岩手県花巻市で7月25日(土)に「夏を諦めない!みんなの花火」と題したプライベート花火が行われました。今年は新型コロナウイルスの影響で全国の花火大会が中止になり、花火業界は大ダメージを受け、前年比95%ものマイナス売り上げとも言われております。
今年の夏に打ち上げる花火は何か月も前から準備しており、新たに花火作りをやろうとしても火薬庫はいっぱいで、これ以上は花火を作る事も打ち上げる事もできない状況です。
そんな花火師さん達の倉庫にある花火玉を少しでも消費できるようにと考えたのが多くの人から少しずつ費用を集めて打ち上げるプライベート花火。今回は、そんなコロナ禍でも楽しめる新しい形の花火大会を取材させて頂きました。
主催者について
今回のプライベート花火の主催者である愛木敬介さんは私の以前からの花火仲間でもあり、岩手県に住んでいながらも、高品質の花火大会であれば当たり前の様に各地に現れる花火マニアです。花火が大好きな彼は敬愛する花火師、花火業界のピンチを目の当たりにして居ても立っても居られず、少しでも自分がやれる事をやろうと今回の企画を立ち上げました。
勿論、花火に関する深い知識も持ち合わせており、8月最終土曜日に秋田県大仙市で開催される全国花火競技大会 大曲の花火では、花火鑑賞士を代表して花火セミナーや会場イベントで花火の見所についての講義を行っています。
また、今回のプライベート花火は「コロナ禍で大変な状況にある花火業界の力になりたい」と新たに発足した煙火粋心会の活動の一環でもあり、愛木さんはその立ち上げメンバーの一人でもあります。会に加入していた事により他のメンバーによる協力もあり、運営をする上でもかなり助かった様です。
企画・構成
そんな花火が大好きな愛木さんですが、これまで花火大会を開催した経験がある訳ではないので何から手を付ければいいのか全く分からなかったそうです。花火の費用についても消防への申請書についても何となくその存在を知っているくらいです。
そこで花火師の知り会いでハナビジャパンと言う会社で花火の打ち上げ・企画をしている中嶌結希さんに相談してみるとプライベート花火を行う手順を一から十まで手助けしてくれたそうです。自分でプライベート花火をやってみたいと言う人は、まずはハナビジャパンのホームページから問い合わせてみるのも良いかもしれません。近年では結婚式での打ち上げも増えてきています。
ハナビジャパン https://hanabi-japan.com/
打ち上げ準備
打ち上げ場所については色々と吟味した結果、一番条件が良さそうな花巻スポーツランドをお借りしました。普段はラフティングやボートなど水辺のアウトドア体験ができる自然いっぱい施設です。管理人である白畑誠一さんは凄くプライベート花火に協力的な方で、当日はトラクターであっと言う間に打ち上げ場所の整備もして頂き、花火師さんにとってもかなり大助かりでした。
今回のプライベート花火は秋田県大仙市の響屋大曲煙火が担当になりました。代表取締役である齋藤健太郎さんとも大曲の花火での表彰式でお会いして以来だったので、久し振りに元気そうな顔を見れて良かったです。そんなに大きな現場でもないのに5名もの花火師さんに来て頂き、丁寧に打ち上げ準備をして頂きました。
会場の受付は愛木さんの御家族が担当されていました。そこで妹さんに花火大会ばかり行っている兄をどう思うか聞いてみると「楽しそうでいいんじゃないですか?」と家族での理解もある様でした。ただ、今回の大スポンサーであるお父様はやはり息子の結婚が気になっている様で自分にとっても耳が痛い話でした(笑)
花火打ち上げ
参加料金は一人5,000円と普段は無料で花火を見るのが当たり前な人達からすれば決して安い金額ではないので、当初は花火好きばかりが集まるのかと思っていましたが意外と半分くらいが地元の人達でした。
特に愛木さんの写真仲間が集まってくれた様で三脚の数も凄かったです。欲を言えば折角の花火なので近くで見て欲しかったのが正直な感想でした。それでも愛木さんによる開催の挨拶が終わってからは、特に子供達が花火好きばかりの最前列に集まってくれました。
開幕花火
18:50から打ち上げ開始。響屋大曲煙火によるスターマインです。
芸術玉競演
愛木さんが厳選した各社4号玉1発ずつの打ち上げ。
フィナーレスターマイン
最後も響屋大曲煙火によるスターマインです。
八重芯白菊さんによる動画
プライベート花火を終えて
翌日は珍しく自分も打ち上げ場所の玉殻拾いに出かけ愛木さんのお手伝い。小一時間ほど打ち上げ場所を清掃した後は食事をしながら、プライベート花火を終えてみての感想を聞いてみました。
やはり開催する上で一番の問題は場所だった様です。プライベート花火を行う以上、花火が外から普通に見えてしまわない閉鎖的な場所が必要でした。もし花火大会が行われる事を知られてしまうと、人を集めて密な状況を作ってしまったり、違法駐車などの問題も考えられます。また、費用の面でもお金を頂く以上、無料で見えてしまっては不公平感を与えてしまいます。
反省点もいっぱいあった様で、その中でも入場口を封鎖する時間を知らなかった人がいて場所を貸してくれた施設の人に迷惑を掛けてしまったそうです。普段は花火大会を見て帰るだけなので運営する人達の苦労が身に染みたとの事でした。
良かった点はやっぱりみんなが喜んでくれた事でした。始まるまでは花火に5,000円も払って損したとか思われないか凄く気になって仕方なかったそうです。実は愛木さん本人を含め御家族が出した費用があっての豪華な花火であり、実際にはもっと人を集めないと見られないと言う事を付け加えておきます。また、花火は見に行けないけど応援したいのでと協賛金を出してくれた人もいた様で感謝しかなかったとの事でした。
最後に今後も他の花火大会と同様に続けていきたいかと聞いてみると、このプライベート花火は現在コロナ禍で大変な花火業者に少しでも協力したいと言う一時的なもので毎年続けたいとかは考えていないそうです。しかし、これを機に各地でプライベート花火をやってみたいと言う人が増えて欲しいとは思っているので、自分が何か協力できる事があれば、今後もやってみたいとの事でした。