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「西大寺会陽」裸男1万人の果てなき熱量|観光経済新聞

更新日:2020/8/28 けんのすけ
「西大寺会陽」裸男1万人の果てなき熱量|観光経済新聞

2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2020年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)

裸男1万人の果てなき熱量

「ドンッ、ドンッ、ドンッ」。2月の澄んだ空気を伝って太鼓の音色が広い境内に響き渡る。ここは岡山県岡山市西大寺。天下の奇祭ともうたわれる「西大寺会陽」がまさに始まろうとしている。

 この祭りは裸男(はだか)の参加者が1万人にものぼり、国内最大の裸祭りとも言われている。起源は古く、起こりは奈良時代までさかのぼる。会陽19日前に事始式、会陽2週間前からは修正会が行われ、結願の日(2月第3土曜日)に宝木(しんぎ)が投下され、福男の座をかけて裸男たちが争奪戦を繰り広げる。

 私もまわしを締め、仁王門をくぐった。今年で3回目の挑戦になる。なんの因果があってか、生まれも育ちも全く関わりないこの地の祭りに参加し続けている。これもまた私を駆り立てる何かが西大寺会陽にあるのだろう。

 目の前には本堂。大勢の裸男たちが殺到している。本堂の上部・御福窓から投下される宝木を獲るため、投下数時間前から体と体をぶつけ、ひしめき合いながら待ち構えている。いつもこの光景を目の当たりにすると足がすくむ。

 ふと遠くを眺める。煌びやかな衣装をまとった女性たちが太鼓を打ち鳴らす。裸男の安全を祈願し奉納される太鼓の音。リズムに急かされるように、いよいよ腹をくくって裸男の群衆に飛び込む。

 暑い、いや、熱い。これが1万人の裸男たちの熱量。あまりの暑さに本堂下では湯気が立ち昇る。福男になるために岡山まで来たのだ。ここで引き下がるわけにはいかぬ。葛藤をしながら宝木投下を私もひとりの裸男として待つ。

 22時。宝木が投下された。灯が消され、漆黒に舞う宝木。私の手元に宝木と思しきものが飛び込んで来た。しかし、手に何かをつかめたと思ったのも束の間、周りを取り囲まれ、争奪戦になった末に奪い取られてしまった。今年も福男にはなれず。

 悔しさや疲労感、さまざまなものが押し寄せてくる。しかし、闘いを乗り越えた際に訪れる安堵、そして、生の感覚。この不思議な感覚が私を会陽のとりこにしてやまない。

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この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
オマツリジャパンのけんのすけです!
体を張ったオモシロ記事から社会派記事まで幅広いジャンルで執筆しています!

これからの時代の祭りの在り方について考える企画「僕達の祭りのカタチ」を連載中。

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