追っかけ”がライフワークに。“お香”の愉しみを伝える香司、和精油セラピストとしても活動中。推し社は「愛宕神社」。

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