山梨県富士吉田市で毎年8月26日、27日に行われる「吉田の火祭り」に関わる方を徹底取材!!
今回インタビューさせていただいたのは、吉田の火祭りで祭典世話人相談役を務める坂田睦夫さん。北口本宮冨士浅間神社のすぐそばで「北口亭」を営む坂田さんは、「北口睦會」と呼ばれる神輿の担ぎ手の会を束ねる親方でもあります。
「吉田の火祭り」祭典世話人:相談役とは?
吉田の火祭りは、山梨県富士吉田市の北口本宮冨士浅間神社で毎年8月26日、27日に行われるお祭り。日本三大奇祭の一つとも言われており、富士山の鎮火を願うお祭りです。26日の夜になると、氏子地域に設置された3メートルを越える巨大な松明に一斉に火が灯され、ごうごうと燃える様はとても幻想的ですが、同時に危険も伴います。
そんな吉田の火祭りを支える存在が祭典世話人と呼ばれる人たちです。祭りの運営を行う実働部隊が、任期一年で毎年氏子地域から14名選出され、氏子地域を一件ずつ周っての協賛金集めの他、祭り運営に関わる裏方の仕事を全て行う役割を担っています。
こちらの記事では、祭典世話人を受け継ぐ祭典世話人OBさんについて紹介をしています。
今回インタビューさせていただいた坂田睦夫さんは祭典世話人OBのお一人であり、祭典世話人OBの取りまとめ役でもある“世話人相談役”を務める方です。
祭典世話人相談役となった理由
◎坂田さんが祭典世話人の世話役を務めていらっしゃる理由や経緯について教えていただけますでしょうか。
坂田さん)もともと神社に縁のある家柄だったんだよ。
うちの本家はもともと(富士山で)山小屋をやっていて。神社の目の前に住んでいたんだ。そういう訳で神社とは昔から深く関わってきたんだ。先祖代々ね。
坂田さん)若い時から神輿の担ぎ手をやっていて、年齢を重ねるごとに、徐々に担ぎ手の取りまとめをするようになって行って…そうこうしている内に、この地域の氏子と神社のパイプ役って言うのかな?するようになって。
「世話人相談役」はそういうことの積み重ねで、年齢的にも自然とそうなった形だね。もう60過ぎているから(笑)
氏子として鳥居の架け替えにも貢献
◎北口本宮冨士浅間神社の鳥居の架け替えにも携わったと伺いましたが…?
坂田さん)そうそう。鳥居は60年に1回かな?架け替えるんだけど、これは鳥居の架け替えを実施した際に、記念として作った法被。俺が先頭に立って作ったんだよ。神社に許可を貰ってね。
鳥居には真ん中に看板がかかっているんだけど、法被にはその看板をかたどって「三国第一山」と入れたんだ。
坂田さん)一緒に架け替えに携わった人で、年配の方は腰のところに入っている「雲」の色をシルバーにしてね。俺のは赤だけどね。
坂田さん自身も祭典世話人を務めた
◎坂田さんご自身も、祭典世話人を経験されたのでしょうか??
坂田さん)平成3年には俺も世話人をやったんだよ。
(この時、ライターの従兄弟と世話人同期ということが分かり、盛り上がりました!)
坂田さん)世話人は任期1年。一生に一度の事だからね~。世話人をするまでは神輿の担ぎ手として吉田の火祭りには関わっていたんだけと、世話人となると年間を通して神社のお祭りや、裏方として色々な準備に関わるでしょう?
2月の節分祭、6月の開山祭…もろもろの行事全部やるからね。いやぁ大変だなぁと思ったよ。そういう経験から、少しでも世話人さんのバックアップが出来ればいいなと思ってやっているんだよ。
神事としての厳しさ
◎毎年、どんな想いで現役の世話人さんの面倒を見ていらっしゃるんでしょうか??
坂田さん)やっぱりね、お祭りは「神事」だから厳しいと言うのはあるよ。他の事だったら適当でもいいけど、神事だからそういう訳にはいかない。例えば何か世話人さんに「それは違うぞ」と、注意するにしたって「神事だから」という厳しさがないとできない。
だから「神事だから」という厳しさを、腹に据えて行動するようにしているよ。常にね。
坂田さん)とにかく…大きいお祭りだからね、無事に、何事もなく終わって欲しいという思いで見ているね。
インタビューを終えて
「無事にお祭りを終える」ために、また「神事としてのお祭りを守る」ために、坂田さんを始めとするOBの方が祭典世話人を支援し、時に厳しく叱咤激励をしながら、お祭りの準備・運営を行っています。
吉田の火祭りは三大奇祭の一つと言われ、巨大な松明に火をつけて燃やすなど危険も伴うお祭りです。だからこそ準備や運営に気を抜くことは出来ません。
坂田さんは世話人相談役という世話人OBたちを取りまとめる立場でありながら、決して偉そうな態度をとることはありません。そんな坂田さんだからこそ、坂田さんの背中を見て、人が付いてくるのだと感じました。
坂田さんの息子さんも、令和元年の今年祭典世話人を務めていらっしゃいました。お父様の姿を見ていらしたことも、祭典世話人を引き受けることにつながったのではないでしょうか。
祭典世話人制度と、それを支援する祭典世話人OBの方達がいる限り、吉田の火祭りは脈々と受け継がれていくことと思います。400年の歴史を持つお祭りの理屈では語れない奥の深さ、お祭りに関わる人たちの熱い想いを感じた取材でした。