◆京都 清水寺
その昔、落ちても不思議と怪我をせずに願いが叶うか、または死んで成仏ができると身投げする人が絶えなかったという清水寺の舞台。
覚悟を決めるときの言葉「清水の舞台から飛び降りる」という語源になったその舞台は樹齢300~400年の欅でできた高さ13mの懸造り(かけづくり)です。
四神相応の地 京都
東の「青龍」は鴨川、西の「白虎」は山陰道、南の「朱雀」は巨椋池(おぐらいけ/現在は消失)、北の「玄武」は船岡山をさしており、清水寺のある東山には「音羽の滝に観音様の化身の龍が夜ごと飛来して水を飲む」という伝説があります。
◆門前会発祥!33年に一度の秘仏御開帳で青龍が開眼!
清水寺開創から約1200年。創建から33年に一度、秘仏の御本尊がご開帳されます。
秘仏御開帳記念にと2000年3月3日にはじめて青龍会が行われました。
この門前会がはじめた記念の行道が、現在もお寺の年間行事として行われ、2019年には青龍会20年周年記念パーティも開催されました。
昔からあった行事ではなく、門前会の方のアイディアがお寺の行事になるという珍しい形態について、青龍会を行っている門前会の会長 田中博武さんにお話を伺ってきました。
写真:行道で夜叉神に法水を渡す会奉行(えぶぎょう)役の門前会会長の田中さん
門前会 会長 田中さん(以下、田中さん)
京都の四神相応の伝説から、「清水寺に青龍が舞う」というイメージがずっとありました。
秘仏御開帳記念にと「龍をだそう」と思いつき、まずは長崎くんちの方々に清水寺に来ていただきました。
実際に龍踊(じゃおどり)の方々に動いてもらい「これならいける」と確信し、それから二年間、試行錯誤をしました。
しかし、最初のころは龍を動かすにも10人は必要なのに、どう数えても8人しかいません。
それがご奉仕にも関わらず、あちこちから「わたしもやる。何をしたらいい?」と人が集まり、現在は50人ほどで行道を行っています。
◆夜叉神、四天王、十六善神が行道に集結
田中さん
集まってくれた人たちの役割をどうするかは全て、清水寺の信徒総代で「清水寺の知恵袋」の西村公朝先生(※三十三間堂の仏像修復などもした仏師で僧侶)に相談して決めてもらいました。
私がしている会奉行以外、青龍会の行道のメンバーは全て神様です。
行道の先導で法螺貝を吹いているのは転法衆(てんぽうしゅう)。
次に四方の守り神の四天王。「南無観世音菩薩(なむかんぜおんぼさつ)」と唱えます。この四天王は僧籍のある方が行っており、最近は大阪などから若いお坊さんが来てくださっています。
会奉行はコンダクターで、青龍は神の使い。龍がぐっとにらみつけるのは「睥睨(へいげい)」と言って、威厳を持って悪霊をたしなめている姿を表しています。
田中さん
転供侍者(てんぐじしゃ)は祈願成就など八つの功徳がある「八功徳水(はっくどくすい)」を清水寺からいただき、その法水を会奉行から夜叉神に渡します。
夜叉神は悪鬼悪霊を払う縁切りの女性の神様で、人々を見守る観音加持を行います。
行道では清水寺の滝の水「お香水(おこうずい)」を鉄鉢に入れ、散杖(さんじょう)で観音真言「オンバサラ タラマ キリク ソワカ」と唱え、梵語「キリク」を空に書きます。
最後の十六善神は「南無観(なむかん)」と唱えながら行道を練り歩きます。
現在は初期メンバーから3分の2くらいは変わりました。
四天王の僧籍の方以外はすべて門前会のメンバーです。
◆「寺・坂・わが家」お寺と一体の門前会
田中さん
寺、坂、我が家は一つ。「清水寺門前会」は清水寺の最強のサポーターです。
門前会では夜間拝観の運営など、宗教的なこと以外を全て請け負っています。
清水寺は今までに10回、焼けています。
お寺の一大事は私たちの一大事ですから、警備団もしており、小さな頃からホースを持って消防訓練もしています。
お寺と仲が良い門前会ということで、どうやったらそんなに良好な関係が築けるのかと、他の地域の方々が話を聞きにくることもあります。
ーコロナウイルスの影響についてはいかがでしょうか
田中さん
コロナウイルスがあっても、観音様に対する法要ですから青龍会を行います。
ただし出来る限り密集を作らないように行道を止めず、舞台や西門等の各作法は取りやめました。
今まで大雨の中でも作法をしており、だいたい1時間半から2時間弱の時間がかかる行道がコロナのときは30分ほどで終了しました。
ー清水寺の工事についてはいかがでしょうか
田中さん
50年ぶりにかやぶき屋根の吹き替えを行い、とても綺麗になりました。
家光公のときから燃えていないので380年経っており、2020年6月からは舞台の張替が始まります。工事は2021年の3月までかかる予定です。
ー清水の日について教えてください
田中さん
4月3日の「清水の日」は水に感謝する「しみずのひ」です。
全国の「せいすいじ」や「しみずでら」など100か所ほどの「清水寺」の方々が集まります。
参加するお寺の名前が刻まれている場所がありますので、ぜひ探して見てください。
青龍会は現在は年間5回の行道を行っており、4月3日は桜が綺麗です。
ー田中さん、色々と貴重なお話をありがとうございます。
次回、清水寺に訪れるときや青龍会に来るときもますます楽しみになりました!
清水寺らしい美しく威厳のある青龍をはじめとした装束は京都出身のデザイナー・ワダ エミさんがデザインを担当。
江戸時代の経文を用いた青龍や、四天王の兜のデザインひとつとってもそれぞれに異なり、見るたびに発見があります。
四季折々、青龍会の魅力が一層ひきたてられるその姿を観に、また清水寺へ訪れたくなります。
行道の最後は、清水寺を飛び出して門前町に青龍が飛び回ります。
「法(ほう)!」と龍衆が走り出し、お店に飛び込む姿は圧巻です。
◆清水寺 青龍会(せいりゅうえ)スケジュール
3月14日、3月15日、4月3日(清水の日)、9月14日、9月15日 14:00~
14:00 奥の院 地主神社 音羽の滝 経堂 三重塔 西門
14:30 石段下 門前町 仁王門 轟門 本堂
にて観音加持が行われます。